ゼロの悪夢   作:BroBro

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初めての一万文字の調子はどうだ大佐ぁ?

最近実家に帰って屋根裏部屋を漁ったらダークライのフィギュアが出てきました。ええ、勿論持って帰りました。はい、私情です。
今回から新章と言う訳ですが、ここら辺から原作と少し流れが変わってきます。
では、続きです


〜2章〜 土と悪夢と世界の爪痕
街へ行ってみたい


 

ダークライがルイズの使い魔となってから約一週間が経過した。その間、ダークライは様々な事を経験して解決方法を模索し、ルイズは爆発の魔法をより明確な物にしようと実験したり、ダークライに仕事を教えていた。

 

2人の間で変わったことといえば、ダークライがルイズを呼ぶ時名前で呼ぶようになった事と、2人の間で隠し事が禁止になった事だ。

 

 

日課とされている仕事を二日目から完璧に覚えたダークライは、毎日マイペースに過ごしている。

 

主にダークライが毎日行っていることと言えば、朝ルイズの着替えを手伝って服を洗い、本を読んでルイズと共に授業に参加する。主と共に使い魔は授業を受けなければならないと言う理由もあるが、ルイズが誤って物を爆発させた時に瞬時に対応する為でもある。

 

昼食になったら本を読み、たまにシエスタと話したり洗濯物を畳んだりする。午後の授業を退屈しながら過ごし、夕食時には少し体を動かして、ルイズの世話をして倉庫(ダークライの家)に戻る。本からの知識の過剰摂取のおかげで、ダークライの言葉は結構流暢になっていた。

 

そしてダークライはこの一週間の間で、この世界について少し分かった事がある。それはこの世界にはダークライの世界にいた者も何体か来ていると言う事。そしてこの世界には新月が無いと言う事である。これが一番厄介だ。

 

ダークライは新月に闇を吸収する事で一ヶ月間の活動エネルギーを貯める。幸いにも召喚された日の前日が新月でまだ食事に余裕があるが、何とかしなければ長くは持たない。毎日コツコツと少ないながらも闇を吸収すると言う手もあるのだが、それではダークライのエネルギー消費速度に追いつかない。それだけ新月の夜はダークライにとって重要な日なのである。

 

この話をルイズにしたところ、「な、え!?じゃあどうするのよ!空腹で死ぬなんて許さないわよ!!」と涙目で言われてしまったので、ダークライにとっては空腹問題の解決が最優先となっている。

 

夜はダークライにとっては活動時間であり、何かを考える時に最も頭が冴える時間でもある。睡眠時間は僅か2、3時間。それでも充分な力を発揮するのは、ひとえに新月の力の貯蔵が有ればこそだ。しかし、この世界には新月が無いので、どうにかして代わりのエネルギー源を見つけ出さなくてはならない。

 

ルイズの世話をしてルイズを守り、様々な事を学びながらダークライはこれからの事を考えなければならない。普通の人間ならば過労死するレベルだろう。労働と言っても過言ではない。ダークライだからこそ出来る事である。

 

 

さて、そんなダークライは今とある欲求にかられている。それはこの世界の物質、この世界の植物や食物をよく知りたいと言う欲求だ。

 

植物で薬等を調合すればもしかしたら今の問題を解決出来る物が出来るかも知れないし、その様な薬が売ってるかも知れない。

 

と言う訳で

 

 

「街に行ってみたい」

 

「何よ急に・・・?」

 

 

ベッドの上で暇を持て余しているルイズにダークライが言った。突然の事で少し疑心暗鬼になるルイズ。それを気にせず、ダークライは要件だけを言う。

 

 

「私の食料問題を解決出来る糸口が見つかる可能性もある。使い魔だけが、それも私が単独で行く訳にも行かないだろう」

 

 

ご最もである。見た目がおどろおどろしいダークライが街中に単独で現れたら、一体どんな混乱が起きるか分かったもんじゃない。余りに危険過ぎる。主に街の人々が。

 

