一話と言ってますが実際は小説説明とプロローグを混ぜたようなものです。
桜舞う春。
自転車を漕ぐとまだ少し肌寒い風の中に柔らかな春の香りが混ざっている事に気づく。
その穏やかな香りは人々に冬の終わりを告げるには充分だと言えるだろう。
俺はこの春と冬の半ばのなんともいえない季節が意外と好きだ。
「自分はもう春だ!」もしくは「自分はまだ冬だ!」と主張しすぎない謙虚なところを気に入っている。
4月7日
今日は俺の通う総武高校の始業式だ。
昨日は新一年生を迎える入学式があり、俺は忙しくて来れない親のかわりに参加した。
両親、特に親父は「会社を休んででも小町の入学式に参加してやる!」と息巻いていたが当の本人の小町に「お父さん、会社はちゃんと行って?小町的にポイント低いから。いやマジで。」と真顔で言われて泣く泣く通勤した。その後姿は哀愁が漂っていた。
そんなわけで代理ででた入学式。
周囲からは当然不審者を見るような目で見られたが、総武高校の制服を着ていたおかげでなんとか通報は免れた。
特にこれと言った問題もなく入学式は進行していき、現生徒会長の一色が軽い挨拶をして最後に校長の話で無事終了した。
その後あらかじめ小町の入学祝にサイゼ(俺が推した)に行く事を約束していた由比ヶ浜と雪ノ下の二人と合流し、三人と一人でサイゼで軽いお祝いをした。勿論一人とは俺のことである。
サイゼでの会話は主に小町が入学したら奉仕部に入るとの事なので、今後の活動方針についてともう一つのことで占められていた。
それは、なんと今年から我が総武高校にある画期的なシステムが導入されるということについてだ。
何故我が校なのかというと、総武高校の校長と技術者の間に面識があって、急ではあるが他校を差し置いて導入される運びとなったとかなんとか。
面識がある程度で優先される。リア充が得する社会になっているのは最早明白である。
まあ肝心なのはそのシステムだ。
それは何でも「試験召還システム」といわれるもので、詳しい理屈までは知らないが「科学とオカルト、そしてちょっとした偶然」が混ざった結果生まれたものであると全校集会で説明された。
その後、雪ノ下が平塚先生を問い詰めて聞いた話によると、テストの点数と、本人の容姿、素行などを合わせ「召還獣」を作りそれをクラス間で争わせるものだとか。
教師を中心にフィールドを展開して、それぞれの召還獣を戦わせてよりよい設備を勝ち取っていく。これによって「より良い環境に行きたい!」という生徒の気持ちを刺激して学力の向上をはかるように出来てるとか。
そういう勉強の環境に無関心なやつにも、あえて「戦争」という言葉を使うことで遊び心を刺激し積極的に学ぶ生徒になるよう仕向ける目的もあるらしい。
又聞きではあるがこれが本当ならなかなか良く出来た制度であると思う。
だが、戦争のクラスはどうやって決めるのか?
二年生の3月。俺達が軋轢を何とか解消していつもの奉仕部に戻った時期。
この時期に「振り分け試験」というものを行った。
この試験の結果で振り分けられるクラスが決まるのだ。クラスは全部で6つあり、A~Fまでだ。
国際教養科も含めて9クラスあったのが6クラスにまで減る都合で、一クラスの人数は少し増えて、前までは一クラス40人程度だったのが今回のクラス分けで一クラス60人にまで増えるとか。
ちなみに振り分け試験のルールとしては
・試験では大学の入試とほぼ同じような環境を作るため、実際の入試で禁じられている事や無得点になる行動をとると点数が出ないようになっている。
・点数の上限は設定されておらず、解けない問題があればいくらでもパスしていい。ただし、50分という制限時間が設けられている。
大まかに言えばこの二つだ。
朝学校に行き、一度座席順に移動して座る。(こうすると回収が楽らしい。)
そして「現代国語」「古文」「英語W」「英語R」「公民分野」「地理」「日本史」「世界史」「生物科学」「物理」「数学Ⅱ」「数学A」「保健体育」の計13科目を一日4科目(初日は5科目)で三日やるのだ。
最初は試召戦争という言葉にざわめきだっていた者達も、二日目中盤辺りからげんなりし始める。かくいう俺もその一人だ。
だがテスト自体はよく出来たほうだと思う。理系科目は壊滅的ではあるが、文系科目はかなり解けた。
良くてC、最悪Dはいっているはずだ。
奉仕部のほかメンバーは雪ノ下は間違いなくAだろうし由比ヶ浜も間違いなくFだろう。
そうなると今回は全員クラスがばらけて、特定のクラスの戦争の手伝いを奉仕部で依頼されても手伝いにくくなることが予想される。
それを知ってか雪ノ下が「戦争関連の依頼は一切受け付けないようにしましょう」と提案してきた。俺と由比ヶ浜は勿論賛成した。
その後は短縮授業を受け、気がつけば春休み。
受験生ということで受験勉強をしているとあら不思議。春休みもいつの間にか終わっていて始業式が明日だった。
単純作業にここまで長く打ち込める辺り俺は絶対社蓄の才能があるな。うん。
場所はサイゼに戻る。
「試験召還獣ってどんなのかなー」とか「戦争ってどんな感じなんだろうねー」と、いった下らない雑談を由比ヶ浜が振り、小町が話しを広げて、雪ノ下が結論を出す。
この一連の流れを繰り返しているうちに、由比ヶ浜が三浦達と待ち合わせをしている時間に近づいてきたらしく由比ヶ浜が
「あ、もうこんな時間!ごめん、ゆきのん、ヒッキー、小町ちゃん。この後優美子達と約束があってさ、間に合わなくなっちゃうからお金だけ置いてくね!後でラインも送っとくから!」
と言って慌しく去っていった。去年の今頃なら空気を読んで自分から言い出せなかったであろう由比ヶ浜が、こうして自分の意見をちゃんと言うのは成長したと捉えるべきなのだろう。
「由比ヶ浜さんが三浦さん達との方に行ってしまったし私達もお開きにしましょうか。」
雪ノ下がそんな提案をする。別に俺としては異論もないし、それでいいのだがお開きの理由が「由比ヶ浜がいなくなったから」って貴女本当に由比ヶ浜の事好き過ぎやしませんかね……キマシタワー!
