ヒカセンの紀行録   作:Lavian

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第10話 コロセウムにはロマンがある

 砂の家の襲撃は無事に防ぐことができた。死人は出なかったものの、暁はこの襲撃に危機感を覚え、密かに拠点をモードゥナに移転するそうだ。これは暁が半数以上死亡してしまう本来の歴史からすれば素晴らしい成果と言える。正体を隠し、事務員として仕事をした甲斐もあったというものだ。

 また、モードゥナならエーテライトがあるから、今後何かあったとしてもすぐに駆けつける事ができる。ついでに言えば、頻繁にクエストで呼び出されまくるブロントさんのストレスも軽減されることだろう。

 

 しかし、歴史改変には問題もある。本来の流れではここでミンフィリアが浚われる流れだったが、ヒカセンの活躍により流れが書き換わった。つまりはメインクエが一部消失したわけで、上手く軌道修正しなければならない。

 東ザナラーン、聖アダマ・ランダマ教会にいる記憶喪失のシド。光の戦士と彼が邂逅することで物語が進む。私はブロントさんを彼と会わせる用に誘導する必要があるのだ。

 

 さて、そのために光の戦士を動かすには何が必要だろうか。

 金銭?

 いいや。金銭は定番だが、一番効果的な回答は私自身が良く知っている。砂の家で今後の方針を話し合っているブロントさんに向けて、私はそれを実行した。

 

「ブロントさん、君にクエストを発注したい。報酬は……装備の見た目を自由に変えられる術式『ミラージュプリズム』の情報だ!」

「hai!なんでも言ってくだしあ!」

 

 クエストに加えて報酬がオシャレ装備。この組み合わせに堕ちない光の戦士はいないのだ。

 

 

 

 ブロントさんは私の依頼を受け、早速聖アダマ・ランダマ教会へ出発した。彼にはその場所にいる記憶喪失の人物の手助けをして欲しいと頼んである

 

 こうしてブロントさんをクエストに向かわせたが、私は動向せずに別行動を取る事にした。先日のリウィアとの対戦結果から、私はまだ実力が不足していると考えたためだ。『セラ』のスペックを完璧に引き出すためには、中の人にも経験が求められるのである。

 

 実戦経験を積む選択肢は色々あるが、私は再びコロセウムを選ぶことにした。実戦経験と共にお金と名声が手に入る。以前コロセウムに登録し、剣闘士として活躍していたから下地も整っている。理想の環境だ。それに、なんと言ってもコロセウムにはロマンがある。

 目的が決まればすぐに行動あるのみ。私はウルダハへ向かった。

 

 

 

 

 

 ウルダハへ到着し、コロセウムで復帰の手続きをするために受付へ行くと別室へ通された。なんでも、試合を組んで欲しい人物がいるとか。

 別室へ行くとルガディンの男性スタッフが待っていた。ピンクの制服を着ているのは少しセンスが悪いと思うのだが、エオルゼアでは普通なのだろうか?

 

「セラさんがまたコロセウムに戻ってきてくれて嬉しい限りです。貴方はララフェル族の小さな体格を物ともせず大剣を操る。強く、可憐な貴方はコロセウムでも大人気なんですよ。観客達はコロセウム最強だとか、ラウバーンに匹敵するだなんて噂するぐらいです」

 

 小さな身体に大きな武器。これはロマンである。エオルゼアの皆にも分かってもらえて嬉しい限りだ。それに、褒められるのはやはり嬉しい。

 

「ありがとう。しかし、わざわざ別室に通したのは他の話があるんだろう?」

 

 先を促すと、その通りです、と頷くルガディン。

 

「実はとんでも無く強い新人が現れまして。短期間の内に連戦連勝。フランツ達4人組や、テュポーンを当てても簡単に蹴散らされてしまったんです。私達の見立てでは、その新人は貴方と同等の強さがあると判断しています」

「……ラウバーン級と噂される私と同等の強さがあって、私が場外負けしたテュポーンをあっさり蹴散らしたと」

 

 つまりは……コロセウム最強候補たる私よりも、その新人のほうが強いのでは?という図式になっているんじゃないか?

