ヒカセンの紀行録   作:Lavian

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死者の宮殿楽しいです(地雷を踏んで爆発しながら)


第3話 魔理沙との出会い

~1週間後~

 

 モワビー湾&スウィフトパーチ襲撃の怒涛の2日間を乗り越えた私はレストラン・ビスマルクでゆっくりしていた。待ち合わせというヤツだ。相手は女性なので残念ながらデートではない。いつものようにロランベリーチーズケーキをもぐもぐしながら待っていると、目的の人物が現れる。

 

「はじめまして、ヒカセンさん。待たせちゃったみたいね」

「はじめまして、ヤ・シュトラ。たいして待っていないし平気さ」

 

 私を呼び出したのは暁の賢者の一人、ヤ・シュトラだ。ヴィクトリー号を救ったモラビー湾の英雄の名前は『ヒカセン』で広まってしまったので、しばらくはそのままヒカセンで通すことにした。私と同じようにエオルゼアに来てしまったプレイヤーがいるなら、きっとヒカセンの名前に反応するだろうからね。

 

「早速だけれど、貴方が倒した敵。黒ローブの赤仮面について何か知らないかしら?」

 

 ストレートな質問が来た。ヤ・シュトラに真実を教えておいたほうが後々の対策は立てやすそうだが、問題はサンクレッドがアシエンに操られているせいでアシエン側に情報が筒抜けになってしまうところか。悩みどころだが、下手に未来情報を教えた結果、サンクレッド以外が憑依されることになるほうが困る。

 

「いや、知らないな。海蛇の尾が雇った魔術師か何かじゃないのか?」

「そう。それなら仕方ないわ。じゃあせめて、戦闘時の状況を聞かせて貰えないかしら」

 

 アシエンの情報に関しては大して期待していなかったのだろう。ヤ・シュトラはサクサクと別の質問に入るようだ。

 

「もちろん構わないとも」

「貴方は黒ローブの召喚したデーモンを一撃で斬り伏せた。デーモンの強さはどのぐらいだったのかしら?」

「Lv20程度の冒険者なら十分に倒せるレベルだったな」

「思ったより弱かったのね。様子見だったのかしら。それとも、大量に召喚するつもりだったとか」

 

 悩むそぶりを見せるヤ・シュトラ。ゲームの序盤だから敵が弱かったんです、とは流石に言えない。

 

「じゃあ、次の質問ね。貴方は黒ローブに何者かと問われて、ヒカセンと名乗ったのよね?」

「その通りだ」

 

 その時、ヤ・シュトラの目がキラリと光った気がした。

 

「あの黒ローブに赤仮面の人物はアシエンといって、複数名が確認されてるわ。でも、アシエンの言語は私達には分からないの。その場にいた黒渦団の兵にも確認したけれど、アシエンの言葉は意味不明だったらしいわ」

 

 ヤ・シュトラは眼光を鋭くし、私の目をしっかりと見据える。

 

「けれど、貴方はきちんと会話をしていた。貴方は彼らの言葉が理解できるのかしら?」

 

 むむむ。そこを突いてくるとは。アシエンの言語って、超える力が無いと理解できないんだったか。流石はヤ・シュトラ。シャーレアンの賢者は名探偵の才能もあるみたいだ。ごまかす理由も無いし、ここは正直に答えよう。

 

「私は異なる言語でも理解できる。『言葉の壁を超える力』と言えば分かるだろうか」

「なるほど、貴方は超える力を持っているのね。実は、私たちの組織は超える力を含めた特別な能力を持っている人を集めているの。もし良ければ、話を聞いてくれないかしら」

 

 了承するとヤ・シュトラは暁の詳細について説明をしてくれる。ゲーム内の暁と大差は無いようだ。しかしなんと、組織に入ると任務に応じて給料が出るとの事。1ヶ月みっちりと仕事をした場合、月給30万ギルだそうだ。これにはヒカセンも驚愕である。ゲーム内じゃテレポ代だけでいっぱい労働させられたぞ、おい。

 

「やりたいことがあるから組織に入るのは遠慮しておこう。しかし、用事が片付いたら前向きに検討しようじゃないか」

 

 暁に入ることは良いのだが、サスタシャやタムタラのイベントを放置したくは無い。入るとしたら、メインストーリーにおける加入時期に合わせたいところだ。

 

「それならリンクパールを渡しておくわ。暁に入りたくなったり、アシエンにまた出会ったりしたら連絡してね」

 

 リンクパールを貰い、掌の上でころころと転がしてみる。この真珠が無線やら携帯電話の代わりなわけだ。ファンタジーすごい。

 

「ありがとう。何かあれば連絡しよう。ところで、ヤ・シュトラはアシエンを知っていたけれど、他の場所でも暗躍していたのか?例えば、ウルダハやグリダニア」

 

 私が知りたいのは他のヒカセンの情報だ。彼らが存在しているのであれば他国のアシエンをきっと妨害していることだろう。

 

「貴方が事件を解決した前後にウルダハ、グリダニアでもアシエンが事件を起こしているわ。どちらも冒険者によって解決済よ」

「その事件を解決した冒険者の特徴を聞いてもいいか?」

「いいわよ。グリダニアの事件を解決した冒険者の名前は『りゅーさん』と『ミスティア』。竜騎士と詩人のペアね。ウルダハの事件を解決したのは『ブロント』『霊夢』『咲夜』。ナイト、白、忍者のPTね。どちらもかなりの実力者らしいわ」

「なん……だと……!?」

 

 驚愕に思わず目を丸くしてしまう。純粋なFF14だと思っていたら、陰陽鉄クロスだった。来た!メイン盾来た!これで勝つる!?

