レアハンター戦決着、その次へと続くお話になります。
昴 LP5800 手札2枚
場 炎王神獣 ガルドニクス(攻)
レアハンター LP2000 手札1枚
場 エクゾディア・ネクロス(攻)、守護神の宝札、伏せ1枚
終焉のカウントダウン カウント17
「俺のターン! スタンバイフェイズに前のターン破壊されたネフティスの鳳皇神の効果を発動! このカードを守備表示で特殊召喚し、フィールドの魔法・罠カードをすべて破壊する!」
ネフティスの鳳凰神 効果モンスター
星8/炎属性/鳥獣族/攻2400/守1600
このカードがカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、次の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを墓地から特殊召喚する。この効果で特殊召喚に成功した時、フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。
ネフティスの鳳凰神が嘶いたかと思うとフィールドが再び火に包まれて今度はレアハンターの魔法・罠ゾーンのカードが破壊された。
(ガード・ブロックか……エクゾディアならカードを引ける防御カードのほうが向いているからな……さて、とりあえず……)
破壊されたガード・ブロックを見ながら次の手を打つ。
「メインフェイズ開始時に貪欲で無欲な壺を発動!」
貪欲で無欲な壺 通常魔法
メインフェイズ1の開始時に自分の墓地から異なる種族のモンスター3体を選択して発動できる。選択したモンスター3体をデッキに加えてシャッフルする。その後、デッキからカードを2枚ドローする。このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。
「墓地の獣戦士族のヤクシャと獣族のキリン、そして機械族のカードカー・Dをデッキに戻してカードを2枚ドロー!」
ドローしたカードは今望んでいたカード。このターンに来なかったら昴の勝機はなかっただろう。
(なんとか目当てのカードは引けたが問題が解決したわけじゃない)
エクゾディア・ネクロスの効果を突破するにはパーツごとに存在する力を知り、そのカードを取り除かなければならない。しかし、今の時点で昴はその情報を持ってはいなかった。
引いたカードのもう一枚は攻撃を防ぐためのカードだがネクロスには歯が立たないカード。この場では意味のないように思えた。
(いや……もしかしたら行けるか?)
どうやったら効果を聞き出せるのか。そのことを考えていた昴の脳裏に浮かんだのはなぜ社長がネクロスの効果を知ることができたかということだった。
(賭けではあるけどやってみる価値はある!)
「カードを3枚セット。ガルドニクスを守備表示に変更してターンエンド」
「この瞬間終焉のカウントダウンは18個目の灯を灯す! 何枚リバースカードを出そうが貴様の敗北は揺るがない! 私のターン!」
昴に残されたターンは後2ターン。次の自分のターンで勝負をつけられなければ敗北が決定する。優勢な状況に気持ちが大きくなっていたのかレアハンターは叫ぶように声を張り上げてドローしターンを開始した。
「フフフ、守備表示にしていればエクゾディア・ネクロスが攻撃してもダメージを受けない。しかし! 私が攻めないと思ったら大間違いだ! 装備魔法、メテオ・ストライク!」
メテオ・ストライク 装備魔法
装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
「!? 守備貫通の装備魔法!」
「さらにこれだ! 魔法カード、禁止薬物!」
禁止薬物 通常魔法(漫画版GX登場、一部改変)
自分フィールドに存在する表側攻撃表示モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはこのターン2回攻撃を行うことができる。このターンのエンドフェイズ時、対象となったモンスターは破壊される。
「この効果によってエクゾディア・ネクロスは2度の攻撃を行うことができる!」
「守備貫通の2回攻撃だと!?」
「でも禁止薬物の効果でエンドフェイズにはエクゾディア・ネクロスは破壊されるはず! そうなれば……」
「エクゾディア・ネクロスはいかなる魔法効果によっても破壊されることはない。よって禁止薬物の効果でのデメリットは消える!」
「そ、そんな……」
禁止薬物のデメリット効果を知っていたレイはその点を指摘するもネクロスの効果でそのデメリットがないに等しい状態になっているのに愕然とした。しかし、昴にはこの苦境だからこその勝機があると見ていた。
(半分舞い上がっている状況でこのカードを使えば、勝利を手のひらからこぼすことが出来るかもしれない! もってくれよ俺の体!)
