立花響の中の人   作:数多 命

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今回でミッドチルダ編は終了です。


40ページ目

――――『一方的』。

目の前の光景は、その一言に尽きた。

 

「あっはははははは!ほらほらぁ!弾幕薄いよォッ!!」

「他でもない本業だ、負けられんぞ司ッ!!」

「はいッ!!わたし達もやってやりましょうッ!!」

 

遥を筆頭に、響と翼が前衛で大暴れ。

 

「遠慮はしねぇッ!鉛玉の大バーゲンだッ!!!!!」

 

彼女等が零した個体は、クリスが片っ端から狙撃して撃破。

 

「一緒に援護射撃、お願いしますッ!」

「あの子達がおる今なら、遠距離攻撃が通じます!」

「ぃよっしゃぁ!女の子ばかりに任せてられるか!そうだろォッ!?」

「うおおおおお!!!」

 

さらに、装者達の歌により、ノイズが実体化したことも合間って。

なのはを始めとした砲撃魔導師達が、クリスを援護。

触れたらアウトなのは相変わらずだが、始めは手も足も出せなかった歯痒さが起爆剤となったのだろう。

ありったけの砲撃が、雨あられと降り注ぐ。

 

「そ、そんな・・・・!」

 

結果として、一時間足らずでノイズはほぼ壊滅してしまった。

 

「そうら隙ありだァッ!!!!」

 

男達が呆然としている隙をつき、飛び出す影。

モルドだ。

援護射撃を行う魔導師達と同じく、力になれるのが喜ばしいのだろう。

獰猛に笑った彼女は、大太刀をめいいっぱい振り上げて。

 

「――――タケムラ流ッ!!」

 

刀身に魔力を迸らせる。

 

「――――神罰ッ!!!」

 

速度と威力が増した一閃。

もはや守るものが何も無い装置など、両断以外の末路は許されない。

 

「く、くそッ・・・・!」

 

ノイズも装置もなくなり、完全に優位性を失った男達。

破壊された装置の煙に紛れ、脱出を試みるが。

 

「はい、そこまで」

「ここからは通行止めですよ」

 

進行方向に立ちふさがったのは、ハンドガンを構えたティアナと、レイピアを向けるセレナ。

 

「もう帰るの?つれないわねぇ」

「あなた方は今回の首謀者の疑いがあります、大人しく同行を」

 

背後には既に、フェイトと遥が佇んでいた。

まさに『前門の虎、後門の狼』。

逃げ場など到底無い。

普通なら、そう考えるが。

 

「ッああああああああ!」

 

悲しいかな。

『崇高な思想』を持っている彼らは、そう考えなかった。

リーダー格は雄叫びを上げながら、上着を肌蹴させる。

コートの下にあったのは、まるで腹巻のように巻きつけられた爆弾。

遥にフェイト、ティアナにセレナと、誰もが一度は聞いたことのある魔導師が一辺に四人。

この状況を、己もろとも葬る絶好の機会と呼んだのだ。

彼女達四人に見せ付けるように、手元の起爆装置を見せた男。

浮かべた笑みは、『ざまぁ見ろ』と言いだけだったが。

 

「・・・・ぁ?」

 

駆けつけた旋風。

視界にマフラーが翻り、プラズマ走る瞳に射抜かれて。

 

「ったぁ!!」

「おぼッ!?」

 

一瞬だけ見えた夜空を最後に、意識がブラックアウトした。

男の手から離れ、宙を舞うスイッチ。

たまたま飛んできたそれを遥がキャッチすれば。

爆弾を引っぺがした響が、空高く放り投げる。

 

「ほいッ」

 

十分な高さに達したところで、遥は躊躇いなく起爆。

予想通りの花火にすらならない火炎が咲いて、消えたのを確信し。

気を失っていない、残りのメンバーに笑いかける。

 

「お話、聞かせてもらえるよね?」

 

