ヒカセンの紀行録   作:Lavian

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小説初心者なので大目に見てください。
3話分程度のストック終了後、遅筆になります。


第1話 朝起きたらヒカセンになってた

 『朝起きたら自キャラになってた』

 

 懐かしいフレーズだ。FF11をプレイしていた頃は、スレを開くのを楽しみにしていた。もし自分がFF11の自キャラになったら、どんなことをしようかってワクワクしていたっけ。

 

 時代が変わって、FF11からFF14になって。根性版から新生になって、蒼天のイシュガルドになって。スレが無くなっても、ゲームの中へ行きたいって気持ちは変わらなくて。そうなったらいいな、って思いながら毎日を過ごしてた。

 

でも、まさか本当に。

 

「私がFF14の自キャラになるとはな……」

 

 大剣の刀身を鏡代わりに自分を映してみれば、そこにいるのは金髪幼女。もう少し詳しく外見を説明すると、金髪で髪型はライトニングさん。瞳は真紅。ララフェル特有の小柄な体系に、絶壁の胸。衣服はミラプリしたハイアラガンタンク装備の暗黒騎士だ。これらの特徴は、FF14のマイキャラ『セラ』に一致する。

 

「本当に『セラ』になるのであれば、ララフェルではなくミコッテにすべきだった……」

 

 現実の私は小柄で貧乳で童顔だ。もう大学生なのに中学生に間違われるぐらいに。ララフェルが可愛くて選んだが、ゲームの中でぐらい理想のスタイルにすれば良かった。幻想薬は1個も所持していないので、スタイルの変更は絶望的である。なんてこった!

 

 そんな余計なことを考えるぐらい私が落ち着いているのは、常日頃からFF14の世界に行ったらどうするかを考えていたからである。つまりは、事前にこういう事態を想定していたということだ。流石は私。まずは夢か現実かのチェック判定の定番、ほっぺをつねるを実行。痛かったからこれは現実で、今の私は紛れも無くララフェルなのだ。現在地は部屋の雰囲気から、リムサ・ロミンサの宿屋『ミズンマスト』と思われる。

 

 こうなってしまった心当たりは全く無い。昨日は特別な事なんてしてないし、FF14のプレイだっていつも通りアレキ零式に挑んで返り討ちにあってぐぬぬしていた程度だ。そうして一晩寝て、起きたら幼女化してゲーム内にいたのだ。つまり、リアル側には一切手がかりなし。

 

「ひとまず、自分の外見チェックは終わった。次は状況確認だな」

 

 鏡代わりの大剣を置いた私は、部屋のテーブルの上に置かれている『愛用の紀行録』を開く。『愛用の紀行録』はゲーム内で過去のイベントムービーを振り返りたい時に使用するアイテムだ。これを読めば、『セラ』の過去の行動がわかるというワケだ。

 

 しかし、期待して本を開いたが、中身はほとんど真っ白。読み取れることと言えば、帝国の仕官学校を飛び出した『セラ』は冒険者になるべくリムサ・ロミンサを目指し船に乗る。船の旅は順調で、何事も無く、昨日リムサへ到着。街に着いたセラはこの宿屋・ミズンマストで一週間部屋を借りた。中身はその程度だ。

 

「まだ何の冒険もしていないのであれば、ゲーム開始時と同じ状況のはずなんだが」

 

 しかし、ゲーム通りであれば、船の旅は順調では無かったはずだ。ゲームでは海賊船と遭遇し、それを振り切るってリムサへ到着という流れだった。それが書かれていないのはどうなんだろう。それに、リムサに到着したばかりなら暗黒騎士Lv60のフル装備というのもおかしいのだ。『新米冒険者セラ』に『光の戦士セラ』が憑依したのか、あるいは『光の戦士セラ』の逆行強くてニューゲームなのか。あるいは、『光の戦士セラ』が突如この場に誕生したのか。

 

「ふーむ。いくら考えても、家の中にいるだけじゃ分からないか」

 

 結局のところ、ゲーム開始直後かどうかすら確証を持てない。実際に外で自分の足で情報を集めるしか無さそうだ。

 

