誠にありがとうございます。
「き、さ・・・・まああああああああああ―――――――ッッッ!!!!!」
響の惨状を目の当たりにし、真っ先に憤慨したのは翼。
雄叫びを上げるなり、ギアの機動力を生かして急接近。
フィーネが張った鞭に刃をぶち当て、血気迫る表情で肉薄する。
「よくも、よくもォッ!!!!!!」
競り合う箇所から火花が飛び散り、攻撃の重さを物語っていた。
「はは、悔しいか?」
修羅を前にしても、フィーネは余裕を崩さない。
翼を煽るように顔を寄せ、嗤ってみせる。
「そうだろうなぁ?お前が至らないばかりに、再び『ガングニール』が手折られたのだからなぁ!?」
「っああああああああ―――――――!!!!!」
離して空いた片手に、もう一本刀を握る。
かかる負荷が減ったからだろう。
フィーネもまたもう一本鞭を展開して振るう。
攻撃はフィーネの方が早い。
故に翼は苦々しい顔で防御に回り、一度後退した。
次のアクションを起こそうとした敵を止めるように、銃弾が降り注ぐ。
フィーネは鞭の先にエネルギーを溜めて振り払う。
発射された先、クリスは身を翻して回避し、銃口を突きつけた。
「あなたもご立腹?意外ね、クリス」
「ッハ、何勘違いしてやがる」
鼻で笑いながら、引き金の指に力を込める。
「あたしだって人並みには怒るんだぜ?」
「・・・・そのようね」
静かに返事が返ってくると同時に、出現したデカブツが唸りを上げ始める。
何事かと上を見上げれば、頂上付近に光が溜まっているのが見えた。
「なるほど、『穿つ』ってのはそういうことかい・・・・!」
普段から銃火器に触れているクリスは、この建造物の正体が巨大な砲塔であると見抜く。
「文字通りぶち抜こうたぁ、親玉さんの考えることはスケールが違うなァ?ええ?」
「幾千、幾万もの永きに渡って人類を別たっていた呪詛だ、これくらいやらねば解けはせん」
「んじゃぁ、仮にもお役所側のあたしは、邪魔をするとしようかねェッ!!」
辛抱溜まらんといわんばかりに、イチイバルが火を噴く。
弾丸の雨を背負い、翼もまた攻撃を再開する。
対するフィーネも、完全聖遺物を扱うだけある。
鞭で翼を無力化し、エネルギー弾でクリスを牽制し。
指折りのフォニックゲインを誇る二人を相手に、大立ち周りを見せている。
「ッはあああ!!」
バカ正直に突っ込んでくる翼の足元を打てば、砂利が舞い上がる。
既に前進していたばかりに、砂や小石をもろに浴びてしまう翼。
視界をつぶされて動けないところに強烈な一撃。
哀れ直撃を受けた翼は大きく吹き飛ばされた。
「おおおおおッ!!」
入れ替わるようにクリスが突っ込む。
鞭の嵐をステップで掻い潜りながら、光の矢を浴びせる。
策略もへったくれもない、物量任せの弾幕。
ただの人一人なら、あっという間に飲み込まれてしまうが。
フィーネは鞭を回転させると、流星のようなそれらを殆ど絡め取ってしまう。
「バカがッ」
纏まったエネルギーの中心にかすかな火花をぶち込めば、次の瞬間に爆炎がフィーネを包み込んだ。
「生きてるかァ?まだ終わっちゃいねェぞォ?」
「分かっている・・・・こちらとて、まだまだ足りない・・・・!」
刀を構えなおしつつ、『まだ斬り足りない』と殺る気を滾らせる翼。
傍にいるだけで肌をひりつかせる殺意に肩をすくめつつ、クリスも同意するように獰猛な笑みを浮かべる。
敵の方に目を向ければ、案の定炎の中から無傷で現れたところだった。
「第二ラウンドってな・・・・!」
低く構えた翼が飛び出す。
一撃を首を傾けて避け、突き一閃。
そこから流れるように袈裟斬りを放つ。
さすがのフィーネもこれは避け切れなかったようで、刃が胴体を捕らえた。
深く、大きく裂かれる体。
だが痛がる様子を一切見せない。
翼の疑問は、すぐに解決した。
