ザレゴトフィアンマ ~戯言遣いとボンゴレマフィア~ 作:昆布さん
生きてりゃトキさんに出て欲しいところでしたが…
殺して解して並べて揃えて晒して刻んで炒めて切って潰して引き伸ばして刺して抉って剥がして断じて刳り抜いて壊して歪めて縊って曲げて転がして沈めて縛って犯して喰らって辱めてやんよ
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零崎人識が普段どこで寝泊まりしているのかなど誰も知らないし、また、某県某所のアパートにしたって管理しているのは石凪砥石…もとい、零崎問識だ。
舞織については本当にホームがレスで、近場の廃墟なんかをねぐらにしているらしいのだが、では、最近の二人はどこで寝泊まりしているのかというと…
「というわけなんだよー。」
「ふぅん…なんか大変そうなお仕事してるんですねー。いーさん…でしたっけ?」
宿泊料金も払わずに、勝手にいーちゃん達の部屋に押しかけてきているのだ。
まあもっとも、押しかけているという立場上、二人は向かい合わせに配されたソファで寝ているのだが…というか舞織がベッドを一つ占領し、下手をすればいーちゃんがソファにまわされかねなかったので人識が押さえ込み、この状況になったわけなのだが…。で、その人識である。
「おー、おー、まあ、そういうことだからさあ…え?ダメ?んなツレないこと言うなよ…」
携帯電話で先ほどから誰かに電話している。
いーちゃんは現在沢田綱吉に会いに行っており不在。
と、携帯のスピーカーから漏れ出た声に玖渚が反応した。
「おわっ!?ちょっ!」
『あー?どーしたっちゃか?ひとs…』
「わー!ぐっちゃんだー!」
げっ!?暴君!?と電話の向こうで驚いたのは
『なんで人識の電話に暴君が割り込んでくるんですか!?』
「うん、いっしょの部屋にいるから。ていっても僕様ちゃんはいーちゃんにぞっこんなんだけどねー」
人識の耳にはこの時携帯電話の向こう側からズガァァン!と言うまるで雷でも落ちたような音が聞こえた気がした。おらかえせ。と言って携帯電話を玖渚からむしり取ると
「つーかなんなんだよぐっちゃんって。」
と当たり障りのない質問をする。
『知らん…ぐしんらいさんのぐだったらちっとまずいことになるが…』
ちなみに、今のところ零崎一賊に属する殺人鬼は3人。
人識と、舞織と、問識。軋識は表向き死んだことになっており、また、長男、切り込み隊長であった
無論、零崎への覚醒が頻発すれば零崎はまた30人程度の小集団に戻るだろうが、今のところは3人の殺人鬼と1人の脱落者が生存するのみである。
で、電話を終えた人識は何とはなしに窓から外を見やる。
「匂宮…ね…」
そしてふと雑踏に目をやると、見覚えのある人影が見えた。
「いずっ…!」
む。と言いきらないうち日常の雑踏に紛れてそれは見えなくなった。
「どーかしたんですかー?」
後ろからいつもの調子で声をかけてくる舞織に対し、普段以上にぶっきらぼうに人識は答える。
「どーもしねーよ。」
・・・・・
で、どうだった?
狐が聞いた。彼は答えた。会えなかった。と。
鬼は妹を伴って外へ出た。
ちょっとした、観光のつもりだった。
・・・・・
めずらしーですねー。舞織はそういって隣を歩く人識を眺めやる。
自分より少しだけ背の低い兄。しかし今の舞織にとって、彼だけが唯一の家族と言えるのだ(彼女は問識のことも知らなければ、人識が親しくしている識軋騎識が更に上のお兄ちゃん、零崎軋識であることも知らない)。しかしそんな人識も舞織にはつれない。双識のように全国行脚までしているというのに彼の彼女への態度は、やはりどこかよそよそしい。
「お兄ちゃんが自分から誘ってくるなんて」
お兄ちゃんじゃねエよ。と呟いて人識は視線をそらす。
「あれ?普段から白い方だと思ってたんですけど、少し青白くありません?」
「そりゃ気のせいだ。」
などとうそぶいてみせるが、人識の顔色はたしかに悪い。
と言うのも彼は、肉体を酷使しすぎたせいで、全身ガタガタで、寿命も恐らく他人の半分程度になっているのだ。一般的な寿命が80歳としても80÷2で40。余命およそ15年。自分の死期が目に見えて迫っているというのに顔色が悪くならないのは恐らく6年前のいーちゃん位のものだろう。
(殺人鬼だからいい死に方なんて望んじゃならねえ、楽に逝こうとか安らかに逝こうとか、そんなこたあ分かってる、分かってるけど、全く持って…)
「戯言…だよなあ…」
・・・・・
そんなふうにいつになくセンチな気分であった人識は、後ろから声をかけられた。
「なあ、お兄ちゃん、ちょっと道を教えてくれねえかな?つっても人生の道じゃないけどね。ぎゃははっ!」
「ッッッ…!」
驚愕。短く揃えた銀に近い白髪も、標準サイズの腕も、どこもかしこも彼とは似てもにつかないものであったが、しかしその口調は人識にその彼を連想させるのに十分すぎた。
「いず…む…?」
「出夢?ああ、俺の更に一世代前の出来損ないか。ン、まあ俺も出来損ないっていやあ出来損ないだけどな。アイツと違って俺は完全に弱さを切り離せていない。」
まあ、んなこたどーでもいいんだ。と続けるとそいつは言う。
「俺の目的は狐さんの邪魔をしかねないお前を始末することなんだよ。零崎人識。」
