立花響の中の人   作:数多 命

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今度はちゃんと30話ですよー。


30ページ目

大きく息を吸えば、肺が夜明けの空気で満たされる。

たった数時間心肺停止しただけで、こんなに懐かしく感じるものなのかと。

響はどこか感心しながら、息を吐き出す。

 

「何感傷に浸ってやがるこのバカッ!一辺ガチでおっ死んだんだぞッ!」

「あたっ!?」

 

どうやら思っていたよりも呑気な顔をしてしまったらしい。

クリスに遠慮なく頭をど突かれる。

 

「いたた、クリスちゃんひどいよぉ・・・・」

「ったく、死に目に立ち会ったこっちの身にもなれってんだ」

「全くだ、小日向達の歌で限定解除が叶ったから良いものの、普通ならとっくに涅槃行きだ」

 

翼は翼で、クリスもクリスなりに心配してくれたらしい。

二人を呆れさせてしまったが、また言葉を交わせることが響には嬉しかった。

 

「高レベルのフォニックゲインによる限定解除・・・・二年前の意趣返しか」

《んなこたぁどーでもいいんだよ!》

「念話までも・・・・!」

 

地上から睨み上げてくるフィーネを見下ろし、クリスが拳を握る。

この形態になれば、シンフォギアでも念話が仕えるらしい。

 

《世界に尽きぬノイズの災禍も、お前の仕業なのか!?》

 

響が一人感心している隣で、翼も一歩前に出て問いかける。

 

《ノイズとは、先史文明時代の人類が、同じ人類のみを殺戮するために開発した自立型の兵器だ》

 

律儀に同じ念話で返しつつ、嫌な笑みを浮かべるフィーネ。

語られた事実に、装者達が目を見開くのが分かる。

 

《バビロニアの宝物庫は開けっ放しでなぁ?私は十年に一度の偶然を、このソロモンの杖にて手繰り寄せているだけに過ぎない》

「・・・・ッ」

 

眉をひそめる響は、なんてこったと内心悪態をつく。

太古の昔から、幾千、幾万もの人間に地獄を見せ続けた怪物たちが。

同じ人の手で作られていたなどと・・・・。

やるせない気持ちに浸る暇もなく、フィーネがアクションを起こす。

空に向けてソロモンの杖を起動させれば、ありったけのノイズが街中を埋め尽くした。

街の惨状もそうだが、フィーネの一番近くにいるはずの恩師を案じた響は、そちらに目を遣る。

 

「邪魔をされては叶わん、そこで傍観しているがいい」

「ちょうど一休みしたかったところだ、遠慮なく休ませてもらうよ」

「減らず口を・・・・」

 

――――いた。

先ほどと同じ場所で、いつぞや響を拘束したのっぽのノイズに拘束されている。

 

《こっちは大丈夫、言ったろ?連中にとっちゃ、あたしは駆逐対象外だ》

 

見られていることに気づくと、アリアも念話を送ってきた。

正直後ろ髪を引かれる気分だったが。

他ならぬ本人から行けと言われれば、行くしかない。

響は力強く頷き、大空を駆け抜ける。

生憎適正が無かったため、自力での飛行は初めてだったのだが。

師匠たる遥や、その友人達の姿を何度も見ていたお陰か、イメージはしっかりつかめていた。

加えてガングニールが補助してくれているのか、思ったよりも余裕がある。

 

「いい加減芸が乏しいんだよッ!!!」

 

現場にたどり着けば、クリスが辛抱溜まらんと言わんばかりにレーザーをばら撒いていた。

地上では翼が大軍に突っ込み、片っ端から切り捨てている。

 

「・・・・ははっ」

 

二人の暴れっぷりに釣られ、獰猛な笑みを浮かべた響。

翼が手をつけていない一帯に向け、やや乱暴に着地。

雷光を迸らせて、拳を振り上げる。

殴打の音が鈍く響き、四肢が鋭く空を切る。

胴体をぶち抜く、頭をかち割る、首を圧し折る。

攻撃を受け流し、カウンターとばかりに魔力砲撃を叩き込む。

背後に大型。

叩きつけをするりと回避して懐に飛び込む。

爪を剥き出すように拳を構えて、胴体に狙いをつけて。

 

