戦術姫これくしょん   作:人類種の天敵

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BO4にハマって遅れました


人類の敵、蒼醒めた騎士

 

「……まあ、そうだよな」

 

元の世界では、俺と幼馴染のあいつの家があった場所の前に俺は立っていた。

 

「……あるわけないよなぁ?」

 

あの日までは、そこにはどこにでもありふれた一軒家が建っていた。

隣にはあいつの家もあって、平凡な日常がいつまでも続く筈だった。

 

「つーか……ナニコレ?」

 

しかし俺の目の前にあったのはどう見ても一軒家じゃ無かった。

そもそも、家ですら無い。

 

「………なんでビル?」

 

俺の家とあいつの家の分を合わせたようなずんぐりと寂れた雑居ビルが建っていた。

アパートのようにも見えるが、扉の前には何も立て札は無く、ひび割れた窓から薄気味悪いナニカが見えてきそうだ。

 

「……」

 

「何をしてる?」

 

「ーーッ!?」

 

ブルリと鳥肌がたった直後に声を掛けられた事に本能が体を身構えた。

バッ、と後ろを振り返ると、そこには朝出会った人形染みたあの変な女がいた。

 

「また会ったようだ」

 

「お、おお……」

 

思わず腰に差した拳銃に手を当てたが、深海棲艦に遭遇した際に5発ほど撃っだ筈だから、残りの残弾は7発しかないし、こんな街中で撃つなんて馬鹿なことは出来ない。

それに、この女は得体の知れない雰囲気こそあるものの、こちらに対して何か害そうとする感じはしない。

それにしても、こいつ、俺に気配を気取られずに背後を取った?

衛士として十分な訓練と実戦を通して来た俺を?

 

「お前、いったい何者なんだ」

 

「知りたいか?知ってしまえば……ふむ、お前たちの言葉で言えば……そう、きっと驚くぞ?」

 

お茶目な言い方に違いないが、顔は無表情だから人を喰った発言にしか聞こえない。

それでも内心の苛立ちを隠してビルの中に入っていく女の後を追う事にした。

 

そして、男がビルの中に入っていた直後、ガサガサと傍の観葉植物が揺れて、中から木札がぽいっと捨てられた。

 

『コーポ 横浜Hive』

 

 

 

『うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???』

 

数分後、この世のものとは思えない男の情けない悲鳴が轟くのであった。

 

 

 

 

 

 

「………」

 

目の醒めるような青色のスカートが揺れた。

もしかすると、その下の下着さえ見えるかもしれないのだが、少女はそれを気にした風もなく、何十mもあるビルとビルの上を一息に飛んだ。

 

燦々と照りつける陽の下を異常な脚力で飛び立つ少女の影を、ビルの下を歩く一般人は誰も気が付かないらしい。

 

全身を蒼いセーラー服が包み、深い暗色のタイツを履きこなした、女子高生程の少女だ。

今もまた、陽の光を浴びた蒼い髪と胸元のセーラー服のタイがたなびいている。

 

「……見つけた」

 

しかし、少女はおよそ女子高生が身につけるとは思えない、二本のツノを持つ兜を被り、その腰には少女の腕ほどの長さを持つロケットが取り付けられていた。

 

そして背中には硬質な色合いを帯びた銃器が取り付けられおり、傍目から見ればコスプレそのものであったが、少女の全身を得体の知れない風格が滲み出ている。

 

その少女はビルの屋上から眼科を見下ろし、透き通るような青い瞳の中に彼女の主人ともいうべき彼を捉えていた。

彼は現在、近くにいる女と一言二言話しているのだが、女を見ていると少女の中でムカムカとした、苛立ちに似た何かが沸き立ってくるのを少女は感じていた。

 

嫉妬ではなく、根本的に真っ白な人形の如き女を見ているだけで少女はあの女を殺さねばならないと感じているのだ。

 

「あ……」

 

なんと彼女のご主人はあのムカつく女の後を追って寂れたビルに入っていってしまった。

どうしようかと思い悩む少女だったが、その数秒後に茂みの中から現れた存在を視覚して、中に入った主人を助ける為に突入を決意する。

 

「BETAは殺す」

 

底冷えする冷たいその視線には汚らしい立て札を棄てた彼女が嫌う赤い生物がいたーー。

 

 

 

 

「くそっ、くそっ、クソッ!」

 

暗いビルの中を俺は全力疾走していた。

何から?と言われれば奴等から、そう……奴等。

 

「あの腐れ女!ふざけてんじゃねえぞ!」

 

表情らしい表情のないあの人形染みた女。

アレは俺が考えてる以上に危険な存在だった。

 

「なんでBETAがここにいやがる!」

 

BETAーー人類に敵対的な知能生命体のことを言うそいつらは、俺が戦っていた世界の敵だった。

幼馴染の仇で、青い髪の彼女の仇で、俺が最後に相討ちとなったあの目玉野郎の総称でもあった。

 

当初俺はあの女の正体を暴いてやろうとでも思っていたのだが、客間に案内されて席に座っていると、突如BETAが、それも兵士級と呼ばれる対人BETAがお盆の上にお茶を置いて持ってきやがったのだ。

 

当然驚いたさ。

だが俺も衛士の端くれ、手に持っていた拳銃を構えて撃ってみたが兵士級は手に持ったお盆で全弾迎撃しやがった。

 

BETAがお盆で銃弾を叩き落とすなんて芸当出来るわけねぇだろ!

