異端契約者のハイスクールD×D   作:コーティカルテ

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はぐれ悪魔

はぐれ悪魔。

 

それは契約を破り主の元を抜け出した悪魔の総称である。

 

中でも主を殺して逃げた悪魔には指名手配がかかり魔界の政府から討伐依頼がかかることがあるらしい。

 

今回のように。

 

時間は夜の10時。

 

深夜というには早く住宅街ではまだ多くの家に明かりが灯っている。

 

だが、住宅街から離れた森の中では人影もなく辺りを照らす灯りもない。

 

そんな静寂と暗闇の中、誓哉達は森を抜け外れにある廃工場へと来ていた。

 

「良い機会だから悪魔の戦いと駒の特性について実戦を見ながら説明するわ」

 

「特性、ですか?」

 

「ええ、ここにいるメンバーは私と誓哉を除いて全員が悪魔の駒を体内に宿しているわ。

 

そして駒には個別に能力が与えられていて、その駒を使った相手に能力を与えるの」

 

 

入り口にたどり着き周りを見回す。

 

暗闇に目が慣れてくると、奥に何か巨大な物体があることに気が付いた。

 

それを認識した直後声が響いてくる。

 

「旨そうな匂いがするなぁ。 

 

1、2……全部で6人か。 くくくっ、今日はツイてるなぁ。」

 

否応なく聞く者に嫌悪感を抱かせる重く低い声を響かせて声の主が姿を現す。

 

上半身は裸の女性だが下半身は見たこともない獣の4本足、大きさは5mをゆうに越え両手には巨大なランスを構える化け物。

 

「はぐれ悪魔バイザー、恩を忘れ主をを手にかけたその罪万死に値する! 

 

跡形もなく消し飛ばしてあげわ!」

 

自身の敗北など微塵も考えていないのだろう。

 

下品な笑い声が工場に響き渡る。

 

「クハハハハッ!

 

おもしろい、やれるものならやってみるが良い!」

 

「祐斗、いきなさい」

 

「はい、部長!」

 

答えると同時木場がバイザーに向かって飛び出していく。

 

「祐斗の駒は騎士、その能力は圧倒的なスピード」

 

バイザーへと駆ける木場の早さに、ほ〜と感心している誓哉と目ですら追えずキョロキョロしている一誠。

 

「そして祐斗は自身の剣技と会わせることで神速の剣士になるわ」

 

木場が持つ剣にバイザーの両肩から先が切り飛ばされる。

 

あまりの苦痛に悲鳴が上がる。

 

「ギャアアアア!!! キ、キサマよくも私の腕を…ッ!

 

許さんぞッ、死ね!」

 

足元に子猫がいるのを見つけ、激情にまかせて巨大な足を振り降ろす。

 

それを呆然と見上げる子猫。

 

バイザーの足が直撃した。

 

質量だけで考えれば自身の何十倍もあるバイザーの一撃を子猫が止められるわけもない。

 

巻き上げられた砂が晴れれば子猫の無惨な死体がある、はずだった。

 

「な・・・ッ!」

 

バイザーの顔が驚愕に歪む。

 

振り降ろした足を子猫が支えていたのだ。

 

「子猫の駒は戦車その能力は桁外れの耐久力と馬鹿げたパワー」

 

「ぶっ飛べ・・・」

 

体格で圧倒的に劣る子猫がバイザーを持ち上げ、壁へと投げ飛ばす。

 

抵抗らしいことを何一つできずに壁に叩きつけられ、地面へ倒れ伏すバイザー。

 

その頭上にはいつもと異なる笑みを浮かべた朱乃の姿があった。

 

「うふふ♪ それでは、いきますわよ。

 

ちゃんと耐えて下さいね♪」

 

雷が迸りバイザーの体を焼いていく。

 

「そして朱乃の駒は女王。 

 

王を除く全ての特性を備えた最強の副会長よ」

 

まともに悲鳴もあげられないバイザーに対して容赦なく雷をあびせる。

 

「もう終わりですの? 