 

「お察しの通りです。そんな状況のため、観客達からは『暗黒剣のセラ・ヒカセン』と『新人』のどちらが強いのか、試合を組んで欲しいとのリクエストが大量に来ているんですよ」

「なるほど。それなら試合を組むのも納得だ。それで、その新人の名前は?」

 

 すごい新人が来たのは納得したが、ゲーム時代ではコロセウムにそんな奴がいるとは聞いたことが無い。やはり、FF14とは異なる世界から来たイレギュラーな存在だろうか?

 

「その新人の名前は『ギルガメッシュ』。あらゆる武器の達人です」

 

 ……ギルちゃん、試合することになっても、かえるの歌(トード)とミニマムはやめてね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 コロセウムの試合は一週間後となった。それまでの間、コロセウムでの試合は無い。

 よって、コロセウムでのエントリーを終えた私はウルダハの拠点に帰宅した。拠点の名は『よろず屋ヒカセン』。リテイナーに商売を任せた際に、ウルダハで店を1件借りていたのだ。

 1階が店、2階と3階が居住空間で、私とリテイナー4名の5名で住む家となる。

 

 店番や通常商品の仕入れはリテイナー。取り扱うのは主に武器防具で、他に高騰したトームストーンなんかも売り出している。

 これだけでは一般の店として埋もれかねないので、武具は私が作成したアダマン製HQ装備も掘り出し物として何点か置いている。おかげで売り上げは上々。隠れた名店として顧客が増えているようだ。今後はコロセウムでヒカセン製武具を宣伝し、知名度アップを狙う作戦である。

 

 この世界のヒカセンはロウェナに搾取される側ではない。トームストーンや高級武具を取り扱い、いずれはヒカセン商会を立ち上げ、膨大な富を得るという壮大な作戦なのだ!

……今はまだ、従業員はリテイナー4名だけだけれども。

 

 

 武具作成の休憩時間で机の上にノートを広げ、上記の現状や今後の方針をメモしていく。

 昼は冒険者として活動するか、コロセウムで戦闘経験を積む。夜は武具をクラフトしたり、素材を調達する。ブロントさんから連絡が入ればPTにインしてIDや蛮神の攻略。

 これがウルダハでの生活の基本となる。もう少し活動範囲を広げたい気もするが、まずは足場を固めるのを優先だ。

 

他にやりたい事と言えばエオルゼア探検や、私が異世界転移した理由の解明。この世界に元からいた『セラ』の過去を調べてみたいところだ。

 

 『セラ』の過去……どうやって調べるのが良いのだろうか。自分自身で調べようにも、『セラ』の記憶はたまに夢で見る程度。ここはその手の専門家、情報屋にでも調べてもらうのが良いかもしれない。

 

 

 

 

 

 翌日の深夜。早速『セラ』のことを調べて貰う為にウルダハの大通り、情報屋のワイモンドの元へ向かった。ウルダハの情報屋と言えばワイモンドである。他の情報屋を知らないとも言う。

 自分で自分のことを調べてくれと言うのも怪しいので、変装をして接触することにした。今の私は眼鏡をかけた学者、砂の家の受付でも使った変装スタイルだ。

 

 目的の場所へ到着すると、グラサンのヒューラン男性が建築物に寄りかかって暇そうに立っている。この一見普通のお兄さんが情報屋のワイモンドだ。

 

「こんばんは。情報屋ワイモンドに依頼をしに来たんだ」

「こんばんは、お嬢さん。こんな夜更けに俺へ依頼とはね。いったいどんな要件だい?他人に聞かれたくない案件なら、行きつけの店に案内するけれど」

 

 ワイモンドが提案してくるが、『セラ』の情報はそこまで他人に秘密にすべき内容でも無いと思う。

 

「いや、ここでいい。コロセウムの闘士、『セラ・ヒカセン』の細かい経歴が知りたいんだ。特に、このエオルゼアに来る前の」

 

 そう言ってギルの入った袋を渡す。ワイモンドは袋を受け取ると、その中から料金分のギルを抜いて私に袋を返した。

 

「オーケイ。それじゃあ現時点で俺の知ってる情報を話そう。そうだな……セラ・ヒカセン。コロセウムの人気闘士で実力は非常に高く、まるで未来を見ているかのように攻撃を回避するのが特徴だ。ラウバーンに匹敵する強さと噂されている」

「そこまでは私もよく知っている。コロセウムの中では有名だしな」

 

 ちなみに、コロセウムでは次回のギルガメッシュ戦のチケットが飛ぶように売れているらしい。

 