 それにしても、口調がなんだかおかしい。『私』は普通の言葉で喋っているつもりなのに、なんだかクールでぶっきらぼうな口調になっている。

これは『セラ』の口調だ。ララフェルらしく無いのは放っておいて欲しい。身体だけじゃなく、性格や口調まで『セラ』になっている気がする。

 

「セラの性格は確か、クールだが正義感が強い。バトルマニア。ピーマンが苦手。身長が小さいことにコンプレックスを持っている。甘いものが大好きで、糖分を1日摂取しないと禁断症状が出る」

 

 過去の私よ。何故糖分が無いと禁断症状なんて設定にしたのだ。現実になるとやばいぞこれは。

 

「他の設定は……帝国の貴族出身で、家を捨てて冒険者になるべく旅に出た。ピンチになるとオッドアイになり、魔眼が発動して戦闘能力アップ」

 

 ろ、ろくでもない……過去の自分を殴りたい。TRPGのキャラをベースにして作ったのがまずかった。邪鬼眼はまだいい。帝国貴族出身とか厄介ごとのフラグしかないぞ。しかも、貴族出身というだけで他はさっぱり決めてない。何家出身なんだよ、私。

 

「設定はまだまだあるけど、今はやめておこう。次は所持品の確認だ」

 

 所持品の確認といっても、いわゆるアイテムボックスはどうなっているのか。小さな道具袋があるのだが、これに全部詰まっている……?

 

「そうか、こういう時は定番の……アイテムウィンドウ、オープン!」

 

 叫んでみたら、本当にアイテムウィンドウが出てきた。テンプレは偉大である。所持品は道具袋に入っているが、これはいわゆる四次元ボックスだった。重さも感じず、アイテムが何でも100種類入る魔法の袋。ギアセットも似たような感じで、問題なく他の職業へジョブチェンジ・装備変更可能だった。アイテムの確認が終わったら、次は魔法。そして、ウェポンスキル。室内で使えそうなものを選んで順番に試していくと……

 

 結論、全部使えた。結構適当だな、この世界。

 

 超える力についても、上手く言い表せないが『持っている』感覚がある。魔法や装備を確認した私は、行動方針を考える。

 

「戦闘力は問題なし、というかレベル60だし冒険者としてはトップクラスのはずだ。お金も3000万ギルあるし生活には困らない。できれば引きこもっていたいのだが」

 

 しかし、この世界で『何もしない』というのはリスクがある。

 

「仮にゲーム開始直後で私が光の戦士、もしくはその仲間というポジションだった場合、何もしなければ蛮神大暴れな上に帝国との戦争に負けかねん」

 

 放置の結果バハムート復活なんてことになったら笑えない。この世界の命運は光の戦士達の働きにかかっているのだ。そして、その光の戦士が自分なのか?というとそうとも言い切れない。FF14はネットゲーム。光の戦士は大量にいたし、この世界に転移して来ているのが私だけとも限らない。他のプレイヤーが光の戦士、私は無関係の村人Aという可能性も十分にありうる。

 

「超える力もあるようだし、私が光の戦士だったらストーリーをなぞるように動かねば。そうでなかったら、光の戦士をサポートする。そのためには、まず光の戦士の情報を集める必要があるというところか?もちろん、今がどの時期か確認してからだが」

 

 当面の方針としては、情報収集からスタート。とはいえ、いきなり冒険者ギルドへ行って冒険者登録とはいかない。私はこの世界をゲームでしか知らないのだ。できるだけゲームと今の世界との差異を確認したい。未知の世界では石橋を叩いて渡る必要がある。そのためには情報が必要だ。特に物価は最優先だ。相場を知らない人物なんて、箱入りお嬢様にしか見られないだろう。

 

「まず、リムサのマーケットへ行ってみるか」

 

 

 

 

 

 マーケットへやってきた私は、色んな店に並んでいる品物と値札を見比べた。相場はゲームと大分差があった。1ギル=1円という感じで、現実味のある値段になっていた。例えば、HQじゃなくてNQであっても極端に安くはならないし、武器防具が1000ギル(1000円)以下なんてことも無かった。相場については注意していないと大ポカしそうだ。気をつけよう。

 

