ゼロの悪夢   作:BroBro

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やりたかった事をやって見たら、全く話が進みませんでした。すみません。
今回は途中でBGM推奨みたいな、明らかに曲名が書いてある部分があります。別にかけなくてもいいです、はい。

最近後書きが本編みたいな感じになってきた気がする……


草笛に誘う

 

土くれのフーケ討伐の事実は、オールドオスマンの手によって学園中に広がることとなった。その内容を聞いた者は大方驚愕し、或いは疑った。

 

なんせ、自分たちが気づかない内に噂の盗賊が捕まったと言うのだ。しかも捕まえたのは今まで散々馬鹿にしてきた"ゼロのルイズ"である。勿論ダークライ達の力も大きいが、何よりもルイズがトドメを刺したと言う事に驚いている生徒が多い。

 

ダークライとルイズ達の妨害もフーケは想定していたらしく、ダークライ達からの攻撃を出来るだけ受け流し、早く倉庫を破壊し、ゴーレムを崩して土煙を作り、さっさと逃げる予定だった様だ。それだけの強度を誇っていたゴーレムを倒したと言う事実も、噂を大きくさせた。

 

土くれのフーケの正体がミス・ロングビルと言う事もある。それらの情報が混ざり合い、噂は大々的に広がり、次第に尾が付き始めた。

 

ルイズの使い魔が呪いを使った

 

ルイズがいいとこ取りをした

 

本当は使い魔がトドメを刺した

 

etc..

 

噂の上に、数々の根も葉もない噂が被さり、更に生徒間で混乱を呼ぶことになり、結局正体不明と言う結果にルイズへの不信感が高まった。

 

事件に関わったタバサやキュルケに数々の質問が飛んだり、生徒にあとを付け回されたりして、二人にはいい迷惑である。

 

しかし二人に接触する生徒がいても、噂の中心であるルイズには声がかからなかった。

 

理由としては

 

 

「ルイズ、ちゃんと寝てる?」

 

「……え?」

 

 

ルイズは、目の下にクマを作り、ドスの効いた目で睨んでくるからである。

 

ルイズは睨んでいるつもりは無い。キュルケからの問に答えた一言だけ反応したルイズの顔は、とても普通とは言えないほど生き生きとしてないが、苛立ってる訳でもない。だからって病気とかでも無く、ただただ眠いだけなのだ。

 

 

「凄いわよ、そのクマ」

 

「分かってるわよ」

 

 

そう言って面倒くさそうに自分の席でお茶を啜る少女。いつもの様な五月蝿い位に元気なルイズの姿はそこにはなく、抜け殻の様にお茶を飲み続ける少女がいた。

 

普段はルイズを小馬鹿にしているキュルケも、流石にこの姿には心配してしまう。キュルケにはルイズがこんなことになっている元凶も知っている。だからルイズに今日何度目かの忠告をする。

 

 

「アンタの使い魔が原因何でしょ?また前みたいに倉庫にいてもらったら?このままだったら死んじゃうわよ」

 

「大丈夫よ私は。私はね、ダークライを拒絶しないって決めたの。ダークライの全てを受け入れるって決めたのよ。別に寝不足位なんて事無いわ」

 

 

毎回この様な言葉で返される。

 

どうやら昨日の夜はダークライと共に強制的に寝たらしく、ダークライの隣で寝ることになった。当然悪夢を見て全く寝れず、少し寝ては飛び起きてを繰り返し、結局朝になってしまったらしい。

 

寝れないと言うストレスと、頭の中で反復する様々な悪夢の内容で1日中元気が出ず、今のこの状態に至る。

 

ボーッとただ何も書いてない黒板を見て、お茶を飲み続けるその様は、まるで家畜の様にも見えて、キュルケは何故か少し涙が出た。

 

 

「……私は止めとけと言ったのだ」

 

 

突然、ルイズの影からダークライが現れる。周囲の生徒がドン引きする中、キュルケだけは冷静にダークライを見た。

 

 

「まあルイズの自業自得よ。あなたは気にする必要は無いわ」

 

「こうなる事は分かっていたのだが……」

 

「多分、この娘も分かっていた筈よ。それでも敢えて同じ部屋に入れたの。あなたの全てを理解したいとか言ってね」

 

「私にはルイズが分からない……」

 

 

はぁ、とダークライは頭を押さえた。こんな姿を見せるんだと少し驚いたが、それと同時に主の事を思っているのだなと感心した。

 

しかし寝不足と言う物は侮れないもので、人の思考を鈍くさせる。酷い場合には数秒前の言動を忘れてたり、自分の言動の意味に気付かなかったり、夢と現実の区別がつかなくなったりしてしまう。

 

 

「そう言えば昨日のキュルケのフーケはとんでもなかったわね。タバサ型ポケモンとか出てきたし、かえんほうしゃで丸焼きだったわよ。ハイドロポンプだっけ?あれも十分に美味だったわ」