 

「あら、もしかして知り合いだった?」

「いや、私が一方的に知ってるだけだ」

 

 そう言ってごまかし、適当な雑談をした後にヤ・シュトラと別れた。ちなみにヤ・シュトラはくさいというネタがあるが、特にくさく無かった。風評被害である。

 

 

 

 一人になった私は再度考察する。ここが純粋なFF14の物語なら異物はブロントさん達。陰陽鉄ベースの話なら異物はむしろ私のほうだ。果たしてどちらが光の戦士なのか。ブロントさんが脇役というイメージは無い。やはり、彼が光の戦士で主人公であり、私はそれを支えるパーティメンバー役なんだろうか。どちらにせよ、メインクエストに関わっていけばいずれ分かる。私の知っているシナリオを外れないようにしながら冒険を続けよう。

 

 

 

 数日後、私はリムサの晩餐会に呼ばれた。しかし、特に超える力の発動もマザークリスタルとの邂逅も無く晩餐会が終わる。私が既に超える力持ち・光のクリスタル所持だからイベントが起こらなかったのか、それともブロントさんのほうでイベントが起こったのか。分からないことばかりだ。その後は3国へ親書を届ける依頼も無いまま、サスタシャ攻略の冒険者募集が開始された。

 

 ウルダハ・グリダニア組もサスタシャの攻略依頼を受けたなら、溺れた海豚亭に来るだろう。そう思い、私は毎日溺れた海豚亭に通い、エオルゼアスイーツを食べながら彼らを待つのだった。

 

 それにしてもロランベリーチーズケーキは本当に美味しい。ザッハトルテやババロア・オ・フィグもいいがロランベリーにはかなわない。しかも、ヒカセンの身体はいっぱい食べても全然太らないのだ。資金もたっぷりある。つまり、甘味の食べ放題である。これだけでもエオルゼアに来た甲斐があるというものだ。

 3個目のチーズケーキを食べ終わったところで、溺れた海豚亭に彼女は現れた。

 

「よっす、マスター!一番儲かる依頼を頼むぜ!」

 

 黒魔に相応しい帽子。長い金髪に勝気な瞳。特徴的な『だぜ』。白黒こと、霧雨魔理沙だ。バデロンは一瞬驚いたもののニヤリと笑って本当に一番儲かる依頼を出してきた。

 

「それなら、このサスタシャ攻略だな。海蛇の尾のマディソン船長は賞金首だし、奴らなら財宝をがっぽり貯めこんでるだろうよ」

「おお、ソイツはいいな!腕が鳴るぜ!」

 

 それは黒魔としての腕なのか、サポシとしての腕なのか。私的には後者だと思う。

 

「この魔理沙様の魔法で海賊なんか一網打尽だぜ!」

 

 自信満々に言い切る魔理沙。しかし、海蛇の尾を纏めて『海賊なんか』と纏めてしまったのは良くなかったようだ。溺れた海豚亭で食事をしていたルガディンの海賊が魔理沙に声をかける。

 

「おいおい嬢ちゃん、その格好なら呪術師なんだろうが無謀な事はやめとけよ」

「あーん?」

「サスタシャは海蛇の尾のアジトだ。そこにゃあ何十人と海賊がいる。今、溺れた海豚亭にいる客は20人程度だが、こいつらが一斉に嬢ちゃんに襲い掛かるようなもんだ」

「へっ。この店にいる全員が相手だって私は負けないぜ」

 

 啖呵を切る魔理沙。自信満々に言い切る彼女は自分の勝利を疑っていない。

 

(この店にはレベル60の私もいるんだが……)

 

「流石に今のはカチンと来たぜ。おい、外に出ろよ。サスタシャに行く前に俺が訓練つけてやるぜ」

「おう。私の実力を証明してやるぜ!」

 

 溺れた海豚亭から出て行く二人。店の中にいる客は「喧嘩だ喧嘩!」「俺は嬢ちゃんを応援するぞぉ!」などと盛り上がり、彼女らを追って外に出て行く。私もなんだかワクワクしてきた。酒場での喧嘩とか、ファンタジーの醍醐味だ。魔理沙vs海賊の結果を見届けなくては!

