立花響の中の人   作:数多 命

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頭の中の映像を、うまく表現できないもどかしさよ・・・・!


12ページ目

『―――――どうやって仲良くなったか?』

「はい」

 

放課後。

リディアン音楽院の、寂しい一角。

人目を気にした響は逃げるように隠れると、通信を繋げた。

画面の向こうの女性は、金髪を揺らして首をかしげる。

 

「ごめんなさい、忙しいときにこんなお話。だけど、あなたなら何か分かるんじゃないかって」

 

申し訳なさそうに眉を下げながら、しかしはっきりした口調で告げる響。

女性は少し、考えて、

 

『わたしの話は、遥から聞いているよね』

「はい、大分かいつまんだ内容でしたけど」

『あはは、何ていったか簡単に想像できるなぁ』

 

『辛気臭い顔にイラっと来たので、二人掛かりでぶん殴った』なんて、簡略しているにも程がある。

というか、小学生にあるまじき友情の生まれ方だ。

さらに付け加えるなら、もう一人はあくまで話し合うためにぶつかったのであって。

別にイラっと来たわけでも、乱暴を働きたかったわけでもないことをここに明記しておく。

聞いた当初に抱いた突っ込みを思い出していると、女性もまた渇いた笑みをこぼした。

 

『響は、その子が気になるんだね。わたしに似た子がいるのかな?』

「・・・・そんなところです」

 

穏やかな見守る目で問いかけられ、今度は響が考え込む。

脳裏に浮かぶのは、何度もぶつかった少女のこと。

 

「何度もぶつかって、お互い傷つけあって・・・・だけどわたし、あの子のことをどうしても嫌いになれなくて、完全に敵とは見れなくて」

 

戦いを重ねるたび、拳を重ねるたびに。

かすかに垣間見えてくるのは、彼女の慟哭。

荒々しい殻の内側で、何かを訴えているのを感じ取っていた。

 

『何かが引っかかるんだね』

「はい・・・・」

 

機密のこともあるため、抽象的な表現となったが。

画面の彼女は、大体の内容を理解してくれたらしい。

微笑を称えたまま、小さく何度も頷く。

 

『・・・・あの頃のわたしはね、母さんにまた笑って欲しくて、とにかく我武者羅に頑張ってて』

 

昔を想起しているのだろう。

外した視線は、虚空を見つめている。

 

『アレを集めることだって、本当はいけないことなんだって分かってた。でも、母さんのためだって思うと、中々歯止めが利かなくって』

 

あはは、と苦笑い。

 

『そんな頑なで寂しい心に気づいてくれたのが、あの二人だった。間違った方に行ってたわたしを、何度も引き止めてくれて』

 

響も静かに相槌をうちながら、思う。

『ぶん殴った』などと表現しつつ、何だかんだで情に厚い部分がある人。

しち面倒だの気まぐれなど、無責任な発言を繰り返しながら、しっかり見守ってくれる人。

響の憧れる師匠とは、そういう人物だ。

きっと、彼女が殴ろうとしたのは、画面にいる女性ではなく――――。

 

『響』

「ぁ、はい!」

 

思考に沈んでしまっていたらしい。

呼ばれる声に、現実に引き戻される。

 

『ぶつかることも大事だよって教えたよね』

 

こっくり頷く響。

 

『だけど、言葉が無意味と言うわけじゃないんだよ。わたしも、二人の言葉に何度も揺れたから・・・・本気の、友達になりたいっていう思いが、伝わったから』

 

女性の視線が下に落ちる。

恐らく、握った手を見つめているのだろう。

 

『だから、響も言葉で伝えるのを諦めないで。篭った思いが本物なら、きっと相手にも伝わるから』

「・・・・はい!」

 

拳を握り、気合十分な響を見て満足したのか。

女性もまた、笑顔で頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

「――――こんにちは」

「おや、いらっしゃい」

 

リディアン近郊の商店街。

その一角にあるお好み焼き屋『ふらわー』。

一人暖簾をくぐった未来に、女店主が声をかける。

ちょうど余裕のある時間帯なのか、店内には未来以外の客は見当たらなかった。

 

「今日は、普通の倍食べるあの子はいないんだねぇ」

「はい、わたし一人なんです」

 

カウンターに座りつつ、少し沈んだ声で返事する未来。

 

「それじゃあ、おばちゃんがあの子の分も食べちゃおうか?」

「いえ、わたしが食べます・・・・今日は、お腹ぺこぺこで」

 

女店主はにこにこ笑いながら冗談めかすと、未来は再び沈んだ声。

実際、未来は思い悩んでいた。

―――――結局今日に至るまで、響がどこで何をしていたのか。

その全てを聞けていない。

響が戦士として覚醒して、昼夜問わずに駆け回り始めてから、なお更だった。

先日になって、やっと向こうの友人である少女について教えてもらったのだが。

写真の中で、件の少女と肩を組む響の笑顔は、未来には覚えの無い無邪気なものだった。

 