どこか落ち着かない。さっきから何故かこいつと出夢を重ねて見てしまう。そんな人識にそいつは叫んだ。
「俺の名は旋律…匂宮旋律だ。さて、それじゃあ…俺は殺し屋!依頼人は秩序!十四の十字架を背負い、これより使命を実行する!」
それに呼応するように、人識は吼えた。
「上等だ!今日の俺は機嫌が悪いからなあ!殺して解して並べて揃えて晒して刻んで炒めて切って潰して引き伸ばして刺して抉って剥がして断じて刳り抜いて壊して歪めて縊って曲げて転がして沈めて縛って侵して喰らって辱めて愛さずもっぺん殺してやんよ!」
匂宮出夢と匂宮旋律に対する決定的な違い。
出夢には愛を向け、プラスからマイナスまで、人識にできることを全て捧げ…旋律には言ったことしか捧げなかった。
・・・・・
「俺の拳は…そうさなあ。例えるとすりゃあクリームだ。進行方向の全てを粉微塵にしちまう。しかも綺麗に刳り抜きながら…だ。」
旋律はそういいながら人識に向けて拳をぶっ放す。
「うぉあ!」
仰け反ってそれを躱し、そしてその勢いにのせて旋律の手をほんの少しだけ弾き飛ばす。
「そんなモンかよ、零崎!」
しかしそれは効くはずのない攻撃。全力で攻撃しても倒せるか倒せないか…位のものだ。
「人識くんっ!」
「ガハッ!」
倒れ伏す人識。彼は独り言のように呟く。その中に、多大な諦観を含んで。
「俺ってさあ…なんもないんだよなあ…」
妹はいる。弟もいる。兄も…表向き死んだことにされているが…いる。人類最強の請負人、戯言遣いの欠陥品。外にもたくさんの人がいて、たくさん助けてくれた。
しかし中は違う。人識にとって、自分の中身が空っぽであれば、それは外側から取り入れることもできない諦めの境地。
諦めか…そういえば、兄貴はずっと自分のことを不合格と思ってただろうがさ…案外アンタ、合格かも知れないぜ?
伊織ちゃん…そうだったな。俺にはまだ、やることが残っている。
だから…こんなところで、こんな失敗作に。
「止まってられるかよ!」
叫び人識はナイフを向ける。
「つーことでだ。こっからが本番だ。」
瞬時に距離を詰めて斬りかかるが、そのナイフは峰のところを片手の指でつまんで止められる。
しかしその後すぐに手を離すと旋律の顔面に手痛いフックを食らわせた。
「ぐうっ!」
気合いと根性で体を動かしている今の人識にとって長期戦はムリだ。だからこそ手早い決着を狙う!
と、その時だ。旋律が不敵に笑っているのを舞織は見た。
「人識くんっ!伏せてっ!」
そして放たれる旋律のストレート。身をかがめた人識の頭上をすり抜け、後ろにあった電柱を中途からへし折り…
「うわぁっ!?」
どうやら一般人らしい、一人バットケースを肩から提げて帰る中学生を強襲する。
「あぶねえッ!」
咄嗟に曲弦で電柱を絡め取り、どうにか彼の頭上に電柱が倒れ込むことは免れた。免れたのだが…
「ーーー!!!」
声にならない絶叫が響き、その中学生の体が崩れ落ちた。
え…?
ウソだろ…?ちゃんと電柱から助けてやっ…!
彼の背中に垂れ下がった一筋のケーブル。
「オラどうしたよ、さっさと続きをやろうぜ?ほらはや…」
「うるせえッ!」
人識の声にびくっと身をすくませる旋律。人識は旋律に向け、歌いあげるように言う。
「それいじょう<こっちへ来るな>!」
言い置いて人識は彼のバットケースから
「それじゃあ、零崎を始めるぜ」
言うや瞬時に距離を詰め、金属バットで顔面を横殴りに吹っ飛ばす。
「なん!?だとォ!?」
「まだだァ!」
続けざまに繰り出された鋏が頬を貫いて右目を潰す。そして鋏を放して上着からもう一本ナイフを抜き放ち、突き出す。それが旋律の左肩を抉った。
「ん…がああああッ!?」
唐突に…糸でも切れたように旋律の左腕が落ちる。だらりと左腕を垂れ下がらせながら、渾身のストレート。咄嗟に交差させて受け止めた金属バットとナイフが折れた。しかし人識には奥の手がある。十指に仕込んだ奥の手が。
「さて…出夢がザ・ハンドだとするならば、テメエはクリームか…たしかに的を射ているが、だったら俺はスティッキィ・フィンガーズってとこかな?」
「クソがァ!くたばりやがれ!俺様必殺の、
そう叫んで拳を振りかぶる旋律に対して、人識は両腕を孔雀のように広げて迎え撃つ。
「
まず最初の一撃で粉微塵を斬り飛ばし…人識の爪には一本残らずダイヤモンドカッターが仕込まれている…続いてもう一度…
「俺に出夢を連想させたことを、後悔しながら死んでいけ!
己に迫る人識の掌。
それが旋律の見た最後の映像だった。
・・・・・
「あ゛ぐぁ゛ッ!」
ミシミシと、何かがきしむ音が聞こえる。
下の方から聞こえてきた。続いて膝の辺りから。人識ががくりと膝を折る。
「が…あああっ・・・ッ!」
「人識くんっ!」
全身が痛みに悲鳴を上げ、その度に人識の体が震える。
「うくッ…畜生…寿命が5年も縮んじまっ…」
アアアアアッ!ひときわ大きく痛みに吼えると、人識はその場に崩れ落ちた。
人識君は俺の中では殺せる善人といったキャラで通ってるんです。
だから曲弦で人助けもしてくれるわけですよ。
ちなみに彼の心の中には今でもかなり重要な位置に出夢がいますから、連想させる者は人識にとって一番嫌う者なのです。