『ノー』を答える猛者は、誰一人いなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『パシフィスタ』。

元は管理局の強硬派に抗議する、平和的な政治組織だった。

メンバーの殆どが、強硬派による支配が強い世界出身の者達であり。

『彼らの同類にはなりたくない』と、始めこそ対話による和解を目標に掲げていたが。

当然選民思想に染まった強硬派が、聞く耳を持つわけが無い。

それどころか『公務執行妨害』と称して、お縄にしようとすらしてきた。

言葉で何度訴えても、帰ってくるのは暴力だけという状況に痺れを切らし。

数年前から武装集団となってしまったのだ。

『選民思想の連中を庇う者も敵だ』と、穏健派すらも敵視し、危害を加えるその危険性から。

管理局の中でも上位に入る要注意団体として、マークされていた。

また、そもそもの原因が身内にあることもあり。

新人局員の研修にて、行き過ぎた選民思想がどういった影響を生むのかと言う一例として取り上げられることが多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔導師にも、一般人にも、少なからず犠牲が出てしまった今回の騒動。

だが人々には、犠牲を差し引いても余りある、英雄譚が生まれた瞬間でもあった。

 

「響!」

「おぉ、未来!」

 

そんな『ヒーロー』の筆頭である響が、事情聴取を終えて一息ついているところに。

未来が駆け寄ってきた。

飛び込む彼女を受け入れ、ついでとばかりに一回転。

疲れが吹き飛んだ顔には、満面の笑みが咲いている。

 

「大丈夫だった?怪我は無い?」

「無いって、師匠達来てからワンサイドゲームだったし」

 

『未来だって見てたっしょ?』と、笑いかける。

 

「まあ、流石にちょっとつかれたかな。人助けのためとは言え、ロストロギア使っちゃったし」

 

遥が一筆したためてくれた許可証があるとは言え、地球で言うところの拳銃や刀剣といった武器を所有しているようなものなのだ。

実際クリスのイチイバルは、ミッドチルダ的に見た目も効力ももろアウトラインに入ってしまっているため。

もう少しかかりそうだった。

ティアナが一緒についている以前に、今回の功労者の一人なので。

そうそう滅多に厄介ごとにはならないだろうが。

 

「おっす、お疲れ」

「お疲れ様です、先輩」

 

話しているところに、モルドとマシュもやってきた。

彼女等もまた、目撃者の一人として聴取されていたようだ。

 

「お疲れー!マシュも久しぶりだ、大きくなったね」

「はい、身長その他諸々、しっかり成長しています」

「フォーウ!」

 

慕っている先輩に褒められたのが嬉しいのだろう。

マシュは気合たっぷりにガッツポーズし、キャスパリーグも一緒に胸を張る。

 

「で?そっちが例の?」

「うん!未来、こちらわたしの親友の、モルド!」

「モルド・クラン・コールブランドだ、よろしく」

 

妹の微笑ましい一面もそこそこに、気さくに話しかけるモルド。

話に聞いていたとは言え、初対面なら礼儀は大事。

 

「小日向未来です、響がお世話になってます」

「お、おう」

 

そう考えた未来は、一度丁寧に頭を下げた。

思っても見なかった反応に、モルドは思わず一歩下がる。

響の友人、現在は恋人というだけもあり、もっと気さくな態度を想像していたのだ。

何か悪いところがあったかと首をかしげる未来と目を合わせたモルドは、そっと響に耳打ち。

 

「出来た嫁さんだな」

「あげないよ?」

「とらねーよ!」

 

モルド自身にそういう趣味は無いし、何より取ろうとも思わない。

未来を褒めた瞬間に見せた、鋭い目に射抜かれてはなおさらだ。

意外と嫉妬深いかもしれない親友の一面に冷や冷やしていると、

 

「やぁやぁ若人諸君、盛り上がってるね?」

「師匠」

 

管理局の制服に身を包んだ、遥が歩み寄ってきていた。

黒い制服が、彼女の雰囲気を引き締めている。

見れば、後ろから翼とクリスも着いて来ており。

クリスは長い聴取に疲れきったのか、目に見えてぐったり肩を落としていた。

 

「今日はお疲れ様、みんなが頑張ってくれたお陰で、被害も最小限に止めることが出来た」

「そんなことないです、師匠達が来なきゃ、もっと大変なことになってましたし」

 

