立花響の中の人   作:数多 命

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前回のエンダアアアアアアについて、意外と好印象でちょっと拍子抜けしてる自分です。
結構重めに書いたつもりでしたが、世間一般ではこれが普通なのでしょうか?

追記:管理局の年数についで盛大に勘違いしてしまったので、修正・・・・。


幕間
33ページ目


――――海鳴市。

律唱市の二つ隣に位置する街である。

高度な教育が受けられる付属学校や、山中に佇む温泉宿。

コーヒーとシュークリームが絶品の喫茶店など、語れる名物は多々あるが。

ここを訪れた人はまず、地名にも入っている海を褒めるという。

 

(なるほど、悪くない眺めだ)

 

駅のホームから見える海を見て、噂の真偽を一人納得する弦十郎。

すぐにかぶりを振って切り替え、早々に改札を通る。

今回この街を訪れたのは、観光目的ではない。

スマートフォンで送ってもらった地図を確認しながら、街中に繰り出す。

賑やかな駅前を抜け、喧騒が大人しくなった住宅街へ。

 

「・・・・ここか」

 

景観を壊さないように佇むマンションを見上げる。

地図と照らし合わせても間違いなさそうなので、目的地はここで間違いないようだ。

入り口にいた守衛に声をかければ、話は通っていたようで。

いくつかの質問と顔写真を撮られた後、入ることを許された。

今度は地図と一緒に送付されたメモとにらめっこしながら。

エレベーターを上がり、廊下を進む。

そして、目的の部屋にたどり着いた。

 

「―――――」

 

柄にも無く緊張してきた弦十郎。

呼吸を整えてインターホンを押せば、程なくスピーカーから声が聞こえた。

 

『はい?』

「こんにちは、本日お約束していた風鳴です」

『ああ、今開けますね』

 

声からして恐らく女性。

また程なくして、扉が開く。

出迎えてくれたのは、小柄な日本人女性。

 

「こんにちは、どうぞ中へ」

「お邪魔します」

 

招き入れられた先は、掃除の行き届いた綺麗なリビング。

ソファに座っている、見たところ三十代半ばの女性。

こちらを見るなり笑いかけてきた彼女こそ、弦十郎が会いに来た相手だった。

 

「初めまして、特異災害対策機動部二課司令官、風鳴弦十郎です」

「こちらこそ初めまして、時空管理局本局総務統括官、リンディ・ハラオウンです」

 

立ち上がったリンディと、握手を交わす。

――――かつては最前線で犯罪と戦っていたという彼女。

にじみ出る貫禄には、遥を始めとした才覚ある人材を見抜いた説得力があった。

 

「遠いところをご足労いただき、ありがとうございます」

「いえ、こちらこそお待たせしました」

 

響や遥という共通の顔見知りが居るお陰か。

お互い第一印象は悪くない。

 

「お茶、どうぞ」

「ありがとうございます」

 

リンディと共にソファに座れば。

先ほど案内してくれた女性が、お茶を出してくれた。

日本人である弦十郎を気遣ってか、日本茶のいい香りがする。

 

「ありがとうアルフ」

「いいよ、今お茶菓子も持ってくるから」

 

しかし。

和やかな中にも、幾ばくかの緊張が見え隠れしていた。

 

 

 

 

 

 

(緑茶に角砂糖?バカな、さらにミルクだとッ!!?)

 

 

 

 

 

まず弦十郎が聞いたのは、相手方に―――『時空管理局』側に頼んでいた、響の捜索。

ルナ・アタックのあと、報告に戻ったリーゼ達が直ちに手配してくれていたのだ。

 

「そうですか、響君は見つかりましたか・・・・!」

「ええ、外傷は激しいですが、こちらの医務官は優秀です。加えて響さん自身の回復力もあります」

 

吉報に思わず身を乗り出した彼に微笑みかけながら、リンディはお茶を一口。

 

「二週間もすれば、そちらにお返し出来るかと」

「よかった・・・・」

 

ひとまず、一番の懸念がなくなったのはありがたい。

自分のことのように喜ぶ弦十郎を微笑ましく思いつつ、リンディは話を続ける。

 

「しかし今回に関しては、上層部も相当堪えているようです。曲がりなりにも政府所属のそちらに、魔法および次元世界のことも露見してしまったのですから」

 

この近場に広がるまさしく『海』、この空の遥か上に広がる『星の海』。

弦十郎が、そこに加わる『次元の海』の存在を知ったのは、つい先日のこと。

宇宙とはまた違う、様々な可能性に溢れた場所。

そんな広大極まりない場所の秩序を守るべく発足されたのが、魔導師達の組織『時空管理局』である。

異世界から異世界を渡る彼らは、『魔法』と呼ばれる異能を駆使して。

人々に害をなす異常現象や、力に溺れ驕る犯罪者達に立ち向かう。

組織の例に漏れず、一枚岩ではないところが玉に瑕だが、そこはご愛嬌。

設立から81年。

前身を含めれば一世紀近くに渡り、次元世界の平和を守ってきたのは間違えようの無い事実なのだから。

 

「それは・・・・大変ご迷惑を」

「いえ、露見自体は特に問題ではないのです・・・・我々管理局が危惧しているのは、もっと別のところにあります」

 