 

 アフトカースルで睨みあう魔理沙と海賊。そして周囲を囲む野次馬たち(私含む)。相変わらず周囲は「いいぞ、やれやれー!」「海賊の力を見せてやれー!」だのヤジを飛ばしている。

 

 私の見立てでは魔理沙はレベル60、退治している海賊がレベル30といったところだ。ゲームであればレベル差のおかげで魔理沙が負けることは無いだろう。しかし、ここはいまや現実。戦法や技によってはどうなるか分からない。

 

「コインが地面に落ちたら決闘開始だ。勝ったほうは相手の言うことを一つ聞く。いいな?」

「おう。私が勝ったら、お前が代金持ちでこの場の全員に酒をおごりな」

 

 魔理沙の言葉に会場が沸く。

 

「いけいけぇ!俺は嬢ちゃんを応援するぞ!」

「やれー!やつの財布を空っぽにしてやれぇ!」

 

 同じ海賊を味方するより、酒の味方をする奴が多い。みんな現金なものである。

 

「へっ、吠え面かかせてやるよ。そら、コイントスだ!」

 

 海賊がコインを空中へ弾く。コインはくるくると何度も回転し、地面に衝突して高い音を立てた。

 

「オラアアッ!」

 

 先手必勝とばかりに海賊が踏み込み、斧を横薙ぎに振るう。魔理沙はその一撃をしゃがみこむように避ける。

 

「ミアズマ……」

 

 そして、しゃがみこんだ体勢から、溜めた力を解放した。

 

「スウィープ!」

 

 しゃがんでいた体勢からを飛び上がるようにアッパーを放つ。昇竜拳こと、ミアズマスウィープだ。決してミアズマバースト(物理)ではない。

これを受けた海賊は1メートルほど打ち上げられ、そのまま地面へ落下して気絶。呪術師にあるまじき、見事な物理攻撃であった。

 

「うおおー!いいぞ嬢ちゃーん!」

「オイオイ、呪術師じゃなくて格闘士かよ!」

 

 華麗なノックダウンに周囲は沸きあがり、魔理沙もノリノリで周囲に応えている。

 

「私にかかればざっとこんなもんだぜ!負けたソイツの財布で酒盛りだあ!」

 

 気絶した海賊から財布を奪い、頭上に掲げる魔理沙。どっちが海賊だ。

 

「嬢ちゃんわかってるぅ!」

「よっしゃあ!タダで酒が飲めるぞ皆!」

 

 さらに盛り上がる観衆。喧嘩とタダ酒の力はすごいらしい。

とはいえ、これは中々良い流れだ。魔理沙と仲良くなるチャンスかもしれない。酒盛りに便乗して、魔理沙に近づいてフレンド登録するのだ。クエスト『魔理沙と仲良くなれ』スタート!

 

 

 

 

 

 酒盛りが開始されて2時間。他人の金の力は偉大で、皆すっかり酔っ払っている。もちろん魔理沙もだ。頃合と見た私はワインを片手に魔理沙の隣の席へ座る。

 

「こんばんは。さっきは見事な戦いだった」

「……アンタ、小さいけど酒とか飲めるのかよ?」

「見た目で判断しないで欲しい。私はこれでも15歳だ。この国ではお酒も飲める。君の仲間にはララフェル族やそれに似た種族はいなかったのかい?」

「あー、確かに私の友達にもいるな。悪かったぜ」

 

 私が指摘すると萃香やレミリアの事を思い出したか、あっさりと納得したようだ。お互いのグラスにワインを注ぎ、飲んだところで本題を切り出す。

 

「そこで、キミの腕を見込んでの話なんだが、サスタシャ攻略にあたって私とPTを組まないか?」

「へぇ、アンタとか」

 

 魔理沙は飲むのをやめると、こちらの全身を値踏みする。

 

「見たところ、大剣や鎧はマジックアイテムみたいだ。アンタ自身からもかなりの魔力を感じるぜ。闇属性か?」

 

 流石は魔法使い。少し見つめただけで、これだけの情報を看破してくるとは。

 

「その通り。私は闇の魔法を用いる暗黒騎士だ。キミが呪術師ならばソロは危険だ。前衛は必要だと思うが」

「なるほど。装備も実力も十分。それに前衛後衛で構成的にもバッチリってワケか。よし、PT組もうぜ!」

魔理沙は快くPTを了承してくれた。酒のテンションもあるかも知れないが、男前である。

「ありがとう。これからよろしく」

「ああ!こちらこそよろしくだぜ!」

 

 

 

 その後は魔理沙と一晩飲み明かした。翌日は案の定二日酔いだったが、エスナ一発で元通り。同じく二日酔いだった魔理沙にもエスナをかけたら大変感謝された。こうして二日酔いは治ったが、サスタシャに行くのに急ぐ必要は無い。3日ほどを魔理沙との戦闘・連携訓練、作戦会議、サスタシャの情報収集、物資の準備を行う期間とし、万全の状態にしてサスタシャに挑むこととなった。

 

 

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