商店街の入口に到着したのは待ち合わせの時間の十分前だったが、案の定佳織はまだ来ていなかった。
彼女は少しばかり時間にルーズなところがある。時間を守りたいとは思っているようだが支度をしていると想定していた時間よりも長く時間が掛かってしまい、結局はいつも遅くなってしまうそうだ。そこまで自己分析ができているのであればそもそも支度する時間をもっと早めればいいのに、と思った私は彼女にこれを告げたのだが改善されるのはまだまだ先のようだ。
ところで、商店街の入口と言っても商店街は本来”出入口”が二つ以上あるわけで、厳密な入口など存在しない。
私はずっとこれが引っかかっていた。当時小学生だった私がクラスの子たちと待ち合わせする際に、商店街の入口と言われても全くピンとこなかった。この町で生まれ育った人にとっては当たり前の会話だったようだが、小学二年生の時にこの町へ越してきた私にとっては不思議なことを言う人たちだと思った。
周りはこのことを全く疑問に思っていなかったが、私は違った。ずっと悶々とした気持ちを抱きながら、この商店街の入口を待ち合わせ場所として利用していたのだ。そして、ついに我慢の限界が来た私は中学生の自由研究の宿題でこのことについて調査した。
知ってしまえば単純なことだった。
この町の商店街の東側の”出入口”には大きな噴水がありちょっとした広場のようなものになっている。目印としては最適で待ち合わせをする際はここを選ぶ人が多く、ここから商店街に行く人も昔から少なくなかったようだ。そんな理由からいつしかここが商店街の入口と呼ばれるようになったようだ。
事の顛末を知った私は酷く落胆した。想像もつかないような理由があるのではないか、あるいは誰もこの由来を知らないのではないかなどといろいろと想いを巡らせていたのだから。
たしかに想像もつかないような理由ではあった。しかし、それだけだったのだ。面白みも不思議さもない。知ってしまえば納得してしまうような、ありふれた普通の理由だったのだ。
さらに、本来は大きな噴水が目印だったのだから商店街の入口と言うのではなく、商店街の前にある噴水と言えばよかったのだ。いや、元々はそうだったのだろう。しかし、いつしか待ち合わせ場所は大きな噴水なのに口から出る言葉は商店街の入口になってしまったのだ。これでは大きな噴水がかわいそうだ。
そう思って以来、私はこの場所が嫌いになった。いや、元々好きだったわけでもないのだが。
しかし、私がどれだけこの町の商店街の入口のことを嫌いになっても、待ち合わせ場所としてみんながこの場所を好いていることは昔から変わりない。
今日も”商店街の入口”の周りには誰かを待っている人が多くいる。
平日の夕方ということもあってか、制服姿の男女が多い。携帯電話を操作しながら待っている生徒はきっと恋人を待っているのだろう。
そう思うとますますこの場所が嫌いになってきている私を実感していると、籠に三脚を載せた赤色の自転車がこちらに向って来るのが見えた。
さらによく見れば乗っている者は私の学校の女子用制服を着ている。変な奴がいるもんだと思っていたが、目を凝らしてみるとそれは佳織だった。
「ごめーん!待った?」
私は腕時計で時間を確認すると十七時を五分過ぎたところだった。
「うん。十五分ぐらい待った」
「そこはさ、いま来たところだよって言ってよ」
「十五分でそれはちょっと無理があるよ。休み時間一回分だよ?」
「もおっ!女の子はそう言って欲しいの!」
「あーはいはい、ごめんね」
そう言って私は佳織の頭を撫でてあげた。
「あーあ、秋穂が男だったらなー」
「それは私もたまに思う。男の子って楽そうだよね」
「でも私は女に生まれてよかったと思うよ!」
ところで、と私は言い自転車の籠に載っている三脚を指した。
「何に使うの?」
佳織は自転車から降りると籠の中からさらに黒色の小さな鞄を取り出した。
するとマジックテープを剥がし、中から取り出したのはビデオカメラのようだった。
「もし今回の噂がお化けの類だったら映るかなぁと思って持ってきてみました。一部始終を撮影し続けて、もし何か映っていたらスクープですよ、スクープ!テレビ局に投稿したらお小遣い貰えるかもよ」
そう言って佳織はビデオカメラを操作しているが、いまいち使い方が分からないようだ。
見かねた私は佳織からそれを貸してもらい、電源を付けて見せた。
「電源の点け方ぐらい分かろうよ」
「いやぁ、実はそれお父さんのだし無断で持ってきちゃったし。でも私は使い方よく分からないから秋穂が撮影担当ね!」
最近の小学生だって親の物を勝手に持って出ることなどないのではないだろうか。
「いやいや、そんな大事なもの私に任せないでよ」
「だって私が持ってるより秋穂が持ってる方が安全そうだし、元々秋穂に撮影してもらうために持ってきたんだから。あ、もちろんカメラ以外の荷物は私が持つから安心してね!」
そう言うと佳織は私の自転車の籠に入っていた鞄をひったくり、私に向かって「がんばっ」と言うやウィンクを投げかけてきた。
佳織は、背が小さくて童顔でかわいい部類の女の子だと思う。こんな子がもし男に向かってこんなことをしたならば、きっと男は骨抜きになるのではないだろうか。
女子力と言うのはこういうことを言うのだろうか。
やはり私には無理だと確信した。
話が進まなくて本当に申し訳ないです。
理由はただ一つなのです。
続きの話が思いつかないという点です。
いや、なんか、本当にごめんなさい。。。
で、でも、一度書き始めたものは完結させるのが礼儀だと思うので、時間が掛かってもがんばって最後まで書きますよ!
読みやすい文章にしていきたいと心掛けています。
そのため、誤字・脱字・間違った表現や感想がありましたらコメントしてください。