ヒカセンの紀行録   作:Lavian

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エオルゼアでは異種族同士の結婚は必ず母方の種族になります。
ガレアン人の父とララフェルの母の場合、子供はララフェルになります。

ガレマール本国の設定はよく分からないのですが、本作ではほとんどがガレアンまたはヒューランで、ミコッテやララフェル等の種族はごく少数という設定でいきます。


第7話 激辛ジュースとクシャミ爆弾のコンボでストレスがマッハ

 ゆらゆらと。ふわふらと。真っ白な空間を漂う。手も、足も、肉体の感覚が何一つ無く。唯一存在する意識の中で、ああ、自分は夢を見ているんだなと自覚する。

 

 けれど夢の主人は私であって私では無い。これは、彼女の夢だ。

 

 子供の頃。少女の周りは皆ガレアン人(ガレマール帝国における民族の名前。)ばかりで、ララフェルなんて一人もいなかった。ララフェルの少女は背も小さく、力も弱い。ただ他と種族が違うというだけで意地悪され、両親に泣きついた。母は優しく少女を抱きしめる。父は少女の頭を乱暴に撫でながら、彼女に語った。

 

「幸せは自分の手で掴むのだ。強くなれ」

「強くなる……?」

 

 少女は父を見上げた。

 

「そうだ。世の中は不公平、不平等に溢れている。それを覆したければ、強くなれ。そうすれば皆がお前を認めるだろう」

「私、強くなれるかな?皆よりこんなに小さいのに」

 

 少女は不安そうに父に尋ねる。父は頭を撫でるのをやめ、少女の瞳を覗き込んで言った。

 

「お前は必ず強くなれる。俺の娘なのだから」

「……うん。私、強くなるよ」

 

 幼い少女は父の期待に応えるため、強くなることを誓った。

 

 それから少女は父の言葉を信じて努力した。身体を鍛え、魔法を学び。幾度と無く魔物と戦った。誰よりも貪欲に強さを求め、士官学校の誰よりも強くなった。しかし、父の言葉の通り誰よりも強くなった少女に待っていたのは周囲からの尊敬と恐れ。意地悪されることは無くなったが、少女は昔と変わらず孤独だった。

 

 

 

 

 

「ん……」

 

窓から入ってきた日光に眩しさを感じ、目が覚める。机の上に突っ伏していた顔を上げ、頭を徐々に覚醒させていく。

 

「眠ってしまっていたか。今のは『セラ』の夢か……?」

 

 夢の中で私は私で無くなり、『セラ』の記憶を俯瞰しているような感覚だった。彼女はララフェルである事に孤独とコンプレックスを感じていたようだ。周囲のほとんどがヒューランとガレアン人で、ララフェルは自分と母だけ……なんて状況ではそれも仕方なかったのだろうけれど。

 

 『セラ』の事を私は設定でしか知らない。だから、彼女の記憶を知る手がかりは重要だ。今後も似たような夢を見た場合に備えて、きちんと書き記しておくことにする。

 

 今日はコロセウムの試合も無く、リテイナーと商売の打ち合わせも無い。やる事と言えば、現状の整理とゲーム内未来情報との照らし合わせぐらいだ。それが終わったら、もう一度眠って夢の続きを見ることに挑戦するのも良いかもしれない。そうと決まれば、さっさと情報整理を済ませてしまおう。

 

「これまでの報告では、ブロントさん組とりゅーさん組は合流完了。イフリート撃破後にグリダニアへ移動。トトラクの千獄を攻略完了して、シルフとの友好を結んだ……だったか」

 

 光の戦士ブロントさん達の冒険は順調だ。サスタシャ・カッパーベルが本来のゲームより強化されていたことからイフリートの強化も懸念していたが、報告を聞く限り1段階強化となる真イフリートが出現し、楽々撃破したとのこと。極イフリートだったらまずかったかも知れないが、Lv60の冒険者なら真イフ程度何の問題も無い。

 今朝の報告からすると、今頃はハウケタ御用邸を攻略しているところだろうか。仮にハウケタがハード化していても、彼らなら余裕だろう。

 

 

 

 

 

 ブロントさん達のことを考えていると、机の上のリンクパールが明滅しはじめた。これは通信の合図だ。リンクパールさんは携帯電話並にハイスペックなのだ。

 

「こちら咲夜。緊急事態発生よ。戦力がいるから手の空いてる人はシルフの仮宿に集まってくれないかしら」

 

 リンクパールを取ると咲夜からの緊急連絡が。いったいどうしたのだろうか?