労いの言葉に、首を横に振った響。

脳裏に浮かぶのは、増加するノイズに手も足も出なくなったあの時だ。

危機的状況に陥っていた未来の下に駆けつけることが出来ず、ただ手を伸ばすことしか出来なかった。

届かない悔しさを思い出した響は、無意識のうちに手を見つめていた。

 

「だったら反省点踏まえて先に進みな、後悔の無くし方なんて、それしかないんだよ」

「わわ・・・・!」

 

遥はしょぼくれた響の頭を乱暴に撫で回す。

 

「それに、あんたとクリスが踏ん張っていなかったら、あたしらだって間に合わなかったんだ。まるっきりダメってわけでもないさね」

「司女史の言うとおりだ、二人がいち早く戦っていたからこそ、私も小日向を守ることが出来たしな」

 

翼にも頷かれたとあっては、これ以上の自虐は無礼と判断したようだ。

響は一度俯いて頬を叩く。

そうして顔を上げれば、笑みを浮かべた。

 

「師匠、わたし頑張ります。頑張って、後悔しないようにします!」

「うむ、その意気だ!」

 

拳を握って力強く宣言すれば、遥は満足そうに頷いた。

教え子の向上心が嬉しいのだろう。

また頭を撫で回す様は、師弟というより兄弟のようだった。

・・・・兄弟のように、微笑ましい光景だったが。

 

「――――じゃあ、頑張るついでに」

 

ここで終わるのなら、『狂暴』だなんてあだ名されていない。

徐に響の肩を引っつかむと、体の向きを変える。

 

「これもどうにかできるよね?」

 

強制的に回れ右された響の目に飛び込んできたのは、無数のカメラレンズと、マイク。

どうみても、こちらの報道陣だった。

 

「・・・・へっ?」

 

いつの間に来たのだとか、何で気づかなかったんだろうとか思いはしたが。

肩に置かれた手が無くなったことに気づいた響が、勢い良く振り向けば。

 

「ふははははははッ!頑張れー我が弟子よー!これも修行だー!」

 

全速力で後退する、遥の姿が。

既に距離は開ききっており、引き止めることは叶わない。

 

「ちょ、ちょっと!!?師匠!?」

「まーたないッ!さらばー!!」

「ししょーッ!!」

 

ぴゃーっと飛び去っていく遥を見て、思い出す。

『そういえばあの人、メディアが苦手だった』と。

 

「あのッ!」

 

はっとなって、元の方を振り向けば。

 

「司執務隊長のお弟子さんですよね!?お話聞かせてください!」

「今回大変ご活躍されたとのことですが、何かコメントを!」

「お写真ッ!目線こちらにお願いしまーすッ!」

「あ、わわわわわ・・・・!」

 

シャッター音、フラッシュ、録音機にマイク。

音と光が、一度にどっとなだれ込んでくる。

流れ込んできた情報量に、響は一気にキャパオーバー。

ノイズなら殴って終わりだが、相手が人間である手前それは出来ない。

 

「落ち着いてください!ちゃんと答えますから、一旦離れて!」

 

インタビュー慣れしている翼が庇ってくれているが、たった一人では裁ききる量にも限界がある。

唯一の救いは、モルドが未来やクリスを安全圏まで連れて行ってくれたことだろうか。

だが、あちらにもマイクを向ける記者がちらほら見受けられる。

 

「お弟子さん!」

「コメントを!」

「お疲れ様です!」

「お話ー!」

「写真を!」

「一言!一言!」

 

現場はもはやしっちゃかめっちゃか、翼もそろそろ限界を向かえそうだ。

 

(どうして、どうしてこうなった・・・・!?)

