未来さん待って!浮気とちゃうねん!だから歌うのやめてただの鏡がおっかなく見え、アッー!(
「―――――敵襲だぁーッ!!!」
「調と切歌達は任せなさい」
「どうか、気をつけて」
「ここはもうダメだ!総員、撤退準備!」
「アレはどうしますか!?」
「妹と違って、リンカー頼りの劣等個体だ!捨て置け!」
「はっ!」
「なんだぁ?ガキ一人に寄って集って、クソダセェ」
「目障りだ、失せろ」
◆ ◆ ◆
あれから一週間。
ライブの騒動も一応の落ち着きを見せ始め、世間には『いつも通り』が戻ってきた。
だが問題が解決したわけではないのだ。
無事に援軍であるティアナを迎え入れた二課。
武装組織『フィーネ』の所在と目的を探るべく、既に捜査に入っていた。
日本古来より受け継がれる忍術を駆使する緒川と、幻術による隠密行動を得意とするティアナの相性は抜群で。
現場に乗り捨てられていたトレーラーから追いかけた捜査は、当人達も驚くほど早く佳境に入っていた。
「しかし、非殺傷設定ですか。中々便利ですね」
「殺しがご法度なのはどこでも一緒ってことですよ」
とある反社会的な自営業の事務所。
弦十郎への報告を終えた緒川が感心した様子で話しかければ、ティアナは証拠品を集めながら肩をすくめる。
「お互い超常的な力を扱いますし、
「なるほど、気兼ねなく全力を出すための手段と」
「そのとおりです」
お互いが粗方集め終えた証拠品を確認し、十分な収穫があったと満足げに頷く。
もはや長居する理由も無い。
外に出払っているだろう組員達が、戻ってくる可能性だってある。
余計な厄介ごとが起きる前に、撤退することにした。
◆ ◆ ◆
都心から離れた沿岸の、捨てられて久しい廃病院。
マリアが属する『フィーネ』は、ここを根城にしていた。
「そしたらデスよ?なんとそれを、ご飯にザバーっとかけちゃったんデスよ!?」
シャワールーム。
明るく賑やかに話していた『暁切歌』は、相方の『月読調』の反応が薄いことに気づく。
隣を見やれば、何かを思いつめているようだった。
切歌の心配げな視線に気づかない彼女が思うのは、つい一週間前に出会ったガングニールの装者。
『理由があるなら言ってごらん』と、戦場に似つかわしくない笑顔を浮かべた敵。
「・・・・ッ」
軽薄なその顔に苛立ちを覚えた調は、壁に拳を叩きつける。
何が『誰かの為』だ。
へらへらと無責任な笑顔を浮かべて、何の効果がある、何の意味がある。
何より、助けになりたいのなら、どうして。
「誰かの力になりたいっていうのなら、どうして・・・・!」
――――どうして、あの二人を助けてくれなかったの?
思い浮かべるのは、今でも慕っている姉妹。
妹はこの世にはいない。
とある実験にて自爆紛いのことをし、最終的には瓦礫に潰されたと聞いている。
更に同時に発生していた火災により、死体すら残らなかったとか。
姉は一度姿を消した。
きっかけは、『施設』がどことも知れぬ武装勢力に襲われたとき。
文字通り『捨て駒』にされた彼女の生存は、絶望的だった。
再会したのはほんの数ヶ月前。
『
・・・・少し信用なら無い男を連れて。
「本当に誰かの為になりたいのなら、悪いことをしてでも成し遂げなくちゃいけないのに・・・・」
姉の方は奇跡的に助かっていたとはいえ、数少ない大好きな存在を失い、取り上げられたのだ。
彼女達が周囲に懐疑的になるのは、必然だった。
「・・・・そうデスね、わたし達は間違っていないデスよね」
調の手を労わるように握った切歌は、両手を重ねてそっと包み込む。
応える様に調も手を重ねて、握り返す。
そこにいたのは世界に喧嘩を売ったテロリストではなく、数少ない居場所に必死に縋る子どもだった。
「――――例え間違いだったとしても」
二人が振り向けば、マリアがいた。
二人と同じくシャワーにうたれながら、口火を切る。
「私達は、自分の正義とよろしくやっていくしかない」
二人にというよりは、まるで自分に言い聞かせるように。
強く、静かに言い切った。
実に四年もの間行方をくらましていた彼女。
一糸纏わぬからこそ分かるその体は、ただ細いだけではない。
指は所々節張り、肌にはうっすらとした傷跡があちこちに残っている。
