私は医療スタッフだ!   作:小狗丸

21 / 51
第一特異点 邪竜百年戦争オルレアン
14


 久世君達との模擬戦から二日後。ついにこの日が来た。来てしまった。

 

 今日、私と久世君はそれぞれが契約したサーヴァント達と一緒に新たな特異点にレイシフトする。

 

 あの模擬戦の翌日、つまり昨日、特異点の正確な座標が判明していよいよ今日レイシフトをするとロマン上司に言われた私は、それこそ死に物狂いでレイシフトの準備をした。

 

 通常の医療セットや非常食、特異点の冬木でも使った魔術薬、自衛の為の戦闘用魔術礼装、そして今回の特異点の切り札として用意した「アレ」。色々と用意しているとかなりの大荷物となったのだが、何とか一つのボストンバッグに入れることが出来た。

 

 準備を終えた私が頼光さんとアルジュナを連れてレイシフト装置がある広間に行くと、そこにはすでに久世君達にロマン上司の全員が揃っていた。

 

 ロマン上司は私達が来たのを確認すると新たな特異点がどんな所なのか説明してくれた。新たな特異点は西暦1413年の百年戦争の真っ最中のフランス。そう「第一特異点 邪竜百年戦争オルレアン」の舞台である。

 

 ……よかった。新たな特異点が原作通りオルレアンで。お陰で用意した「アレ」が無駄にならずにすんだ。まあ、「アレ」が本当に効果が出るかはまだ不明なんだが……。

 

 そう考えていると隣に立っている久世君が緊張した表情をしているのが見えたので「そんなに緊張しなくても大丈夫。君ならできるよ」と言っておいた。原作ではいくつもの特異点を修正して最後にはこの世界を救う(予定)の主人公である久世君ならばきっと大丈夫だと思う。

 

 というかそうでないと困るから! 本当に世界レベルで困るから!

 

 その後私は、付け足すように「微力ながら私も全力でサポートをするから」と久世君に言った。ちなみにこれは私の本心からの言葉である。

 

 これは最近になってようやく気づいた……というか、今まで本能が認識を避けていた事実なのだが、どうやらこの世界は原作とは若干違うようで、主人公の久世君が死んでしまう可能性もあるみたいだ。……そして万が一そうなったら、世界の命運は全てもう一人のマスター(一応)である私が背負うことになるらしい。

 

 いやいやいやいや! 無理だって! 頼光さんとアルジュナというサーヴァントと契約した以上、私もマスターなのかもしれないが、それ以前に私は医療スタッフだ! そんな世界の命運だなんて荷が重すぎる!

 

 だからそうならない様に私は全力で久世君をサポートする。幸いにも私の魔術はサポートに向いているどころか特化しているし、頼光さんやアルジュナのような強力なサーヴァントとも契約しているので何とかなるだろう。

 

 オルレアンで私のやるべき事は久世君達の後方でサポートをして彼らに実戦経験を積ませる事。そうすればこれ以上目立ちたくない私も周りから注目されないしいい事尽くめである。

 

「それじゃあ今からレイシフトを開始するけど皆、気をつけてね」

 

 いよいよレイシフトをしようとする時にロマン上司が私達に注意をしてくる。

 

「レイシフトをした後、君達が必ず同じ時間、同じ場所に送られるとは限らない。こちらでも出来る限り時間と位置のズレが出ないようにするけど、もしかしたら数ヶ月の時間のズレがあるかもしれないし、それぞれ大陸の両端に転移されるかもしれない。契約したサーヴァントはマスターから離れることはないけど、レイシフト直後は戦力が分断される可能性が高い。いいかい? 薬研クンと久世クンはまずレイシフトが完了したらお互いが何処にいるかを確認して、近くにいなければ出来るだけ速やかに合流すること。絶対だよ」

 

 いつになく真剣の表情になって忠告をしてくるロマン上司。忠告は有り難いのですけど、そこまで念入りに言われると何だか変なフラグが立ちそうで怖いです……。

 

 そうして私達はロマン上司が言った時間と位置のズレが発生しない事を祈りながらレイシフトを開始して特異点へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レイシフトが完了した私は焔に包まれた街の中にいた。

 

 突然の出来事に思わず呆然とする私の目に映るのは燃える建物、逃げ惑う人々、空を飛び交う無数の竜、そして……。

 

「あら? 貴方は何者かしら?」

 

 数人の狂える英霊を従えた漆黒の聖女だった。




「後方でサポート? これ以上目立ちたくない? 何寝言を言ってるの?」by 運命(Fate)の女神

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。