ただそのためにはまだ受けたことのない闇のデュエルのダメージに耐えきらなければならない。
「いくぞ! エクゾディア・ネクロスでネフティスの鳳凰神を攻撃!」
「罠カード発動、聖なるバリア ミラーフォース!」
「無駄だ!」
ミラーフォースを発動する昴だがネクロスの拳はそれを突き破ってネフティスに向かう。
「そんな! ミラーフォースが効かないなんて!」
エクゾディア・ネクロス ATK2800
VS
ネフティスの鳳凰神 DEF1600
昴 LP5800→4600
「ぐあっ! …………これが闇のゲームってやつか。」
戦闘によって起きた衝撃が体に叩きつけられる感覚を昴は覚えた。映像越しに見るのと体感するのはまるで違う。笑っていられるのは当事者ではないからだということを昴は思い知った。1200のダメージであるが戦闘ダメージ分の衝撃が伝わってくるのがわかった。しかも……
「戦闘を行ったことによりネクロスの攻撃力は1000ポイントアップする!」
まだ攻撃は終わったわけではない
エクゾディア・ネクロス ATK2800→3800
「攻撃力3800!?……」
「これで貴様の場のモンスターは全滅だ! エクゾディア・ネクロスで2回目の攻撃、エクゾディア・クラッシュ!」
「速攻魔法……」
「無駄だ!」
エクゾディア・ネクロスの攻撃によってかガルドニクスが抵抗しようとしたのか辺りに炎が渦巻き、レイのところからは戦況が見えにくくなるがエクゾディア・ネクロスは一瞬攻撃を迷った仕草を見せたもののモンスターは拳で欠片と散らせた。
昴 LP4600→3200
「ぐっ……ったく、やってくれるじゃ……ねぇか」
炎が収まった後にレイが見たのは合計で2600のダメージを受けて明らかに調子を悪くしている昴の姿だった。ダメージが重かったのかカードを処理する様子を見てもつらそうなのが窺える。
「フフフ、これこそが究極のエクゾディア。このエクゾディア・ネクロスには墓地のエクゾディアパーツに隠された力が備わっているからだ」
「五つの……能力? エクゾディアパーツ自体は通常モンスターだし封印されしエクゾディアも特殊勝利以外効果はなかったはず!」
昴の体調も気がかりではあるが先ほどミラーフォースが効いたような気配すらなかったモンスターの能力というものがどんなものかレイも決闘者の端くれとして気になった部分があった。
「その効果は墓地に眠るエクゾディアパーツに秘められたもう一つの力だ。墓地にエクゾディアパーツが存在するときエクゾディア・ネクロスの効果としてパーツごとに効果を得る」
自身の圧倒的有利な状況に饒舌に効果をしゃべるレアハンター。
「封印されし者の左足には、いかなる魔法カードによっても破壊されない効果、封印されし者の右足には、いかなる罠カードによっても破壊されない効果、封印されし者の左腕には、いかなる効果モンスターの効果によっても破壊されない効果、封印されし者の右腕には、攻撃終了後に攻撃力が1000ポイントずつ上がる効果、そして封印されしエクゾディアには、戦闘では破壊されない、不死の効果を持っているのだ!」
戦闘、魔法、罠、モンスター効果で破壊されず戦闘を行うたびに攻撃力を上げる効果。一見すれば敵なしの能力だがそこには穴がある。
「私はこれでターンを終了する。これで終焉の灯は19個目の明かりを灯す! 貴様に残されているのは後1ターンのみだ!」
しかしその明かりが自身の敗北へのカウントダウンになっていることをレアハンターは知らない。
「ちょっと……待った!」
「七海さん、大丈夫ですか!?」
ネクロスの効果の衝撃で一瞬昴の存在をわすれかけていたことは彼女の中だけの秘密だが昴に強烈なダメージが入ったのは事実。先ほどのデュエルを見ていた彼女にはこのデュエルのダメージが現実のものになるという理解はできていたがそのダメージは戦っている本人が受けるもの。外野の身では声をかけることしかできなかった。