「おら、おらっ、おらッ、オラッ!!!」

 

獣のように荒っぽい、所謂『デンプシーロール』を。

重く深く、往復して突き刺し。

 

「―――――吹き飛べッ!!!」

 

最後にアッパーカットを決めて、フィニッシュ。

まだまだ猛攻は終わらない。

黒い砂塵の中から奇襲し、缶をつぶすように叩きつけ。

横薙ぎを回避して後ろに回りこみ、振り上げた踵で薪割りのように真っ二つ。

 

「ほらほら、どうしたの?」

 

ゆらりと立ち上がり、まだまだ残っているノイズを見渡す。

 

「獲物はここだよ?殺したいなら、向かってこないと」

 

挑発気味に笑いかけて、再び突撃する。

―――――一方その頃。

 

「ビッキー、何だか生き生きしてない?」

「アニメじゃないんだから、こんなの女子がしていい顔じゃないわよ・・・・」

「いつにない暴れっぷりだな・・・・いや、頼もしいけどさ」

「あーあ、こりゃ遥の影響受けまくりじゃないのさ」

 

猛攻を目の当たりにしていた面々は、顔を引きつらせていたなど。

響は知る由もなかった。

 

「ゥオラアアアアアァッ!!」

 

クリスが雄叫びと共に引き金を引けば、大空にレーザーが迸る。

 

「やっさいもっさい!!」

 

光の豪雨が降り注ぎ、上空のノイズを面白いくらいに仕留めていく。

 

《すっごい!乱れ撃ち!》

《バカッ、全部狙い撃ってんだっつの!》

 

響が感嘆の声を上げれば、クリスは全力で否定した。

しかし、これだけの数を正確に狙うというのは言うまでも無く高等技術である。

なので、どちらにせよ褒められることに変わりはない。

 

《あはは、それじゃあわたしは・・・・!》

 

クリスに触発されたのか、響は地面を蹴って上空に上る。

数多のノイズを見下ろしながら、陣を展開。

これまでの戦いで、『下ごしらえ』は十分に成されている。

いけるはずだ。

 

「――――――星よ集え、咎人に裁きの光を」

 

詠唱に呼応して、陣がゆっくり回転を始める。

すると吸い寄せられるように、何かが集まっていく。

 

「・・・・光?」

 

いや違う、恐らく魔力だ。

細々と固まった魔力が、手を掲げる響の下に集まっていく。

 

明星(あかぼし)は、全てを滅する焔と成せ・・・・!」

 

・・・・集まっている先の光が、妙に大きい気がするのは気のせいだろうか。

気づけば巨大な球を固定するように、リング状の陣が包み込んでいる。

 

「二人とも退いて!巻き込むよッ!!」

「おま、まさか・・・・!?」

 

掲げた手以外の手足を同じリングで固定して、響は下で戦っている二人に警告。

溢れんばかりの光を目の当たりにしたクリスは、いやぁな予感を抱いた。

 

「スターライトオオオォォォ・・・・!」

「やっぱりかよド畜生ォッ!!」

「雪音!?何を!?」

 

果たして、それは的中することとなる。

『この後』を察したクリスは身を翻すと、銃火器に疎いゆえに状況を飲み込めていない翼の首根っこを引っつかむ。

出せるだけの全速力で、必死に距離を取って、

 

「ッブレイカアアアアアアアアアア――――――――!!!!」

 

瞬間、背後から衝撃波。

崩れた体勢を整えつつ、翼とクリスが振り向けば。

群れの九割を吹き飛ばされたノイズの、成れの果てが。

大量の炭はビルを覆うほどの高さに上昇すると、轟音を立てながら街になだれ込んでいった。

 

「あ、のおバカッ!そこまで似らんでもよろしいッ!」

 

使い切れずに捨ててしまった魔力を再利用して放つ、『集束砲撃』なんて大技を使った響に対し。

アリアは全力で突っ込みを入れていた。

 

「お前なぁ・・・・!」

「あはは、テンション上がっちゃって、つい」

「『つい』でもろとも吹っ飛ばすんじゃねーよ!」

 

駆け寄ったクリスが響に掴みかかるのも無理は無い。

反省する様子のない彼女に、クリスは頭を抱えた。

 