「そうですねー。小町も夕飯の準備がありますしここらで解散でもいいと思います!」
「んじゃあ会計済ませっか。雪ノ下、自分の分の食事代だけ渡してくれ。こっちでまとめて会計するから。」
「そう、ではこれだけ渡しておくわ。」
「おう、んじゃまた学校でな。」
「ええ。」
「ちょーっと待った!」
雪ノ下から食事代を受け取り解散にしようとしたところで小町が口を挟んできた。
どうでもいいがそのちょっと怒った顔も可愛いと思いました。まる。
「何でおにいちゃんには雪乃さんを送っていくって発想がないかなぁ……。」
「俺が送っていっても不快感しか与えないだろ。俺なりに気遣ってだな。」
「そうね、貴方に送られるなんておぞましいこと考えただけで虫唾が走るわ。」
ナチュラルに俺を罵倒する雪ノ下。普通に送ってくれなくてもいいだけで良かったんじゃないんですかね。俺の心が傷つく必要は無いはずだ。
「雪乃さんまで……はぁ、まあ二人が納得してるならそれでいいや。小町的にはポイント低いけど。」
「ええ、分かって貰えて嬉しいわ。では小町さんもまた学校で会いましょう。」
「了解です!奉仕部にもしかしたら入部するかもですけど、そのときはよろしくお願いします!」
「それは平塚先生を通さないと分からないけど……部長として口ぞえはしとくわ。」
そういって一度こちらに手を振ってから去っていく雪ノ下。
俺も一度だけ手を振り替えして小町と共に帰路につく。
後は特筆すべきことも特に無く、いつも通り夕飯を食べ、風呂に入り、眠った。
時は戻る。
そんなことがあった翌日。
自転車を指定の場所に止めて、校門に向かう。いよいよ振り分けられたクラスの発表がある。
発表方法は受付に教師が複数名いるので、開いてる人に声をかけて去年のクラスと出席番号を伝える。
後は教師が出席簿に書いてあるクラス名を生徒に教えて、生徒はそのクラスに向かうと言った単純なものだ。
さて俺は今日はいつもより早く学校に来ている。なぜかというと、いつも通りの時間だと友達と同じクラスになれたかを確認しあうリア充共が受付の前でたむろして邪魔になるからだ。
あいつら俺がどいてほしいっていっても退かないどころか、こっちを非難するような目で見てくるから嫌なんだよな……。
そんな面倒ごとを避けるべく、いつもよりも早く起きて学校に来たのだ。
受付を見ると、案の定まだ生徒は誰も来ていない。1時間は早く着たから当然といえば当然か。
だが、そこには何故か平塚先生がいた。いや、あんたどこのクラスも受け持ってなかっただろ。
平塚先生はなにやら書類とにらめっこしていたが、俺の存在に気づくと盛大にため息をした。
え、何?俺なんかやらかしましたかね?
平塚先生がこちらに来るように手を振ってきたので、少し早歩きを意識して受付に向かう。
「やあ、おはよう比企谷。遅刻常習犯の君が今日は随分と早いな。何か悪い予感でもあったのか?」
「別にそんなんじゃなくって、凡愚な輩に混じってクラス分けを知るのが嫌だっただけっすよ。」
「凡愚か……君から見たら周りはそうなんだろうな。」
冗談のつもりで言ったことを妙に深く受け止められた。すごく神妙な顔でこちらを見る先生。何故か嫌な予感がする。
「あの、俺何かしました?まさか数学の点数が低すぎてDクラスになってるとか。」
「いや、そんなんじゃないよ。ただちょっと別のところで問題が起きてね。」
良かった。テストの点数関係ではないようだ。
それにしては先生の様子がおかしい気もするが。何だろう、呆れながらもどこか楽しそうといったところか。
「とりあえず俺のクラス通知書もらってもいいっすか」
「ああ、これだ。受け取りたまえ。」
そういって先生は重なった封筒の中から一枚、「比企谷 八幡」と書かれた紙を取り出し俺に手渡した。
「それにしても今回の君の結果は中々面白いことになってるぞ。」
「てことはまさかBクラス入りとか?」
「まさか。そんなことよりもっと面白い事だ。陽乃辺りが知ったら爆笑するくらいな。」
「陽乃さんが?にしてもこれ、糊でくっつけてあって開けにくいな……よし、開いた。」
封筒を開くと中には一枚の紙と、クラスの案内図が入っていた。紙の方にクラスが書いてあるらしい。
「えっと、何々『比企谷 八幡』 振り分け試験の結果貴方のクラスは……」
「 Fクラスです 」
は?
HAHAHA。どうやら俺は夢を見ているらしい。早く起きないと遅刻してリア充共と同じ時間帯に行く事になるから起きないとな。
「すいません、先生。ちょっと俺の頬をつねって貰えませんか?」
「よし、こうか?」グイイイイ
「痛ててててて!?」
痛ぇ!夢じゃねぇ!
え、ちょ、待て。じゃあもしかして本当に俺のクラスは……。
「なにやら現実逃避してるみたいだから私から言おうか。」
「比企谷。君の今年のクラスは学力最下位のFクラスだ。もっと精進したまえ。」
「はああああああああ!?」