立花響の中の人   作:数多 命

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いやぁ、筆が乗る乗るww



追記:ミスって同じものを投稿していました。
すぐに消しましたが、混乱させてしまった方は申し訳ございません。


29ページ目

剣型の光弾を降らせれば、エネルギー弾に飲み込まれる。

鞭で穿てば、敏捷な動きで避けられる。

片や百戦錬磨の使い魔、片や聖遺物を知り尽くした賢者。

一進一退の攻防は、本人達ですら時間の感覚が薄れるほど続いていた。

 

「・・・・ッ」

「――――!」

 

一際大きな金属音。

何度目か分からない鞭の襲撃を、アリアが蹴り飛ばした音だ。

身を翻して着地をすれば、疲労の色を濃く見せるフィーネの姿が。

もっとも、肩で息をしているこちらもどっこいどっこいなのだが。

 

「存外にしぶとい獣だ、そろそろ死んでもいいんだぞ?」

「冗談・・・・!」

 

疲れていてもなお、口だけは回るようで。

フィーネの嫌味に対し、アリアは鼻で笑って否定した。

 

「あんたこそ、随分粘るじゃないさ?」

 

笑ってから、目を細める。

 

「ご自慢の砲台は真っ二つ、壊す予定の月も一部を剥ぎ取っただけ、敵対勢力もまだあたしが残っている上に、あんた自身も疲労困憊」

 

意外にも黙って耳を傾けるフィーネ。

聞いてやってもよいと思ったのか、単純に遮るのが面倒だと思ったのか。

 

「なのにあんたは観念するどころか、諦める素振りも見せやしない・・・・何故そこまで月にこだわる?あんたは何に執着している?」

 

アリアの問いかけに、フィーネは完全に沈黙した。

構えを解くと、目を伏せる。

辺りは一気に静寂に包まれ、風と虫の声しか聞こえない。

 

「・・・・もう、数千年前の話になる」

 

相手の呼吸が離れていても聞こえるようになった頃。

口が開く。

 

「私はこの世の創造主たる存在と、人間達を仲立ちをする巫女の役割を担っていた。だが私は何度も言葉を交わす内、いつしか『あの御方』に恋心を抱くようになっていた」

「・・・・は?」

 

アリアは、思わず間抜けな声が口を着いて出た。

慌てて口を塞ぐものの、もう後の祭り。

フィーネは機嫌悪そうに睨みつけている。

 

「・・・・だから私は、『あの御方』にいたる塔を建設しようとした。他でもないこの口で、直接想いを伝えるために」

 

当時を想起しているのだろう。

夜空を仰いだフィーネの目は、星空を見ていない。

 

「だが、人の身に余る所業は、『あの御方』の逆鱗にふれた。制裁の稲光の元、塔と共に一つだった言葉を砕かれたのだ」

「・・・・ッ」

 

話が見えてきた。

見えてきたからこそ、アリアは戦慄する。

『人の身に余る塔』に、『言語を別たれる』。

それは、とある『神話』の内容に酷似していたのだから。

 

「『バベルの塔』・・・・まさか、実際にあった出来事たぁね」

「よく知っていたな。異世界の者でも覚えがあるほど、語り継がれているとは」

 

自嘲気味に笑うフィーネ。

それは即ち、かの神話が現実のものであることを雄弁に語っていた。

更にもう一つ。

アリアは口元を引きつらせながら、考察を述べる。

 

「っていうか、何?あんたまさか、『あの御方』とやらに告るためだけに色々やらかしていたわけ?」

 

今までの話を総括すれば、嫌でもそんな結論にたどり着く。

彼女の言を丸々信じるのなら。

それこそ数千年もの間、今日まで計画を練り続け、『櫻井了子』として二課に潜り込み・・・・。

 

「―――――一途ってレベルじゃない」

「獣には分かるまいよ、胸を焦がす情熱を・・・・恋しくてたまらない苦しさを」

 

冷や汗まじりに『理解が難しい』と告げれば、胸元を押さえつつ見下される。

 

「・・・・」

 

恋心が分からない。

そう断言されたが、生憎アリアは少なからず知っていた。

すぐ近くに、似た感情を抱いた者が居たのだ。

周囲にからかわれたら赤面させ、言葉を交わせば年頃の表情を見せ。

そしてもう二度と会えなくなれば、涙と共に慟哭する。

あの頃はまだ契約していなかったが、割と分かりやすい娘だったこともある。

だからアリアは知っている。

恋焦がれ、胸を焦がすほどの想いを。

愛しい人と共に歩む、喜びを。

 

「・・・・さっきから獣獣って、ちょっと見下しすぎじゃないの?」

 

盛大にため息をつき、頭をかいて思考をリセット。

 

「そりゃ、恋愛なんてしたことないけどさ。何にも知らないと思ったら、大間違いだよ?」

 

すっきりした視界で、改めてフィーネを見据える。

 

「だいたいあんた、一つ見落としているのに気づいてる?」

「見落とし?」

 

怪訝な顔になるフィーネ。

無理も無い。

お互い満身創痍なこの状況で、更に見落としがあると指摘されてたのだ。

気にならないわけが無い。

くだらない内容なら切り捨てると、鞭を握り締める。

 

「あんたもそうだけどさ、長く生きてる連中って尽く人間を下に見るよね。まあ、色々知識を溜め込んでいるのもあるんだろうけど」

「ほう、では、私に止めを刺すのは人間だと?」

「おうさ」

 