「で、そんな強力な人物を各勢力が放っておく訳がない。味方と敵、どちらに転ぶか早急に判断が必要だ。特に彼女がいるウルダハはな。よって、不滅隊主動で彼女の身辺調査が行われた。結果は・・・・・・今のところグレーだ」

「不滅隊が調査を・・・・・・でも、グレー?」

 

 不滅隊が既に私を調査していたのも驚きだが、その調査結果がグレーというのも解せない。私は精錬潔癖だと思うのだが。

 

「彼女が最初に目撃されたのはリムサ・ロミンサ。その後は海賊の襲撃から船を守ったり、コロシアムで名声を稼ぐことになるが、それ以前の経歴は一切不明だ。あれほどの実力者だがエオルゼアでの目撃情報はほとんど無い。唯一、アラミゴで目撃情報があったらしい。その時はアラミゴ市民を帝国から庇っていたらしいが・・・・・・それ以外の詳しい情報はさっぱりだ。不滅隊は『情報が意図的に隠蔽された』と判断したらしい」

 

「ふむ・・・・・・情報が意図的に隠蔽された。誰が、何のために?」

 

「それは分からない。けれど情報の隠蔽はある程度の組織・・・・・・例えば、帝国軍やアラミゴ解放軍なんかが情報を抹消したと見られている。つまり、帝国が関わっている可能性が高いからグレーだ。ま、アンタの立場はこんな感じだから気をつけるんだな。セラ・ヒカセンさん」

 

 名乗っていないし変装もしているはずなのに、しっかりと名前を当ててくるワイモンド。

 

「バレていたのか。変装には自信があったんだが・・・・・・流石は情報屋」

「伊達にこの道で食ってないさ。そんなワケで、不滅隊はアンタを帝国の犬じゃないかと怪しんでる。アンタが何者か知らないが、俺から情報を買ったんだ。ちゃんと有効活用して上手くやるんだな」

「ありがとう。とても良い情報だった」

 

 私が礼を言うと、ワイモンドは背中を向け、手をひらひらさせながら去って行った。 

 

 

 

「・・・・・・それにしても、興味深い情報だったな」

 

 ワイモンドと別れた後、帰り道を歩きながら独り言をつぶやく。

 

 セラの初期設定は『帝国の貴族出身』だ。さらに日記から『帝国の士官学校に通っていた』はずだ。けれどさっきの情報の『帝国からアラミゴ市民を庇った』『何らかの組織の手により、情報が隠蔽された』事と組み合わせると色々な推測が立てられる。

 例えば『帝国士官だったが何らかの理由で帝国から離反した。ただの一兵士ではなく貴族だったため、情報を抹消された』とか。

 

「いったい、『セラ』はどんな人物だったんだろうな」

 

 私が憑依した『セラ』。彼女の意識は消えたのか、眠ったのか、私と融合したのか。どうなっているにせよ、彼女の過去を知りたいと強く思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 ブロントさんを手伝ったり、よろず屋ヒカセンを経営したり、武器防具をクラフトしたり。そんな日々を過ごしていたら、あっという間にギルガメッシュと試合の日となった。

 

 今、私がいるのはコロセウムのフィールドだ。そして退治するのはフレッシュミート・・・・・・じゃなくて、赤い巨躯の男。歌舞伎者っぽい雰囲気で、背中には大量の武器を背負っている。ギルガメッシュだ。

 

「俺の名はギルガメッシュ!俺が勝ったら、お前の武器を記念に頂くぜ!」

 

 闘技場であっても気にせずいつもの台詞を言うギルガメッシュ。だが、私の武器は魂を込めて……それこそ血反吐を吐く思いで作ったアニマウェポンだ。渡す気は無く、つまり絶対に負けられない。

 

「私はセラ・ヒカセンだ。私が勝ったら武器の代わりに……そうだな。ギルガメッシュには私の友人になって貰おう」

「はっはっは!そりゃいいな。セラ、お前が強かったら、勝敗に関わらず友達だぜ!さあ、審判!始めてくれ!」

 

 ギルガメッシュに促され、審判が頷く。

 

「それでは、試合開始!」

 

ドーン、という銅鑼の鳴る音と共に審判が試合開始を宣言した。

 ギルガメッシュとの距離はまだ遠い。彼に『ジャンプ』でもされたら厄介なので、先手必勝でこちらから攻める。今回に限っては序盤を防御に徹するという舐めプレイはしない。最初から全力だ。

 

