そんなお話です。
@月㏄日
あれから、わたしの周囲に色々と変化があった。
未来は正式に、外部協力者として登録されることになった。
思えば、わたしの装者デビューから何かと巻き込まれまくっているので。
そっちの方が安全かもしれない。
弓美ちゃん達いつもの三人は違うけど、何かあったら力になるといってくれた。
それから、師匠達。
『クリスちゃんお持ち帰り』の件で元々お上に睨まれていたらしいけど、今回の一件でついに呼び出しをくらったらしい。
といっても叱られにいくとかそんなんじゃなくて。
ティア姉が言ってた向こうの連中が、いよいよもってとんでもないことになっているようだ。
だから『見逃すから、こっちに戻って戦力になってくれ』と、むしろ頭を下げられたとか。
とはいえこっちのこともほっとくわけにはいかないので、リーゼさん達が残るらしい。
で、クリスちゃんはどうなるかって話になるんだけど。
なんと、うちの装者として働くことに。
アリアさん曰く『これでクリスに何かあろうもんなら、内通者は見つけたも同然』だそうだ。
『あたしらの苦労のためにも、そんな大間抜けじゃないことを祈る』とも。
ちょっと挑発的すぎじゃないですかねぇ・・・・。
@月B日
久々にモルドから連絡があった。
あの子と話すのは卒業式以来だから、かれこれ半年ぶりになるのかな。
わたしがこっちに来ちゃったもんだから、会うことすら難しくなっちゃったしね。
モルドの方は騎士団の巡回であっちこっちしているらしい。
ティア姉達が追っている連中のことで、てんてこ舞いだと言っていた。
大変と言っている割には楽しそうなあたり、相変わらずの戦闘狂だよなぁ。
いや、そこがモルドの頼もしいところで、いいところなんだけどさ。
わたしも実際何度もお世話になりましたし?
もう、感染者の一人くらいとっちめても驚かないよ、わたしゃ・・・・。
@月M日
未来が、かわいい。
いや、あの!
聞いて、聞いて、聞いて!
あの一件以来、わたしが出動するたびに手を握って来るようになったんだけど。
むっちゃ可愛いの!
しっかり手を繋ぐんじゃなくて、遠慮がちに『きゅっ』ってしてくるのがいじらしくて!
もう!もう!
それに加えて『いってらっしゃい』とかはにかまれてみろォ!!
やる気以外の何が出るってんだこんちくしょうめッ!!!!
お陰でここんとこの出撃は、全部無傷ですんでます。
未来の愛が滾っているからね!しょうがないね!
@月S日
今日は休日だったので。
クリスちゃんの歓迎も兼ねて、みんなでデートすることに。
翼さんもクリスちゃんも普段いかないとこに戸惑っているみたいだったけど、楽しそうだった。
で、途中なんとヴィヴィちゃん達と遭遇。
せっかくだし、ということで、一緒に遊ぶことに。
思えばすんごい大所帯だったよなぁ。
そうそう。
それで、みんなでカラオケにいったんだけど。
翼さんの選曲にはびっくりした、まさか演歌を歌うとは思わなんだ・・・・。
いや、様になってたけど、かっこよかったけど!
ヴィヴィちゃん達もノリッノリで合いの手入れてて、とっても満喫した様子。
年下の子達に囲まれて、クリスちゃんもすっかり打ち解けたみたいだ。
最後にアドレス交換していたのは、何だかほっこりした。
そういえば、帰り際翼さんがすっごく優しい顔してたのが気になった。
未来もなんだか距離が近かったし、何があったんだろう?
