海と君と   作:みずい


原作:刀剣乱舞
タグ:オリ主
海の日なので海に行かせました。
伊織さん、どうにかして水着を着せなくてはとかなんとか考えた結果がこれです。

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海、いいですよね。
あれこれオチに悩んだ結果、ちょっと伏線じゃないけどまあ、今後の展開に絡めばいいな的なあれになりました。




海と君と

 

7月第3月曜日。

 

俗に「海の日」と呼ばれる日だ。名前に海とつく程で、タイミング良く梅雨も明けてしまっていることから、浜辺へと繰り出す者も居ると聞く。だがこの本丸では違った。現世やひとの生活を最も知っている筈の審神者が海に行ったことがないと言う程だ。幼少期の殆どを家の中で過ごし、大人になってからも海を遠くから眺める事はあっても近づくことのなかった彼―伊織にとっては、仕方がないのかもしれないが。

 

そんな伊織だが、今彼は端末を片手にうんうん唸っている。心配した近侍の長谷部が恐る恐る「どうされたのですか…?」と声をかけてしまうほどに。

 

「これだ」

伊織が差し出す端末には、カラフルなシャツが映し出されている。シンプルな白や黒のものから、着映えするであろう黄色や桃色のものまで様々である。

「これは…一体」

「ラッシュガードと言ってな。水着として使用可能なシャツの事だ。……短刀に海に行こうと誘われて…水着を持っていないからと断ろうと思ったんだが、ああきらきらした目で此方を見られるとな…」

冷静な性格から誤解されることもあるが、伊織は心優しい性格だ。短刀の頼みを無下にすることもできず、引き受けてしまったのである。

 

が、海に行くのに水着の一つもないというのも変だし、彼らもビーチバレーや海でボート遊びをしてみたい、などと言っていたので、水の中に入る事は必至だろう。となれば、用意をせずにはいられない。そんな訳でこうして通販で急遽水着を選んでいるわけであった。

 

「そういう事でしたか…」

「ああ」

「…俺はこれなど、主に似合うと思うのですが」

長谷部が画面に並ぶ色とりどりのラッシュガードの中から、一つを選んだ。

「なら、それにするか」

購入ボタンをタップし、手続きを進めていく。速達を指定し、到着日を確認する。海の日は7月18日。到着予定日は7月16日。何とか間に合いそうだと、伊織はほっと胸を撫で下ろした。

 

 

......................................................

 

 

そして迎えた18日。

雲一つない、一面に青の絵の具を広げたかのような空に、焼け付くような日の光が眩しい。――海に行くには充分な天気だ。日差しで肌が痛くなるほどに。

 

「っしゃ!海だ!!」

「おお〜、これがうみですか!」

「綺麗だね〜!ボク、断然楽しみになってきちゃった!」

水着を着た短刀達が、砂浜を前に、目を星空のように輝かせている。今にも海に向かって駆け出そうとするその背に、おい、と声がかけられる。

「お前達、海に入るなら準備体操くらいはしておけよ。…泳ぐんだろう、どうせ」

いつも耳に掛けている白磁色の髪を下ろして、水着の割にはゆったりとした藤色の上着に、濃い灰色のレギンス状の水着と、上下共にラッシュガードに身を包んだ伊織が立っていた。彼なりの苦肉の策である。

「わーかってるよ、大将。ちゃんとほぐしてから入るって」

にっ、と薬研が笑い、短刀達をまとめてストレッチを始めた。

 

暫くして、十二分に体を解したであろう彼らは、波打ち際に向かって走っていった。

それを伊織が、はしゃぐ子供を見る親のような目で見つめている。彼らを捉える灰青は、どんな思いを秘めているのだろうか。

 

「ここにおられましたか」

と、黒の水着に、灰色のパーカーを着た長谷部が声をかける。

「ああ。……お前は泳がないのか」

「主こそ」

「私はいいよ。こうして…お前達と海に来れただけで満足だ。小さい頃はこんな毎日を想像したこともなかったから」

遠い昔を懐かしむような、だがどこか哀愁をも感じさせる瞳で、彼が笑う。

「…左様ですか。…俺も、主と来れて良かったと思います」

「はは、それは光栄だな」

 

どこまでも白い砂浜にうつる、まっくろな二つの影。背の高い影がゆらり、と動く。ふいに長谷部が伊織の方を向いて、あるじ、じつは、とか細い声で話し始めた。いつになく真剣で、畏まったその表情に、伊織は少し面食らった顔をした。

 

「どうし――――」

 

と、その瞬間。

「あるじさーん!こっちこっち!」

乱が伊織の方を向いて手を振っているのが見えた。

「、ああ、今行く」

それだけ答えて、改めて長谷部に向き合う。

「…どうかしたか?」

 

長谷部は一瞬、顔を歪ませ躊躇していたが、すぐにその顔に微笑を浮かべ、

「いいえ、…何でもありません。さ、奴等が待ってますよ。俺も後で向かいますから」

と、伊織の背を押す。

「?……ああ」

頭に疑問符を浮かべながらも、なすがままに短刀の方へと向かう伊織。早く早く、と急かす声に、自然と足が速くなった。

 

 

 

その背中を見つめながら、喜びと悲しみが混ざりあった複雑な感情を顔に貼り付けた長谷部が零した、あと少しだったのに、という声を知る者は、誰も居なかった。

 





ラッシュガードって言っても水着は水着だからぴちぴちしすぎて潰してても胸のとこ膨らみかねないですよね。危険だは。
恐らくお腹のとこにタオルかさらしを巻く、大きめのサイズのやつを着るなどして対応してるんだと思います。
難しいですな。


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