豊満な胸を除き、無駄な脂が無い引き締まった体。
舞台で舞い、歌う為ではない。
戦場を駆け抜け、敵を屠るために鍛えられた体だった。
「――――!?」
沈んだ空気を破壊したのは、けたたましい警報。
マリアは顔を跳ね上げると、水滴を拭くことすらおざなりに。
バスローブをまとって飛び出す。
「マム!何が!?」
とある一室に飛び込む。
慌てるマリアに振り向いたのは、『ナスターシャ・セルゲイヴナ・トルスタヤ』。
マリアだけではなく、切歌や調にとって『母親』のような存在だ。
「大丈夫よ、ネフィリムが少し暴れただけ。時期に治まるわ」
ナスターシャは微笑みつつ、穏やかな声で説明する。
対するマリアは安堵を浮かべるも束の間、モニターの中で蠢く『獣』を忌々しそうに睨みつける。
「――――いや、何突っ立ってんだお前は」
「いっ!?」
その頭を遠慮なくド突く拳。
見上げると、呆れた瞳が見下ろしてきている。
「ばーさんが言ってるんだし大丈夫だろ、何かあったら俺が出る」
「彼の言うとおりです。ネフィリムが我々の切り札であること、どうぞお忘れなく」
どうやらもう一人いたようだ。
拳を落とした男とは違う、いっそ頼りないくらい細い男性。
諭すように、落ち着いた口調で語りかけた。
マリアは二人(主にド突いた方)をねめつけると、観念したようにため息をつく。
この場は彼らの言を信じるべきと判断したようだ。
「マム!マリア!」
「一体何が!?」
落ち着いたところで、切歌と調も走ってくる。
二人もよっぽど慌てていたようで、あろうことか下着姿だった。
「だーも!おめーらもなんちゅーカッコしてんだ!服を着ろッ!服を!風邪引くぞ!」
「みゃあああああ!」
「ッ触らないで!」
年上として思うところがあるのだろう。
嗜めるよう頭に強く手を置くと、手のひらをぐりぐりひねってお小言。
この中で一番子どもなので、叩くような真似をしないのは好感が持てるが。
それじゃあさっき叩かれた自分はなんなんだと、マリアは難しい顔。
張り詰めた空気は緩み、一気に賑やかになった。
「ナスターシャ教授、そろそろ視察の時間では?」
「ええ、今後のためにも、今回の視察を疎かに出来ません」
タイミングを見計らい、細い男がナスターシャに進言。
ナスターシャも頷き、同感の意を示す。
「留守は任せましたよ」
「ネフィリムの餌調達の算段でも考えながら、ゆっくり待ってますよ」
モニターの大人しくなった『獣』を見ながら、男は目を細めた。
(さて、連中は『餌』に食いついているでしょうか・・・・)
◆ ◆ ◆
物音で未来は目を覚ます。
薄暗い部屋の中で最初に感じたのは、肌寒さ。
起き上がってみると、隣で寝ているはずの響がいない。
どこにいるのかは、すぐ見当がついた。
月明かりの中見渡せば、何やらごそごそ動く影。
「――――響」
「未来?」
振り返った響の顔は、気まずそうに眉を下げている。
「ごめん、起こした?」
「ううん、いいの・・・・行くの?」
どこに、とはあえて聞かない。
シンフォギアを始めとした秘密を共有しているとは言え、あくまで一般人である未来に全てを打ち明けられるわけではないことを、知っているから。
「うん・・・・ちょっと」
恐らく、マリア達の潜伏場所に行くのだろう。
言葉を濁した響を見て、未来は何となく察した。
これ以上を詮索したところで困らせるだけだし、何より仲間達を待たせてしまう。
だから、手を取って頬に寄せる。
「いってらっしゃい、気をつけて」
「・・・・うん、ありがと」
いつものおまじない。
響は感謝と一緒にキスを送って、足早に出て行く。
その背中を見送った未来は、やはり不安になっていた。
本当は分かっているはずなのに、響は大丈夫って言えるはずなのに。
何故だろうか。
あのライブ以来、自分の手を見つめてはぼんやりする響は、どこか危なげない。
(・・・・だめ、悪いほうに考えちゃだめ)
そうやって暗い顔をすれば、響はもっと不安になるはずだから。
かぶりをふった未来は、このまま起きていても埒が明かないと、ベッドに戻ることにした。
GX5話で、「ええい!バックアップは何をしている!?早うおべべを持てーい!!」となったのは私だけではないはず。