 

うふふ♪ そんなの許しませんわ。 

 

もつと声を聞かせてくださいな♪」

 

「朱乃は究極のSなの。

 

だから相手が苦しめば苦しむほど執拗に攻撃するわ。 

 

でも安心して、仲間には基本的にとても優しいから。

 

今度甘えてみなさい? 喜んで甘えさせてくれるから」

 

絶対に朱乃を怒らせないようにしようと心に誓う誓哉と一誠をよそに朱乃の攻撃は続いた。

 

数分後、そこには息も絶え絶えとなった、バイザーの姿があった。

 

「最後に何か言い残すことはあるかしら?」

 

リアスが片手にどす黒い魔力を集めながら問いかける。

 

「クククッ、最後ね・・・」

 

突如笑い出しバイザーに不審感を覚えるリアス。

 

「何がおかしいのかしら、気でも触れたの?」

 

「いやーなに、そうだな確かに最後だな」

 

バイザーの腹の部分に一本の線が入る。

 

「お前のなぁぁぁぁぁ!!」

 

次の瞬間、その線から何かが飛び出してきた。

 

これがバイザーの奥の手、相手が油断して近づいてきたところで本体が腹から飛び出し相手を殺す。

 

力で劣るバイザーはこの方法で主である上級悪魔を殺し、はぐれとなったのである。

 

例にもれず完全に油断していたリアスはじめ突然の事態に対応が遅れる。

 

主と同様バイザーの牙がリアスを貫く――――事は無かった。

 

ゴッ!!

 

リアスの前に踊り出た一つの影が、球体上の本体を地面に叩きつけていた。

 

「誓哉・・・?」

 

「・・・・・・あ」

 

間の抜けた声を漏らして自分が異常な反応をしてしまったことに気が付いた。

 

普通に考えて今のタイミングで誓哉が反応できるはずがないのに。

 

その証拠に周りにいるオカルト研究部の面々からは疑いと好機の視線が向けられていた。

 

そうこうしているうちにリアスの元へと部員たちが集まり、各々感想を口にした。

 

「凄いね誓哉君・・・。僕より早いんじゃないかい?」

 

「誓哉先輩、グッジョブです」

 

「ほんとにすごいですわ、うふふ♪」

 

色々思うところはあるのだろうが、部長であるリアスを救ったということでひとまずは全員が称賛を口にする。

 

そして、ひと段落つき改めてバイザーと対峙する一向。

 

「改めて、言い残すことはあるかしら?バイザー」

 

「………コロセ」

 

「そう、ならば消し飛びなさい」

 

再度手に集めた黒いオーラをバイザーに向けて投げつける。

 

それが直撃すると同時にバイザーの体が跡形もなく消滅した。

 

ほーと感心したように見ていると朱乃が誓哉達の近くに来る。

 

「触れた者すべてを消し飛ばす滅亡の魔力を持った侯爵家のご令嬢。

 

若手悪魔の中では天才と呼ばれるほどの実力の持ち主。

 

別名、紅髪の滅殺姫《べにがみのルイン・プリンセス》。

 

それが我らが部長リアス・グレモリーですわ」

 

こちらを振り返るリアス。

 

「お疲れ様。

 

さあ、帰りましょう。

 

それからセイヤ、イッセー明日から私を呼ぶ時は部長でお願いね」

 

 

それを最後に各々帰路に就いた。

 

部員たちと別れ一人帰路を歩く誓哉。

 

ふと足を止めると空を見上げ息を吐き出した。

 

「やっちまった・・・」

 

もちろん先ほどのバイザーとかいう悪魔の攻撃に割り込んでしまったことである。

 

(確実に不審に思われたよな・・・あれ)

 

はぁ、と再び溜息が漏れるとどこからともなく笑い声が響いてきた。

 

(カカカッ、まぁあれは仕方ないだろ。

 

お前が止めなきゃ殺されてたぞあの女)

 

(そりゃそうかもしれないが・・・)

 

できることなら平穏無事に過ごしていきたいと思っている誓哉にとって、わざわざ渦中に首を突っ込むような真似はしたくなかったのだ。

 

だが今回の一軒で間違いなく自分に疑いを持ったことだろう。

 

(はぁ、メンドくせ・・・)

 

まぁそれはそれとしてこうなってしまった以上いくつか確認しておかなければいけないことが出てきた。

 

(おいヴェル、確かお前こっちに来るときほとんどの『契約』に制限掛けられてるんだったよな)

 

(そうだな、あの『異界の門』を通った時にほとんどが使用不可になってるな)

 

うえ~と思いっきり顔をしかめる誓哉。

 

過去に起きたことを考えるとそれを失ったことに落胆せざるを得なかった。

 

(まぁそう悲観することもないだろう。

 

使えないと言っても『契約』が解除されたわけじゃない。

 

休眠状態になっているだけでもう一度目を覚ましてやればそれまでの経験値は還元されるはずだ)

 

(そうか・・・、まぁ全くのゼロじゃないだけましと思うことにするか・・・。

 

それはそうとお前自身の力はどうなんだ?)

