立花響の中の人   作:数多 命

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本ッ当に、ありがてぇ・・・・ありがてぇよぉ・・・・!


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「渡航目的は、『昇格試験』と『短期留学』でよろしいですか?」

 

「はい、では、書類を確認します」

 

「入界許可証、本人証明書、魔導師資格証、古代遺産(ロストロギア)所持及び使用許可証・・・・」

 

「どれも不備はありませんね」

 

「所持している古代遺産をお見せ下さい・・・・はい、では反応を登録しますので、一旦お預かりします」

 

「はい?あ、融合していらっしゃいましたね。じゃあ、こちらへお願いします」

 

「お連れの皆様は少々お待ちください」

 

 

 

 

「―――――はい、お待たせしました。こちらもお返しします」

 

「これで全ての手続きは終了です、お疲れ様でした」

 

「それでは」

 

「ようこそミッドチルダへ、よい旅を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青空に無数の衛星が浮かび上がっている。

地球でも、月が昼間に昇っている時があるが。

大きさ、量、共に圧倒される。

 

「なんつーか、本当に異世界来ちまったんだな」

「うん、不思議な感覚・・・・」

「二人とも驚いているのか?案ずるな、私もだ」

 

第一管理世界『ミッドチルダ』。

首都クラナガンにある『次元港』前で、未来、翼、クリスの三人は、一様に空を見上げていた。

そんな彼女等を見た響は、微笑み一つ。

 

「ほら、皆こっちだよー」

「あ、うん!」

 

驚くのも分かるが、何時までもここに居るわけにはいかない。

響に先導され、『迎え』との待ち合わせ場所へ。

 

「しかし、地球とあまり変わらないのだな。てっきり、もう少し・・・・」

「魔法関係の技術とかは、断然こっちが上ですけどね。生きてる人間も地球と同じ、いい人も悪い人もいます」

 

遠くに見えるビル群を眺めながら翼がぼやけば、響がのんびり返す。

 

「お迎えに来るのは、どんな人なの?」

 

未来が問いかけると、響は束の間黙る。

どう紹介しようか考えているようだ。

 

「ティアナ・ランスターさん、師匠の一番弟子で、わたしの姉弟子。『幻影の銀弾(ミラージュ・シルバー)』と名高い現役の執務官だよ。親しい人は気軽に『ティア』って呼んでる」

「姉弟子・・・・では、ランスター女史も格闘を?」

 

響の姉弟子、つまりは同じく遥に師事している人物。

故に、同じ近接戦闘を得意とするかと思うのが自然ではある。

が、響は難しい顔で首を捻った。

 

「いやあ、どっちかっていうとガン=カタかなぁ。ティア姉の得意分野は射撃なんですよ」

「そうなの?何か意外・・・・」

「ご家族の影響なんだってさ」

 

と、話している間に目的地に着いたようだ。

駐車場を見渡して程なく、車に寄りかかっていた女性と目が合った。

 

「――――響!」

「ティア姉!」

 

落ち着いた雰囲気の彼女が気楽な顔で手を振れば。

響も人懐っこい笑みで駆け寄る。

 

「お帰り、みんなも長旅ご苦労様」

「えへへ、たーだいま!」

「こんにちは」

 

肩までの長い髪、瑠璃色の透き通った瞳。

だが見るものが見れば感じ取る、隙の無さ。

それぞれ挨拶を交し合い、ティアナが乗り付けた車に乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏休みを利用して。

響は魔導師ランクの昇格試験のために。

翼とクリスは現地の魔導師と触れ合うことでの、技術向上のために。

未来は彼女達のサポートとして、異世界『ミッドチルダ』に渡った。

未来はともかくとして、響達装者が不在の今、地球はノイズに対して無防備なのだが。

弦十郎を始めとした大人達による『四日くらいなんとかしてやる!』という頼もしい発言のもと。

装者三人+αの、自分磨きの旅となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――三人は『転移酔い』大丈夫だった?慣れてない人だと、結構辛いって話だけど」

「はい、酔い止めは用意していましたが、幸い使うことはありませんでした」

「それは結構、でも具合悪くなるようなら遠慮なくいいなね?」

「はい、ありがとうございます」

 

『転移酔い』、所謂車酔いのようなものだと聞いていたが。

翼を始めとした『転移初体験組』は、幸い無事だった。

 

「響のときは結構酷かったらしいからねー」

「そ、それ今言わなくてもいいでしょー!?」

「なんだ、吐いたのか?」

「吐いてないよ!!」

 

響の名誉のために言っておくと、本当に吐いていない。

ただ危なかっただけである。

賑やかにはしゃぐ響を微笑ましく見ていた未来は、ふと、窓の外に目をやって。

―――――街のど真ん中に、クレーターが開いているのを見つけた。

 

「――――ぇ」

「な、なんだありゃ!?」

「これは、一体何が・・・・!?」

 

未来が絶句すると同時に、クリスも身を乗り出す。

翼も同じ方を見て戦慄するが。

 

「うっわ、これ誰がやったの?師匠?」

「んなわけないでしょ、『フッケバイン』よ」

 

響は随分軽いノリで苦い顔をし、ティアナもまた変わらない調子で呆れていた。

 

「フッケバイン・・・・?」

「最近までこっちで暴れてた犯罪者集団、師匠(せんせい)がこっちに戻された一番の理由ね」

 

