戦術姫これくしょん   作:人類種の天敵

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マブラヴの漫画見て書きたくなりました。マブラヴはやっぱり面白いんじゃー。


始動

 

 

あの世界で散々殺しあってきた人類に敵対的な存在と手を組むという奇妙な同盟関係を結むことに今までの因縁に一応の区切りーーー否、戦力を揃えたら今度こそ絶滅させてやると内心で企む男、刃。

 

彼の企みをその高度な頭脳で読み取り、それすらも観察対象として興味深いと分析を始める人間にしか見えないBETAの重頭脳級ーー又の名を、レイン。

 

そしてそのレインを親の仇とばかりに睨みつけるーー刃がマブラヴ世界で搭乗していた愛機が擬人化した不知火で、彼が衛士として使っていたコールサインを名乗る少女、ペイルライダー。

 

全ての戦術機の親と呼ばれ、刃も最初に練習機として搭乗し、彼が不知火に乗り換えるまで使っていた縁でこの世界に連れられたアメリカ製戦術機のF4-ファントム。

 

4人はひとまず同盟関係を築き、戦術姫の拡充を目的としてレインが合法的に入手したビル『コーポ 横浜Hive』に帰還し、これからの計画を話し合うことにした。

 

「現在の急務はやはり戦術姫の開発建造だろう」

 

「ああ、だが戦術機……戦術姫か。開発をしようとして出来るものか?」

 

「各地の鎮守府で集めた情報によると、艦娘を建造するために妖精が実際に戦艦を造り、G元素成分を含んだ建造材とやらをコーティングすると、何故か人型になるらしい。恐らくこれがこの世界に設定つけられた方法なのだろう。つまりこの方法を使えば戦術姫を開発出来ると思われる」

 

レインが無表情さながらに推測を口にしたが建造材やら妖精やら専門用語が多く、俺には何が何だか理解出来ない。

 

「意味が分からん。結局は戦術機を作ってそれに建造材を振り撒けば戦術姫になるってことか?」

 

「つまりそうだ」

 

なんだそれ……この世界の設定だなんだ知らないがもうそれホラーだろ。

 

「ともあれ、最初の戦術姫だ」

 

「ああ、不知火は解析が追いついていないのと素材の研究から始めなければならない……つまり、F-4系統の研究開発からになるだろう」

 

「んー?ボクのF-4シリーズからだね!」

 

F-4ファントム。

米国のマクダエル開発の人類最初の戦術機にして、戦術機の中で最多の生産量と衛士が搭乗した実績を持つ機体だ。

 

主に第1世代戦術機と呼ばれ、戦術機開発初期の重装甲と重量あっての安定感を持った操作しやすい戦術機で、対BETA戦線初期に戦術機の有用性を示し、世界各国でライセンス生産が行われた結果、各国の地形や思想に沿った数多くのF-4バリエーションが存在している。

 

「このF-4は最初期のモデルだ。つまり最新版のF-4Eや瑞鶴は主機の強化や装甲の軽量化が出来なければ無理だろう。ノウハウの蓄積からしてソ連のF-4Rから始めるべきだな」

 

F-4のソ連のライセンス生産版であるR型は副腕と補助腕の構造を簡易化しつつ戦車砲を扱うために主腕を強化したモデルになる。

 

「R型を開発出来れば、そこからF-5やバラライカーーーと、戦術機の歴史を辿っていく」

 

「ふむ。しかし当分は第1世代辺りが頭打ちだろう。第2世代の開発は不知火の解析待ちだな」

 

「……BETAに解析されるなど癪ですが。そうも言ってられませんからね」

 

「ふむ。解析するのも戦術姫を作るのも、BETAはBETAだが刃の生態サンプルも使っているから、ある意味では刃と同じーーー」

 

ダン、と机の上にペイルライダーの長刀が突き立てられる。

それを無表情に眺めるレインへ、ペイルライダーの顔がズイ、と近づく。

 

「今すぐ連れて来なさい。じ、刃に顔立ちが似てるとあればそう邪険に扱うこともないでしょう……こほん」

 

「そうか、手間が省ける。連れて来い」

 

そばの要撃級が部屋を出て俺の生態サンプルを素材に生み出されたBETAを部屋に連れてくる。

 

ーーーその子は、外見からで言えば10歳程度、俺が使っていた覚えのある青いつなぎに濃紺のジャケットを羽織り、首元に下げたゴーグルはどこか不恰好にも見える。

 

「……」

 

よく手入れをしていた幼馴染の髪と違って、ボサボサ気味の黒いショートボブは、乱雑した前髪のおかげで少女の瞳を覆い隠していた。

つい、と右手を彼女の頰に当てるように差し出すと、少女はまるで猫のようにその手のひらに自分の顔を当てた。

 

「へぇー。似てるもんだねぇ」

 

邪魔な前髪を手で押し上げた少女の姿を見たファントムの言葉通り、彼女の顔立ちや瞳は、自分に似てるといえば似てるのだろう、と思う。

 

少女然とした幼気な輪郭に大きめの二重瞼。

何か言いたげなへの字の仏頂面は、戦術機部隊の隊長であった頃そっくりで、その黒髪は、俺が髪を青に染める前にひどく似ていた。

 

「名はどうする?」

 

「……俺に付けろと?」

 

「血を分けた子に対し人間はそうするのだろう?」

 

俺自身のDNAから生み出された少女に対してそれは最もな正論であり、しかし俺がBETAに名を付けるというのは、とても複雑なことだ。

 