そんな危険性を一番よく分かっているルイズは二つ返事で了承した。使い魔とのスキンシップを大事にしたいと思っているルイズにとっては楽しいイベントである。断る理由は元から無い。

 

そんなこんなで、ルイズはダークライと共に少し離れた街へ行く準備を意気揚々と始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダークライは既に学校の者から怖がられている。それは、無謀にもダークライの真実(という名のよく分からない何か)を探そうとして、ダークライの家に入り込んだ者が始まりだった。

 

マリコルヌと言う生徒はダークライを陥れようとダークライの秘密を探し、夜中に彼の家へと突入。しかし入ってみたらダークライに不審者と勘違いされてダークホールを放たれ、悪夢を見せられた。ルイズがそれを知った時には既にダークライがマリコルヌを倒した噂が広まっており、ダークライへの不信感は全校生徒へと広がって行った。

 

因みに、今現在マリコルヌは精神不安定で保健室に寝たきりである。毎日苦しい表情で魘されているので、誰もダークライに近づこうとはしなくなった。そんな彼に付いたあだ名は【暗黒の悪夢】である。ネーミングセンスはこの学園に存在しない。

 

そんなダークライが廊下を歩けば人集りは一瞬で消え、廊下から人がいなくなる。おかげで、ルイズはダークライと共にいる時間が長くなった。マリコルヌには悪いが、この環境はルイズにとって都合が良かった。

 

 

「さて、それじゃあ行くわよ」

 

 

そう言いながらルイズは馬に股がった。ダークライは飛行、もしくは影で移動する事にした。馬に乗るより楽という事もあるが、馬がダークライを全力で拒否するから乗ろうにも乗れない。

 

これから問題の使い魔と主が出かけようと言うのに、周りの生徒は誰も出てこない。これも、ダークライへの恐怖のお陰である。余計な詮索をされなくて済む。

 

こうしてなんの苦もなく旅支度を整えたルイズとダークライは街へと向かった。

 

 

 

 

その姿を、自分の部屋から覗いている者が二人いた。

 

 

「タバサ、あの2人出掛ける見たいよ?」

 

「・・・そう」

 

「気にならないの?」

 

「別に何処に行こうと2人の勝手」

 

「まあそうなんだけど・・・」

 

 

真っ赤な燃えるような髪の少女、キュルケと青色の髪の少女、タバサである。2人はルイズをよく知っており、ダークライの事も根はいい子だと分かっている。だからこそ、2人はルイズ達の行動を監視する事が出来る。

 

 

「・・・でも、確かに、あの使い魔について知りたい事はある」

 

「そうでしょう?私も私の使い魔が怯える理由を知りたいの。今までなかなかチャンスが無かったから、これは絶好の機会よ!」

 

「でも今日は虚無の曜日。休日を返上してまで追いかける需要は無いと思う」

 

「楽しそうじゃない!」

 

「・・・ええ、まぁ、うん・・・」

 

「じゃあ決まりね!」

 

 

楽しそうに自分の部屋から出ていくキュルケ、それを面倒くさそうに追うタバサ。2人は学園から出て、草原真ん中に立つ。そしてタバサが合図をすると、上空から一匹のドラゴンが舞い降りた。

 

タバサの使い魔、シルフィードである。白色にも似た色の体色のそのドラゴンは「きゅいきゅい!」と奇妙な鳴き声を発し、タバサとキュルケを軽々と自分の背に乗せた。

 

数回の羽ばたきは辺りに風を起こし、草原の草を揺らす。そしてシルフィードはふわりと浮き上がり、ダークライの後を上空から追うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

その光景を物陰から見ていたギーシュはため息を吐きた。

 

 

「あの使い魔について知りたい気持ちは分かるけど、あんなの見せられたら近づこうにも近づけないよね・・・」

 

 

