他国の人には分かり辛いかも。
そこそこシリアス。
その日の深夜、私は妙な胸騒ぎがして目が覚めてしまった。
肌がチリチリするというか、何と言うか……そう、武器を手にしていなければ落ち着かないのだ。レベル60の冒険者である『セラ』の胸騒ぎを無視してはいけない。私は念のためギアセット1……暗黒騎士装備を虚空から呼び出し、一瞬で装備した。他の冒険者はこんなことできないらしいが、私はできる。ゲームシステムの恩恵をなのか、これもまた『超える力』なのか。
意思持つ大剣、アニマウェポンを装備した私は部屋の外に出る。そのまま1階へ降り、階段を降りようとした所で異常事態を知らせる叫び声が外から響いた。
「敵襲!敵襲だー!海賊が攻めてきたぞー!」
一気に階段を飛び降り、入り口の扉を乱暴に開けて外へ出る。
視界に入ってくるのは多数の海賊と、あちこちで戦闘になっている冒険者や黒渦団の兵の姿だ。宿屋から出てきた完全武装の私を目にすると、3人の海賊がターゲットを私に変更し、一斉に襲い掛かってくる。
「むっ……!」
私は突然の戦闘に躊躇しながらも大剣を構える。まさかエオルゼアの初戦闘が人間とは。敵を殺さないと生き残れないのは分かっているけれど、日本人の倫理観が人間を切り裂こうとする動きを鈍らせる。私の身体能力なら先手を取れたはずだ。しかし、迷いのせいで先手は海賊となった。
「死ねぇ!」
目をぎらつかせながら、斧を振りかぶって襲い掛かってくる海賊たち。
3方向からの同時攻撃。しかし、私の身体は歴戦の戦士だ。どう対処したらベストかが瞬時に脳裏に浮かぶ。大剣を持つ手に力を入れ、横なぎに一閃。彼らの斧を狙って放ったその一撃は容易く3つの斧を粉砕してみせた。武器を破壊され、体制を崩し隙だらけになる海賊たち。自分より格上の敵を相手に怖気づいたのか、2人が後ずさりしている。だが、1人は腰から新たにサーベルを抜いて斬りかかって来た。
相手は私を殺す気だ。その殺意に光の戦士セラの体が反応する。闘志が高まり、武器を握る手に力が入る。殺人=禁忌という感覚が消えていく。
(これは正当防衛だ。今殺さなければ私か、あるいは街の住人が死ぬ)
理由さえできれば後は簡単だ。この身は光の戦士。数多の敵を葬ってきたのだから。
「この世界で生きていく上で、いつか経験しなければならないのなら!」
(今、この場で人を殺す)
私は叫び、向かってきた敵の体に覚悟を決めて大剣を突き込む。心臓を貫き、真っ赤に濡れるアニマウェポン。素早く剣を引き抜き、残る2人の海賊を斬り殺す。
「………こんなものか」
『私』としては初めての殺人。けれど忌避感や恐怖感は無く、冷静だ。
まるで『いつものこと』のように感じる。冷えた感情のまま、別の海賊に大剣を向ける。黒渦団の兵と争っていた海賊に目をつけると、プランジカットを発動。跳躍し、勢いをつけた私の大剣は海賊をやすやすと斬り裂いた。
「冒険者か、助かったよ。この場はいいから建造中のヴィクトリー号を守ってくれ!」
助けた兵士は負傷していたが、自分よりもヴィクトリー号のほうが心配なようだ。
「任せろ。必ず守ってみせよう」
アイテムボックスに腐るほど眠っていたエリクサーを取り出してその場に置き、ヴィクトリー号へ向かった。
「これがゲーム通りのクエストなら、ヴィクトリー号付近の海賊の頭がいるはず」
私の到着したその日に、まるで計ったかのように襲撃が起きたことに疑問はあるけれど、モラビー造船所が海賊に襲撃されるのはゲーム通りだ。クエスト『ヴィクトリー号炎上』で出現する海賊はレベル15前後。今の私の敵じゃない。
襲い掛かってくる海賊達を一撃で葬りながらヴィクトリー号へと突き進むと、体格が大きく、豪華な服を着た海賊が見えた。今まさに、火炎瓶をヴィクトリー号へ投げ込もうとしている。
「そこまでだ!ヴィクトリー号の破壊は阻止させてもらう!」
叫ぶと同時、魔法のアンメンドを発動。掌から闇のエネルギーを放出し海賊を狙う。
「何っ!?」
叫び声に反応した海賊は火炎瓶を捨てて、横っとびに跳躍して魔法を回避する。火炎瓶を投げそこなった事に舌打ちしつつ、海賊は斧を構えた。