「どうにかな。そこの骸骨が長々と話してくれたおかげで一息つけた」
「もうじき闇に飲まれる定めだというのに暢気なものだな」
「暢気なのはあんたの方だ。あれだけ情報出してのうのうとしてられる根性に驚くよ。あんたに次のターンは回ってこないってのに」
「……何?」
さらっと重要なことを言った昴にレアハンターが眉をひそめる。本来なら決め台詞的なものになるのだが昴にはそれはイマイチ似合いそうにないのである意味ではよいのかもしれない。それはともかくとして昴が言いたいことはただ一つ。
「あんたに次のターンは回ってこないってことだよ。あんたのエンドフェイズ時に永続罠発動、火遁封印式!」
火遁封印式 永続罠
1ターンに1度、自分の墓地の炎属性モンスター1体をゲームから除外する事で、相手の墓地のカード1枚を選択してゲームから除外する
「この効果によって炎王獣 ヤクシャを除外することであんたの墓地にある封印されし者の左足をゲームから除外する!」
「左足のカードを除外だと!?」
左足のカードを除外したことでその部分だけエクゾディア・ネクロスを覆っていた闇が払われ、エクゾディア本来の姿が見えるようになった。
「さっきご丁寧にも説明してくれた通りエクゾディア・ネクロスの効果は墓地のパーツカードから効力を得る。これを除外してしまえばその効果は失われる!」
「左足の効果は魔法カードの効果で破壊されない効果。ということは禁止薬物の効果で!」
「そう。禁止薬物の効果、エンドフェイズ時に対象となったモンスターは破壊される。魔法カードに対する耐性を失ったネクロスにこれから逃れる術はない!」
「そ、そんな……私のエクゾディアが……二度も敗れるなど……!」
青ざめていくレアハンターだが手札も伏せカードもない。このデメリット効果を止める術は持っていなかった。
「報いを受けろ! エクゾディア!」
禁止薬物の効果が発動したようでいきなり左足がしびれ出したかと思うとうめき声を上げていくと同時にネクロスの闇が払われていったあとエクゾディア・ネクロスは塵と散った。
(なんというか、本当に中毒者そのものって感じだったな)
神だろうが関係なしに神経を侵す薬物に若干の恐怖心を覚えながらもデュエルを続行する。レアハンターはエクゾディアが散ったことですでに戦意喪失の様相だが、だからと言って終わらせないわけにはいかない。
「俺のターン。スタンバイフェイズ時に炎王神獣 ガルドニクスの効果を発動! ガルドニクスを墓地より特殊召喚する」
「え!? ガルドニクスは効果破壊されていないじゃ……」
「さっきこのカードを発動していたからな。速攻魔法、炎王炎環」
本来戦闘破壊では発動しないはずのガルドニクスの効果が発動したことに驚くレイだが昴は墓地から一枚のカードを取り出してレイに見せつける。
炎王炎環 速攻魔法
自分のフィールド上及び自分の墓地の炎属性モンスターを1体ずつ選択して発動できる。選択した自分フィールド上のモンスターを破壊し、選択した墓地のモンスターを特殊召喚する。「炎王炎環」は1ターンに1枚しか発動できない。
「このカードの効果でガルドニクスを破壊し墓地のネフティスを攻撃表示で呼び戻したってわけだ」
「そっか。だからライフの減りが少なかったのか……」
「発動したのにあいつに遮られたからな」
発動していたのさ的な展開になったが向こうが聞く意志を持っていないのだから仕方ないというのが昴の言い分だった。しかし、実際のところプロリーグでも半ば演出として使われることもあるのでこの世界では仕方がないと言えるのかもしれない。
「さて、グールズの情報を引き出したいとこだったけど……これじゃ無理そうだな」
仮に話せる状況であったとしても昴には情報が出てくるとも思えなかった。故に核心に近づく手段はただ一つ。目の前の敵を倒すのみ。
(あまり面倒事にならないようにしてきたが……どっちみち倒さなければ俺の身がどうなるかもわからない。きちんとかたはつけさせてもらう!)