ダークライとの決闘のあと、身体の回復後直ぐにダークライとルイズに謝りに行った。ルイズは同じ過ちを繰り返すなと釘を刺し、ダークライは何も言わなかった。

 

しかし、彼はダークライに見せられた悪夢の中で、ダークライの存在を確かに確認した。

 

異空間と呼ぶに相応しい空の色、鉛色の空には光が散り散りと発光し、その元には空中に浮かぶ大きな街がある。その中で、2体の大型の魔物と1体の黒い魔物が対峙していた。

 

1体はギーシュと決闘したダークライ。それは分かった。だが、ほかの青色と桃色の魔物は見た事が無い。その2体に攻撃し、攻撃を躱しながらダークライが空中で起動戦を繰り返している。

 

街の中で、誰かが言った。"2体の神、ディアルガとパルキア"と。間違いなく、その2体はあのダークライと戦っている魔物だろうと、ギーシュにも分かった。

 

何度倒れても、何度ダメージを受けようとも立ち上がり、戦うダークライの姿にギーシュは恐怖を覚えた。だがそれと同時に、ギーシュの心が震えた。

 

倒れても、倒れても立ち上がり、何度でも圧倒的と思われる神々に戦いを挑む。そんなダークライは、正にギーシュが目指す騎士を彷彿とさせた。

 

それが、ギーシュの見た悪夢。最終的にダークライの戦闘を見入っていたギーシュは、瓦礫に潰されて目が覚めた。

 

 

改めて、あんな化け物と戦闘を挑んだ自分が愚かだったと思う。思い出す度に昔の自分を殴ってやりたい衝動に駆られる。

 

 

そんな経験をした彼は、あれが夢だとは信じられなかった。まるで現実の様な感覚、五感が研ぎ澄まされ、家が消える音や土の感触も覚えている。

 

恐らく、あれは現実だったんだろう。どう言う意図かは知らないが、ダークライはギーシュにダークライの生き様を見せたのだ。

 

 

(僕が軍人の家系で育った事を見抜いていたのだろうか?)

 

 

ダークライの戦いは正に、軍人としてあるべき姿であった。弱き者のために身を粉にして戦う姿は、ギーシュに大きな影響を与えた。

 

 

「彼と接触したら、僕も彼の様になれるだろうか?」

 

 

そう思いながらも、彼はあと一歩が踏み込めずにいた。

 

 

因みに、ダークライはギーシュに意図してあの戦いを見せた訳ではなく、面倒臭かったから適当に選んだ場面である。それを彼が知るのは、少し先になる。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃ルイズ達は既に学園の敷地内から抜け、街の一部が見える所まで来ていた。少し意地悪で、ルイズが馬を全速力で走らせたのだが、思いの他呆気なく影に入ったダークライが着いてくるので、ルイズは意地で馬を加速させ、ダークライはただただそれに着いていく、と言うのをループしていたら数十分で街の前まで着いてしまった。ルイズは馬が息切れしている所を初めて見て、少し驚いた。何よりも馬が可哀想である。

 

 

「あれが・・・」

 

 

そんなルイズと馬の気持ちを知ってか知らずか、影から出てきたダークライが馬上のルイズに聞く。ずっと影の中から着いてきていた為、久しぶりに声が聞けて少し嬉しくなったルイズは、嬉嬉としてダークライの質問に答えた。

 

 

「そう、あれがこれから行く街よ。大きな街だから、何か発見があるかも知れないわ。今日は多めにお金を持ってきたから、大抵のものなら買ってあげられるわよ!」

 

 

ふんッと胸を張る。それに対して、ダークライは抑揚の無い声で応えた。

 

 

「楽しみだ」

 

「あんた、本当に楽しみと思ってる?」

 

「思っている」

 

「ああ、そう・・・」

 

 

コイツの本心はいつまでたっても分からないなと、改めて思ったルイズだった。

 

数分後、ダークライとルイズは街に到着した。出来るだけ混乱を招きたく無い為、ダークライは影の中に入ってルイズの後を行く。隣にいる訳ではなく、常にルイズの後ろにいた。それには訳がある。

