ヒカセンの紀行録   作:Lavian

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そろそろストックが尽きるため、不定期更新になります。


第4話 サスタシャでやるべきこと

~天然要害 サスタシャ浸食洞~

 

 3日はあっという間に過ぎ去り、サスタシャ攻略の日。私と魔理沙はサスタシャに制限解除で突入し、現在クラゲやらコウモリやらを蹴散らしているところである。

 

「海賊のアジトだって聞いたのに雑魚モンスターしかいねーな。本当にここが海賊の住処なのか?」

 

 魔理沙がファイアをポイっと投げれば一瞬で敵が燃え尽きる。肩透かしを喰らってツマラナイという感じだ。

 

「モンスターのいる天然の洞窟をアジトに選んだんだろう。ここはまだ入り口近くだ。奥までいけば海賊がワラワラと出てくるさ」

 

 魔理沙と同様、大剣の一撃で敵を葬りながら応える。

 

「ふーん。この辺りはまだ余裕ってことか。ならさ、セラの魔法を見せてくれよ」

 

 いいこと思いついた!とばかりに魔理沙が提案してくる。勉強熱心な彼女にとって、エオルゼアの魔法は興味深いのだろう。なお、魔理沙には名前がセラで苗字がヒカセン(偽名)と伝えてある。今の私はセラ・ヒカセンなのだ。

 

「了解だ。では、順番に使っていこう」

 

 アンメンド、アンリーシュ、ダークパッセンジャー、アビサルドレイン。ふよふよ浮いてるクラゲやコウモリに魔法を打ち込みながら進んでいく。

 

「なるほど。威力じゃなく速度と手数って感じの魔法だな。大剣を振りながら合間に唱えるための魔法だろ?」

「正解。魔理沙は鋭いな」

「伊達に魔法使いをやってないんだぜ。でもやっぱ、魔法は火力が一番だ。そういうのは無いのか?」

 

 言われて少し考える。ジョブチェンジをすれば可能だが、ダンジョン内でジョブチェンジ可能なんだろうか。ゲームでは制限があったが、今は現実世界。着替えに制限なんて無いはずだが、ギアセットは魔法のような扱い。どんな判定になるか。

 

「試してみるか……ギアセット5」

 

 唱えると、私の身体が光に包まれ、一瞬の内に黒魔になっていた。わざと敵を釣ってから着替えても成功したことから、いつでも着替えられるらしい。これは戦闘の切り札となる機能かも知れない。

 

「おお。いかにも魔法使いっぽい格好になったな。それだと火力重視の魔法を使えるのか?」

「その通り。今の私は黒魔導士だ」

 

 コクリと頷く。ちょうどダンジョンもクァールのねぐらに来た所だ。ゲームと違い、クァールは最初から出現していて、こちらを睨みつけながら低く唸っている。戦闘行動を取る素振りを見せれば即座に襲い掛かってくるだろう。

 

「魔理沙、あのクァールに魔法をぶち込む。見ていてくれ」

 

 宣言し、アビリティを使いながら魔力を高める。イメージするのは太陽。パチュリーのロイヤルフレアにだって負けないぞ。

 

「滅びゆく肉体に暗黒神の名を刻め。始源の炎蘇らん!フレア!」

 

 私の作り出した魔力が太陽となり、クアールを中心に弾ける。爆音が響き、洞窟全体がビリビリと揺れる。

 

「おお!こりゃすげぇ!やっぱ魔法はこうでなくっちゃ!」

 

 魔理沙が歓声を上げ、私は自分の魔法の威力に内心で驚く。どうやら、このエオルゼアでは魔法の威力に比例してエフェクトが派手になるらしい。爆風が晴れた時、そこには炭化したクァールだったものが残っていた。

 

「……これが私の魔法だ。どうだ魔理沙、参考になったか?」

「ああ!私もさっきの魔法を使ってみたくてウズウズするぐらいにな!」

「それならこの先も魔法を中心に戦っていこう。私の使える魔法は108式まであるぞ」

「3桁とかマジかよ!?」

 

 黒魔、白魔、暗黒、召喚、学者、ナイト、占星、忍者。それぞれの魔法(忍術)を合計すればきっとそのぐらい行くだろう。ヒカセンの多彩っぷりをナメてはいけない。行くぞサスタシャ、敵の貯蔵は十分か!