そう思い攻撃宣言を下す。
「バトル! ガルドニクスでプレイヤーにダイレクトアタック!」
「ぁあ……うわぁぁぁ!」
レアハンター LP2000→-700
火炎放射によってライフが削りきられると金属が割れる音とともに闇に包まれたフィールドは消滅した。レアハンターはばたりとその場に倒れこんでしまう。
(やっぱり闇のゲームならこうなるか……)
倒れたレアハンターを見てこれが闇のゲームであったということを実感する。それと同時に体にどっと疲れが押し寄せてくるのが感覚的に分かった。
(ああ……まぁ所詮は一般人だからな……)
昴はそんなことを思いながら固いコンクリートの床に倒れ込み意識を失った。
○
「結論からいえば体に異常は無し。一応大事をとって今日は入院させるけど明日には退院できると思うわ」
「すいません大家さん……お手数をおかけして」
「私に言うのはともかくとして、あの女の子にも言った方がいいわよ。踏み込んだ時にはあの子どうしていいかわからずにオロオロしてたから。まぁ、昴君やあの子のお兄さんが彼らを倒してくれたおかげで全員拘束されたわけだけど……」
「意識が戻らない……ですか」
翌日の正午前。病室には大家さんが来て昴に倒れた後の状況を説明していた。やはりというか当然というか大家さんが倒した四人とも意識が戻っていない。死んだわけではないが闇のゲームの影響であることは間違いない。
「闇のゲーム……ね。あの頃もこんな感じで……」
「あの頃ってなんですか?」
「え? ああ……ちょっと昔を思い出していただけ。それより半日寝ていたからおなかがすいているでしょう?」
「……そう言えばそうでしたね」
夕方に倒れたので正確には半日以上だがおなかがすいているのは間違いなかった。
「動けないわけじゃないし食堂まで行ってきたら?」
「そうですね。ちょっと体動かしたいですし」
病室で食事をとるのが悪いわけではなかったが頭の整理をしたいこともあり食堂まで行くことにしたようだ。
「じゃあ私はこれで。あ、そこの封筒に入院費とかあるから使って」
「後で返しますね」
「いいわよ。厚意は素直に受け取っておきなさい。」
「大家さんがそういうなら……」
「じゃあね。無理はしないように。カバンに着替えも入っているから」
そう言って大家さんは病室から出ていく。元の世界の家族を思い出して昴が少し涙目になっていたことは彼のみが知ることである。
○
『報道を見てもしやと思ったがやはり君だったか。ずいぶんとしぶといものだな』
「若返ってまでしがみつこうとしていた人が何を言いますか」
『口が減らない若造だな』
「事実でしょう。それで、どういった御要件で?」
食堂で食事を終えて病室に戻ろうとした時に携帯が鳴っていることに気づいて電話をとる。互いに一刺しずつ嫌味ともとれる発言をぶつけた後影丸は即座に本題を切り出した。
『連絡を取ったところ奴らはグールズに引き取られたようだ。無論、アカデミアを狙ってくるだろう』
「……そうですか。わかりました」
セブンスターズの居場所をつかんでおく必要があったので昴は元締めに調べてもらうようにお願いしていた。たぶん情報はアムナエル辺りから得たのだろうと考えながらそそくさと携帯の電源を切る。
(さて、こうなると面倒なことになってくるな……)
元の世界線では理事長の私設部隊的な立場だったセブンスターズがグールズという組織と手を組むことになったと考えられる。見方によってはもとより悪化していると見ることもできるだろう。セブンスターズは個々に目的がありそれさえ果たせれば別にどうでもいいという集まりであったこともあって引き抜きやすかったのではないかと昴は考えるが、正直有効な対策が思いつかない。
(そもそもなんでアカデミアの生徒でもない早乙女兄妹を襲ったのかもわからないし……)
この世界でかつグールズなら目的はカードだろう。早乙女兄の方もあのカードは渡さないと言っていたことも考えれば妥当な線ではある。
(この世界でカードが狙われるとすれば目的は大きく分けて二つ。一つはそのカードが貴重でそれを密売して利益を得ること)
原作のグールズがこちらに近いタイプではあるが恐らくこれには該当しないだろうと考えた。セブンスターズを雇っているという時点でそういう方向に走るとは考えづらい。
(もうひとつはそのカードになんらかの特殊な力がある場合。どちらかと言えば可能性があるのはこっちだろうな……)
遊戯王では力のあるカードが出てくるのはよくある話だし、世界滅亡させるような力を手に入れれば警察なんて目じゃねぇと考えればとにかくそれさえ確保するまでに時間をかけなければいいという結論に至る。たいていは不完全な状態でアジトに踏み込まれて散っていくまでがテンプレなのだが。
(三幻魔に必要な物は七星門の鍵だけ。ということは別の目的をもった人物が付いているということか?)