 

しかもその後に部屋に流れ込んで来たBETAだ、あのシルエットは確かにタコ助改め要撃級だった筈だ。

なのに、なのに……!!

 

「なんでBETAがあんなデフォルメされた姿に………オエッ。思い出すだけで吐き気が…」

 

思えば今まではBETAのあの醜悪な姿に慣れていた……否、あの醜い姿形だからこそ自身の憎悪、激情、殺意を抑えることなくぶつけることが出来たと言えるのか。

それが、それがあんな…キモ可愛いの部類に入る姿で目の前に現れると一体誰が予想出来るのか。

 

「……」

 

チラリ、と後ろを見れば背筋の凍るようなカサカサ音を立てて暗闇から何かが這いずり迫っている

捕まった時は手に持っている銃で自決しようと決意を硬くした。

 

「落ち着け、人間」

 

どう回り込んだのか、そこにあの不気味な女がいた。

あの無機質な瞳で俺を見つめている。

 

「チッ、もう一度聞く。お前は何者だ。なんでBETAがここにいる?」

 

素早く女の背中に回り込み、視認してるのか分からないが、BETAどもに見えるよう弾倉を入れ替えた拳銃を女の頭に突き付けて問う。

 

「ふむ。その質問に答えよう。私は人間が言うところの重頭脳級。初めましてといったところか、人間」

 

「なに?お前が……ブレイン級?」

 

BETA達の中には重頭脳級と呼ばれるBETAを操るBETAが存在する。

重頭脳級は手駒となるBETAに指示を出し、ハイヴを作り、人間を殺し続けて来た。

言ってみれば重頭脳級こそが全ての元凶のようなものだ。

 

「なぜ女の姿になってる?それに、他のBETAも何故あんな風になってるんだ」

 

あんな風とはデフォルメされたキモいBETAのことだが、自身の姿形を問われて重頭脳級はポツリと言った。

 

「現状を把握した時にはこの姿であった」

 

「は?」

 

「否、この世界に私という存在が定義された時、その瞬間私という存在にこの世界の定義が混じり合うことでこの姿になったというべきか。無論アレらも同じだ。アレらが私のように人間の形を成っていないのは今のスペックでは人間の形を成すには不適格だと定義されたため」

 

「何を……言ってる」

 

「定義とは、つまりこの世界の設定。この世界では深海棲艦と呼ばれる存在が人間を殺し、人間を守るため艦娘と呼ばれる存在が戦う、と。そう設定されている」

 

定義?設定?意味が分からない

 

「私たちもまた、創造主によって作られた存在。お前達と戦うことを定義されたモノ。しかし私達の世界に歪みが起きた。不確定事象。イレギュラー。お前だよ、人間」

 

ドクン、と心臓が鳴った。

 

「なんらかの方法によって次元を超えたお前には世界に引き寄せられる引力が備わってしまった。そしてお前の死因による歪みがお前を世界から弾いた。結果、お前はこの世界に引き寄せられた」

 

死因?俺があいつと相討ちになった自決装置のことか?

 

「人間が超重光線級と呼ぶあの個体とお前が使った自爆装置による超質量の衝突だ。そしてお前達に繋がりのある私もこの世界に引き寄せられたということだ」

 

「俺が……お前達を引き寄せた?繋がり?ーーふざけるなよ。ふざけるな!」

 

重頭脳級と自らを呼ぶ女の頭に銃口を突きつける。

それでも女は平然とした顔で呟いた。

 

「お前ではない。私を引き寄せたのは、私と密接な関係を持つ、あの場にいたあの個体(・・・・)

 

そうーー、と女の感情の無い眼が刃を射抜いた。

 

お前が超重光線級と呼ぶあの個体の事だ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「ーーーーーッ」

 

それは、愛した女の仇。

 

ドガァァァァァン!!

 

ビルの天井が轟音と共に砕け散り、女の話と突然の出来事に動揺した刃の拘束から女が抜け出した。

 

「お前とは落ち着いて話をした方がいいようだ」

 

女ーーー重頭脳級が手を振ると同時に兵士級、要撃級BETAが刃に迫る。

舌打ちをして後方へ距離を取ろうとするが兵士級の白い手が刃の体を掴もうと伸びる。

 

「く、そ……!」

 

掴まった。

刹那のうちに覚悟を決めた。

 

だがしかし、刃の体を掴もうと伸ばされた兵士級の腕は天井より着地した蒼い影によって一刀に伏したのだった。

 

「ほう」

 

「何?」

 

蒼いセーラー服に見覚えのある一振りの長刀。

ピンと立った二本のツノを携えた冠にロケットの噴射機を思わせる機構を備えたその青髪の少女。

 

彼女は全てを凍てつくすアイスブルーの瞳で眼前の敵を睨みつけ、一言だけその喉を震わせた。

 

「ーー〝此処は墓場。吾は死神。我は死の騎士〟」

 

右腕の長刀が横に上に振るうと兵士級と要撃級が次々に床に倒れていく。

呆然とする刃、興味深く観察している重頭脳級の前で蒼醒めた少女は凛として言った。

 

「94式戦闘歩行戦術姫 不知火。コールサイン “ペイルライダー”。私が貴方の戦術姫です。御命令を、マスター」

 




デザインを一新したペイルライダーちゃんのイラスト貼っときます

https://twitter.com/strayedacfa/status/1071693270755946496?s=21

長刀以外外国産の物を好む主人公の捻くれた性格が伺えますね。
他にも不知火一型丙を描いてますので時間があったらご覧下さい(^ω^)
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