(わたしの方が、響と・・・・)

 

じわっと、暗い感情が浮き出したところで、未来は首を振った。

疲れきった理性が、見ず知らずの人間を責めるなんて、と押し留めたのだ。

 

(ダメだなぁ・・・・)

 

小さく、ため息をついたときだった。

 

「知ってるかい?未来ちゃん」

 

いそいそとコテを扱う女店主が、口を開く。

 

「お腹減ってるときに考えごとしてもね、ロクなことは思い浮かばないもんさ」

「・・・・そうなんですか?」

「そうとも」

 

焼きあがった生地に、ソースとマヨネーズ、それから青海苔と鰹節をかけていく。

皿に乗せた出来上がりを、未来に差し出す。

 

「お腹いっぱいになれば、きっといいこと思い浮かべるよ」

「・・・・はい、いただきます」

 

どうやら、悩んでいることを見抜かれていたらしい。

店主ににっこり笑いかけられ、未来は心がほぐれていくのを感じた。

 

(また来るときは、響と来よう)

 

ふわっふわのお好み焼きに舌鼓を打ちながら、未来はぼんやり思うのだった。

 

 

 

 

 

閑話休題。

 

 

 

 

ふらわーのお好み焼きに、お腹も心も満たされた帰り道。

鼻歌を歌いだしそうな上機嫌さで、未来が歩いていると。

道の向こうから、響が歩いてくるのが見えた。

 

「あ、未来ー!」

 

こちらに気づいた彼女は、満面の笑みを浮かべて手を振ってくる。

そのまま駆け出そうとして、何かに気づいたように立ち止まった。

突然あさっての方向を見た響に、未来は首を傾げるも。

そちらが来ないならと、駆け寄ろうとして。

 

「ッ未来!きちゃダメだッ!!!」

 

鋭い、警告の声。

よくよく見れば、響の顔はいつもの太陽のような笑顔ではなく。

業火のように切羽詰った表情だ。

怒鳴られたことで、一瞬立ち止まる未来。

それが仇となった。

どん、と。

響の見ていた方向が爆ぜる。

未来の周囲が陰る。

何事かと上を見上げて。

乗用車が一台、落ちてきていた。

 

「・・・・・・・・・ぇ」

 

頭がパンクする。

状況を飲み込めず、ただ呆然と凝視するしか出来ない。

 

(あ、死ぬ?)

 

やっとのことで、それだけを理解した瞬間。

体に衝撃と、温もり。

響に抱きしめられたようだ。

守るように抱えた響は、片手を上に突き出して。

 

「求むは盾ッ、鋼の守りを我が手にッ!」

 

早口で、唱えたと思ったら。

澄んだ音と共に、()()()()()()()()()()()()()が展開された。

驚く間もなく、陣に車がのしかかる。

響は、少女の細腕にはありあまる重量に数秒耐えると、雄叫びを上げながら振りぬいた。

投げ飛ばされ、爆発する車。

 

「ひ、響・・・・」

 

爆風から庇われた未来は、ただただ不安げに見上げるしか出来ない。

そんな友人を安心させるように、響は静かに微笑んだ。

と、物音。

二人そろって目を遣れば、白銀の鎧に身を包んだ少女が睨んできている。

未来にはとんと心当たりがなかったが、響は違ったようだ。

気遣わしげに未来を離すと、ゆっくり立ち上がって少女と向き合う。

 

「てめぇ、今のはどういうこった・・・・!?」

「・・・・どうもこうもないよ、こういうこと」

 

ドスの効いた声に臆することなく。

先ほどの陣を手のひらサイズで展開しながら、こともなげに答える。

未来は、シンフォギアの機能の一部かと思っていたのだが。

どうも違うようだ。

束の間、両者は睨み合うが。

 

「――――――諦めていいって、わけじゃないよね」

 

やがて、響が口火を切る。

 

「でも、逃げていいわけじゃ、もっとない」

「・・・・何がいいたい」

 

返事の変わりに、唱える。

ギアを纏い、構える響。

 

「一回、全力で勝負しようよ。小細工も何も無い、本気を越えた、本気の勝負」

「・・・・は」

 

じゃらり、鋼鉄の鞭が解き放たれる。

 

「上等だ、吠え面かくんじゃねえぞォ?」

「こっちの台詞」

 

闘志で、大気が震えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーおー、若いっていいわねぇ。うらやましいわぁ」

 

 

 

「さて、響に目が向いている間に色々やっときましょ」

 

 

 

「えーっと、特機部二の座標はっと・・・・」




と、いうわけで。
ネタばらし準備回でした。
お師匠が企んでます。
ネフシュたん逃げて超逃げて。
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