 

 

「ルイズ」

 

「ん、どうしたの?」

 

 

裏路地に差し掛かった時、影から頭部だけ出したダークライがルイズに話しかけた。

 

 

「先程から我々を追ってきている者がいる」

 

「私達を?何時から?」

 

「学園からだ。上空から我々を監視している」

 

「学園から?」

 

 

ダークライが示した方向を見るが、それらしき者はいない。一部建築物に隠れて見えないが、上空にはとても綺麗な青空が広がっていた。

 

 

「何もいないわよ?」

 

「数百メイル先だ。目視は出来ないだろう」

 

「なんであんたは分かるのよ?」

 

「視線を感じた。加え、小さかったが私に感しての話し声が先程から聞こえている。少女と思わしき2つの声。聴いたことのある声だ」

 

 

ダークライは優れた聴覚を持っているとルイズは再確認した。視線はどう感じたのだろうと思ったが、神2体を追い払った者は恐らく第六感と言う物が冴えているのだろうと勝手に解釈した。

 

パルキアを誰よりも先に見つけた時と同じ要領で、ダークライは後方から近づくタバサ達の存在を知ったのだ。轟音に紛れて僅かに聞こえたパルキアの鳴き声を聞き分け、何時もとは違う街の気配をダークライは捉え、パルキアを見つけ出した。

 

空間を操る者を見つけ出したのだ。そんな神業とも取れる芸当を感覚のみでやってのけたダークライならば、遠くの者を見つけ出すことくらい簡単だ。

 

さて、この時ルイズは聞いたことのある声と言う単語に疑問を持った。確かに学園で生活していれば数多くの生徒の声を聴くだろう。だが、ダークライにって周りの人間の声なんてなんの意味もなく、易易と受け流せるものだ。それなのにダークライが覚えているほど印象に残る声2人とは、ルイズと関係のある女性の声に間違いない。

 

 

(・・・キュルケとタバサ?)

 

 

あの時、ダークライが決闘していた時に話していた2人のならば、ダークライは記憶に残っているだろう。この1週間の内でも2人とはよく接触していたし、ダークライが何かしらの理由で覚えていても不思議ではない。

 

ダークライは害は無いとみなしている。ダークライがいうのだからそうなのだろうとルイズは思い、買い物を再開した。

 

 

 

 

 

「・・・バレた」

 

 

街の上空でポツリとタバサが言う。

 

その声の意味が分からず、キュルケはもう一度言ってとタバサに催促した。

 

 

「彼に見つかった」

 

「嘘でしょ?何百メイルあると思ってるのよ?」

 

「間違いない。先程から馬の後ろについて主を私達から守っている様に見える」

 

「この距離でバレるってどれだけ化け物なのよ・・・」

 

「今分かった事じゃない」

 

 

一抹の恐怖感を覚えたキュルケ、そして更にダークライについて知りたくなったタバサであった。

 

 

 

 

 

地上に戻ってルイズ達。色々な薬品の店を回り、ビエモンの秘薬屋と言う店にも行ったのだが、ダークライの求める様な闇をどうこうできる薬は無かった。勿論、そんなものがある訳ない。それこそ裏路地の闇商店でも行かなければ無いだろう。分かってはいる。

 

だがそんな所に行く勇気はルイズにはない。確かにダークライと共に行けば怖いところは無いが、闇商店に貴族が出入りしたなんて噂が広まった日にはヴァリエール家末代までの恥となる。

 

どうしたものかと悩んでいると、ダークライが急に止まり、影から出てきた。

 

 

「武器屋か・・・」

 

「武器屋?」

 

 

ビエモンの秘薬屋の近所に、剣の形をした店があった。武器も使わないダークライがなんでそんな所に行きたいのかと聞いてみると、意外な答えが帰ってきた。

 

 

「この世界で杖以外の武器は余り見たことが無い。興味がある」

 