 

プルプル震えながら思うのは、エスケープする師匠(あんちきしょう)のさわやかな笑顔。

 

「・・・・師匠の」

 

ノイズよりもおっかない連中のど真ん中に放置されたこの状況。

サバイバルの方がまだマシだ。

そんな怒りと、困惑とがない交ぜになった、パニックになった頭で。

響はありったけの声で叫ぶ。

 

「ししょーのバカアァーッ!!わーんッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんねー」

 

街灯モニターから聞こえた悲鳴に、遥は苦笑いを零す。

人の気配が無いビルの上、画面を見てみれば、駆けつけたティアナに引き取られる響の姿が。

バカと言われてもしょうがないことをやったので、甘んじて受け止めることにする。

上着の内ポケットからたばこを取り出し、一本咥えて火をつける。

煙を吸い込み、風に燻らせた遥は、

 

「―――――珍しいじゃないの、こっちによりつくなんて」

 

いつの間にか隣に居た、長身の青年に話しかけた。

 

「俺だって来るとは思わなかったさね・・・・ま、必要なことだったんでな」

「そう」

 

『いる?』とたばこを差し出すが、青年は首を横に振る。

 

「やめたよ、連れが好きじゃなくてね」

「あら」

 

断られたら、素直に引き下がる。

それが遥なりの、喫煙者としてのマナーだった。

 

「で、用事は終わったの?」

「いや、これからだ」

 

柵に寄りかかっていた青年は、言うなり背筋を正す。

 

「あんたを見込んで、頼みに来た」

「・・・・内容によるわよ、これでもお上の犬なんでね」

 

一度おどけて、犬の鳴き真似。

しかし、青年の真剣な眼差しを目の当たりにし、伊達や酔狂ではないと判断。

もう一度煙を吸い込みながら、体を青年に向ける。

 

「・・・・近いうち、地球ででかい騒ぎが起こる。俺と連れも、その渦中にいる」

 

紫煙を吐き出し、続きを促す。

 

「頼みたいのは、終わった後のことだ。俺はあんたやあんたの弟子にしょっぴかれるだろう、そうなって然るべきだ・・・・だけど、連れとその『家族』は、そうなっちゃいけねぇ、なってほしくねぇ」

 

すると青年は、足元に膝を着いた。

膝だけではない、手や額も擦り付け、ひれ伏す。

 

「権力を持っている、あんただからこそ頼む。どうか、子ども達を守ってやってくれ」

 

口調には丁寧さの欠片もないが。

五体倒置するその姿に、嘘偽りは見受けられなかった。

『身内』ならではのフィルターがかかっているやもしれないが、少なくとも遥はそう判断する。

 

「・・・・『お役所』を敬遠していた奴が、変わったわね」

 

だからこそ、その肩に手を置く。

 

「大丈夫よ、お役所に残っても、あたしの信念は変わっていない」

 

『よっぽど救い様が無い限り』と付け加えながら、青年を起こす。

 

「何より、可愛い弟の珍しい頼み事だ。引き受けるのが姉貴ってもんでしょ」

「・・・・ああ、助かる」

 

断られることも視野に入れていたのだろう。

青年の顔に、目に見えて安堵が満ちた。

 

「まあ、やらかそうってんなら、容赦なく叩き潰す。それがあたしの仕事だからね」

「それで構わねぇよ、こっちだって加減はしねぇ」

「その意気だ」

 

不敵に笑い合って、互いの拳を打ち付ける。

 

「それじゃ、その時まで元気でね。(カナタ)

「おうよ、遥」

 

後顧の憂いはなくなったのだろう。

満足そうに背を向けた青年は、ふと思い出したように振り返る。

 

「そうそう、お役所はあんまり好きじゃねぇが、姉貴のやりかたは嫌いじゃねぇ」

「あら?そう?」

「ああ、平等に守りたいときは邪魔だが、子どもを守るにゃ最大の武器だ。だからこそ、あんたを頼ったからな」

 

『それだけだ』と言い残し、青年は今度こそ去っていった。

一人残った遥は、吸殻を携帯灰皿に仕舞いながら、街並みに目を遣る。

街灯モニターには、いつのまに撮ったのか、ノイズを相手に奮闘する響の姿。

 

「これから忙しくなるよ、響」

 

勇ましい横顔に、届かない呟きを零す。

 

 

 

 

 

 

 

なお、この後。

響を囮にエスケープした件について、なのはにこってり絞られるのだが。

それはまた、別のお話。




次回からG編に入ります。

さて、フラグの数を数えなきゃ(白目
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