「二人とも、茶番はそこまでのようだぞ」

 

フィーネを探していた翼の気配が研ぎ澄まされる。

それを感じ取った二人もまた、表情を引き締める。

カ=ディンギルの麓。

フィーネは徐にソロモンの杖を手にすると、腹につきたてた。

苦悶の声を上げながら膝を折ると、体が杖に絡みつく。

次の瞬間、空に幾つもの『門』が開き、フィーネに纏わり着いていく。

翡翠の光と共に、生き残ったノイズ達も向かっていく。

それはアリアを拘束していたものも例外ではない。

解放されたアリアはノイズの波を避けながら、響達の傍に上昇してくる。

 

「ノイズに取り込まれている・・・・!?」

「いや、逆だ!」

「ああ、あいつがノイズを取り込んでやがる!」

 

翼の呟きをクリスと共に否定しながら、アリアは身構える。

 

「―――――来たれ、デュランダル!」

 

赤いドロドロの中、フィーネの声が轟いて。

黄金の光が、昇ったと思ったら。

土煙の中から、赤い何かが昇る。

竜だ。

全身が鮮やかなワインレッドの竜が、響達の前に姿を現す。

そいつは嘴にエネルギーを溜めると、徐に解き放つ。

刹那の沈黙、瞬間。

轟音と共に、響が出した以上の火柱が昇った。

振り向けば、火の海と化した街並みが。

 

「――――逆さ鱗に触れたのだ」

 

呆然とする耳に、フィーネの声が届く。

 

「相応の覚悟は出来ておろうな?」

 

元の方に向き直る面々。

正真正銘、これが決戦だ。

唇を噛み締めた響は、拳を打ち合わせた。

 

「おらぁッ!!」

 

まずは牽制と、クリスが竜の体を満遍なく打ち抜く。

すると、傷ついた側から再生していく。

 

「はッ!」

「どりゃぁッ!!」

 

これならどうだと、翼が斬撃を飛ばし、響が続いて拳を打ち込み風穴を開ける。

だが、やはり巻き戻るように損傷が再生していった。

 

「ネフシュタンに加えて、デュランダルも備えてんだ。これくらいの再生は当たり前か・・・・!」

 

一連を見ていたアリアはそう結論付け、苦い顔をする。

 

「加えてソロモンの杖でノイズと融合してる・・・・あたしじゃ手出しの仕様が無い・・・・!」

「ご明察だ、獣」

 

竜の胸元、扉のような殻が開き中が見える。

深い赤のドレスに身を包んだフィーネが、デュランダルを携えていた。

 

「お前達もだ!所詮は欠片から作られた玩具!完全聖遺物に叶うと思うてくれるな!」

 

勝ち誇った声が上がったが、翼とクリスは今ので何かヒントを得たらしい。

目を見合わせると、徐に響を見やる。

 

「え、と・・・・?」

「・・・・要するに、あんたが切り札になりそうってこった」

 

いまいち飲み込めないらしい響に、アリアが説明する。

ざっくりしているのは、フィーネに悟られないためだろう。

肩を叩き、じぃっと教え子の瞳を凝視する。

暗に『やってくれるか?』と、問いかけていた。

響はなお困惑していたが、やがて一度目を閉じて。

清閑な瞳を見開く。

 

「―――――やってみます」

 

プランは決まった。

翼は剣を掲げると、力を込める。

彼女の思いに呼応した剣は、その刀身を巨大化させた。

 

「はあぁッ!!」

 

強化された『蒼ノ一閃・滅波』を叩き込み、竜を大きく負傷させる。

その中、クリスは攻撃を掻い潜りながら懐に飛び込み、フィーネの前へ。

敵地なのをいいことに、周辺を乱れ撃つ。

 

「ちぃッ・・・・!」

 

クリスを追い出すために殻を開ければ、まん前に剣を振り上げる翼が。

視界が遮られた隙に、急接近されてしまったようだ。

一瞬の動揺を、翼は見逃さない。

雄叫びと共に再び『蒼ノ一閃』を叩き込み、フィーネへ直接攻撃を仕掛ける。

黒煙に包まれる竜。

爆破の衝撃に煽られ、飛び出てくるものがあった。

 