 

ポケモンの世界には近接武器と言う物が極端に少ない。小銃やガンシップはたまに見るが、ダークライはこの様の旧世代の武器には多少なりとも興味があった。ただ知らない事は出来るだけ少なくしたいと言う思いでルイズに提案しただけなのだが、ルイズはどう言う訳か深読みした。

 

 

「・・・ダークライ、アナタもしかして早く死にたいとか思ってる?」

 

「何故だ?」

 

「だって武器なんて買ったらその武器に魔法が使わちゃうかも知れないじゃない!そんな事したら寿命が減るわよ!」

 

「私は使うなんて言っていない。ただ興味があると言ったんだ。それにそんな物で寿命を減らす様な馬鹿ではない」

 

「・・・本当?」

 

「本当だ。あの時の誓いに偽りは無い」

 

 

因みにあの時とはルイズとダークライの秘密を共有した時の事である。(前話参照)

 

ダークライは誓いは守る。やると決めた事は最後まで突き通す男と言う事はルイズもよく知っている。だから、そんなダークライの言葉を信じてルイズはダークライを連れて武器屋へと入った。

 

 

武器屋の中は昼間とは思えないほど暗く、ダークライの住む倉庫の中並みに明かりがない。あるは小さく照らすランプの灯のみ。店の奥にいる50後半のオヤジがパイプを蒸しながら、入ってきたルイズを訝し目に見る。そして後ろから続いてくる邪悪な者を見てギョッとした。

 

 

「だ、旦那、貴族の旦那。うちは真っ当な商売しまさぁ。お上み目をつけられる様な事なんかこれっぽっちもありませんや!」

 

 

怯えた様子で言う店の主人に、客だから安心しなさいとルイズがなだめる。それでも興奮は収まらず、主人はダークライを見ながら言った。

 

 

「ですが、貴族が剣を使う何て聞いたことがありやせんで、少々戸惑いが・・・」

 

「使うのは私じゃないわ。ここにいる真っ黒な奴は私の使い魔なんだけど、コイツが武器を見たいって言うもんだからこの店に来たのよ。気に入った物があったら買うつもりだから、何かオススメはないかしら?」

 

 

これはいいカモが来たと、主人は目の色を変えた。それならばと店の奥に消えていく主人を見送って、ルイズは深くため息を吐く。

 

 

「・・・なんて言っちゃったけど、ダークライ、本当に買うの?」

 

「ああ、研究材料と思ってくれればいい」

 

「使わないのよね?」

 

「・・・使うかも知れないが、魔法を使う事はない」

 

「約束よ?」

 

「分かっている」

 

 

2人が会話をしていると、店の置くから主人が多数の剣を持って帰ってきた。そして「店一番の業物!」だとか「貴族の間では剣を持たすのが流行っている」だとか言って多くの剣を見せる。だがダークライにとってはただの着飾った物でしかなく、やろうと思えばポケモンの世界でも作れそうな物ばかりだった。

 

そんな時、ダークライはゴミのように積み上げられた剣の中から声がしたのを確かに聞いた。

 

 

「ヤベェ、やべぇよ・・・」

 

 

そんな低い男の声だった。なんだと思い、ダークライは主人の言葉を遮って剣の山を漁る。サイコキネシスで剣の山の中からピンポイントでその声の正体を持ち上げた。

 

その声の正体は、寂れた剣だった。

 

 

「うおおぉぉッ!?」

 

 

急に体が宙に浮いたことで戸惑いを隠しきれないその剣は、大声で叫びながらダークライのサイコキネシスに体をクルクルと動かされる。

 

 

「コイツが喋っているのか?」

 

 

そんな剣よりも低い声音でダークライは主人に聞いた。今まで口を開かなかったダークライが急に声を発した事で一瞬戸惑ったが、主人はその剣について説明した。

 

 

「ソイツは意思を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ。どんな物好きがやったか知らねぇが、こんなお喋りな剣を作っていきやがって、こちとら迷惑してんですよ。おかげで客も逃げちまう」