ばっくり裂けた箇所が、まるで巻き戻るように塞がっていく。
「もはや人としてのありかたを捨てたか・・・・!」
「ネフシュタンの恩恵だ、羨ましかろう?」
もちろんネフシュタンの力もあるだろうが、やはり聖遺物と融合しているが故のものだろう。
そういえば、響も傷の治りが速かったように思う。
最も、今のフィーネのように目に見える速度ではなかったが。
「だったらこれはどーよ?」
クリスがボウガンを両手に構えて、引き金を引く。
先ほどと同じ流星群が降り注ぐ。
『バカの一つ覚えが』なんて思いながら、フィーネが迎撃していると。
ふと、違和感に気づいた。
光の群れのいくつかが、まるで意思を持っているように動き回り、鞭を回避している。
「ぐ・・・・!?」
何時の間に背後に回っていたのだろう。
背中に複数が突き刺さり、肩や腕も何箇所か掠めていく。
「―――――全部とまではいかねーが」
何をしたとクリスに目を遣れば、少し辛そうに鼻血を拭っている姿が見えた。
「やってみるもんだな、マニュアル制御」
そういえば、二課の前で初めてイチイバルを使用して見せたとき。
響にそんなことを言われていた。
どうやら鼻血は、相当脳に負荷をかけた影響が出たかららしい。
しかし無茶をしたなりの成果を得られたと、クリスは笑っていた。
フィーネは苦い顔をするものの、すぐに平静を取り戻す。
何故なら背後の砲台は、未だに無傷だからだ。
まだまだ油断は出来ないが、この分なら、守りきった自分の勝ちだ。
言い聞かせながら、翼の斬撃を受け止めた。
チャージが最終段階に入り、一層輝きを強くするカ=ディンギル。
弾き飛ばされた翼が、苦い顔で見上げていると。
「・・・・なー、人気者」
「・・・・?」
不意にクリスが口を開いた。
同じく見上げる横顔は、何か腹を決めているようだ。
「あたし、そろそろ抜けてもいいか?」
「・・・・どういうことだ」
こんな時になんだと問いかければ、クリスは肩をすくめる。
「いやさ、考えなしにやらかした影響っつーのかな。ちと目がやばいんだわ」
そう苦く笑う瞳は、確かにどこか焦点があっていない。
「この分だと、足手まといになっちまいそうだからさ・・・・だから」
それっきり、口を結んで黙りこくるクリス。
・・・・彼女の様子を見て、翼は察してしまった。
付き合いが短いながらも、頼もしいと感じ始めた後輩が。
何を考えているのかを。
「・・・・『命は捨てるものではなく、賭けるもの』」
「・・・・あー、あの人が言ってたってやつか」
いつかの何気ない会話の中、響が遥に教えてもらったという心構え。
『死に物狂いは否定しないが、それで死ぬのは許さない』という意味合いだったはず。
他でもない己の魂を賭けて、賭けた魂と一緒に最上の結果をもぎ取れということだった。
「多少の休息は構わないが・・・・死ぬのは許さん」
「へーへー、分かりましたよ」
言葉足らずの会話で、プランは決まった。
再び翼が斬りかかる。
いつになく苛烈な連撃に、フィーネは集中せざるを得ない。
見切り、防御し、カウンターを返し。
そんな剣戟の最中、クリスのミサイルが狙いを定めているのが見えた。
(・・・・まさか)
目の前の翼と見比べ、目を見開けば。
思ったとおり、ミサイルがこっちに飛んできた。
回避しようにも、翼が喰らいついて離さない。
なんてこった、こんな自爆めいた手段を用いてくるなんて。
小さく舌打ちしたフィーネは、強硬手段に出る。
まず一方の鞭で翼を締め上げ、もう一方をカ=ディンギルの一部に絡ませる。
向かってくるミサイルに翼を叩きつけてから、鞭を引っ張れば。
爆風に乗り大きく跳躍したフィーネは、危なげないながらも危機を脱することが出来た。
「ッもう一発は!?」
が、安堵するのも束の間。
先ほど見たミサイルは二発。
一発は今爆破させた。
ならもう一つは?