 前から食べてみたかったエオルゼアスイーツを大人買いし、その後はリムサを一通り回ることにした。レストラン・ビスマルクで食事をし(ロランベリーチーズケーキは絶品だった!)鍛冶ギルドを見学し、巴術ギルドで一般常識や魔法、歴史の本を購入。ミズンマストへ戻ったら購入した本を読み漁り、この世界の知識を詰め込んでいく。

 

 

 

 

 

 

 そんな日々を1週間ほど過ごしたおかげで、とりあえずレベルの一般常識を身につけた。この世界の一般常識については、忘れていたことを思い出すようにすんなりと知識が身についた。『セラ』の知識については忘れているだけで、容易に思い出せるということらしい。また、情報収集の結果、現在がゲーム開始直後という確認もできた。次はいよいよ冒険だ。けれど、流石に一人でいきなり戦闘というのも不安である。ソロでの冒険は不安。なら護衛を雇えば良いと言うことで、私は溺れた海豚亭へ向かった。

 

 溺れた海豚亭へやってきた後は適当な席を選んで座り、料理を頼む。そうして食べながらこっそり周りの様子を観察していく。どうやら冒険者の依頼関連はミコッテのチャ・モクリという女性が仕切っているようだ。この冒険者ギルドのマスター、バデロンは挨拶や世間話ばかりしている。細かい依頼などは部下に任せているのだろう。

 

 観察を終え、料理を食べ終わった私は他の依頼者の真似をしつつ、チャ・モクリに話しかける。そのままだと、カウンターのほうが私の頭より高いので、カウンターに腕を置いて身を乗り出しながら。

 

 ……世の中はララフェルに厳しい。エオルゼアもバリアフリーを推進すべきである。

 

「すまん。依頼をしたいのだが」

 

 チャ・モクリを見上げながら尋ねる。

 

「ご依頼ありがとうございます。どのような種別の依頼でしょう。採集、製作、戦闘とありますが」

 

 私が声をかけると、チャ・モクリはにっこり笑って対応してくれる。揺れる猫耳。かわいい。

 

「戦闘系だな。モラビー造船処まで、徒歩で旅をしたくて護衛を依頼したい。旅慣れていないから、護衛しながら旅の仕方を説明してくれる人が良い。日程は明日の朝に出発を予定している」

 

 私の目的は冒険者の知識を得ることだ。そのためには、冒険者と一緒に旅をするのが丁度良い。そこで、近場のモラビー造船所まで冒険者を護衛として雇い、道中に知識を教えてもらうのが狙いだ。冒険者とのコネができるのも良い。

 

「わかりました。掲示板に張り紙を出しますか?もしくは、割高になりますが冒険者を指名することもできますよ」

 

 チャ・モクリはそう言うと、現在指名可能な冒険者と値段を教えてくれた。とはいえ、私はこれらの冒険者を知っているわけでもない。チャ・モクリのオススメを聞くのがきっと一番だ。

 

「誠実で、旅の知識のある人を頼む。強さや料金は重視しなくていい良い」

「でしたら、こちらのドールラス・ベアーさんはいかがでしょうか。誠実で知識もある、ベテランの冒険者ですよ」

 

 剣術士のルガディン、男、値段は3日間の護衛依頼で15万ギル。条件は特に問題なさそうだ。

 

「それなら、ドールラス・ベアーを指名しよう」

「了解しました。では、ドールラス・ベアーに声をかけておきますね。明日の朝、また溺れた海豚亭に来てください」

「わかった、ありがとう」

 

一礼し、溺れた海豚亭を後にする。マーケットで旅に必要そうなものを買って、明日に備えよう。

 

 

 

 

 

 翌日。溺れた海豚亭に顔を出し、護衛の冒険者と合流した私は、さっそくモラビー造船所へ出発した。ゲームではたった1エリアの移動だが、現実世界になった今ではモラビーまででも中々に遠い。野営込みで1日半かかるとのことだったので、朝早く出立したのだ。

 

 ドールラス・ベアーは灰色の肌に緑色の頭髪のルガディンだ。装備は白いプレートアーマーで、ベテランの雰囲気を感じる。さらに、性格は中々に紳士的だ。

 

