背後に佇む三日月と   作:303

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トップチーム②

ギムレット、そう呼称される合成弾が闇夜に閃き、アスファルトを砕く。

 

 

 

轟く破砕音と立ち込める煙塵が、その威力を物語っていた。

 

 

 

「来宮さん、過激過ぎませんか?」

 

その光景に木虎が呆れ気味に言葉を漏らし、目の前に本人が背を向けて降り立つ。

 

「悠一さんの予知もありますが、遊真さんを知らないわけではありませんから、何より」

 

 

これで終わるならトップチームは名乗れません

 

 

その言葉に応える様に白煙を裂き、拡張された十字の剣閃が襲い来る。それに5人が飛びずされば、最後方の嵐山、その背後に風間が突如姿を現す。

 

「カメレオン!」

 

木虎の切迫した声を置き去りに、嵐山の首めがけてスコーピオンが振るわれる。予知でいち早く察知した迅が、風刃で奇襲に割り込み跳ね除ける。

 

払った刃は余りにも軽い。

手応えの無さにハッと勘付き、内部通話で呼びかけた。

 

『静間、嵐山!』

 

『ええ、准さん』

 

『ああ、来宮』

 

ノータイムで反応した2人が上方へと利き手をかざし、ドーム状のシールドが4重に味方を覆う。

 

「ハウンド」

 

そこへ出水の言葉をキーに、間を置かずに誘導弾、ハウンドが降り注ぐ。

 

1枚2枚とシールドが砕かれ、硬質な音を奏でるなかで、残る3人が追撃に備える。射撃が止む頃には煙は晴れ、所々からトリオンを漏らす太刀川隊2人と風間、三輪が視界に映った。

 

「派手な挨拶だなぁ、来宮」

 

「お好きでしょう?慶さん」

 

笑みを浮かべて対峙する2人。

抜き放った二刀を両手に太刀川が悠然と踏み出し、同じく踏み出した来宮が半身で構え、影の左手に青白い球体を保持する。互いに油断は微塵もない。

 

『キノさん、両横の塀だよ』

 

『了解です』

 

国近の警告の直後、ハウンドに紛れ姿を隠した菊地原と歌川が、バッグワームを解き左右の塀から飛び出し切り掛かる。

すかさず菊地原を時枝、歌川を木虎がシールドで阻む。相手と同様、スコーピオンでそれぞれ切り返せば、追撃に動こうとした風間を嵐山が突撃銃で牽制、

 

「グラスホッパー」

 

距離を取った小柄な体躯に、加速した来宮が勢いを殺さずに飛び蹴りを見舞う。

 

風間は咄嗟にクロスさせたスコーピオンの腹で受け止め、ひび割れるブレードに舌打ち、さらに後退を余儀なくされたその横を迅が通り抜け、太刀川、三輪と切り結ぶ。

 

「なかなかおもしろい展開だが……」

 

三度、四度と火花を散らす剣撃の最中、呟いた太刀川が徐に弧月を構え直し、ブゥンと独特の駆動音が鳴る。

 

耳聡く反応した迅と来宮が飛び退いた。

そこを遅れて旋空の斬撃が走り、周囲の建物が刈り取られ、嵐山がそこへメテオラを放つ。

 

敵の視界を塞ぎ、5人は一旦後退した。

 

 

「准さん、スナイパーはやはり」

 

「綾辻に確認した。ハウンドの反撃に合わせて姿をくらませてる。」

 

ある程度距離を稼ぎ、廃屋の上に身を落ち着けて話し会う。

予知で警戒しつつ、嵐山と来宮に迅が加わる。

 

「古寺と合流して奈良坂はおれと静間に張り付くだろ、メインは太刀川さんと風間隊」

 

「分断、当然でしょうね」

 

この戦力差、固まるのは向こうには下策だ。

 

「鉛弾のある三輪隊はわかります、ですけど当真先輩までこっちに来るんですか?」

 

納得する来宮に対し、疑問符を浮かべた木虎が続ける。

 

「迅さんに来宮さん、2人を相手取るなら私の場合、彼もそちらに差し向けます」

 

「確かにそれがベターですが、当真さんには狙撃手として高い矜持があります、外れる弾で援護に徹するより、取れる駒を確実に仕留めに来るはずです」

 

静かに言葉を紡ぎ来宮が嵐山へ顔を向ける。

 

「言われてみればそうだな、おそらく来宮の言うとおりだろう、太刀川さんならそうさせる」

 

「慶さんなら、縛るより自由にやらせますからね」

 

嵐山に頷き視線を巡らせれば、時枝が淡々とした口調で引き継ぐ。

 

「それならいっそのこと、分断されたように見せかけませんか?うちの陣に誘い込みましょう」

 

「そうだな、賢と連携して迎え撃とう」

 

そこで迅がピクリと反応する。

 

「おっと、お出ましだ」

 

