背後に佇む三日月と   作:303

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拙い作品を読んでいただきありがとうございます。



トップチーム③

視界が突如反転する。

 

放り出されたように舞い上がる視点、眼下には頭部を失い人形のようによろける体。

 

「……え?」

 

『戦闘体活動限界、ベイルアウト』

 

光の残滓が立ち昇り、菊地原士郎はその光景を理解する前に、生身をマットへ沈めていた。

 

 

 

 

『なっ奈良坂さん、迅さん、首飛ばしましたよ!』

 

スコープ越しに目の当たりにした古寺が冷や汗を流し、小さく叫ぶ

 

『落ち着け古寺、確実に仕留めるなら首狙いは当たり前だ』

 

しかしその手荒さ、迅さんらしくないのもたしかだ。

 

奈良坂は、平静を保ち戦況を見据える。

 

 

 

「プランBですか」

 

10本もの光の帯を躍らせる風刃。その威容を隣から一瞥し来宮が呟く。

 

「ああ、太刀川さんたちには申し訳ないが、ここはきっちり負けて帰ってもらう」

 

それに淡々と返しつつ、迅が得物を握る手に力を入れる。 太刀川と風間が反応し、歌川へも指示が飛ぶ。

 

『歌川、ステルス戦闘を準備しろ』

 

『しかし、スナイパーとの連携は『悪いが問答の余裕はない、急げ』

 

部下の疑問を遮り急かすが、すでに刃は振るわれていた。

 

二条の光の線が地を走り交差、太刀川、歌川の目の前まで迫った先端から瞬きの一瞬で斬撃がせり出す。太刀川が二刀で受け止めるが、歌川は構えたスコーピオン諸共左腕を落とされる。

 

呻きを呑み込み堪らず飛び退き、そこへ正方形の波紋を残し、距離を潰した来宮が掌底を放つ。

 

「フルガード」

 

割って入ったのは二枚の集中のシールド。

風間が展開したそれが辛うじてキューブを相殺し、その隙に歌川がカメレオンを起動したのを確認。すかさず来宮に切り掛かれば、ブレードの腹を拳の裏で叩かれ、2撃3撃とそらされていく。

 

「流石は静間、えげつないな、っと!」

 

その攻防へ感想を漏らした迅。そこへ迫る太刀川の弧月をギリギリ身を屈めて避け、その眼前にさらに斬り上げの一閃が地を掠めて迫る。焦ることなく風刃で受け止め、勢いを利用して後退、追い縋りなおも斬りかかる太刀川と立て続けに打ち合う。

 

 

 

『以前説明した通りだ、光の帯、風刃の残弾がなくなれば1度リロードするために隙ができる、そこを逃さず殺しきれ』

 

『歌川了解』

 

『スナイパー、歌川に当てても文句は言わん、太刀川を援護しろ』

 

『奈良坂了解』

 

『古寺了解』

 

それぞれの返答に満足し、風間は目の前で構える敵を見据える。

 

 

『俺はここで、来宮を抑える』

 

 

通信を切り、ひときわ強く踏み込んだ。

 

 

 

 

 

 

鞘に一振りを納め、両手持ちから大上段の振り下ろし。苛烈な一撃を受け止めきれずに背後のシャッターを突き破り、錆びれた倉庫へ滑り込む。

 

続く追撃の袈裟斬りを今度こそ受け止め鍔迫り合いに持ち込む。ギリギリとせめぎ合う刀身、その奧で太刀川の口が弧を描く。

 

「さあ詰めだ、ブラックトリガー」

 

ガツンと力尽くで受け太刀を跳ね上げ、空けた左手が再び二振り目に伸びる。

間を置かずに繰り出される二刀流の剣舞。予知を駆使して受け流し、どうにか見つけた連撃の隙間、差し込むように斬りつけたコンクリートを伝い、大蛇のように斬撃が嚙みつく。

 

「追い詰めたのはこっちのほうさ」

 

言葉と共に剣閃が走り上下左右から残る斬撃に晒された。

 

『太刀川さん、退避を!』

 