◆ ◆ ◆
「響さーん!はやくはやくー!」
「あはは、みんな速いってー」
夕暮れに染まる中。
高台に続く階段を、子ども達が一気に駆け上がっている。
一日遊び倒したにも関わらず、まだまだ元気いっぱいな彼女達についていく形で。
響もまた、早足で階段を上っていく。
「ったく・・・・なんであんな元気なんだ」
「はは、大丈夫かー?」
その後ろの方では、クリスや翼がへとへとになりながら付いてきていた。
一番下でとうとうへこたれてしまったクリスに、今回の保護者役を買って出てくれた『ノーヴェ・ナカジマ』が手を貸す。
「ノーヴェさんは、いつもあの子達の面倒を?」
「去年までは、時々響もふくめてだな。まあ、今となっちゃ慣れっこだ」
未来に答えながら、子ども達の声で賑やかな上を眩しそうに見上げる。
「おーい!」
と、中々来ない四人に気づいた響が、声をかけてきた。
「みんなもおいでよー!すっごい綺麗だよー!!」
「そう慌てないの!今いくから!」
笑い声をあげながら、無邪気に手を振って再び高台に消えていく響。
「・・・・なあ」
未来も手を振り返しながら、微笑ましく顔を綻ばせていると。
ノーヴェが口を開いた。
「普段のあいつって、あんな感じか?」
「え?」
一瞬問いの意味が分からず、彼女の方を振り向くと。
過去を想起しているような、切ない顔をしていた。
そんな様子を目の当たりにしてしまったから、適当に流すのは躊躇われて。
「・・・・ええ、常に快活で、我々を鼓舞してくれます」
「・・・・そうか」
戸惑う未来に代わり、翼が答える。
ノーヴェはただ、静かに目を伏せた。
「・・・・初めて出会った頃のあいつな、あんな風に笑わなかったんだよ」
「えっ?」
今度は翼が呆ける番だった。
翼だけではない。
未来もクリスも、ぎょっとしてノーヴェを見る。
それは、普段の響から想像もつかないことだという証だった。
「笑うこと自体は出来たんだけどさ、なんつーか、余裕がなくて・・・・笑顔を浮かべても、すぐに思いつめた顔するなんてのはしょっちゅうだった」
ノーヴェの脳裏に過ぎるのは、かつての響。
何かに駆られるように、焚きつけられるように。
貪欲に努力し、ひたすらに限界まで鍛錬を続けて。
力を求め続けていた、たった一人の少女の姿。
「あたしらに出来たことっつったら、崖っぷちに全力疾走するあいつを止めることくらいだった。まあ、遥さん含めて、そういうのに厳しい人達がそろっていたから、言うほど大変ってわけでもなかったんだけど」
加えて、度重なる『無茶』で『やらかした』人々と、倒れる姿を見て苦い思いをした人々ばかりだ。
自分を痛めつける響を、止めないわけがなかった。
階段を上りきる。
夕焼け色の中、あちこちを指差しながら盛り上がる子ども達。
響は一つ年下の友人、『アインハルト・ストラトス』に抱きつきながら。
街のあちこちを案内しているようだった。
「だから、ちょっとうらやましいよ。響を、あんな笑顔に出来るお前等が」
感慨深く呟いて、ノーヴェはそう締めくくった。
その声に気づいたのか、響が振り返る。
「ほらほら!未来!」
「ちょ、ちょっと!」
こちらを見るなり、溢れんばかりの笑みを浮かべた彼女は。
すぐさま駆け寄って未来の手を取り、元の位置に戻っていく。
(・・・・今日は、本当にいろんなことがあった)
そんな彼女達を見つめた翼は、一人思う。
常日頃より剣として、時には歌女として。
年頃の少女が送るような『日常』から、かけ離れた生活を送っていた翼。
だが今回、響や未来に誘われて、ノーヴェを始めとした新しい出会いを経験して。
知らない世界を見ているみたいで、楽しかった。
(『戦いの向こう側』・・・・か)
在りし日の奏が言っていた言葉。
戦いや使命の向こう側には、大切なものがあると語っていた。
敵を倒すだけではいけないことは、翼自身よく分かっている。
ただ、奏の語る『向こう側』については、久しく意識していなかった。
言いだしっぺの本人がいなくなってからは、なお更だった。
改めて、前を見る。
そこには変わらず、笑顔ではしゃいでいる友人達の姿。
(・・・・多分、これこそが)
―――――――
「翼さーん!」
「ああ、今行く」
夕焼けを見据えた翼は、響の下に歩み寄る。
響「無茶してでも強くならなきゃ!(使命感」
魔王「あ?」
BONJIN「は?」
響「」