「デュランダルを!?」

 

飛び出そうと身をかがめた響。

ふと飛来してきた物体に気づき、掴み取る。

正体は、自身を貫いた『こちら』のゲイボルグ。

 

「そいつが切り札だッ!!」

「勝機を逃すなッ!掴み取れッ!!」

 

投げてよこしたアリアが地上から叫び、翼もまた声を張り上げる。

クリスは狙撃で飛距離を稼げば、デュランダルが不自然に跳ねた。

仲間達の思いを受け取った響は、口元を引き締めて。

飛来してきたデュランダルを、引っつかむ。

 

 

 

 

そして、世界が反転する。

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

『が、ぐううううう・・・・!』

 

やはり聖遺物二つ分のエネルギーは、負荷が大きいのだろう。

飛びそうな理性を歯を食いしばって保ちながら、響はくぐもった声を上げる。

溢れんばかりのエネルギーに、周辺は地鳴りを上げて揺れる。

それは、未来達がいる地下にもダイレクトに襲い掛かっていた。

未来は一緒に歌ってくれた生存者達と共に、備え付けのベッドの下に避難していた。

二課の職員達は変わらずモニターを見つめていたが、誰もが苦い顔をしている。

画面は、未来のいる場所からも見えた。

顔以外を真っ黒に染めた響は、獣のように唸りながら。

自らを荒ぶらせる衝動と、必死に戦っていた。

 

「このままでは、また・・・・!」

 

藤尭の不安げな声が聞こえる。

口ぶりから察するに、前にも似た状況があったのだろう。

見れば、弦十郎の表情も硬くなっている。

 

(このままで、いいの・・・・?)

 

搾り出すような声を聞きながら、未来は思う。

このままでいいのかと。

響が遠くに行くのは嫌だ、怪我するのだって嫌だ。

死ぬなんて以ての外だ。

だが、それだけでいいのか。

そうやって口で言うだけでいいのか。

縋って引き止めて、困らせるだけでいいのか。

 

(・・・・ダメだ)

 

そんなんじゃダメだ。

だって響が傷つくのは、いつだって誰かを助けるためで。

だからこそ、今まさにこうやって苦しんでいて。

願うだけではダメだ、求めるだけではダメだ。

守られているだけでは、ダメだ・・・・!

 

「・・・・ッ」

「未来さん、どちらへ!?」

 

気づけば未来は、駆け出していた。

気持ちは逸っていたが、緒川の問いに答える余裕は残っていた。

振り向きつつ、はっきり宣言する。

 

「地上に出ます」

「無茶よ!危険だわ!」

 

当然、反対の声が出た。

だが譲れないものがあるからこそ、未来は反論する。

 

「少しでも、響の力になりたいんです!守られるだけじゃない、響のことを守れる自分になりたい!」

 

思ったよりも大声が出た。

 

「頼りきりなんて、願うだけなんて、もう嫌なんです!!」

 

それでも、溢れる思いを止められない。

だから未来は、静止を振り切り走り出す。

 

「子ども一人で突っ走らないの、危なっかしい」

「ロッテさん!?」

 

廊下に飛び出して間もなく、ロッテが追いついてきた。

負傷を気にしてか、肩に乗っかってきた彼女はウィンク。

 

「――――彼女の言うとおりだぞ!」

 

振り向けば、弦十郎達もついて来ている。

 

「こんなナイスなアイデア、乗らない手はありません!」

「こういうとき活躍すんのはモブキャラって、相場が決まってるもんね!」

「わたし達だって、ビッキーを応援したいんだ!」

 

友人達の後押しもあっては、頼もしいと思わないわけが無い。

気持ちを高揚させた未来は、思いっきり速度を上げる。

目の前にシェルターの出口。

ノイズの侵入を防ぐため、硬く閉ざされている。

 

「開けんのが面倒だ!吹き飛ばすよッ!!」

 

肩のロッテが言うなり、未来の周囲に剣型の光を発生させる。

 

「スティンガーブレイドッ!!!」

「おおおおお――――ッ!!!」

 