迅の背後からカメレオンを解き、隻腕の歌川が奇襲を仕掛ける。

迅は即座に反転してブレードを防ぎ、その隙に満身創痍の太刀川がグラスホッパーで倉庫の外へ離脱、それと同時に未来の一幕が脳裏に浮かぶ。

 

「……おいおい、マジかよ歌川」

 

 

 

 

「メテオラ」

 

 

 

 

身体の影で待機させた8つのキューブ、歌川は、それをそのまま炸裂させた。

 

 

 

 

 

 

 

響き渡る炸裂音、一条の光がまた空へと昇る。

 

「ユウさん、今のは?」

 

物陰を背に、ベイルアウトの光を見上げて来宮が問う。その身体には浅い傷が所々見られる。

 

『歌川くんだね、遠目の映像だけど、太刀川さんをいったん逃して、メテオラで自分ごとドカン』

 

「あちらも無茶しますねぇ、空き家とはいえ人の家でしょうに」

 

『キノさんの開幕ギムレットも、人のこと言えないよね〜』

 

「ですからあちらも、です」

 

自分の無茶加減は誰よりも自覚しているつもりだ、クロスレンジシューターなどやってる時点で察して有り余る。

 

「嵐山隊の現状は?」

 

迅の安否は気にかけない、するだけいつも無駄なのだから。

 

『綾辻ちゃんからの情報だと、嵐山さんが鉛弾つき、とっきーが胴体を当真くんに撃ち抜かれてるねー、相手方は出水くんが軽傷、米屋くんは木虎ちゃんが獲ったぽいよー』

 

「なるほど、佐鳥さんもひっそり生きてるようですし、上々ですね」

 

司令の懐刀、No.1スナイパーに天才シューター、加えて米屋もハイレベルなアタッカーだ。これだけ相手取っていて、脱落者がいないのは上出来だろうと内心で頷く。

 

視線を前に向ければ、射程を重視した無数の散弾がマリンスノウの様に漂っている。

 

『!、キノさん、シールド』

 

国近の声に従い背後にシールドを張れば投擲されたスコーピオンが弾かれ、意識が偏ったそのタイミングでフッと影が差し咄嗟に飛び退く。

鼻先をブレードが掠めて、着地した反動を勢いに変えて風間が飛び掛るのを紙一重で躱す。グラスホッパーを踏み距離をとった。

 

 

風間の赤と来宮の灰色、二つの眼が互いを見据える。

 

「来宮、随分反応が鈍いな、散弾の気休め、そろそろ限界か?」

 

「気のせいです。と言っても説得力はありませんね」

 

風間の指摘に軽く答えるも、その表情は硬い。

サイドエフェクトを維持する集中力。それがここにきて限界に近づきつつあった。

 

『怒らないでくださいね?』

 

『……無理だよ』

 

内部通話、予想通りの彼女の返事に苦笑いする。

 

 

一拍後、項垂れだらりと両手を下げて、長く、深く、息を吐く。

 

「諦めたか?らしくないな」

 

間合いの外とはいえあまりに無防備な行動。不可解故に警戒し、片眉を上げる。

 

「…………いいえ」

 

囁く様な小さな言葉。徐に腰を落とし、左手を浅く地に添える。

ゆるりと顔が持ち上がり、髪の隙間から()()()の瞳が覗いた。

 

風間の肌がぞくりと泡立ち、瞬時に迎撃態勢をとる。十全に備え、油断は無い、そのはずだった。

 

 

 

 

 

ッドン

 

 

 

 

 

破裂音と共に、来宮の姿がかき消える。

 

気がつけば、背中からアステロイドの掌底が撃ち抜いていた。

 

見開かれた風間の眼には、通常の倍ほどに広がる正方形の波紋、その残滓が映りこむ。

 

 

 

『戦闘体活動限界、ベイルアウト』

 

 

 

無機質な音声と共に、またも光が空を駆けた。

 

 

 

 

 

 

 




今回はオリジナル技を入れさせていただきました。
単純ですのでわかりやすいとは思いますが・・・。
タグを追加するべきでしょうか?
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