 

「インテリジェンスソード・・・」

 

 

聞いたことの無い剣の名に、ダークライは興味を持った。そして宙に浮いているインテリジェンスソードを見ると、剣がダークライに語りかけてきた。

 

 

「お、お前さん悪魔だろ?いや答えはいらねぇ!そうに決まってらぁ!」

 

「ほう、私の事を少なからず分かるのか?」

 

「あたりめぇだろ!こんな邪悪な力に浮かされてりゃあ嫌でも分かる!それにあんた、使い手だろ?」

 

「使い手?なんの事だ?」

 

「なんなのかは俺も分からん。でもこの力から何か懐かしい物を感じてんだよ」

 

「懐かしい?」

 

「何分400年も生きてるもんで忘れちまった。だが、いつかは思い出すかもしれねぇよ」

 

「・・・ふむ、余計に面白い」

 

「お前さん、俺を買うのかい?」

 

「ああ、そのつもりだ」

 

「へぇ・・・悪魔の使い手に使われるのも悪かねぇか。久しぶりに面白くなりそうだ。宜しくな、相棒!」

 

「相棒か・・・使うかは分からんが、これから頼む」

 

「おう、このデルフリンガー、悪魔の剣になってやるぜ!」

 

 

そんな会話を終えたダークライはルイズに剣を渡した。

 

 

「こんなのでいいの?もっと綺麗なのにすればいいのに」

 

「喋る劔は私の世界には無かった。興味がある」

 

 

基本、興味がある物は何でも欲しいダークライである。ダークライが言うのならと目を瞑り、ルイズはそそくさと会計を済ませた。

 

喋り過ぎで迷惑していたのだろう、とても安かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何事も無く学生寮に戻った2人は毎日の日課を済ませた。そしてルイズはキュルケとタバサに話を聴きに出かけ、ダークライは倉庫で喋る剣、デルフリンガーとちょっとした会話をする事にした。

 

デルフリンガーを買った理由、喋って面白く珍しい剣だったからと言う事もあるが、一番の理由はダークライのルーンについて知っている口振りだったからだ。この剣に、寿命の延命や食料問題解決の糸口が見つかる可能性もある。400年生きていると言っていたのだ、少しはいい情報が有るだろう。

 

 

「さてデルフリンガー。お前に二、三質問がある」

 

「お、なんだ相棒?」

 

「コイツの魔力を増幅させられないか?」

 

 

そう言って、ダークライはデルフリンガーに手のルーンを見せた。

 

 

「魔力の増幅は無理だな」

 

 

即答だった。

 

 

「そんな使い方は考慮されてねぇのよ、使い魔のルーンってのは。まず、ルーンの残りカスで寿命を伸ばすなんてのも前代未聞だ、もしかしたら知っているのかも分からんが、忘れちまったよ」

 

「そうか・・・」

 

 

声のトーンは変えないが、明らかに落ち込んでいた。それは一番近くにいるデルフリンガーもよく分かる。

 

 

「なら次だ、私は闇を食料として生きているが、今の私にはそれが無い。何処かにこの問題を解決出来る何かはないか?」

 

「闇を食ってる?そりゃおでれぇた。本当に悪魔だな、相棒は」

 

 

そう言ってカタカタと笑うデルフリンガー。ダークライは真剣なので、呑気なこと言ってないで早く教えろと催促する。

 

 

「闇を扱っている奴なんて聞いたことは無いが、似たような感じのものを扱っている連中なら知ってるぜ。それでもいいか?」

 

「少しでも足がかりとなる物は欲しい」

 

「分かった。その連中ってのはエルフと言う森に住む原住民だ。闇とは対照的だが、光の様な物を操っていると聞いた事がある。もしかしたら、闇の力について何か知ってるかもしれないぜ?」

 

「エルフ・・・」

 

 

