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二課の面々が待機している一角は、重々しい空気が支配していた。
響にクリスと、仲間が立て続けに倒れ、現在奮戦している翼もいつ限界を迎えるかと言う状況。
間違っても優勢なんて言えなかった。
「これは・・・・司令!」
そんな中。
何を見つけたのか、藤尭はどこか明るい声を上げる。
「見てください!ここ!」
「・・・・これは」
若干興奮気味な彼が指差す箇所。
長い間隔で、ほんの数ミリ単位で刻まれる山を見て。
弦十郎は目を見開いて、画面と藤尭を見比べた。
―――――ほんのわずかな。
やっと指をかけられるような取っ掛かり。
しかしそれは、大きな希望となる。
◆ ◆ ◆
着地と同時に剣を突き立て、勢いを殺す。
目の前には未だ健在の敵と、無傷のカ=ディンギル。
―――――上等だと。
険しい顔から一辺、不敵な笑みを浮かべる。
(この逆境、防人として覆し甲斐がある・・・・!)
剣を引き抜き立ち上がれば、同じく険しい顔で睨む浮かべるフィーネが。
踏み込んで接近し、掬い上げるように一閃。
顎を上げて避けたところに、続けて下からの一閃を繰り出す。
限界以上に仰け反ったフィーネの体勢が、後ろに崩れる。
好機を見逃さず、翼はさらに踏み込んで一閃。
刀身が肌に喰らいつき、胴体を深く裂く。
「・・・・ぐッ」
すぐに再生するにしても、痛みは感じるらしい。
怯んで後退し、膝を突くフィーネから目を逸らさないまま。
持っていた剣を空に放り投げる。
すると剣は物理法則を無視して巨大化、遅れて飛び上がった翼は両足のブレードからバーニアを吹かして飛び蹴り。
翼が持ちえる攻撃の中で、絶唱に次ぐ威力を持った『天ノ逆鱗』が襲い掛かる。
対するフィーネは、鞭を組み合わせて強化した障壁を複数展開。
翼の奥義を、真っ向から受け止めた。
拮抗する『剣』と『盾』。
どちらも高性能であるが故に、火花を散らして拮抗する。
「・・・・ッ」
真っ向勝負では埒が明かないと判断したのだろう。
フィーネは歯を食いしばりながら腕を振り上げると、それにあわせて障壁も傾く。
哀れ姿勢を崩すかと思われた翼だが、どうやら違ったようだ。
徐に刀を手に、大きく跳躍する。
握り締めた刃からは、炎が迸っている。
「ッ狙いは始めからカ=ディンギルか!?」
そうはさせるかと、フィーネは組み合わせていた鞭を解き、翼へと伸ばす。
鋭く空を引き裂き伸びていく鞭は、狙い通り翼を貫こうとして、
「スティンガーブレイドッ!!エクスキューションシフトッ!!」
「ちぃッ!」
フィーネは狙いを外さざるをえなかった。
手首を捻って半ば無理やり標的を変えれば、降り注ぐ光弾のうち、自分に向かってきていたものを叩き落す。
翼が目だけで振り返ると、第二波を展開してフィーネを威嚇するアリアの姿が。
見られていることに気づくと、血気迫る表情に変わる。
「構うなッ!!行けッ!!」
迫力ある中に、罪悪感がない交ぜになりながらも、託してくれている。
発破をかけられた翼は、カ=ディンギルの突起部分を蹴り付けて、より一層高く舞い上がる。
「獣畜生がッ!!」
「言ってろ!手負いの怖さ思い知らせてやるッ!!」
翼の闘志に呼応するように、炎も青く染まるほど燃え盛る。
歯を食いしばり、どこまでもどこまでも夜空を駆け抜けて、
「ぅうおおおおぉぉおおおおおおあああああああああああ―――――――――――ッッッッッ!!!!!!!」
雄叫びとともに、砲身を叩ききった。
「・・・・ぁ・・・・・ああ・・・・!」
機械に炎をぶつけたからだろう。
爆発が起こり、翼はあっというまに暴風と火炎に飲み込まれる。
フィーネが絶望しきった表情で、アリアが苦い顔で見上げる中。
カ=ディンギルは、その身を灼熱に両断された。
◆ ◆ ◆
「―――――派手にやったなぁ」
うん、ちょっとやりすぎちゃったかも。
「いいさ、よくやったよ」
あなたにそう言ってもらえたなら、嬉しいな。
――――ねぇ
「何だ?」
私は、もう大丈夫だよ。
あなたが居なくなって、独りぼっちだって思い込んで、すごく辛かったけど。
だけど。
頼ってくれる後輩が出来て、守りたいものがはっきりしたから。
だから私は、もう大丈夫。
「・・・・そっか」
「あーあ、お前だけ先に行っちゃって、何かさみしーなー?」
ごめんね。
「責めてないって、また前を向けるのはいいことさ」
「・・・・けど」
なぁに?