一瞬考えすぎかと昴も思ったがその予想は的中することになった。
○
(おいおい……まさか的中するとは……これだとグールズにアレがいるってことになるが……)
早乙女兄妹の病室を訪れた昴の目の前にある二枚のカード。そのカードは昴の空論を裏付けるものであった。
光と闇の竜、そしてハネクリボー(十代のものとは別バージョン)。奇しくも本来なら平行世界でのキーカードが目の前にあった。
「何か心当たりがあるんですか?」
偶然聞いてしまったこともあって何のカードかを見せてもらうまでは良かったもののなんて言い訳をしようかと考えているとここまで自己紹介しかしていなかった早乙女勇人がそう声をかけた。
「心当たり……か……」
「顔に出てますよ。何か知っていますよね?」
小学生とは思えないぐらい落ち着いた態度にこれは隠しきるのは無理だろうと判断し、聞いた話と前置きしたうえでその部分だけ話してしまうことにした。
このカードが古代エジプトでモンスターを封印していたカードであるということ。そのモンスター(と思われる存在)が敵の組織……グールズにいると思われること。そして近々自分の通うアカデミアにそれが押し寄せてくる可能性が高いこと。
話の最中、レイは何かを言いたそうな顔をしていたが勇人が制していた。話が終わると勇人は昴に向きなおすと当時の状況について話した。
「七海さん、あいつらが狙っているのはこのカードで間違いないです。レイの解放の条件にもあったことなので」
(この二枚とはっきり言っている以上ほぼ間違いないんだろうな。ついでに幻魔も復活ってところかな。トラゴエディアの行動目的って暇つぶしの面もあったみたいだし)
敵の口からはっきりと宣言されていたことを考慮して目的の推測を進める。マンガ版のキャラがいない(ネットの検索に引っ掛からなかった)のでまさかとは思っていたが推論が徐々に事実へと変わりつつあるのを感じていた。
「それで相談なんですが……このままじゃまた襲われることも考えられるし、決着付けたいのでアカデミアにいきたいんです」
勇人の相談を聞いた昴であったがそれが果たして通るのかは微妙だと思った。本編でもレイが特例で通った経験はあるし一度正規の編入試験に通ってしまっているので通せる理由はある。それにこういったオカルトじみた話は社長ならずとも通じづらい。警察に言って通じるかも謎だしどっちみちデュエルで解決しなければならない以上、専門学校であるアカデミアで特訓してもらう方が被害が出ないで済むかもしれない。
……まぁ、アカデミアも警備はガバガバとしか言いようがない点は問題ではあるが……
(あ、別に俺が悩むことじゃなかったな。仮に問題になってもジジィに丸投げすればいいや)
昴は複雑に考えていたがよく考えたら自分に責任が及ぶ部分がないことに気づいて上の理事長に放り投げることにした。実際のところ合否は校長が決めていたので万一責任が及ぶとしたら間違いなく校長なのだが昴はそんなことは知らない。
「合理的な面があるのは事実だし掛けあってはみる。通るかは分からないけど」
その場で昴は理事長に電話をかけ二人の編入という名の保護について提案した。理事長にはすぐには結論は出せないと言われたものの筋だけは通しておき何かあればチクるとプレッシャーをかけるのは忘れなかった。
昴は二人に別れを告げ数日後にはアカデミアに戻った。いよいよ新学期、世界の危機も始まるのかもしれないと思うと緊張するのを感じていた。
○
「まぁ春休みはこんな感じだな」
「へー……勇人たちに会ったのか。で、結局編入はどうなったんだ?」