そこからリンディが語るには。

基本的に『管理外世界』、つまりは管理局の手が入っていない世界には不干渉が鉄則。

特に地球のような魔法や異世界の概念が無い世界では、魔法を秘匿することが多い。

理由としては、現地の秩序を守るためというのが大きい。

もし架空の存在であると長年信じられてきたものが、実在していたと知られれば、大混乱に陥ること間違いない。

過去の記録によれば、実際にそれが原因で戦乱の渦に沈んでしまった世界があるということ。

以来管理局は、管理外世界の扱いに関して慎重になっている。

 

「幸い地球(ここ)には、いくつかの『パイプ』を作ることが出来ています。なので、こちらが危惧するレベルの混乱も、当分は起こらないと思っていただいても構いません、ですが・・・・」

「ええ、それは地球(こちら)で何も起こらなかった場合の話。そちらに我々が接触した今、異世界(むこう)側から脅威がやって来る可能性が生まれている・・・・そうですね?」

 

手短な首肯。

弦十郎は難しい顔でお茶を啜った。

リンディの言う『パイプ』、『協力者』については。

先日管理局について打ち明けられた際同席していた。

仕事上よく顔を合わせる、蕎麦を愛してやまない彼が。

既に異世界について知っていたとは、弦十郎にとって衝撃的だった。

 

「そこで、今回の同盟ですか」

「ええ」

 

管理局の特徴として、晩年人手不足というのが上げられる。

億を越える人員を確保しているとは言え、次元世界はそれこそ無限に広がっているからだ。

――――――浜辺を想像してほしい。

砂粒の一つ一つが次元世界とすると、それら全ての形状・状態・破損具合などを把握するには、途方の無い時間と労力を必要とする。

それが砂粒に億単位で収まる存在が行うのなら、なおさらだ。

故に、いくら戦力を雇っても、全ての事件・事故に対処するのは難しいというのが現状だそうだ。

今回管理局側から二課に持ちかけられたのは、同盟。

どちらが上とかいうのではない、対等な関係による協力関係。

『辺境』の外部組織にすがるほど、『味方』を欲しているということだろう。

 

「残念ながら同胞の中には、『魔法を扱う我々こそが至高』という選民思想を持っている輩もいます。なのであなた方をこちらに引き入れ、彼らの『大義名分』を潰してしまうのです」

 

当然、管理局から介入されやすくなるというデメリットもありますが。

そう付け加えられる。

これを最後の忠告と受け取った弦十郎は、顎に手を当てて熟考。

リンディも急かすことなく、静かに待つ。

やがて、

 

「――――分かりました」

 

弦十郎は、無意識に閉じていた目をゆっくり開く。

考えていたのは、戦力たる『子ども達』のこと。

環境や『定め』により、戦場に身を投じなければなかった彼女達。

正直、次元世界とやらがどれほどのものか、弦十郎には皆目検討もつかない。

しかし、例えどんな脅威が来ようとも、何が敵に回ろうとも。

大人の都合のために戦ってくれるあの子達のために。

己の信念を曲げることは、したくなかった。

 

「同盟の件、了承しましょう。それで不要な争いが減るのなら儲けものです」

「・・・・そうですか」

 

彼の人柄を、遥辺りから聞いていたのだろう。

リンディが浮かべた笑みには、安堵と頼もしさが込められていた。

 

 

 

 

 

 

――――――響が未来の下に帰還する、二週間と少し前の出来事である。

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

M月Y日

あれから、また周囲が少しずつ変わってきた。

大きいのは、二課が師匠達の組織、管理局と同盟を結ぶことになったことだと思う。

司令さんは近々、向こうにお呼ばれすることになってるらしい。

それから、わたしのデバイス『ヤーレングレイブル』に人格が搭載された。

これでナムナムしなくてよくなったから、ノイズとの戦闘中に魔法が発動しやすくなる。

まだまだドイツ語しかしゃべらない機械的な子だけど。

付き合いが長くなればいろんなことを学習して、師匠のセタンタさんみたいになるらしい。

ちょっと楽しみ。

 

P.S.

めでたく未来と付き合うことになったけど。

未来がまだ恥ずかしがっているので、しばらくは内緒にすることになった。

翼さんやクリスちゃんも協力してくれるのはありがたいと思う。

 

 

M月O日

お付き合い内緒にするはずだったのに、弓美ちゃん達にもうバレた。

ウサインもびっくりなフラグ回収。

いや、わたしが全面的に悪いんだけどさ。

でも未来が可愛いっていうのにも責任があると思うんだ。

うん、そうだよ。

無防備に寝顔さらすあの子が悪いもん。

でも、創世ちゃんと詩織ちゃんはびっくりさせちゃったので、申し訳なく思う。

最終的に受け入れてくれたのはありがたいけど。

弓美ちゃんは終始『あたしそういうの嫌いじゃないから!』って、テンション高かった。

とりあえず、手に持ったペンとメモは仕舞おうか。

 

 

M月D日

クリスちゃんに『マニュアル制御』のコツを聞かれたので、魔導師の必須スキルである『マルチタスク』についてレクチャー。

ちょっと意外だったのが、結構理論的なこと言っても伝わってたことだ。

・・・・了子さんのとこに居たころ、しっかり勉強させてもらってたのかな。

普段優しい了子さんを見ていた所為か、その辺勘繰っちゃうなぁ。

聞く勇気は無いけれど・・・・。

 

P.S.

一週間くらいで、ボウガンの矢を連帯飛行させててビビった。

やばい、これ本当になのはさん辺りに弟子入りしたら化ける(確信)

やだよぉ、あのおっかない弾幕の使い手が増えるよぉ(泣




というわけで。
Gの前にちょっとした幕間が入りまーす。
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