 

 

 

 

 黒魔の魔法を一通り撃ち終わり、巴術士にジョブチェンジして黄色むーたんを召喚したあたりで2ボスの部屋に辿り着いた。いかにも小物なボス、マディソン船長だ。コリブリが本体なんじゃないかと私は今でも疑っている。

 

「オカシラ!テキシュウ!テキシュウ!」

「ああん?何者だ、お前ら」

 

 部下と一緒に酒を飲んでいたらしいマディソン船長が私達に気がつき、酒を捨てて武器を構える。酔ってるせいか千鳥足、構えも隙だらけだが。

 

「私は魔理沙、こっちはセラ!お前達海賊を討伐しに来た冒険者だぜ!」

「海賊よ、今日が貴様達の命日だ!」

 

 魔理沙が箒を向けてビシッと宣言する。私もむーたんの背に乗りながら、同じように指をビシッと敵に向けておいた。決まったな。

 

「冒険者だあ?たった二人でこのマディソン船長に挑むたあ無謀なヤツらだぜ。んん?よく見りゃあ、とんでもねえ美人じゃねーか。へへっ。浚って来た女みてーに、俺の嫁にしてやるぜ」

「嫁にしたいなら武器を構えるんじゃなく、愛を囁くもんだぜ?勘違い野郎にはオシオキしてやらないとな」

 

 マディソン船長の言葉を受けて魔理沙が一歩前に出る。ぶっ飛ばす気満々だ。だが、マディソン船長は魔理沙に対して「違う違う」と手をヒラヒラさせた。

 

「俺が欲しいのはお前じゃない。そこのララフェルだ」

「……ファッ!?」

 

 びっくりして変な声が出た。

 

「ヒューランみてーな年増なんているかよ。いつまでも若いもちもちの肌にツルペタ体系、抱き心地の良い小さい身体。ララフェルこそ最高の女だぜ!」

 

 マディソン船長、ララコンをこじらせて……そういえばサスタシャに囚われてる女性、半分はララフェルだったな。サスタシャにはどんな変態がいるのかと思ったら船長お前かよ。

 

 うわこっち見てる。キモイ。ぶち転がすぞ。

 

「…………」

 

 ふと魔理沙を見れば、無言で魔力に変えてチャージしている。かなりお怒りのご様子。ここはストレス解消にこの変態を一発でぶっ飛ばして貰おう。

 

「魔理沙、許可する。やってしまえ」

「おうとも。乙女を年増呼ばわりした報い、受けてもらうぜ!魔理沙流フレア!」

 

 魔理沙が発動した呪文はフレア。さっき私が見せたのを自分なりにアレンジして発動したらしい。1度見ただけで習得するとは天才か。

 

 フレアの魔法は海賊の手下を中心にして、船長から手前の位置で爆発した。魔理沙流フレアは威力十分で手下が一瞬で消し飛ぶ。後方にいて直撃を逃れたものの、爆風を喰らったマディソン船長は豪快に吹き飛ばされた。

 

「ぐおおお!?て、てめーら覚えていやがれ!」

 

 船長は洞窟の岸壁に打ち付けられたが素早く立ち直り、捨て台詞を残して奥へ逃げていった。

 

「見事な逃げっぷりだな。追うぞ、魔理沙」

「往生際の悪いやつだぜ!」

 

 無論、逃がす気は無い。この世のララフェルを守るため、変態ララコンはこの世から抹殺するのだ!

 

 

 

 

 魔理沙に色んな魔法を見せるため、ジョブチェンジしまくりながらマディソン船長を追い、気が付けばもう3ボス前の地点だ。余裕だとは思うが、念を入れて一番ILの高いメインジョブ、暗黒に着替えなおしておく。

 

「よっしゃ、突撃だぜ!」

 

 魔理沙が足を踏み入れ、私も続く。最後の区画に入った瞬間、鯱牙のデェンが登場し、マディソン船長が斬られる……という光景を予想していたが、それは裏切られた。鯱牙のデェンは登場した。ただし、巨大なクラーケンと共に。マディソン船長はクラーケンの触手によってはるか彼方へ放り投げられて星になった。南無。

 

「フシュー……俺ハ鯱牙のデェン。ヒレナシ共、貴様ラハ強イ。故ニ、コノクラーケンデ海ノ藻屑ニシテクレル!」

 

 ジャンプしてクラーケンの頭の上に乗るデェン。まさかのサスタシャハード開始である。

 

「で、でけぇな。ありゃあ大きさ的に20ララフェルぐらいあるんじゃねーか?」

「単位を何でもララフェルかルガディンにするのはやめるんだ」

 

