終わった世界の後日談   作:豚派

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形あるものはいつか失われる。
形がなくてもいつか失われる。

それを知ってなおソシャゲやブラゲで遊べるのであれば、それはきっといつか終わる人生も楽しめるという事なんだと思う。思わせてくださいクソァ!!


異世界召喚(物理)

 2016年7月14日。とあるブラウザゲームが惜しまれつつサービスを終了した。

 その名はドラゴンプリンセス。プルミエールという異世界に召喚されたプレーヤーが、ダンジョン探索しながら女の子と仲良くなったりしつつ世界を救うというものだ。

 それだけだとありがちなファンタジー召喚物だが、一番の特徴はその世界観のユルさだと個人的に思っている。

 まあそのあたりは追々、いくらでも語る時間はあるだろう。

 

 何故なら、俺は今そのプルミエールにいるのだから。

 

 

 

 

 

 ドラゴンプリンセスというゲームが終了するにあたり、プルミエールを崩壊に導こうとしていたマガモノと呼ばれる存在との最終決戦イベントが行われた。

 最終決戦イベントと言ってもダンジョンを周回するだけだ。しかもイベント完遂には15回の周回が必要だが実際のところラスボスは5回目の時に倒している。後の10回は消化試合もとい消化クエストとでもいうべきだろうか。ちなみに決め技はヒロインの黒歴史朗読による精神的自爆に巻き込まれての悶死であった。

 

 さてはてそんなシリアス蹴っ飛ばせ系の最終イベントが終わり、プレーヤーの元いた世界とプルミエールは召喚ゲートを恒常化したロードなるものによって結ばれ、ついでにコラボしていたとあるゲームの世界とも結ばれるような展開も示唆しつつ、二つの世界はひっそりと交流を開始した。そんな大団円なイベントをもって、ドラゴンプリンセスというゲームは終わりを迎える。

 

 そう、全てはめでたしめでたしで終わったはずだ。だと言うのに、何故俺の目には見慣れた――正確には、ブラウザの画面越しに見慣れた光景が広がっているのか。

そして、

 

「……じー……」

 

 こちらをじっと見つめてくるこの少女は一体何者なのか。

 とか言いつつ実は完全に把握しているんですがね。

 

 彼女の名はベルティーユ。プルミエールに暮らす悪魔族の少女だ。見た目は黒髪ぱっつんロングの無表情系悪魔っ娘とか書くと大体わかってもらえると思う。俺がドラゴンプリンセス――通称ドラプリというゲームをプレイしていた間、いわゆる某秘書艦にあたる位置にずっと置いていた娘だ。ベルちゃんかわいい。ちなみに俺はロリコンではなく射程範囲が人より広いだけだとあえて言っておこう。

 そんなこんなで俺はベルちゃんことベルティーユの手引きによってプルミエールにやってきていた。サービスが終了し、もう二度と見ることはできないと思っていた世界、相手と再び――しかも画面越しではなく、直接まみえることができた。

 それはとても喜ばしいことだ。例え方法が、でかい袋に押し込まれて抵抗虚しく連れ去られるという完全に拉致事案かつ男としての諸々を粉砕するに足る物であったとしても。

 

 つまりは、ここはそんな世界なのだ。肩肘張ってもしょうがない、シリアスなんてどうせ誰かがぶち壊していく。ただ自然体で、ありのまま生きられるであろう世界。

 俺は、そんな世界に憧れていたからこそドラゴンプリンセスというゲームに惹かれていた。そしてその世界でも一際自然体で、一際自由なベルティーユに惹かれたのだ。

 

「つまり俺はベルちゃんの体型目当てで惚れたわけじゃないからロリコンじゃない。いいね?」

「……?」

 

 くてんと軽く首をかしげるベルちゃん。控えめに言って大天使。悪魔族だけど。

 

 ところで、一つだけ疑問があった。連れてきた理由についてはさておき、今の俺にとってとてつもなく重要なこと。

 

「……ここって電波届くのかな……ベルちゃんその辺知ってる?」

「電波……?」

「ちなみに言っておくと、ベルちゃんがよく見てる俺の世界のことでも、今年の初めに鏡餅がプルプル受信してた奴でもないからね。携帯電話……っと、こいつで連絡取るのに必要なんだけど……」

 

 という具合で袋に詰め込まれた時のままである普段着のポケット、スマホを取り出して見せてみようとして、気づいた。

 

 

 

 メールが山のようにきている。

 

 

 

 恐る恐る、開封せずに見える範囲で内容を確認。ほとんどは会社とついでに同僚からだった。怖いので時系列的に先のものから見ていく。

 今何処に、連絡求む、大至急、いい加減に、などなどの言葉が並ぶ。そして最後に止めの一言。

 

 解雇――

 

「Aieeeeeeee!!??」

 

 崩れ落ちる。今ここに新たなる無職おじさんが誕生した、というか誕生していたことに本人が気づいた。

 というか、なんで気付いたら三日経っているのか。あれか、スリープ的なスキルでもかけられたのか。ベルちゃんと愉快な仲間たちにはそんなの覚えてるキャラがいた覚えはないのだがそれはさておき、まあ丸二日音沙汰無しではあの会社なら解雇しかねないからクビなのはいいとして、いやよくないが。

 詳しいことはわからずともほぼ確実にベルちゃんの仕業なのはわかってた。だから理由を問うてみれば、

 

「……私、ずっとお兄ちゃんのこと見てた……とても忙しそうで、大変そうで……だから……」

 

 ベルちゃんの答えはさも当然とでも言うが如く。つまるところ、劣悪な勤務環境から助け出したつもりだったという。実際自分もあの会社に対しては腹に据えかねる事も多々あったので、機を見て辞めるつもりではあった。それが多少早まっただけ。

 そう思うことにして、ベルちゃんの頭を撫でる。うわあすっげえ髪サラサラ。いつまでも撫でていたい感触だった。俺に撫でられるベルちゃんの方は無表情ながら、しかしその背の小さな翼はぱたぱたと動いている。ベルちゃんはかわいいなあ。

 それはそれとして、これからどうするべきか。仕事をクビにされたばかりの無職だが、まあなんとかなるだろう、と考える。

 プルミエールで暮らすとなっても、元の世界に残してきたものなどほとんどない。唯一惜しい荷物と言ってもPCくらいだが、忙しさの中でドラプリ以外の趣味らしい趣味は無くなっていた。ネットサーフィンして画像漁ったりした時期はあったが、すでに収集しなくなって久しく、今では無くなって惜しいとは思わない。本当に必要な財布とスマホが手元にある現状、身一つでも生きていけないことはないだろう。

 

 それに、今隣にはベルちゃんがいる。撫でていた手が止まっているためかこちらを伺う様にじっと見上げるベルちゃん。その顔を見ていれば、この娘さえいれば問題ないと思えてくる。

 

 彼女のためであれば、きっと俺は色々な意味で戦えるだろう。

 

 そんなことを思いながら、俺はベルちゃんと暮らすプルミエールでの第一歩を踏み出すのであった。

 

 

 

 

 

 とはいえ、一つだけ気になることがある。

 

「ベルちゃん、俺はベルちゃんのおかげできつい仕事しなくて済むようになったけど、この世界に人間族でもできる仕事って何かあるの?」

「……おにーちゃんは……仕事、しなくてもいいよ?」

「えっ」

「……拾ってきたら、面倒を見るのは当然のこと……です」

「俺ペット扱い!?」

 

 果たしてベルちゃんにとっての俺は、一体何なのだろうか。答えが怖くて聞けない俺は、ヘタレ待った無しである。

 

 

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