視線をめぐらせていたフィーネが、弾かれるように上空を見上げれば。
ミサイルに跨ったクリスが、天高く昇っていくところだった。
「ッそちらが本命だったか、だがカ=ディンギルの発射は止められまい!!」
爆風から怯むことなく飛び出してきた翼を往なしながらも、輝きが最高潮に達した砲台を根拠に、勝ち誇った声を上げるフィーネ。
「おうさ、止められねぇから・・・・・」
大気圏ギリギリまで上昇し、宙に舞い浮かぶクリス。
「邪魔させてもらうぜ」
遥か下の光を見下ろしながら不敵に笑い、息を吸い込む。
「 Gatrandis babel ziggurat edenal 」
腰のアーマーを展開し、無数の結晶をばら撒く。
「 Emustolonzen fine el zizzl 」
手にした拳銃から僅かな光を放てば、結晶に何度も反射して増幅されていき。
クリスは背中に、蝶を背負う。
「 Gatrandis babel ziggrat edenal 」
次に拳銃が変形。
砲身を長く、合体させることで口径を大きくし。
その先端に増幅させた光を集中させる。
「 Emustolonzen fine el zizzl... 」
終わる。
儚く、切ない音色が、絶唱が。
口から漏れる血を何とか堪えながら、全身を引き裂くような痛みに耐えながら。
クリスは地上に狙いを定めて、引き金を引く。
同時に発射されるカ=ディンギル。
果たして。
クリスの目論見どおり、砲撃同士が真正面から競り合うことになった。
「一点集束・・・・押し留めているだと・・・・!?」
衝突部分では激しく火花が飛び散り、夜空を明るく照らしている。
「・・・・ッ」
「くっ、おのれ・・・・!」
翼は苦い思いを胸に抱きながらも。
横槍を入れさせないように、何度もフィーネに斬りかかっていた。
(・・・・あんたがこれを見たら、何て言うんだろうな)
もはや朦朧とした意識の中、クリスはぼんやり考える。
(やっぱり怒るかな、かもなぁ、ひたすら死ぬなって教えてたし、あたしが飛び出してったときも鬼みたいに怖かったし)
やはり人力と機械とでは、持久力に差が出てしまう。
イチイバルの砲撃が、徐々に押され始める。
(けどさ、それでも憧れちゃうんだよな)
想起する。
向けてくれた微笑を、知らないことを教えてくれた優しい声を。
傷を労わって、ゆっくり頭を撫でてくれた、暖かい手を。
(地獄を知っても、何度も最悪の結末を見ても・・・・その上で笑ってられるあんたが、どうしても眩しく見えちまう)
目に見えて、イチイバルが劣勢になった。
手元の銃に亀裂が入るのが、文字通り手に取るように分かる。
(あたしもあんたみたいになれるかな、『自由に夢見ろ』って言いながら、誰かを救えるような奴に・・・・)
翡翠の光が迫る中。
クリスはふいに、笑みを浮かべた。
(なれたら、いいいなぁ・・・・)
刹那。
閃光、轟音。
あまりの光と音に、誰もが目を伏せ動けなくなる。
数秒だったか、数分だったか。
何もかもが治まった後、恐る恐る夜空を見上げてみれば。
まず見えたのは、一部が抉られた月。
それからよく目を凝らせば、キラキラとした滴のようなものが落ちて行く。
何か、なんて。
確認するまでも無かった。
「起動を逸らされ、掠めるだけに留まったか・・・・小娘、やってくれる・・・・!」
はがれた月の欠片を見つめながら、フィーネは忌々しく顔を歪めた。
「――――――どうせ、一撃ではないのだろう」
そんな彼女を、翼の声が引き戻す。
フィーネの背後では指摘どおり、カ=ディンギルが次をチャージし始めている。
「安堵するのはまだ早い・・・・私が、まだいる」
頭はすっかり冷えて、激情は幾分か治まったようだが。
こちらを睨む目は、未だに怒りを孕んでいた。
「何度でもやってみろ、何度だって止めてやる」
翼は切っ先を突きつけ、構える。
もう一方のシンフォギアものとかぶらないように努めたのですが・・・・。
個人的に、二番煎じ感が否めなくてぐぬぬ。
え?ビッキー?
次ぐらいに復活するんじゃないですか?(投げやり