 

「こちらセラ。シルフの仮宿に向かえるが、いったい何があったんだ?」

「……こちらりゅーさん。現在、ハウケタ御用邸で戦闘中だ。向かうには時間がかかる。みすちー、霊夢も同様だ」

「こちら魔理沙、すぐに向かうぜ!」

 

 ハウケタ御用邸の攻略PTはりゅーさん、みすちー、霊夢と聞いている。ハウケタ以外での問題だろうか。

 

「……ブロントさんが蛮神ラムウの元へ一人で向かったわ。いくらブロントさんとはいえ、一人で蛮神を倒せるとは思えない。急いで連れ戻さないといけないのよ」

 

 このタイミングでラムウだって?ゲームの時系列ならラムウはもっと後のはず。イレギュラーな事態が起こっているのか。しかし何故?

 

「咲夜、それマジかよ!?ブロントさんだって、一人で蛮神に突っ込むのは無謀だって分かってるはずだぜ!」

「ブロントさんがラムウに挑む理由は何故だ?詳しく教えてくれ」

 

 理由を問うと、リンクパールの向こうから「はぁ……」という溜息が一つ。

 

「悪い子シルフに散々イタズラされた後、トドメにグラットンソードを盗まれたのよ。それでブロントさんの怒りが有頂天になって、悪い子シルフのボスであるラムウに殴り込みをかけたってわけ。ブロントさん、武器も持たずに出て行ってしまったわ」

 

 ブ、ブロントさん……グラットン盗まれて取り返したいのは分かるけれど、せめて私達の合流を待ってくれてもいいのに。……いや、ブロントさんは煽り耐性無くて沸点低いからそれも無理か。

 

「あー……ブロントさん、グラットンめっちゃ大事にしてるからな。そりゃ取り返しに行くわ」

「そういうわけで、緊急事態なのよ。魔理沙、セラ。貴方達が合流したらすぐブロントさんを追いかけましょう。りゅーさん、ミスティア、霊夢はダンジョンの攻略が完了次第来て頂戴」

 

 了解、と返事をしてリンクパールの通信を切る。どうやら、光の戦士に全てを任せて楽をするという案は無理らしい。光の戦士の先輩として、このヒカセンがサポートしてあげるとしよう。

 

 

 

 

 

~シルフの仮宿~

 

 シルフの仮宿に着くと、そこには既に咲夜と魔理沙がいた。

 

「すまない、遅くなった」

「いや、私も今来たところだから平気だぜ。それで咲夜、ブロントさんがラムウの所へ乗り込んだってのは聞いたけれど、詳しい行き先に心当たりは?」

「いえ……森は広いし、空を飛んでも視界が遮られてしまうから偵察もできないの。ある程度仮宿のシルフに聞き込みをしたのだけれど、ブロントさんの目撃情報もラムウの居場所も大雑把にしか分からなかったわ」

 

 魔理沙が尋ねるが、咲夜は首を横に振って否定。現状では曖昧な情報しか無いことを告げる。けれど、この場には未来知識を持つこの私がいるのだ。

 

「ブロントさんがこの森で危機に陥るとしたら可能性は二つ。迷って遭難か、蛮神ラムウと戦うかだけだ。しかし、遭難したり迷ったら怒りも沈静化してリンクパールの呼びかけに答えてくれるだろう。だから、私達が目指すのはラムウの位置だ」

「けどよー。そのラムウの位置が分からないぜ。咲夜の話じゃおおまかにしか情報が無いんだろ?」

 

 魔理沙の言葉に対し、私は持っている地図を広げた。そしてドヤ顔でラムウへと繋がるエーテライトの位置を指し示す。

 

「問題ない。ラムウへと繋がるエーテライトの位置はここだ」

「セラ、何でこんな詳細な地図持ってるんだぜ?」

「それは確かな情報なのかしら?」

 