「私はパーティの仲間を守るのが役目でして。例えモンスターが来ようが、盗賊が来ようが、命に代えても守り切ってみせましょう」

 

 そう言って自信満々に胸を叩くドールラス。私が見たところ、彼のレベルは25程度だ。モラビーまでの道のりなら、彼にかなう敵はいないだろう。私がレベル60で彼より強いことは黙っておく。

 

「それは心強いな。でも、この依頼は護衛だけじゃなくて、ドールラスの旅の話や冒険者の知識を聞かせてほしいんだ」

「確かに依頼の条件にありましたね。そういうお話を聞くのが好きなんですか?」

「私は腕に覚えはあるんだが、それは訓練の話で実戦経験や旅なんかはさっぱりなんだ。まあ、詳しい事情は聞いてくれるな。ただ、これからは自分の腕を生かして冒険者をはじめたいんだ」

 

 レベル60もの実力があるのに世間知らずっていう状況だが、訳ありだと言っておけば深くは聞いてこないだろう。仮に聞かれても、上手くごまかす自信はある。

 

「なるほど。それで私を雇ったのですね。冒険者になるにあたって、旅や知識が不足しているから、先達に話を聞きたいと」

「そういうことだ。ドールラス、私に冒険者としての知識を教えてくれないか?」

「もちろん良いですとも。未来の後輩のために、一肌脱ごうじゃありませんか」

 

 冒険者志望と伝えてもこちらを侮っているような雰囲気は無い。ララフェルや女性だからといって先入観を持たないのはありがたい。彼を選んだのは正解だったようだ。

 

 こうして私はドールラスに様々な知恵を教わりながらモラビー造船所を目指した。冒険者のあり方、暗黙のルール。食べられる野草に魔物、野営の仕方。星空から方角を判断する方法。海賊への対応方法や注意。ついでにリムサやエオルゼアの歴史も教えてもらった。ドールラスは会話が上手く、楽しく・わかりやすく冒険の話してくれた。

 

 ドールラスに聞いた話からすると、普通の冒険者はアイテムボックスなんて存在せず、魔法の袋というアイテムボックスのような道具を持っている人が少数いるぐらいらしい。なので、旅の問題は食料が大きいようだ。私の場合はアイテムボックスに食料満載で行けるので楽勝だけれど。

 

 野営についてはやはり危険なようで、見張りを置いたほうがいいらしい。野営の必要がある旅なら、一人旅ではなく二人旅がオススメとのこと。冒険者の実力については、レベル20で一人前らしい。30でベテラン、レベル40で有名な実力者、レベル50は相当の猛者で、グランドカンパニーの少将~大将クラス。レベル50まで行ってるのはほんの一握りだとか。

 

 その話を聞いた後、「実は私、レベル60なんだ」ってドールラスに言ったけど冗談だと思われた。レベル60なんてラウバーン級だとさ。そりゃ冗談だと思うわ。道中、トリプルドライアドの対戦もしたけれど、私とドールラスの戦績は3勝2敗だった。私のほうが圧倒的に強いカードを持っているのに全勝できないとは、なんだか悔しい。プラスが……プラスのルールが悪いのだ!

 

 とはいえ勝ちは勝ち。ドールラスには罰ゲームということで、ラウバーンのようにマウントになって貰った。ちなみにドールラスマウントは中々快適だった。できるルガディンである。

 

 

 

 

 

 そんな感じの旅は退屈することもなく、襲ってくる魔物もいなかったため、1日半で予定通りにモラビー造船所に到着したのだった。

 

「ドールラスのおかげで楽しい旅ができたよ、ありがとう。今日は街で宿を取って、帰りはリムサ行きの船に乗ろうと思うんだが良いだろうか」

「了解です。船の上でまた、冒険者として知っておくべき知識を教えるとしましょう」

「では、明日もよろしく」

 

 街の入り口で別れた私たちはそれぞれで宿を取り、明日の船旅に備えて就寝したのだった。

 

 

 




ドールラス・ベアーさんは、サスタシャクエで会話するルガディンです。
ヒカセンは彼のことを完璧に忘れています。
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