書物で読んだ事があった。尖っている耳が特徴で、形態は主に人型であると言われている。なかなか出会えない連中と言う事は知っているため、ダークライは小さくため息を吐いた。

 

 

「見つけるしか無いか・・・」

 

 

場所すら分からない物を見つけると言うのは困難を極める。樹海の中から特定の石を見つけるレベルの難しさだ。しかも、その石は自身を隠すことに長けていると言う。どれだけ時間がかかるか分からない。

 

そんなに時間をかけて探すほど、ダークライに余裕はない。こうなってしまえば、この現状を打開するのは絶望的だろう。

 

空腹で死ぬのが早いか、それとも寿命が尽きるのが早いか。ダークライの体の中で二つの死が競走を始めていた。

 

 

「まあそんなに悲観するなよ、相棒。もしかしたら、これからエルフの場所を知っている連中が出てくるかも知れないぜ?」

 

「だといいが・・・」

 

 

まだ不安が残るルイズを出来るだけ長く支えていたいダークライである。烏滸がましいと分かっていても、やはり長くルイズの隣に居なくてはならない。だがどれだけ強いダークライでも、自らの寿命には耐えられない。

 

無理矢理体を植物状態にして、消費エネルギーを抑えると言う事は一応可能だが、そうなるとルイズに迷惑がかかる。

 

こうなれば、デルフリンガーの言う通りいつ来るかも分からない情報提供者を待つか、死が体を蝕む前にやれるだけやって死ぬかどちらかを選択しなくてはならない。

 

 

「・・・なあ、相棒。難しい事は後で考えた方がいいんじゃ無いか?あの娘に相談するのも悪かねぇと思うぞ」

 

「余計な心配をさせるだけだ」

 

「ハァ、いいか相棒。ああ言うタイプの女ってのは自分と気持ちを共有して欲しいって思うもんなんだよ。相棒ばっかりに重荷をおわせたくないって思ってるだろうさ」

 

「そうなのか?」

 

「俺は今まで色んな女を見てきた。間違いねぇよ」

 

「相談か・・・」

 

 

そんな事を覚えてるのになんで肝心な事は覚えてないんだと思うが、デルフリンガーの言葉には妙な説得力があった。

 

 

「そうだな、話してみるか」

 

 

そう呟いて、ダークライはデルフリンガーを浮かせた。寂れて動かなくなったドアを開けずに、下の隙間から影となってダークライだけ出る。後からデルフリンガーをサイコキネシスで隙間から持ってきて、ルイズの元に向かおうと動き出した。

 

 

(なんて言ったらいいのだろうか・・・?)

 

 

そんなことを考えながら、ダークライはルイズが居るであろうキュルケの部屋に移動する。

 

 

 

 

 

 

しかしその思考は、遠くから聞こえてくる轟音と、聴いたことのある爆発音によって中断された。




後書きポケモン図鑑(マイナーポケモン編)

『バクオング』
タイプ:ノーマル
高さ:1.5m
重さ:84.0kg
とくせい:ぼうおん

『図鑑説明』
大声の振動で地震を起こす。体に空いた穴から空気を吸い込む音が聞こえたら、大声を出す前触れだとされている。ポケモン版ジャイアンのような存在。ポケモン世界に多数存在する【簡単に地震起こせちゃう系ポケモン】の中でヒッソリと存在している。紫色の見た目に大きな口、厳つい目と、とてもユニーク溢れるポケモンであるが、大口型のポケモンは多数いるので、余り目立っていない。
強さは中の上くらい。特出すべき点はなく、レベルが上がると平均的にパラメーターが上がる。そのあまりの平均さに、使う人は少ない。何よりも見た目が凶悪で、子供が何人も涙を流したと噂もある。
この様な理由で、長らくマイナーとされていたバクオングだが、実は技の数が非常に多く、充実している。そのため、敵にバクオングを出されると何をしてくるか分からない不安感に駆られる。
XYで上方修正され始め、今後が期待されるポケモンである。

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