私は医療スタッフだ!   作:小狗丸

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FGOのソロモン攻略できました。
これでFGOのストーリーは大体理解できたのでこれで薬研征彦の原作知識も冴え渡り、あとついでに原作知識を使って原作ブレイクを引き起こす(ある意味)最悪のサーヴァント「ヤゲン」の番外編も書け……書こう、かな?


23

 私のジャンヌ・オルタを誘き寄せる案が実行されてから数日が経ち、私達は新たにワイバーンの被害に遭ったという街へと向かっていた。

 

「ふふっ♪ こんなに大勢の人達がフランスを救うために志を同じにするだなんて……まるで天使の軍団みたいね♪」

 

「そうかい? 『今にも天に召されそう』ってところは同意できるけど、あの姿は僕の思い描く天使のイメージからはかけはなれているよ」

 

 私の近くにいたマリーが「私達の後に続いている人達」を見て笑顔で言うと、その横にいたアマデウスが同じく後ろを見ながら疑問を口にする。

 

 最初はマスターとサーヴァントとフォウを合わせて十二人と一匹しかいなかった私達だが、今では数十人の大所帯となっていた。……そしてそのほとんどが全身に包帯を巻いた重傷人の騎士達であった。

 

 そう、騎士達である。

 

 先日、ノーメイクでホラーな顔芸をしながらやって来たジル・ド・レェと共にやって来て、彼を敵と勘違いした私のサーヴァント、源頼光によって彼もろとも吹き飛ばされた騎士達である。

 

 あの時、ジル・ド・レェを初めとする騎士達は、幸いにも死者を出していなかったが全員がいつ死んでもおかしくない重傷ばかりで、私は大急ぎで彼らを治療したのだ。その時の様子を見ていたロマン上司は「あんなに素早い手術は見たことがない!」とか「まさにゴッドハンド!」とか言っていたが、必死にやっていたので正直自分でもよく覚えていない。

 

 とにかく私は何とか一人の死人も出さずジル・ド・レェを初めとする騎士達を治したのだが、そうすると今度は頼光さんが酷く落ち込んでしまったのだ。

 

 勘違いとはいえ、ただの人間であるジル・ド・レェ達に刀を振るってしまった頼光さんの落ち込み様は酷く、それを慰めるのは大変な時間がかかり……とても面倒だった。私と一緒になって頼光さんを慰めていたアルジュナなんて最後辺り「これが……我が父インドラの化身ですか……」と死んだ目になって呟いていたし。

 

 全く……私は医療スタッフだ。カウンセラーじゃないんだぞ。

 

 ちなみに当の本人達である頼光さんとアルジュナは、私の後ろでいまだに暗い顔と死んだ目をしている。

 

 そんなことを考えていると偶然なのかそうでないかは分からないが、集団の先頭を行くジャンヌが自分の隣にいるジル・ド・レェに話しかける。

 

「あの……ジル? 怪我は大丈夫なのですか? やはりまだ寝ていた方が良かったのでは……?」

 

「ふぁっふぁっふぁ! ふぉあんふんふぁふぁふぉふんふぉふぉふぉ。ふぉふぉふふ・ふぉ・ふぉう、ふぉふぉふふふぉふぉふぁふぁんふぉふぉふぁひふぁふぉんふぉふぉ。ふぉひふぁふぉふふぁふぁふぁふふふぁひふぉふぉふふぉふへふふぉふぉ(※特別意訳 はっはっはっ! ご安心なされよ聖処女よ。このジル・ド・レェ、これしきの怪我何ともありませんとも。そしてそれは我が騎士達も同様ですとも)」

 

「そうですか。それは良かったです」

 

 ジャンヌが話しかけると全身どころか顔にまで包帯を巻いてミイラ男になったジル・ド・レェが笑顔を浮かべながら(包帯で顔は見えないが)答え、それを聞いたジャンヌが嬉しそうに笑う。……やっぱりこの主従コンビ、かなり変だ。

 

「……まぁ、あのミイラ男の軍団は別にいいとして、問題はあっちの方だよ。あっち」

 

「あっち?」

 

 私がジャンヌとジル・ド・レェのやり取りを見ているとアマデウスとマリーの会話が聞こえてきた。不機嫌さを隠そうとしないアマデウスが指差す先を見てみると、そこには三人の女性に囲まれながら歩いている久世君の姿があった。

 

 久世君を取り囲む三人の女性の一人はマシュ。そして残る二人の女性は……。

 

「ちょっと! 今は私が子イヌ(マスター)と話をしているのよ。離れなさいよ!」

 

「お断りします。いついかなる時も旦那様(マスター)のお側にいるのが妻たる者の役目ですから」

 

 頭に赤い角を生やしてゴスロリ風の服を着た少女と、頭に白い角を生やして着物を着た少女であった。

 

 ……はい。どこからどう見てもこの特異点で仲間になるサーヴァント、エリザベートと清姫の二人です。

 

 実はあの二人、先日合流したジル・ド・レェ達と一緒に私達の所に来ていたのだ。

 

 生身の人間であるジル・ド・レェ達が頼光さんのバスターアタック一段目の直撃を受けてもギリギリ生きていられたのは、エリザベートと清姫がとっさに魔力で防御の場を作り、頼光さんの衝撃波を多少だけど弱めたかららしい。

 

 そして私達の所に来たエリザベートと清姫は一目で久世君をいたく気に入ったらしく、彼を仮のマスターとしていつも側にいるようになったのだ。

 

 ……うん、やっぱりこの世界の主人公は久世君だったんだね。エリザベートと清姫は主人公補正で無事久世君の方に行ったようだ。

 

 いや、よかったよかった。もし万が一にエリザベートと清姫が私の方に来ていたら……。

 

 今頃、頼光さんの刀が血で濡れていただろうな。うん、間違いなく……。

 

「ああ、もう! アイツらなんて醜い言い争いをしているんだ。聞いている僕の耳まで腐り落ちてしまいそうだよ」

 

「ははは……。まあ、落ち着いてください、アマデウス殿。あの二人も今はああして言い争っていますが、戦闘になると久世殿の為に力を貸してくれる仲間です。久世君が何も言わない以上、ここは多目に見ましょう」

 

 両耳を押さえながら吐き捨てるように言うアマデウスをゲオルギウスが苦笑を浮かべながらなだめる。

 

 ゲオルギウスの言う通り、エリザベートと清姫は戦闘になれば久世君の為にその力を貸してくれるだろう。だから私としてはあまり彼女達には近づかず、戦闘の必要な時にサポートを入れさえすれば……ん?

 

『み、皆! 大変だ! 何だか数え切れない程多数の魔力反応が高速で君達の所に向かってきている! しかもその先頭からは今まで感知したことがないくらい強大な魔力が感じられる!』

 

 突然のロマン上司からの緊急通信。立体映像のその顔を見るだけで彼が大いに焦っているのが分かる。

 

 そして今ロマン上司が言った「多数の魔力反応が高速で向かってきている」という言葉と「今まで感知したことがないくらい強大な魔力」という言葉から私は全てを理解した。

 

 

 

 

 ……そうか。ようやく釣れたか。


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