聞けば、強い殺人衝動と引き換えに力を手にした集団とのこと。

魔法とは別種の力を使う上に、所謂『魔法無効化』なんて反則に近い技も使ってくるものだから。

ティアナはおろか、遥までもが苦戦を強いられたらしい。

 

「そんなことが・・・・」

ミッド(ここ)は数多の世界と繋がっているからね。いいものも悪いものも、大小様々に入ってくるのよ」

 

ティアナが子どもの頃は、犯罪発生率が五割を上回っていたという話だ。

力を持てば、驕る人間も少なからず現れる。

人・モノ、共に出入りの盛んなミッドチルダでは、それだけ『悪いもの』も入りやすく、生まれやすいということだろう。

 

「まぁ、そのためのあたしらなんだけど」

 

なお、復興作業は現在も進行中という話だ。

事件解決に当たった魔導師達が、昼夜問わずに駆け回っているお陰で。

進捗も概ね順調とのことだった。

 

「っと、そろそろ着くわよ」

 

気づけば車は閑静な住宅街に。

そしてとある一軒屋に止まった。

車を降りて表札を見れば、そこそこ達筆な字で『司』と書かれていた。

傍には流暢な筆記体で、ローマ字読みが添えられている。

 

「ここが・・・・」

「うん、ミッドの(うち)

 

取り立てて特徴の無い二階建ての家。

響の実家のような場所であり、ミッドチルダに滞在する間の宿でもあった。

未来が感心して見上げている間に、響とティアナが慣れた様子で鍵を開ける。

 

「たっだいまー」

「お、お邪魔しまーす・・・・」

「はい、いらっしゃい」

 

響を先頭に、家の中に入ったが。

何となく、違和感を感じた。

全体的に薄暗いというか、空気が重いというか。

 

「何?」

「あ、いや・・・・なんでも」

 

首をかしげた響はティアナに目をやるも。

自分より経験を積んでいる姉弟子は、特に警戒している様子は無い。

気の所為か、と、まだ納得していない頭を無理やり落ち着かせて。

リビングのドアを開けば、

 

「今だあぁ――――ッ!!」

「――――――うりゃッ!!」

「わぁ、ッ!?」

「ッ下がれ雪音、小日向!!」

 

突然カーテンが開き、続けて発砲音らしき乾いた音。

驚いた響が身構え、翼が後ろ手にクリスと未来を庇い、クリスは更に未来を庇う。

見通しの良くなった室内。

少女達の、満面の笑みが咲き誇って。

 

「おいでませ、ミッドチルダ―――ッ!!」

「お、おう!?」

 

クラッカーを手にしたヴィヴィオ達が、ポーズを決めていた。

一度は構えた面々も始めは呆けていたが、やがて各々笑みを浮かべた。

 

「にゃはは、ドッキリ大成功だね」

「なのはさん!」

 

はしゃぐ少女達の奥から出てきたのは、亜麻色の髪をゆらした女性。

『なのは』と呼ばれた彼女の手には、焼きたてのおいしそうなクッキーが。

 

「ほら、立ちっぱなしもなんだし、座って座って」

「あ、はい」

「こっちですよ、ほら!」

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

M月J日

ミッドチルダよ!

わたしは帰ってきたああああああああああ!

今日から三泊四日。

昇格試験を受けるついでに、ティア姉やらなのはさんやら。

手の開いてる人達に、色々と稽古をつけてもらう予定ですッ!

家に帰ったら、早速チームナカジマのみんながサプライズしてくれて、嬉しかった。

なのはさんも元気そうだし、聞いたところに寄れば師匠もどうにか無事らしい。

ミウラちゃんにフーカちゃん、ユミナちゃんも怪我が無くてよかったよ。

モルドやマシュ達は残念ながら先約があったらしいけど、なんとも無いらしい。

特にモルドにいたっては、感染者を一人仕留めたとかで、注目を集めているとか。

いつぞやぼやいたことが実現しちゃったよ・・・・。

ひとまず、知り合いに死人が出なかっただけでももっけの幸いだと思おう。

 

P.S.

今日になって判明したんだけど。

ヴィヴィちゃんのデバイスの愛称が、クリスちゃんと一緒だった。

クリスちゃん、口では興味ないみたいなこと言ってたけど、『クリス』と戯れてるのを見る限りまんざらでもなさそう。

気づけばティオやウーラにも集られていたし、意外と動物に好かれやすいのかも・・・・?

いや、あの子らはデバイスなんだけども。

 

 

M月P日

ミッド滞在二日目。

明日の試験に向けて、翼さんやクリスちゃんと一緒に、ティア姉に稽古をつけてもらった。

ヤーレングレイブルこと『グレイ』との調子を確かめたり、クリスちゃんがマルチタスクについてしっかり習っていたり、翼さんも遠距離相手の対応を伝授してもらったり。

で、最後にシュートイベーションをやった。

五分攻撃を耐えるか、ティア姉に一撃いれるかって訓練なんだけど。

冗談抜きで、死ぬかと思った。

ティア姉本気で仕留めに来るんだもーん!勉強になったけどさ!

何重にも幻術使ってくるのはさすがに反則だと思うんだ!

おかげで終わる頃には、わたしもクリスちゃんも、翼さんまでグロッキーになっていた。

明日早いけど、今夜はぐっすり眠れそうだぁ・・・・。




別名『正直やりすぎたスマンなミッドチルダ編』。
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