 

「また始まったわよ……」

 

「本当に悪いと思ってる」

 

 

今日3度目の主の狂気的発言に、遂にダークライは両手で顔を覆ってしまった。度々ルイズは幾度も見た夢の中の出来事と現実が混ざり合い、訳の分からない状態になっている。例えば夢の中で友達が乗馬した夢を見て、翌朝友達に「馬の乗り心地はどうだった?」と聴くような感じだ。

 

つまり、何の脈絡も無く中身の無い言葉のせいで周りから変な目で見られる。

 

しかも脳が疲れているせいで頭の中だけでは物事が整理できなくなり、独り言が多くなる。おかげで余計に生徒から変な目で見られ、"ゼロのルイズ"から"狂気のルイズ"へとあだ名が変わりそうになっていた。

 

 

「見るに耐えないからゆっくり眠らせであげて」

 

「了解した」

 

 

普段ならルイズの命令しか聞かないダークライだが、今回は流石にキュルケの言葉を呑んだ。黒紫色の球がルイズの顔面に着弾し、一瞬で意識を手放す。

 

仰向けで倒れそうになるルイズをダークライが受け止め、お姫様抱っこで抱き上げた。

 

 

「部屋まで運んで来る」

 

 

そう一言だけ言い残し、ダークライはそそくさとその場を後にした。

 

 

「奴の羽がここまで欲しくなった事は無いな」

 

 

ダークライがそう独りで呟いたのは、ルイズをベッドに運んだ直後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は大事な日である。

 

再度言おう、今日は大事な日である。

 

それは学院の為でも、ダークライの為でもなく、ルイズにとっての大事な日だとダークライは思っている。

 

何を隠そう今日は舞踏会の日。その主役はルイズとキュルケ、タバサの3人である。フリッグの舞踏会と言われるそれにルイズが主役として登場する理由は、察しの通りフーケを捕らえた者達であると言うだけだ。

 

勿論、世間体ではフーケを捕らえたのは少女三人であるが、そこにダークライも深く関わっている。寧ろ、ダークライが居なければあの場で迅速に捕らえる事は出来なかっただろう。三人もそう講義したが、残念ながらダークライの名が公に晒されることは無く、三人は少しの罪悪感があった。

 

だが主が戦っていたと言う理由だけでフーケの討伐を手伝ったダークライは、別に主役になりたい訳でもなく、三人の気持ちを他所に「何もいらない」と言い切った。その場に静寂が訪れた事は言うまでもないだろう。

 

結局ダークライには何もなくその場は収まったが、ルイズ達が舞踏会の主役だと言うことに変わりはない。

 

問題は、その主役の一人であるルイズがあの有様だと言うこと。

 

出来ることなら主の印象を少しでも上げたいと思っているダークライには、出来るだけ状態を回復して欲しかった。だから出来るだけ寝ていて欲しかった。

 

 

「あのまま公の場に出てしまえば、恐らくルイズは死ぬ」

 

 

世間体的に死ぬのだ。それだけは避けたい。

 

だからダークライはルイズを見守るのを止め、ナイトメアの効果を受けない場所へと足を運んだ。

 

 

「ここなら大丈夫か」

 

 

そこはルイズが初めてダークライを召喚した草原であった。ルイズの部屋から結構離れていると言う理由もあるが、ダークライにはやりたい事があった。

 

近くにある木に近づき、一つ木の葉を取り、人間の口にあたる部分に葉を当てる。ダークライには口がないが呼吸はする。息を吸い、吐く場所は人間と同じ場所であった。

 

小さく息を吸い、少し力を入れて葉に向かって吐いた。

 

しかし期待していた反応は起こらず、その葉を捨てて次の木へと向かう。

 

それを繰り返すこと6回目、少し変わった形の葉を見つけ、もぎ取り、息を吐いてみた。

 

すると笛のような美しい音がなった。これこそダークライの求めていたもので、握り拳を作り、グッと小さくガッツポーズをした。

 

この世界にも草笛になる物はあるらしく、音もダークライのいた世界とさほど変わりなかった。葉も虫食いがなく、コンディションもいい。申し分無い草笛だった。

 

 

(どうだったか……)

 

 

久方ぶりの草笛。少しやり方を忘れたが、体の感覚だけで3本の指を器用に動かし、再度草笛を吹いた。

 

 

 

 

オラシオン。大いなる怒りを鎮める為の曲。

 

 

 

その美しい音色が、涼しい風の吹く草原に優しく響いた。

 

草笛ながら、聴く者を魅了する様な曲調、ダークライの吹き加減による丁度いい音量による音色は、風に乗り、学園にまで響き渡る。

 

木陰で目を瞑り、まるで昔を思い出す様に草笛を吹くダークライ。その周りにはいつの間にかリスや鳥が集い、ダークライを恐れる素振りもなくその曲に聞き入っていた。

 

