「…ふむ」
とある管理世界に作ったラボでジェイル・スカリエッティは悩んでいた。
「…まさかここまでひどいとはな」
スカリエッティが見る方向にはこの世界の様子を写したモニターがあった。
そこには管理局員による住人への暴力、略奪、凌辱の様子が写し出され流石のスカリエッティも目を背けたくなるような惨状であった。
「この世界は簡単に素材が手に入るからラボを設けたが失敗だったかな?」
スカリエッティは割りと本気でラボを作ったことを後悔していた。
そんなとき新たにモニターが現れた。
「ふむ、もうそんな時間か」
そうスカリエッティは呟いてその場をあとにした。
最高評議会というバックアップのあるスカリエッティは週に数回ほど評議会の息のかかった者たちによって戦闘機人や人造魔導師の素材が運ばれてくる。
「…こんな研究をしているが時空管理局の方がひどすぎると思うのだが」
この世界に滞在するようになってからのスカリエッティの口癖であった。
「…今回の素材もかなり損傷が激しいな」
評議会の息のかかった者たちから素材を受け取ったスカリエッティは品定めをするもお目にかかるような素材は皆無といってよかった。
運ばれてくる素材はどれも損傷が激しく一度治さないと使えないものばかりであった。
「せめてきれいにして持ってきてほしいが無理だろうな」
ここに運ばれてくる素材は全てレジスタンスの者や損傷が激しい者しか選んでいないのでこうなるのは仕方がなかった。
「取り合えずこれらは人造魔導師の素材に…ん?」
スカリエッティは作業を始めようとして手を止めて一点を見つめた。そこには他の素材よりも綺麗な素材があった。
「まだ子供ではないか。こんなに小さい子にまで手を出すとは」
スカリエッティの中の時空管理局への株が物凄く下がっているなかスカリエッティはその素材を確認し始めた。
「年齢は八歳位か。魔力もあるのか?珍しいな」
この世界の人間はほぼ魔力を持っていなかった。魔力を持っていたのはレジスタンスのリーダー位だ。
「ふむ、魔力量も多いな。それに素材も綺麗だ。これなら…」
スカリエッティがこの世界に来てから初めて出会った良質な素材であった。
「これは戦闘機人の方に回すとするか。そう言えばナンバーズ零の設計図があったな。あれをもとに作るか?」
スカリエッティはぶつぶつ呟きながら奥の部屋にもとっていき近くで待機していたガジェットが素材を運んでいった。
…何でこんな目に逢わなくちゃいけないんだ?
俺が何かしてのか?
母さんが、父さんが悪いことでもしたか?
…ふざけるな。
ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな
コロシテヤル!アイツラゼンイン!ジクウカンリキョクモアノサンニンノアクマモミンナ!
コロシテヤル!!!
「…ここは?」
薄暗い部屋の中で俺は目を覚ました。
確か最後は母さんが…っ!
「母さんは!?」
慌てて回りを見回すが俺の乗る手術台みたいなもの以外は何もなかった。
「…母さん」
俺は最後の記憶を思い出して下を向いた。
「…ん?」
そのとき俺は違和感に気付いた。俺の最後の記憶ではワイシャツに短パンという服装だったはずなのに今の俺の服装は青いラバースーツを着せられていた。
俺はぴったり肌につく服装は好きではなかったのでこんなものは持っていなかたった。
しかし、どういうわけか肌にまとわりつくような感覚はしないで自然体でいられる感じであった。
そんなことを考えていたら俺の右側から人が現れた。
紫の髪を無造作に伸ばした男は金色の瞳でこちらをじっと見つめてくる。
「…何か?」
「ん?いや失敬。どこか不調のところはないか見ただけだからな」
よくわからんことをいった男を俺は警戒していつでも動けるようにして聞いた。
「…貴方は?」
「おっと、失礼。自己紹介がまだだったね。私はジェイル・スカリエッティ。しがない科学者さ」
「…そんな科学者がなぜこんなところに?」
「それは勿論ここが私のラボだからだよナンバー零」
「ナンバー零?」
目の前の男、ジェイル・スカリエッティの言葉に俺は首をかしげる。
「君の個体番号だよ」
「どういうことですか?」
「君は一度死んでここに運ばれて来たんだよ。ここには管理局の不都合な死体がたくさん運ばれてくるからね」
「…つまり貴方はあの屑野郎たちの仲間だと?」
俺はスカリエッティを敵意のこもった目で睨み付けた。
「勘違いしないでほしいな。私は確かに彼等とは繋がって入るがあくまでもそこまでだ。彼等の仲間とは思っていないよ」
スカリエッティは肩をすくめて心外とでもいうようにいった。
「…そうですか」
「納得したかい?」
「一応」
「今はそれでいいよ。さて、話を戻すがここに運ばれてくる死体はみんな傷だらけでねまともなものがなかったんだ」
「…死体なんて何に使うんですか?」
「私は戦闘機人という物を作っていてね。簡単に説明すれば体が機械でできている人間という感じだね。そのためには死体が必要なんだよ」
「成る程」
「しかし、先程もいったがここに運ばれてくる死体はどれも損傷が激しく使い物にならない。そんな中君がいたんだよ。君の体は綺麗だったからとても目立っていたよ。戦闘機人としての適正も高かったからね、すぐに戦闘機人として君は甦って来たのだよ」
「…」
それが本当なら俺はこいつに感謝するべきなのかもしれない。こいつのお陰で俺は時空管理局に復讐出来るかもしれないからだ。
「取り合えずいまはまだ稼動したばかりだからね、ゆっくり慣れるといいよ」
そう言ってスカリエッティは部屋をあとにした。