「……?」

 

だが、目の前の少女は俺の心情など知ってか知らずか、何も言わず、手のひらに自分の顔をグリグリと押し付けるだけだ。

 

「……確かに、個人の感情をぶつけられる程似てねえよな」

 

そう考えてしまうと、その少女がBETAであるとは到底思えなかった。

どこからどう見ても人間で、誰かに見比べても貰えば俺と少女が似ていると言うだろう。

 

「血を分けた……ね。歳を考えれば兄妹が妥当だろうが。名前か……いきなりだと難しいな」

 

青春時代をBETAとの戦いに明け暮れた独り身の男に気の利いた名前をつけられる訳もないだろうに、レインは俺が付けるものとして当然だろう?と疑っておらず、ファントムとペイルライダーもワクワクとその時を待っている。

 

「……………………そうだな。なら、お前の名前は颯にしよう」

 

颯、かつての異名を別の漢字にしただけの、なんのひねりもない名前。

しかし少女はーー颯はコクンと頷くと、蕩けるような笑顔を浮かべて、笑った。

 

「颯。良い名前ですね、刃」

 

「颯ちゃんは可愛いねー初めてボクに乗った刃君を思い出すよぅ」

 

「ふむ、ファントム。颯には早速戦術姫の開発をして貰う。あまり構い過ぎるな」

 

それまで親の仇と敵視していた癖に、ペイルライダーは颯を巡ってレインと姦しく言い争いをしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーこの日、コーポ 横浜Hiveで俺たちの前線が、衛士とBETAと戦術姫のストライクフロンティアが始まった。

 

 

 

『ーーー横浜鎮守府にて起こった着任式の襲撃事件から早一ヶ月が経とうとしています。横浜鎮守府は海域の早期平定と深海棲艦の殲滅を目標に本日大規模の殲滅作戦を……』

 

「おはようございます。刃」

 

「ああ、おはよう。……そしてお前は、また布団に潜り込んだのか?起きろ颯」

 

「……ん」

 

横浜HiveでBETA達と過ごし始めてから一ヶ月が経った。

この建物内に生息するBETA達は俺やペイルライダーに敵対行動を取らず、それどころか俺達からの命令も素直に聞くようで幾らか戸惑ったが、それも今は解消している。

 

そしてペイルライダーに起こされた俺は布団を捲り、体にしがみついて離さない颯を起こし、朝支度を始めた。

 

「いよいよ今日ですね。刃と居られるのは嬉しいのですが、戦術姫として外で飛べるのが楽しみです」

 

「ああ。だが、くれぐれも艦娘に対する敵対行為は控えろ。まだ公になるわけにはいかない。もしら発見されても戦術姫と艦娘なんだから主機の機動力で追っ手を眩ましてくれ」

 

「はい」

 

今日は戦術姫の実戦試験とでも言うべきか。

実際に海域に戦術姫を出撃させて戦術姫の海上データと深海棲艦との戦闘データを収集する事を目的とした作戦となる。

 

極力は艦娘に見つかって欲しくはないが、横浜には鎮守府が配備され、多数の艦娘が海域を哨戒しているので、発見された場合には跳躍ユニットを使った逃走を優先するように言っている。

 

そもそも、第一目的は開発された戦術姫のデータだ。

無理に戦う事よりも推進剤の消費度や跳躍ユニットの機動データを取ってくれる方が嬉しいまである。

 

「まず、編成は私、F-4、F-4R、F-4J、F-4J改、Mig-21、J-8、F-5ですね。二個小隊での海上偵察に参ります」

 

一ヶ月の間に颯が開発した戦術姫は6。

F-4系統とF-4の軽量機版F-5を生産していた。

 

そして今日は横浜鎮守府が大規模な遠征を実施するため、横浜周辺の海域は艦娘の数が減り、留守組の艦娘も横浜鎮守府で待機となるらしい。

 

お手頃なチャンスなので第1世代戦術姫達のテストをしようということだ。

 

「既に出撃準備は整っています。後は横浜鎮守府の遠征を見送って目撃情報のあった南に進もうかと」

 

深海棲艦の居場所は、レインが衛星を多数ハッキングしたおかげで容易に割り出している。

そのためペイルライダーが言ったように横浜の艦隊が遠征に出発し、距離を離した所で戦術姫部隊を出撃させることになっている。

 

「……」

 

傍の颯は、いつものスキンシップが無いどころかズボンの裾を握って緊張気味だ。

 

見かねて彼女の頭を乱暴にわしゃわしゃと撫で回してやる。

 

「ガワならそれっぽく出来たんだ。ま、沈まなけりゃ上出来だよ。特に戦闘を重視した作戦でも無いんだからな」

 

「……ん」

 

「さて、それでは行きましょうか。刃」

 

コーポ 横浜Hive地下施設の格納庫に装備を整えて出撃態勢にある戦術姫達とレインが待っている。

 

ペイルライダーもまた、各種パーツを取り付け、兵装を搭載すると俺の方に向き直り、号令をーーーその時を待つ。

 

衛星からの情報は、横浜から遠征艦隊が出発し、頃合いと呼べる時間。

両目を閉じ、一呼吸とともに整列した戦術姫達に号令をかけた。

 

「これより、海上偵察を行う。戦闘データを含めた各戦果を手土産に、全姫確実に帰還せよ!」

 

「「「「了解!!」」」」

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