 

(そっちも似たようなもんだな。

 

結局『あいつら』も俺の力の一部みたいなもんだからな。

 

あいつらが制限されているせいで、俺の力も段階的に制限されちまってるな。

 

まぁそれでも今日あの場にいた連中よりは強いからな。

 

よっぽどのことがない限り危機にはならないさ)

 

と楽観的に笑っているヴェルだったが誓哉本人はあまり楽観的になることはできなかった。

 

自分は何のためにこの力を手に入れたのか、それは誓哉が自身に誓ったことであり誓哉を形作る根幹を支えているものである。

 

誓哉は答えが出ない問答を繰り返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideリアス

 

床に就いたリアスは今日の出来事を思い返していた。

 

いや、その表現は正確ではない。

 

誓哉のことと言い換えたほうが的確であろう。

 

(バイザーの一撃を防いだあの速度・・・どう考えてもおかしい)

 

裕斗ですら不意を突かれ動くことすら出来ない中で、いくら近くにいたとはいえ間に合わせたスピードは明らかに普通ではない。

 

(確か肉体強化の魔法が使えると言っていたけど・・・いえ、違うわね。

 

仮に魔法による効果だとしても少しかじった程度の練度ではないし・・・)

 

最初から何かを隠していることはわかっている。

 

だから入部させて近くで監視しようとしたのだし、おそらくはそのことに何かしら関係があるのだろう

 

ベッドの上をしばらくゴロゴロしながら考えていたが諦めたように大の字になる。

 

(とはいうものの・・・情報が少なすぎて何とも言えないわね。

 

まぁ、敵対するつもりもひとまずないみたいだし、しばらくは様子見かしら)

 

考えることを放棄したリアスの意識は、そのまま闇の中へと落ちて行った。

 

 

sideリアスend

 

 

 

 

あれから数日、正式にオカルト研究部の一員として過ごしてみた感想としては、なんというか驚くほど平和だった。

 

オカルト研究部は放課後に表向きの活動をして、夜に再度集まり悪魔の仕事を行うんだが………

 

 

現在部室にはイッセーを除いた部員全員がいる。

 

イッセーはというと、チラシを配りに行っていた。

 

あの日一誠が持っていたのと同じものだ。

 

何でも初めのうちはこうした下積みから始めるのが一般的なのだそうだ。

 

さて話を戻そう。

 

現在部員たちは各々自由に過ごしていた。

 

俺と木場は向かい合ってチェスなんか指していたりする。

 

女子メンバーは朱乃が入れた紅茶とどこぞの高そうな焼き菓子で優雅にティータイムなぞ楽しんでいた。

 

今日がたまたまこう、というわけではなく部室に顔を出すようになってからの数日ずっとこんな感じだった。

 

気になって木場に一度訪ねてみたところ、

 

「うーん、毎日依頼があるわけでもないしね。

 

依頼がこないときは大体こんな感じだよ。

 

誓哉君は特に依頼を受けたりするわけでもないんだし、何か持ち込んだ方がいいかもね」

 

とのことだった。

 

周りを見回してみると確かに、雑多な品が所狭しと並んでいた。今使用しているこのチェスもその中から引っ張り出したものである。

 

ちなみにこの施設、外観こそ今にも倒壊しそうな趣だがその実魔界の技術なぞが使われているのでかなり丈夫に作られており、備品に関しても衣食住何不自由なく生活できるだけのものが置かれている。

 

そんなことを考えていると、次の手を考えて唸っていた木場の足元に魔法陣が展開された。

 

「お呼びみたいだ、続きはまた今度だね」

 

「裕斗、よろしくね」

 

「はい、それでは行ってきます」

 

相手に逃げられいきなり手持無沙汰になった誓哉にリアスが声をかけてくる。

 

「私が相手になりましょうか?」

 

ちなみにリアスから誘われるのはこれが初めてではない。

 