共鳴する様に鳥が囀り、ダークライの肩に乗る。野生の動物さえも引き付けてしまうその曲は、本物だった。

 

 

「なに、この曲?」

 

 

それは人間も同じ事。その音が耳を通り抜けた瞬間、キュルケは足を止めた。

 

 

「きれい……」

 

 

隣で共に歩いていたタバサが小さく呟く。

 

ルイズの噂で頭に熱が回っていた他の生徒もその音色を聞き入れ、熱くなっていた議論を止めた。

 

学園が一瞬で人の声がしなくなる。まるで学園自体が、オラシオンに魅了されたかの様だった。

 

全ての生徒から熱が消える。ただ、その音色を聴くために耳を傾け、誰も声を上げなかった。

 

正に、大いなる怒りを鎮める為の曲。ただ昔を懐かしむ為の行為が、結果的にルイズへの不信感を薄くさせた。

 

ダークライの気が済むまでの3分と少し。その間だけ、学園の時間が止まった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何かスッキリしたわ」

 

 

寝起き一番にルイズから飛び出した言葉はこれである。とても何時間も悪夢に魘されていた者の感想ではない。

 

それは良かったとダークライが反応する。どうやらいい夢を見たらしく、とても嬉しそうにダークライに夢の内容を話した。

 

 

「とても綺麗な場所に居たの。美しい木々、白い石柱に囲まれた綺麗な池、そこに鳴り響く綺麗な音色。草笛にしてはとても透き通った音だったわ。その音色を奏でているのは小さい金髪の女の子でね。近くに白い髭の生えた老人もいたわ。私のことを見て可愛く微笑んで、「難しい子だけど、これからもよろしくね」って言うのよ。それを聞いた瞬間ね、何だかとても落ち着いて来ちゃって。私こそよろしくって言おうと思ったんだけど、そこで終わっちゃって……何で私もよろしくって言おうと思ったのか分からないんだけど、言わなきゃいけない感じがしたのよね」

 

 

驚いた。

 

楽しそうに笑いながら喋るルイズの夢の物語の内容は、ダークライの記憶にある場所と酷似していたからだ。そしてその草笛を吹いていた少女と言うのも、髭の生えた老人というのも、ダークライの記憶に深く刻まれている人間だ。

 

アリシアとゴーディ。ダークライを受け入れてくれた最初の少女。

 

ルイズとは会ってもいない筈だ。それなのにアリシアが出てきた。普通なら有り得ない事だ。

 

ナイトメアの効果が届いていたとも考えたが、ナイトメアの効果だったらこんな爽やかに笑いはしないだろう。

 

 

(見ていてくれたのか……?)

 

 

200年も昔に亡くなった少女が出てくるなんて有り得ない。だが、死してなおもダークライを見守ってくれていたと、そう思ってしまった。

 

 

(ならせめて私に一言言ってルイズの元に行って欲しかった)

 

 

いかなる事にも柔軟に対応するダークライは、そう心で何処かにいるアリシアに呟いた。きっとアリシアは可笑しそうに笑っているのだろう。

 

昔の馴染みが見ていてくれていると思うと、安心感に包まれた。

 

そして満足そうに語り終えたルイズに言った。

 

 

「……今度その少女の夢を見たら、少女に感謝の言葉でも送ってくれ」

 

「……いいけど、夢の中の子供よ?」

 

「いいんだ。言ってくれるだけで、私は満足する」

 

「そう、ならヴァリエールの名にかけて、約束するわ」

 

 

そう言って誇らしげにルイズは笑った。

 

 




後書きポケモン図鑑(マイナーポケモン編)

『オニドリル』くちばしポケモン
タイプ:ノーマル/飛行
高さ:1.2m
重さ:38.0kg
とくせい:するどいめ/スナイパー

『図鑑説明』
大きな翼で大空を飛び続ける事ができる。1日降りなくても大丈夫……との図鑑説明だが、HPが低いと言う矛盾を孕むポケモン。
攻撃力と素早さは割とあるものの、ムクホークやドードリオの方が 断 然 使いやすい。HPの低さが足を引っ張り、急所に当たりにでもしたら何もせずに一瞬で終わる。だからと言って火力でゴリ押しするポケモンてもない。オニドリルは高火力技のラインナップが少なく、結局火力が足りないという謎の自体が発生している。しかもブレイブバードも覚えられないため、火力を上げようと思っても上げられない。パワプロポケットにて、公式に『ドリルくちばしの為の遺伝用のポケモン』と言われてしまった。もはやオニドリル自体には利用価値が無いような言われようである。

オニドリル<ドリルくちばし

みたいな感じなのだろうか。しかしその見た目の汎用性からアニメにもよく登場している。当たり障りのない見た目の鳥ポケモンとして使い道が多く、野生のポケモンが出る時はオニスズメが出るかオニドリルが出てきていた。親子共に脇役会の重鎮であるため、敬意は払わなくてはならない。

と思う。

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