鋭く発射された刃が扉を穿ち、堅牢な守りに綻びを作る。

そこへ弦十郎が飛び込み、一撃。

哀れ扉は、木っ端微塵に吹き飛んだ。

 

「ッ響!!」

 

土埃を掻い潜りながら外に飛び出れば、響の声がすぐ上から聞こえる。

相変わらず苦悶の声を上げ続けている響。

弦十郎が『正念場だ!』と声を張り上げれば、こちらに気づいて振り向く。

 

「強く自分を意識してください!」

「昨日までの自分を!」

「これからなりたい自分を!」

 

続いて、緒川、藤尭、友里が。

 

「あなたのお節介を!」

「あんたの人助けを!」

「今度は、わたし達が!」

 

寺島が、板場が、安藤が。

 

「感情に振り回されるなッ!乗りこなせッ!!」

「教えたはずだよッ、響ィ!!」

 

ロッテと、合流したアリアも。

響が闇に飲まれぬよう、声援を送る。

 

「屈するな司、胸に抱えた覚悟。私に見せてくれ!」

「お前を信じ、お前に全部賭けてんだ!お前が自分信じなくてどうすんだよッ!」

 

翼とクリスも寄り添いながら、必死に語りかける。

未来は、

 

「・・・・ッ」

 

何も、言えなかった。

自分を手放してしまいそうな響の姿を突きつけられて、かけようと思っていた言葉が吹っ飛んでしまった。

心が、恐怖に支配される。

響が離れていく恐ろしさに、全身が麻痺する。

 

(ダメ・・・・何か、何か言わなきゃ・・・・!)

 

一方では、かすかに残った勇気が必死に奮い立とうとしていた。

何でもいい、何か言葉をかけてやらねば。

今ここで、何もしなかったら。

小日向未来は、一生後悔するぞと。

なのに体は言うことを聞かない。

唇は震え、歯の根は上手くかみ合わない。

 

「ゥウ・・・・!」

 

もたついている間に、とうとう響の顔を黒が覆ってしまった。

 

「うううゥゥゥうううおおおオオオおお■■ガアアアアア■■■■■――――――――ッッッ!!!!!」

 

赤い瞳がぎらつく。

牙を剥く。

湧き上がるように咆哮が轟く。

 

「――――――」

 

もう、なりふり構わなかった。

息を呑んだ未来は、ありったけの声を張り上げる。

 

 

 

「響いいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃ――――――――ッッッッ!!!!!!!」

 

 

 

―――――止まった。

咆哮が、振動が。

 

「響!」

「ビッキー!」

「司さん!」

 

自分に倣って名前を叫ぶ友人達の声を聞きながら、未来は固唾を呑んで見据える。

情けないことに、もう何も浮かばなかった。

どうか、どうか。

手を組んで祈らないのは、一緒に戦うという最後の意地だ。

かくして、その『奇跡』は降臨する。

響の手元と胸元、光が灯る。

灯った光は、体を塗りつぶしていた黒を押し返していく。

握り締めていた聖遺物も、一つとなり。

現れたのは、一振りの槍。

 

「デュランダルの原初の姿、ドゥリンダナだと!?バカなッ!!」

 

フィーネの焦った声が聞こえる。

彼女の頭脳を以ってしても、あの槍の出現は予想外だったらしい。

 

「どうやって顕現させた!?何を束ねた!?」

 

叫ぶような問いに答える前に。

響は、未来に視線を向けた。

目が合い、緊張で硬直する未来に、戦場に似つかわしくない柔らかい笑みを湛えて。

 

―――――ありがとう

 

ギリギリ読み取れるかすかな動きで、たったそれだけを告げる。

そして瞬きの合間に向き直ると、携えた『黄金』を振り上げた。

 

「響きあうみんなの歌声がくれた・・・・!」

 

響だけではない。

翼やクリスも合わせた、三人分の闘気に呼応し。

輝きがあふれ出す。

 

「シンフォギアだああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!」

 

雄叫びと共に振り下ろせば、赤い竜は再生で対抗しながらも切り裂かれていく。

交差する。

響と、フィーネの視線が。

それも束の間。

巨大な『雲』を吹き上げて、赤い竜はその体を派手に崩壊させたのだった。




何とか決着です。
ひびみく出来てるかしら・・・・(
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