 軽口を言い合う。だが実際、Lv60の冒険者二人でクラーケンを相手にするのはやや厳しいかもしれない。どうしたものかと思いながら魔理沙を見たが、私と反対に彼女は自信満々に不敵な笑みを浮かべていた。

 

「何かイイ手があるみたいだな、魔理沙」

「おうよ。エオルゼアの魔法は発動が早い代わりに威力が低い。だから、私のオリジナル魔法の最大火力でアイツに風穴開けてやるぜ!」

 

 なるほど、マスタースパーク級ならクラーケン相手でも通じるということか。

 

「その魔法、詠唱時間はどのぐらいだ?」

「溜めれば溜めるほど強くなるタイプの魔法だ。十分な威力を確保するには1分ぐらいは必要だな」

 

 1分待てば体力オバケのクラーケンに有効な魔法が撃てるとは。東方世界の人間マジ怖い。

 

「分かった、ならば私はアイツの注意を引き付けよう」

「了解だ。私はヤツの上空で魔力をチャージするぜ」

 

 箒に跨り、飛行する魔理沙。戦闘中も飛行可能とか、東方勢ずるすぎじゃないか……?

 ともあれ作戦は決まった。後は敵視を惹き付けるのみ!

 

「行くぞ、鯱牙のデェン!海の藻屑になるのは貴様だ!」

 

 暗黒にグリッドスタンスのバフを確認しつつ、接近しながらアンメンドを叩き込む。戦闘開始だ。

 

 ところで、私はヒカセン化してからこれが初の巨大ボス戦になるのだが、間近で見るとクラーケンのデカさが超ヤバイ。視点を空中から俯瞰じゃなく、自分目線にしてクラーケンと戦う場面を想像して貰えばいい。

『セラの身体』が慣れているからか、少々冷や汗が浮かぶぐらいですんでいるが、今後も巨体相手が続くと考えると憂鬱だ。

 

「……ええい、これでも喰らえ!」

 

 思考を切り替えてハードスラッシュ→スピンスラッシュ→パワースラッシュのヘイトコンボを放つ。大剣がクラーケンの皮膚を切り裂くが、どう考えても浅すぎる。ララフェル大剣のリーチ限界だ。

 

 周囲にザパァン!という音が複数鳴り響き、ちらりと見るとわらわら触手が沸いて出てきて私を狙っていた。触手が水を飛ばしたり、私に向かって振り下ろされたり、撒きつこうとしてくる。8本同時に。

 

「シャ、シャドウスキン!」

 

 すごい速度で迫るド迫力の触手達にびびった私は、撒きつこうとしてきた触手を大剣で迎撃しながら防御バフを切る。周囲に展開されたバリアは水鉄砲を霧散させ、叩きつけられた触手を弾き返した。

 

 攻撃を凌ぎ切り、反撃のチャンスがやってくる。触手は『触腕』と『腕』の2種類。この内、優先して狙うべきはストレンジャータイズを発生させてくる腕!私は腕へ向かって跳躍し、プランジカットで切り込みをかける。

 

「やあああ!!」

 

 くるくると空中で横回転しながら、勢いのままにクラーケンの腕をぶった切る。気分はリヴァイ兵長だ。会心の手応え。大剣は一撃でクラーケンの腕を切り落とした。ゲームだったらHPがあるためこうはいかないのだろうが、現実世界では綺麗に決まれば一撃で斬り落とすのも可能ということだ。

 

「キシャアアアア!!」

 

 怒りの声を上げるクラーケン。その衝動のままに残った腕で周囲の水場から水流の竜巻を発生させてきた。ストレンジャータイズだ!

高さ5メートル級の水流の竜巻が私をもみくちゃにしながら空中へ放り投げる。全HPの20%程度のダメージを受けながらも、なんとか体勢を整えて着地したところにインクプロットが振ってきた。

 

 避けきれずに喰らった私は真っ黒。しかもずぶ濡れ。おのれクラーケン、許すまじ!

 

 魔理沙が心配になったが、視界に入った彼女はクラーケンの上空で高度を取っていて、クラーケンの攻撃はどうやっても届きそうに無い位置にいた。ちくしょう!ずるい!

 

 たぷたぷに水と墨が入ったブーツは歩くたびにぎゅっぽんぎゅっぽんと不快な音を立てるが、今は無視だ。大技の後だからか、クラーケンの触手は動きを止めている。攻撃のチャンスだ。ヤツの表皮はいくら斬っても無駄。故に、狙うは一点!