やはりバカバカしい。

聖遺物を起動させる力や、思いもよらない観点での行動から。

完全に軽蔑しているわけではないが。

それでも懲りずに争い続ける姿を見るたび、諦めと幻滅を抱かずに居られなかった。

 

「何を期待しているのか知らんが、人の道を外れた身として忠告しよう。連中に過度な願望を抱くのはよせ」

「っは!」

 

『人間』を捨てた身として、目の前の人外に告げる。

が、アリアはあろうことか鼻で笑って切り捨てた。

 

「人ならぬ身だからこそ、言ってやるよ」

 

何を根拠にしているのかは分からない。

だが、彼女ははっきりとした確信を持って宣言する。

 

「―――――人間を、舐めるな」

 

『何故?』を問う暇はなかった。

二人が向き合う中、何かが聞こえてくる。

 

「・・・・何だ、これは?」

 

時折雑音が入るそれに、フィーネは眉を潜める。

 

「不快な、歌・・・・」

 

言い掛けて、我に返る。

この場にそろっているもの、起動するための条件。

 

「歌、だと・・・・!?」

 

答えを導き出したフィーネがアリアを見れば、奴は不敵に笑っていた。

 

「貴様・・・・!」

「あたしの役目はここまでだ!そろそろ出番だよ!」

 

今までの攻防も、これまでの問答も全ては時間稼ぎ。

いつの間にかはめられていたのだ。

殺意に屈することなく、アリアは声を張り上げる。

 

「――――――響ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「Balwisyall Nescell Gungnir tron...!」

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

ここはどこだろう。

寒くて、暗くて、怖い。

覚えているのは、貫かれた痛み。

・・・・ああ、そうか。

わたしは死んだのか。

となると、ここは死後の世界になるのだろうか。

だとするなら、随分こざっぱりとした寂しい場所だ。

・・・・いや。

思えば、これが相応しい末路かもしれない。

未来から『響』を奪って、今までずっと騙してきたのだ。

そんなわたしは、天国にも地獄にも行く資格がないということだろう。

未来は泣くだろうか。

また泣いてしまうだろうな。

騙されていたにも関わらず、(わたし)を思ってくれた優しい子だ。

きっとどん底に落ちてしまうほど落ち込んでしまうだろう。

気になるし、それは嫌だけど。

もう、今となってはどうしようもない。

 

「―――――諦めちゃうの?」

 

うん、諦めちゃう。

命の生き死にをどうこうするなんて、とても人の手じゃ成しえないこと。

だから、しょうがない。

 

「もったいないなぁ、せっかくみんなが頑張っているのに」

 

みんな?頑張る?

 

「ほらほら、耳を澄まして?何か聞こえない?」

 

言われたとおり、耳に意識を集中させる。

・・・・確かに、何かが聞こえる。

これは、歌。

リディアンの校歌だ。

でも、何で今になって?

 

「みんなが諦めていないからだよ、未来だってもちろん、一緒に歌っているもん」

 

未来・・・・。

言われてみれば確かに聞こえる。

か弱いように見えて、芯の通った綺麗な歌声だ。

未来だけじゃない。

弓美ちゃんや創世ちゃん、詩織ちゃんも一緒に歌ってくれている。

みんなが、歌を響かせている。

 

「これでも諦めちゃう?みんなの頑張りを棒に振っちゃう?」

 

そんなわけない。

こんなに信じてくれる人達がいるんだ。

諦めることの方が失礼になる。

・・・・だけど、不安だ。

目覚めたら、立ち上がったら。

また、未来に嘘をつかなきゃいけなくなる。

そのことがどうしても気がかりになって、躊躇ってしまう。

 

「―――――へいき、へっちゃら」

「起きた後のことなんて、起きた後でも考えられるよ」

「大事なのは、あなたが、今、どうしたいか」

 

わたしが、今、どうしたいか。

・・・・もし。

もし、許されるのなら。

また、立ち上がってもいいのなら。

わたしは、この歌は・・・・!

 

「そう、その意気だ!」

「ほら、みんなが待ってるよ!」

 

ああ、分かっている。

許されていいのなら、立ち上がっていいのなら。

未来のところに・・・・!

 

 

 

 

「Balwisyall Nescell Gungnir tron...!」

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

光が昇る。

白んだ空に、『朝日』が灯る。

雑木林で、カ=ディンギル頂上で。

そして、フィーネの目の前で。

 

「なん、だ・・・・それは・・・・!?」

 

立ち上がった響を前に、目に見えて動揺するフィーネ。

彼女の動揺も仕方ない。

何せ、死んだと思った相手が立ち上がったのだから。

 

「何故再び立ち上がる!?ゲイボルグは確かに心臓を穿ったはず!!鳴り渡る不快な歌の仕業か!?」

 

誇らしげに笑うアリアの向かい、一歩踏み出しながら問いただす。

 

「お前が今纏っているものはなんだ!?それは私の作ったモノか!?それともまた魔法だというのか!?」

 

対する響は沈黙を保ったまま、ただただ光に包まれている。

 

「お前が纏っているのは何だ!?何なのだ!?」

「―――――は」

 

最後の問いかけに、響は笑う。

この人は、何を言っているんだと。

ならば教えてやろうじゃないかと、迸る『歌』を握り締めて、

 

 

 

 

「シンフォギアアアアぁぁあああアアアアアァァァぁああああああァァァぁぁぁ――――――――ッッッ!!!!!!」

 

 

 

 

ありったけの雄叫びを上げながら。

翼やクリスと共に、大空に君臨する。




一期もいよいよ大詰め!
響は、未来は、どーなるのかッ!(笑
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