「行くぞ、ブランジカット!」

 

 まずは得意技で距離を詰める。叫んで跳躍。空中でくるりと1回転しながら、体重の乗った一撃を振り下ろした。

 が、ギルガメッシュとて歴戦の戦士。しっかりと槍で受け止めた。

 

「やるじゃねぇか!今度はこっちの番だぜ!」

 

 槍を振り回して私を弾くと、そのまま槍の回転を増加。フィールドに複数の竜巻を発生させる。

 

「くっ!」

 

 ゲーム中では直接触れなければ問題の無かった竜巻だが、現実となると多少距離があってもこちらに影響を与えてくる。範囲から外れていてもその凄まじい風圧と、複数の竜巻が組み合わさった乱気流が私の動きを阻害する。

 

「そらよっ!ヒット・ジ・エンド!」

 

 そして、それを狙ったかのように放たれるギルガメッシュの技。竜巻で動きを鈍らせ、溜め技を放つ。中々に嫌らしいコンボだ。

 だが、私とてそれは『見えていた』。多少動きが阻害されていたとしても、来ると分かっている攻撃は対処可能だ。

 

 大地にしっかりを足を固定し、右手のみで大剣を振るってギルガメッシュの槍にぶつけ、軌道を逸らす。それと同時に空いた左手に魔力を溜め、解き放った。

 

「私をただの剣士と思わないことだ。ダーク・パッセンジャー!」

 

 闇のエネルギーの奔流が前方広範囲に広がり、ギルガメッシュに襲いかかった。

 

「げぇ!魔法も使えるのかよ!」

 

 ギルガメッシュは槍を引き戻し、ダーク・パッセンジャーを縦に切り裂いて咄嗟にダメージを軽減する。

 しかし、その行動は咄嗟の行為であったために次へ繋げられない。切り払った後の隙目がけて、ハードスラッシュ、サイフォンストライク、ソウルイーターの定番コンボをたたき込む。

 

「やべっ、くっ、そいやあっ!」

 

 その隙だらけの状態から、たたらを踏んで交代しながらもギルガメッシュはこのコンボを受けきった。そして、大きく跳躍して後退する。

 私はその後退をあえて見逃し、距離を確保した。

 

「やはりその辺の雑魚とは違う。強いな、ギルガメッシュ」

「あったりめぇよ!けれどお前もめちゃくちゃ強いじゃねぇか、セラ!こりゃ、奥の手を出すしか無いぜ」

 

 宣言すると、ギルガメッシュは力を溜め始める。私もまた、敵の大技が来るまでの間にダークアーツを発動して迎撃体勢を整える。

ギルガメッシュが天高く跳躍する。私の眼に映るのは超える力による『未来予知』。見えた未来に従い、闇を纏った大剣を繰り出す。

 

「いくぜ!俺の必殺技を受けてみな!ギガジャンプ!」

「神に背きし剣の極意、その目で見るがいい!カーヴ・アンド・スピット!」

 

 最初とは立場が逆転し、空中から落下攻撃を仕掛けるギルガメッシュと、それを大剣で迎撃する私となった。

 槍と大剣が交差し、その威力が衝撃波となって闘技場を震撼させた。

 

 

 

 

 

 

 試合は接戦だったが、私の勝利となった。ギルガメッシュは大技を好んだが、隙の多いそれらに対して事前に潰したり、カウンターを決めたのが勝因だろう。

 大技を誘発し、未来予知で対処し、カウンターで潰す。戦闘スタイルとしてはこの形が良さそうだ。

 なお、ギルガメッシュとは試合前の会話通り、友人となった。セラちゃん、ギルちゃんと呼び合う仲だ。試合の再戦も約束したので、闘技場では今後何度もぶつかることになるだろう。強者との戦闘経験を求めている私にとっては嬉しい限りだ。

 

 名声が得られる。資金を稼げる。戦闘経験を積める。そして、思わぬ強敵・・・・・・強敵と書いて『友人』と読む出会いがあった。

 やはり、コロセウムにはロマンがあるのだ。

 




紅蓮のリベレーター最高ですね。特にアジムステップは神ですよ!
あと、作者は侍になりました。乱れ雪月花とか、溜め攻撃からの必殺技で超格好良いです。

オマケ。ヒカセンちゃんの好きなもの
→ロランベリーチーズケーキ
→コロセウム
→釣り
→ゴールドソーサー
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