「あたしは、いつでも一緒だかんな?お空から見守ってるって意味じゃない。あたしの『歌』が傍にあること、お前にだって分かるだろ?」
――――そっか
やっぱりあの子は、あなたの『歌』を。
ちゃんと受け継いでいるんだね。
「ああ・・・・『あいつ』が忘れていようがいまいが、それだけは変わらない」
「『あいつ』はこれからも、『歌』を紡いでいく」
「だからお前も、ここでくたばんなよ?」
分かってる。
『あの子』が掲げた信念も、『あの子』がこれから成すことも。
先達として、私が出来る範囲で見守るよ。
「うん、それが聞けただけで十分だ」
「そんじゃ、あたしはそろそろ行くわ」
うん、分かった。
実は私も、ちょっと眠たくって・・・・。
「はは、頑張ってたもんな」
「ちょっとくらい寝こけたっていいさ」
そう、だね。
ちょっと休ませて貰おうかな。
「おう、そうしろそうしろ。出番まで寝てろ」
うん、それじゃあ。
――――おやすみ、奏。
「おやすみ、翼」
◆ ◆ ◆
「お、のれッ!どこまでも邪魔をしおって・・・・!」
鞭で地面を抉って憂さを晴らしながら、フィーネはアリアを睨む。
「エレベーターシャフトに偽装した塔の建造、『不朽』の特性を持ったデュランダルをエネルギー源に利用・・・・構想自体は大したもんだったけど」
一方のアリアは響を磔から解放しつつ、真っ向から視線を受け止める。
「あの子らを侮ったツケだね、ご愁傷様だ」
響の体を横たえさせ、抜いたゲイボルグを手ごろな場所に突きたてて。
改めて、フィーネと向き合う。
「こちらとしても、月を破壊なんてさせるわけにはいかない・・・・重力変動による大規模な天変地異の数々、お祭り騒ぎにしちゃやりすぎだ」
治安維持に携わるものとして、放っておく理由も無いのだろう。
ある種の決意を秘めた顔で、背筋を正したアリア。
呼吸を整えて、目を開く。
「自力で異世界なんて答えにたどり着いたことに敬意を表して、改めて名乗ろうじゃないか」
足元に魔法陣。
攻撃準備を整えながら、続けた。
「時空管理局本局、第07執務隊隊長補佐。リーゼ・アリアだ。櫻井了子改めフィーネ、強盗、傷害、その他諸々の容疑で拘束する」
「・・・・そこは逮捕ではないのだな」
「『管理外の犯罪は管理外の法で』、諸々例外もあるけど、基本方針はそうなの」
『管理外』ということは『管理している』場所もあるということだろう。
意気消沈していたフィーネも、ここで捕まるわけには行かないと構える。
当然、アリアもここで見逃すつもりは無い。
ここで逃がしてしまえば、また月の破壊を目論むことが目に見えているからだ。
「人類の言語をバラバラにする呪詛・・・・それが本当だとしても、月の破壊なんて力技が過ぎる。悪いけど、あんたの企みはここで終わりだ」
「言ったな獣、止めて見せろ・・・・!」
数時間は戦いっ放しのはずなのに、フィーネは衰えを見せない。
だが、弦十郎に始まり、ロッテや響、クリスに翼と。
倒れていった彼らの全てが無駄ではないはずだ。
(あと、一息・・・・!)
◆ ◆ ◆
「ここです!ほら!」
時間は、翼が攻防を再開したところまで遡る。
急に大声を上げた藤尭は、パソコンの画面の一箇所を指し示した。
弦十郎と一緒に、友里や緒川、板場達学生も覗き込む。
基本的なデータが表示された画面。
『Gungnir』と示された、心電図らしきレーダーが。
数秒ごとに、かすかな起伏を刻んでいた。
回復を優先させるため、負担が少ないらしい猫形態になっていたロッテは。
頷くように鼻をふこふこ鳴らし、やがて納得して首を縦に振る。
「・・・・響は、まだくたばってないってことか」
「・・・・ッ!?」
下された判断に真っ先に飛びついたのは、未来だった。
半ば乱暴に友人達を掻き分けて画面に飛びつき、食い入るように見つめだす。
「
『落ち着け』という意味合いで、未来の手をたしたし叩きながら、仮説を述べるロッテ。
「確かシンフォギアに使われている聖遺物は、歌で起動するんだったね。それって適合者じゃなくてもいいのかい?」
「ええ、一人ひとりのフォニックゲインは少なくとも、数がそろえば巨大なエネルギーとなります。それこそ、停止状態の完全聖遺物を起動させるくらいには」
「それじゃあ、あたしらが歌えば響は起きる・・・・!?」
友里の答えを聞き、板場の顔が目に見えて明るくなった。
安藤や寺島とも見合わせて、一気に元気を取り戻す。
「で、ぶっちゃけどうよ?」
「十分にありえます!電源を切り換える必要がありますが、学校の設備がまだ生きているのなら、スピーカーを通じて歌を届けることが可能です!」
専門家達のお墨付きを貰ったとあっては、賭けない手はない。
「あんたにも手伝ってもらうからね。響のこと、支えてくれるんだろう?」
ほっと一息ついたロッテは、今ひとつ事態を飲み込めていない未来を見上げる。
未来は話しかけられてもなお、呆然としていたが。
やがてじわじわと涙が溢れてくる。
――――響が助かる。
それが分かっただけでも、十分幸福なのだろう。
「ほーら、泣かないの。この後大一番が控えてるんだから、ビシっと決めないとね」
「・・・・っ・・・・・ん・・・・!」
ロッテが涙を拭ってやれば、未来は何度も頷いた。
盛り返していきますよー!