近づく敵の存在に各々が立ち上がる。

 

「うまいことやれよ、嵐山」

 

「そっちもな、迅、来宮」

 

「さあ、行きましょうか」

 

 

互いに戦場へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

「なぜだ……なぜ玉狛と手を組んだ?市民の安全を優先するおまえたちが、なぜ外敵を庇う玉狛の側にいる?」

 

嵐山隊と相対した三輪隊2人と出水。切り出した三輪に嵐山が返す。

 

「外敵か……玉狛の思惑は正直よく知らないんだ、迅に聞いてみてくれ」

 

「なにを馬鹿な……!?」

 

あっけらかんとした返答に三輪の苛立ちが滲む。それを気にせず嵐山は続ける。

 

「ネイバーをボーダーに入れる、ありえないことだからこそ、そこによっぽど理由があるはずだ、迅は無意味に火種は持ち込まない男だ」

 

「なんの確証も無しにネイバーを庇うのか!?ボーダーの責務をなんだと思っている!!」

 

「おまえがネイバーを憎むのは知ってる、恨みを捨てろとは言わない」

 

ただ、そう言って三輪を見据える。

 

「排除だけが戦い方じゃないってことだ、納得いかないなら、この場はおれたちが気の済むまで相手になるさ」

 

米屋が好戦的な笑みを浮かべ、三輪が敵意剥き出しに睨んだその時だった。

 

 

 

「戦りあうならさっさとしようぜ」

 

 

 

両手にキューブを構えた出水が歩み出る。

 

「なるだけ早く片付けて、太刀川さんに加勢したいんでね」

 

目に見える戦闘態勢、そこへ一条の狙撃が飛ぶ。

 

 

 

 

ギィン

 

 

 

 

しかしシールドに阻まれ不協和音が鳴り響く。

 

 

「なんちゃって、佐鳥見っけ」

 

 

慌てふためく狙撃手を思い浮かべて余裕の笑みを作る出水。

 

三輪が米屋に追撃の、嵐山が木虎に援護の指示を出し、一つの戦況が動き出す。

 

 

 

鋭く重い横薙ぎの一閃。

太刀川のそれを迅が受け止め、そこへ風間が一足に踏み込むが、来宮が割って入る。

 

加速した感覚を活かしてその左手首を掴み取り、右でアステロイドの掌底を打ち込むが右手でそらされ空を切った。互いに両手が塞がった状態。風間は掴みとられた左手を支点にスコーピオンで蹴りを放つが極小のシールドが出現、初動で膝頭を抑えられ、同時に胸元に展開されたグラスホッパーで弾き飛ばされる。

 

来宮は、片手を地に着き滑るように後退した相手を見つつ、迅が狙撃を躱して後退したのを確認。アステロイドの散弾で太刀川と風間の追撃を阻んだうえで、隣り合うように自らも下がる。

 

数の不利、一見突出を嫌った立ち回り、それを太刀川と風間は訝しむ。

 

「ずいぶんおとなしいな迅、A級の時のほうがまだプレッシャーがあったぞ、来宮にしてもそうだ、最初の無茶苦茶っぷりはどうした?」

 

先ほどから続くやり取り、多勢に無勢など形だけ、覆す力を持つだろうにおとなしすぎると、太刀川が思考を巡らせる。

 

「まともに戦う気なんてないんですよ、この人達は時間稼ぎ、今頃きっとネイバーをどこかに逃してるんだ」

 

皮肉る声音の菊地原に、いいや、と風間がその可能性を否定する。

 

「迅は守りに徹しながらこちらのトリオンを確実に削っている、こいつらの狙いは、俺たちのトリオン切れによる撤退だ」

 

歌川が小さく驚き、迅が冷や汗を流す。

 

「来宮がギムレットでこれ見よがしにその気を見せたのは、その選択肢を薄めるため、声を掛けこちらに気付かせたのは、適度にダメージを与えるためと言うわけだ」

 

その指摘に来宮の眼がスッと細まる。

 

「なるほどな、撤退のほうが本部との摩擦は小さい、あくまで帰らせる気なわけか」

 

風間の言葉に納得した表情を浮かべる太刀川。

隊長2人の様子に、菊地原が眉を顰める。

 

なにをもたもたやってるんだ?

 

堪らず口を挟んだ。

 

「風間さん、この人達ほっといて玉狛に直行しましょうよ、ここにいたって時間のムダ、ぼくらのターゲットはブラックトリガーだ」

 

逃げを封じる一手、風間が了承する。

 

「たしかに埒があかないな、玉狛へ向かおう」

 

 

 

 

 

「やれやれ……結局こうなるか」

 

 

 

 

 

迅の瞳が凍てつき、風刃から光の帯が溢れ出す。

 

 

 

 

 

 

振るわれた刃から刹那に伝播した斬撃が、トップチームに牙を剥いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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