 

「ララフェルをナメるな!」

 

 ダークアーツを発動しながら高く跳躍し、カーヴ・アンド・スピットを載せた大剣をクラーケンの右目に深く突き入れた。びしょぬれのお返しだ!

 

「ぐるああああああ!!」

 

 絶叫を上げるクラーケン。触手を闇雲にブンブン振り回すが、そんな物では私を引き剥がせない。大剣をぐるんと捻って傷を広げてから引き抜き、クラーケンを蹴って遠くへ着地する。これでジャスト1分だ!

 

「待たせたな、セラ!これが魔理沙様のオリジナル魔法だぜ!星符『ドラゴンメテオ』!」

 

 クラーケン上空の魔理沙は八卦炉を真下に向け、そこから七色に輝くごん太ビームを照射。極光がデェンとクラーケンを飲み込んだ。その破壊力は凄まじく、洞窟全体が地響きでグラグラと揺れるほど。それが数秒続き、光が収まるとデェンだったものがクラーケンの上から崩れ落ちた。だが、クラーケンは大ダメージを受けているものの、今だ健在だ。

 

 とはいえ、私に抜かりは無い。こういう場合、敵を一撃で仕留め切れないものとして行動しておくのが歴戦の冒険者なのだから。私はクラーケンの触腕に対し、アニマウェポンを突き立てて貫通させ、地面に縫い付けていた。全力で押し込んだ大剣は地面にガッチガチに固定されていて、いくらクラーケンが暴れようとも抜ける気配は無い。これでハルブレイカーノーマルのように逃げられる心配は無くなった。例え逃げずにクラーケンが魔理沙を攻撃しようとしても、彼女は空中で攻撃なんて届かない。

 

 上空の魔理沙を見上げると、アンブラルブリザードによってMPを急速に回復し、迅速魔を使ったところだった。

 

「2発目には耐えられるか?行くぜタコ野郎!星符『ドラゴンメテオ』!」

 

 情け容赦ない極光がクラーケンを飲み込んでいく。2度目の光が収まってもクラーケンは生きていたが、所々炭化し、弱りきって触手を動かす力も無さそうだった。こうなればもう勝利は確定である。

 

 ゆっくりとMPを回復した魔理沙は3回目のドラゴンメテオを放ち、見事クラーケンを倒しきるのだった。

 

 

 

 

 

 戦闘終了後、私はインクを洗い流すため、水を全身に被った。服が水を吸って重いし、肌に張り付いて気持ち悪い。とはいえ、無事にサスタシャハードを攻略完了したのだからこの程度は些細なことだ。その最大の功労者、魔理沙は大魔法の連発に疲れたのか座って休憩している。

 

「それにしても、とてつもない魔法だったな。あのクラーケンを3発で倒しきるとは」

「ふっふっふ。なんたって、私のとっておきの魔法だからな!」

 

 胸を張る魔理沙。PTを組んでなければ、MIPを上げたいところだ。

 

「ともあれ、ここはサスタシャの最深部のようだ。この洞窟の敵は殲滅したと見ていいだろう」

「っしゃあ!ってことは依頼クリアだな。それじゃあ、お宝探そうぜ!」

 

 私はボスを倒したら帰るだけと思っていたが、魔理沙は当然のようにお宝を探すと言った。

 

「お宝……?」

「海賊なら金銀財宝貯め込んでるに決まってるだろ。で、それらは海賊を討伐した私達が貰う権利があるんだぜ!」

 

 流石は魔理沙だ。サポシは伊達じゃない。

 

「……なるほど。船長を追うのに夢中だったが、道中に金銀財宝を溜め込んだ部屋があったな。ちなみに、私のアイテムBOXは十分に空きがあるぞ」

 

 今やゲームバランスなんて無いのだ。例え最初のダンジョンであろうが、そこに金銀財宝があるなら根こそぎ奪うのみ!

 

「よし、それじゃあ手分けして財宝集めだ」

「目指せ、億万長者だぜ!」

 

 気合を入れてサスタシャをくまなく探索した私達は、合計で5000万ギル相当の財宝を得て仲良く二等分した。私は謙虚なナイトでも光の戦士でも無い。強欲な暗黒騎士、ヒカセンなのだからこれが当然の流れなのだ。

 

 ごちそうさまでした。

 




サスタシャでやるべき事は、間違いなく道中の金銀財宝の回収。
ゲーム本編の光の戦士は謙虚すぎるよね。
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