「さすがに編入っていう形はいろいろとしこりを残しかねないってことでインターンっていう形で決着したらしい。そうすれば元の学校にも戻りやすくなるしな。まぁ手続きとかの都合でこっちに来るのはもう少し先になりそうだけど」
新学期開始少し前。四月になると本土に戻っていた学生も続々とアカデミアへと戻ってきていた。一方の十代は相変わらずアカデミアにいたようで退屈であったらしい。
早乙女兄妹については表向きは早期のインターンシップという形での編入が決まった。しかし、急に決まったこともあって両親への説得などで少し時間がかかるとのことだった。
「それにしても明日から新学期だからかデュエルの調整が多いな」
「見てたら俺もデュエルしたくなってきた! 昴、付き合ってくれよ!」
「お前は俺の連敗記録をいくつまで延ばせば気が済むんだ。この前で30連敗だぞ!」
昴は相変わらず十代には全く勝てていなかった。他の原作キャラ達とも何度か対戦はしており、そこそこの戦績は残している(明日香に対しても勝利はしている)のに対して十代相手には一度もまだ勝てていない。
「やりたかったらあの二人辺りとやったらどうだ? やる気満々だろうし」
昴はデュエルリンクで今まさにデュエルをしている二人を見ながらそうつぶやく。
その二人とは神楽坂と枕田ジュンコ。いろいろな生徒がいる中でこの二人の勝率は群を抜いており今は直接対決をしている。双方とも十代とは関わりがあり、ジュンコに至っては八つ当たり気味にデュエルを仕掛けられたことがあるので十代とデュエルとなれば乗ってくると思っていた。
(しかし……この二人こんな強かったか?)
失礼な考え方ではあったが、神楽坂にしろジュンコにしろそこまでは強くなかったはずだが今の状況を見る限り一般生徒相手にはほぼ無双状態になっていた。そんな状況を昴は不思議に思っていた。
「ジュンコは相変わらずね……」
「明日香!」
「天上院か」
「あなたも相変わらずね。名前で呼んでいいって言ってるのに」
「しっくりこないもんで」
未だに昴は明日香のことは名字呼びしていた。別に嫌いだからではないが女性相手はあまり得意ではないせいか一歩下がってしまうらしい。
十代も交えて春休みの話など雑談をしていると枕田が神楽坂を破ったようで歓声が起きていたここまで負けなしというのも大きいのだろう。
「失礼だが枕田ってあんなに強かったか? 正直期末でもあそこまで強くなかったような気が……」
「そうね……私も急に強くなったのには気になっていたけどフェリーの転覆で手に入れたカードを使いこなせるようになったからって言っていたわ」
(まぁ急に化ける人間もいるものだし不思議ではない。そもそも原作にないと思われるイベントが起こっている以上こういうこともありうるか)
自分がいることによって起きている影響について考えていると不意に校内放送のスイッチが入る音が聞こえた。こちらはどうやら変わっていないもののようだ。
「以下の生徒は校長室へ来るノーネ」
呼ばれた生徒は原作通り十代、明日香、三沢、万丈目、カイザーの五人。行ってくると十代と明日香が離れていくのを見送った昴だったが、ここから戦いが始まるということを考えると呼ばれていなくとも身が引き締まる思いだった。
補足 魔法カード 禁止薬物について
漫画版GXではヨハンがフィニッシュのために使ったカードのため詳しい記述がありませんでしたが無条件ノーコストの二回攻撃はいくらなんでもバランスが悪いと考えたのと名前から破壊効果を加えました(除外のほうがよかったのですがそれだとダメなので)
時勢にのっかったというのは否定はしません。