「ふん、冒険者か。船が心配で駆けつけたんだろうが、先走って一人で来たのは失敗だったな。おい、お前ら!」
服装からもしやと思ったが、どうやらこの海賊がリーダーのようだ。号令に従い、10人ほどの手下が前に出る。
「お頭の邪魔をしやがって!タダじゃおかねぇぞ!」
「土下座して命乞いしても許してやらねぇからな!」
三下のテンプレのような台詞を吐きながら、じりじりと私を包囲するように展開する海賊達。斧や剣の切っ先を向けられるが、私は全くプレッシャーを感じない。例え当たっても、魔力を纏った私ならそれらを軽々と弾く……そういう確信がある。
「お前たちの相手なんて私一人で十分だ。全員同時にかかって来るといい!」
「チビがよく吠えたもんだぜ。やっちまえ!」
挑発すると下っ端海賊たちは見事に引っかかり、一斉に飛びかかってくる。多方向からの同時攻撃は有効な戦法だろうけれど……彼らと私ではレベルが違いすぎるのだ。私は大剣を大地に突き刺し、チビと馬鹿にされた怒りを込めた魔力を放出する。
「誰がチビか!ララフェルの中では大きいほうなんだぞ!纏めて吹き飛べ、アンリーシュ!」
漆黒の魔力が地面から噴出し、雑魚たちを纏めて吹き飛ばす。
「ぐわぁ!」
悲鳴を上げて飛んでいく彼らを他所に、私は海賊の頭領を注視する。彼は斧を振り上げ、そこから扇状にオレンジが……『範囲攻撃の予兆』が私に伸びていた。
「喰らいやがれぇ!オーバーパワー!」
部下を巻き込むことを厭わない範囲攻撃だ。しかし、事前に範囲の分かっている攻撃なんて容易く避けられる。右にステップを踏んで攻撃を回避し、すぐさま頭領への距離を詰める。
「馬鹿な!俺の必殺の一撃を!?貴様、何者だ……ぐわっ!」
足払いにより転倒させ、即座にマウントポジションを取り、そのまま頭領の首に大剣の刃を当てた。
「何者、か……。そうだな。人は私を『ヒカセン』と呼ぶ」
光の戦士は私以外に相応しい者がいるかもしれない。故に私は『ヒカセン』を名乗った。
「……さて、これでお前は詰みだ。降伏し、仲間を撤退するなら命だけは助けよう」
「へっ、誰がお前なんかに……ぐわあ!」
頭領が生意気な言葉を吐いたので、マウントポジションを維持したままアンメンドを唱え、痛めつける。
「さて、吐く気になったか?さっきは手加減したが、壊す部位はたくさんある。それに私は回復魔法も使えるからいくらでも粘ってくれて良いぞ?」
苦痛に呻く頭領に脅しをかける。今の私はジュピーと鳴く獣。手加減などしないのだ。
「わ、わかったからやめろ!降参する!」
私の笑顔を見た頭領は数秒で根を上げた。全く、根性無しの海賊もいたものだ。そのほうが私は楽だけれど。
「さあ、撤退命令を出せ」
マウントポジションから降り、頭領を解放して促す。剣は背中に当てたままだ。
「ち、ちくしょう……」
頭領は悔しそうに呻きながらも、懐からリンクパールを取り出して叫んだ。
「野郎共!負けだ負け!この街にゃあとんでもねぇバケモンがいる!生きている奴は撤退しろ。倒れている奴は置いていけ!」
命令を出した後のを確認後、頭領からリンクパールを取り上げ、アイテムボックスから取り出したロープで彼を縛る。これでこの街は大丈夫だろう。
しかし、私はゲームの知識で知っている。ここの襲撃はあくまで陽動。本命は別の街なのだ。その襲撃情報を頭領にサクサクと吐いて貰わねばなるまい。
遠くからグランドカンパニーの兵士が走ってくるのが見える。彼に頭領を引き渡し、尋問を任せよう。その後は撤退していない海賊の残党がいないか街を見回らなくては。
「ボスを倒しただけじゃ戦闘は終わらない。現実というのは大変だな」
そう呟き、私は大剣を手に再び夜の街を駆け抜けていった。
翌朝。海賊の頭領を尋問した結果、スウィフトパーチ及びエールポート襲撃が計画されていることが判明した。襲撃の日時は今日の夜。わざと時間差をつけて、戦力をモラビー湾に引きつけてから襲撃する手はずだったようだ。黒渦団の兵は各町への伝令や、戦力集めに大忙しとなりそうだ。
なので私はこう言った。