 私が出した地図へ懐疑的な視線を向けてくる二人。普通、シルフの住む森の細部まで書かれた地図なんて無いだろうからこの反応も当然かもしれない。だが、地図の出所は言えないので秘密で押し切る。

 

「私はとある経路でエオルゼア全土の詳細な地図を入手しているんだ。他の土地の地図もあるぞ。サハギンやアマルジャの土地だってバッチリ載っている。入手ルートは契約上言えないが、この地図の精度は確かだ。そして、私が指し示した位置にはシルフ族のエーテライトがある」

「他の地図を見てもどれも正確さは十分みたいだから、この地図も信用できそうね。そしてエーテライト……行ってみる価値はありそうね」

「決まりだな。地図があるなら迷わず行けばブロントさんに追いつけるかも知れないし。急いで向かおうぜ」

 

 魔理沙は箒で、咲夜はそのままふわりと宙に浮かぶ。私はチョコボに乗ったが、風脈が無いため飛べなかった。飛行組はやはりずるい……

 

 

 

 

 

 

~シルフ族エーテライト前~

 

 シルフ族のエーテライトへ向かう途中でブロントさんとは合流できた。気絶した悪い子シルフが道なりに何人も倒れており、それを追っていくと「おいぃぃぃぃぃ!」と叫ぶ謙虚な騎士を発見したのだ。しかし、合流したのはいいものの、

 

「グラットンがまだ戻ってきてにぃからここで帰るとメイン盾ができなくえエオルゼアでひっそり幕を閉じることになる。それに不良シルフの親にモンクを言わないとこの怒りはしばらく収まることを知らない」

 

 とラムウの元へ殴りこむ気満々だった。イタズラ被害や愛剣を取られた怒りを除外したとしても、グラットンソードには強力なダークパワーが宿っているから、早急に取り戻さなければ何らかの事件が発生する可能性があるとのこと。どうやら、このままラムウの元へ突入するしか無いらしい。

 

「ラムウ戦が避けられないのは了解した。なら、私が知る限りのラムウの情報を話そう。情報提供元は秘密だから聞いてくれるな」

 

 ラムウは特にギミックがキツイ蛮神だ。仮に極蛮神が出てきた場合、雷球や雷鼓の理解は必須といえる。何も言わないままだと、妖怪球拾いが出てしまうだろうからな。

 

「……全てがこの情報の通りかは不明だが、十分に注意してくれ。後はブロントさん、これを」

 

 武器を失っているブロントさんにはアイテムボックスからIL210のオートクレールを取り出して渡しておく。グラットンには及ばないが、十分な強さのはずだ。さらに、現在の構成がナイト、忍者、黒魔なので私は白魔に着替える。これで戦闘準備は整った。

 

 

「セラお前良いやつだな後でジュースをおごってやろう」

「……どうせなら、ジュースより甘いお菓子がいいな」

「任せろ雪山のロランベリーを作ってやる」

 

 ブロントさんが出したお菓子の名前『雪山のロランベリー』とは、エオルゼアには存在しないFF11のお菓子だ。つまり幻のレシピといえる。これは是が非でも頑張らねばならない。燃えてきたぞ!

 

「ブロントさんもぶっ飛んでるけど……武器に地図に敵の情報。さらにその強さ。セラも相当だぜ」

「貴方の秘密は気になるけれど、今は追求しないでおくわ。でも、仲間になったのだから近い内にきちんと話して欲しいわね」

「ああ。いつ話せるかは分からないが、いずれ話すと約束しよう」

 

 情報提供元についての追及は後日にしてくれるらしい。砂の家のアシエンのスパイ(サンクレッド)の件が片付いたら話そうと心に決める。

 

「よし、準備完了だな。行くぞ皆!雪山のロランベリーのために勝利を!」

「ブロントさん、そのお菓子は私にも作ってくれよな!」

「グラットんを盗んだ罪は重いマジで親のダイヤの結婚指輪のネックレスを指にはめてぶん殴る」

「それは指輪なのかしら?それともネックレス?」

 

 蛮神へ突入する雰囲気なんて欠片も無いまま、私達はエーテライトを使用してラムウの元へ転移するのだった。

 




東方陰陽鉄の動画を見たのが2008年12月。あれから8年。
FF11が出たのは2002年。
もうずいぶん昔の話になってしまったんですね。
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