これまでも何回か相手をしたのだが誓哉が全勝しており、リアスが若干意地になっている感もあった。

 

だが今回は今後のことも考えて趣味に手を出してみることにした。

 

「いや、遠慮しとくわ。

 

それよりも御三方、まだティータイムは続くのか?」

 

「そのつもりだったんだけど、お茶受けを切らしてしまったのよ。

 

もう少し在庫があると思っていたのだけど」

 

近寄りながら伺うと確かに、空になった容器だけが鎮座していた。

 

特に子猫は普段は分かりにくい顔に珍しく残念そうな表情がはっきりと浮かんでいた。

 

「ならちょうどよかった。

 

部長、ちょっとキッチン借りるぜ?」

 

「?ええ、構わないけど・・・」

 

そう言って誓哉はいくつかの食材をもってキッチンへと消えていった。

 

待つこと10分、三人の前には見事なフレンチトーストが並べられた。

 

外側はカリッと焼き上げられているのに半分に切られた断面からはとろとろふわふわの中身が顔をのぞかせている。

 

焼き立てだからこそのたち昇る甘い香りはたまらなく食欲をそそる。

 

最後にかけられたメープルシロップと脇に添えられたアイスクリームがが何ともニクイ。

 

リアスと朱乃信じられないと言った様子でエプロンをつけた誓哉を見つめ、子猫は皿が出されてから一回の瞬きもせず食い入るようにフレンチトーストを見つめていた。

 

「これ本当にあなたが作ったの?

 

こう言っちゃあれだけど、信じられないわ・・・」

 

「あらあら本当においしそうですわ、うふふ」

 

「・・・・・・」

 

なんだかんだ言いつつ目の前に出された品に興味があるのか三人ともフォークとナイフを手に持っている。

 

子猫に至ってはナイフとフォークが戦車の力で壊れるのではないかと思うほど強く握りしめ「早く食わせろ」と言わんばかりの視線を送ってきた。

 

「冷めてもよくないしな、あったかいうちにどうぞ。 出来れば最初はなんも付けずに食べてみてくれ」

 

言われた通りそのままのフレンチトーストを口に入れた。

 

口の中に濃厚な甘さが広がる。

 

かといってしつこいわけではなく、トロトロの中身を飲み込めばすぐ次が欲しくなる絶妙な味付けである。

 

「横のアイスをのせると違った味わいになるぞ」

 

言われるがままアイスをのせてもう一口、まだ温かいフレンチトーストと冷たいアイスが絶妙のハーモニーを奏でる。

 

リアスと朱乃はあまりの驚きに動きを止め対照的に一心不乱に食べ続ける子猫。

 

そのようすに満足して口を開く。

 

「気に入ってもらえたみたいだな」

 

それまで動きを止めていた二人が誓哉を見上げてくる。

 

「ええ、とても美味しいわ」

 

「本当に、とても美味しいですわ」

 

「そいつはよかった。

 

質問なんたが、仮にこれを続けるとして予算って出してもらえるのか?

 

もちろんできたものは還元するし、普通の料理も作れるぞ」

 

「そうね、私は良いと思うけど・・・朱乃はどう?」

 

「良いと思いますわ。

 

いちいち買うよりも経済的ですし、何より美味しいですわ」

 

そう言ってパクリッ、フレンチトーストの続きを口にする。

 

最後に子猫の意見を聞こうと目を向けると、

 

「・・・おかわりです」

 

口にアイスをつけながらおかわりを要求する子猫がいた。

 

「聞くまでもなかったわね」と肩をすくめ苦笑をもらす。

 

それが了承のサインだった。

 

誓哉はリアスが反応する前に手に持ったティッシュで子猫の口についたアイスを拭きながら、皿を受けとり頭を撫でる。

 

「かしこまりました、お姫様」

 

子どものようにアイスを拭いてもらったのが恥ずかしいのか、頭を撫でられたのが恥ずかしいのか顔を赤くしながら皿を差し出す。

 

誓哉が用意をするため台所に向かうと、頭を撫でられていた子猫が何か残念そうな顔をしていた。

 

以外に思ったリアスが声をかけようとしたとき、出入口の扉が勢いよく開いた。

 

「部長、本日の仕事終了しました!」

 

そうして席についた一誠と子猫そして今度は自身の分も持ってきた誓哉の5人でのお茶会は部活終了まで続いたのだった。

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