「私はテレポを使える。各地への伝令や戦力を転送なら任せてくれ」
実はテレポとデジョンはリムサで事前に試していたのだ。問題なく使えるし、リムサ以外の街に行けるのも確認済みだ。
「モラビー湾の英雄殿に頼むのも申し訳ないのですが、お願いいたします」
黒渦団の兵達は申し訳無さそうにしつつも、緊急事態ということで遠慮なく頼んできた。かくして私は英雄として持てはやされる暇も無く、1日中テレポタクシーを続けたのだった。テレポタクシーっていうと、FF11を思い出して懐かしいなあなんて思いながら。
そして夜。私はスウィフトパーチで黒渦団の兵+ドールラス含む冒険者の合計30名と共に迎撃体勢を整えていた。光の戦士が来るかもと期待していたが、それらしき人物は現れなかった。少なくとも、リムサ・ロミンサの騒動は私が解決するしか無いらしい。
「他の2国に光の戦士がいてくれればいいんだが。いなければ私が光の戦士で確定か」
光の戦士になったら戦いの日々だ。ノーマル蛮神ならともかく、極蛮神なんかはソロじゃ勝てる気がしない。仮に仲間が集まってたとしても死闘になるだろう。確実に勝てるサスタシャノーマルとは格が違う。きっと生死を賭けた戦いだ。『セラ』としては慣れっこだろうが、日本人の私はそんな状況なんてゴメンである。どうか他の国に光の戦士がいて、厄介ごとを全て引き受けてくれますように、と願いながら敵を待つのだった。
月が頭上で輝く頃になって、スウィフトパーチに海蛇の尾が攻めて来た。海蛇の尾の戦力は20名ほど。彼らよりもこちらのほうが戦力が多い。それでもなお、海蛇の尾は捨て身で突撃してくる。テンパードとなり心を失った海蛇の尾は自身が捨て駒になることも厭わないらしい。
「野郎共おぉぉ!黒渦団のヤツらを血祭りにしてやれえええ!」
「迎え撃てぃ!黒渦団の強さを見せてやれ!」
激しくぶつかり合う両軍。私は最初の衝突に参加するのは避け、あえて民家の屋根の上に隠れ、待機した。ここで戦うべき本命は別にいる。
この状況なら動くはずだと考え、静かに待つ。アシエンならばゲーム通りに仕掛けてる可能性が……来た!黒いローブに赤い仮面の男が海蛇の尾の最後尾に空間転移してくる。そして、一瞬で巨大なデーモンを召喚してみせた。
「行けぃ!デーモンよ、ヤツらをなぎ払え!」
黒渦団をデーモンで蹴散らすつもりなのだろう。だけれど、ここには私がいる。
「貴様の狙い、阻止させてもらう!」
天高く跳躍し、その勢いのままブランジカットを発動。デーモンを上空から強襲する。
「斬!」
月を背景に夜空を舞うララフェル。くるくると回転しながら大剣を振り回し、重さに落下速度をプラスした一撃はあっさりとデーモンの首を跳ね飛ばした。所詮はレベル15相当の敵。今の私の敵じゃない。
「な、なんだと!?私のデーモンを一撃で!」
そして、今この場には護衛のデーモンを倒され、驚愕し無防備になったアシエンがいる。奴を自由にさせておくと何があるか分からない。速攻で無力化する!地面に着地した私はアシエンに向かって大剣を斬り上げる。
その一撃はアシエンの赤い仮面を砕いた。見えた顔は老人で、サンクレッドでは無い。これなら遠慮はいらない!
「ぬぅぅ!貴様、何者だ!」
「人は私を、ヒカセンと呼ぶ!」
偽名を名乗った後、ハードスラッシュ、サイフォンストライク、ソウルイーターからなる暗黒騎士の王道3連コンボを瞬く間に放ち、アシエンを切り刻む。最後の一撃はクリティカルヒット、手応えアリだ!
「おのれぇ!貴様の名、覚えたぞ!ヒカセン!ぐわああああ!!」
憑依している肉体を破壊されたアシエンは断末魔の声を上げて倒れた。
おそらくアシエンの魂には逃げられたのだろうが、白聖石なんて持っているはずも無いし仕方ない。今は肉体を破壊し、活動を鈍らせただけでも良しとしよう。そう結論付けた私は背後を振り返り、黒渦団に加勢するのだった。ヒカセン無双の始まりである。
その後の結果はまあ、言うまでもないだろう。レベルの差は偉大である。
朝起きたら自キャラになってた のFF14版が無かったので自分で書いてやる、というのが犯行の動機です。