私は医療スタッフだ!   作:小狗丸

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何やら評価が良かったようなので続きを書いてみました。
相変わらず短い文章ですが楽しんでもらえたら幸いです。
あと、源頼光と相性が良さそうなサブメンバーのアドバイスがあれば是非教えてください。


01

 運命(Fate)の悪戯によって死亡フラグが無数に立つ火の海と化した都市に送られた私が召喚したサーヴァントは、自分の真名を源頼光といい、クラスはバーサーカーだと教えてくれた。

 

 ……うん。知っている。前世で「Fate/Grand Order」をプレイしていた私は知っている。

 

 歴史では男性と伝えられていた源頼光が実際には女性(しかも超がつくナイスボディの美人)なのも知っているし、

 

 パラメータ上昇の為に理性を失うはずのバーサーカーなのに特殊な狂化スキルによって理性を失っていないのも知っている。

 

 でも実際に会って話してみると物凄い違和感を感じて思わずツッコミを入れそうになった私は悪くないと思う。

 

 ……まあ、それはともかく先ずは自己紹介からだ。私は頼光さん(本人は呼び捨てでいいと言ってくれたが、それは流石に遠慮した)に自分の名前と所属しているカルデアという組織の目的、そしてこの場所にいる理由を説明した。すると……。

 

「まあ! 世界を救うという大任を負うだけでも大変なのに、たった一人でこの様な所に飛ばされてしまうだなんて!」

 

 と、言って抱きついてきた。

 

 ちょっ!? 何でいきなり抱きついてくるの? 何だかイイ香りがしてくるっていうか、暴力的な胸の感触が……!

 

 男としてもうしばらくの間こうしていたいのだが、こんな危険地帯でいつまでもじっとしている訳にもいかないし、何より早急にやるべき事がある私は理性を総動員して抱きついてくる頼光さんを引き剥がした。……いえ、別に嫌だったわけでも貴女が嫌いになったわけでもないですから涙目になるのは止めてください、頼光さん。

 

 気を取り直して私は頼光さんにこれからすべきことを説明した。それは私同様にこの世界に転移させられているはずの主人公と、デミ・サーヴァントとなって彼と契約をしているはずのマシュと合流することだ。

 

 正直な話、これから事件の中心にと向かっていく主人公達と合流するのは非常に怖い。しかしカルデアと通じる召喚サークルを作れる彼らと合流しなければカルデアのロマン上司に連絡が取れないので仕方がない。

 

 そう決めた私は頼光さんを連れて前世の「Fate/Grand Order」の記憶を頼りに主人公達が向かっていそうな場所を目指すことに。途中で何体か骸骨の敵が現れたが、それらは全て頼光さんがあっという間に倒してくれた。

 

 それからしばらく歩いていると、少し離れた開けた場所に三十体くらいの骸骨の敵が集まっているのが見えた。もしかしてと思い骸骨の敵の群れをよく見てみると、その中心には私達が探していた主人公にマシュ、そしてオルガマリー所長の三人が取り囲まれていた。

 

 頼光さんに彼らを助けてほしいと言うと、彼女は言われるまでもないとばかりに骸骨の敵の群れに突撃してそれらを蹴散らしていき、私が皆の元に走って辿り着いた時には戦闘はすでに終わった後だった。

 

 しかし私の仕事は全くなかった訳ではなく、主人公達の元に行くとそこには全身に怪我をしているオルガマリー所長の姿が。幸いにも彼女は命に支障が出る大怪我は負っておらず、私の手持ちの薬と治癒の魔術で充分治すことができた。

 

 オルガマリー所長の治療が終わると私は彼女に何故ここにいるのかとヒステリックな口調で聞かれ、主人公と同じくレイシフト装置にマスターと認識されてここに転移させられて、偶然手に入れた呼符で頼光さんを召喚してここまで無事にこれたことを説明すると全員に驚かれた。まあ、それはそうだろうな。

 

 中でも一番驚いていたのが、ここにはいないが通信でこちらの会話をカルデアから聞いていたロマン上司で頼光さんの名前を聞いた途端「源頼光だって!? あの平安時代最強の神秘殺しで日本で最も高名な退魔の武人! それがこんな美人で、しかもこんな凄いお体だなんて二重の意味でビックリだよ!」と通信越しに叫んでいた。

 

 うん。分かりやすい説明と皆の気持ちの代弁ありがとうございます。流石はカルデアの突っ込みエース。

 

 私と頼光さんの話が終わると次はロマン上司から現在のカルデアの状況が説明された。

 

 レイシフト実験に起きた事故(実際はレフ・ライノールによる爆破テロなのだが)によってカルデアは、私が知る原作と同じ被害を受けていた。ロマン上司から伝えられるカルデアの被害の大きさに主人公にマシュ、オルガマリー所長は思わず声を失っている。

 

 場の空気が重くなったのを感じて私が何かを言おうと思ったら、同じく場の空気を感じとったロマン上司がわざと明るい口調で話す。

 

「だ、大丈夫さ。確かにカルデアが受けた被害は大きいけど希望が無くなった訳じゃない。幸い所長は無事だったし、二組のマスターとサーヴァントだっている。しかもその内の一組は日本でも最強クラスのサーヴァントで、マスターは所長自らがスカウトしてきた名門の魔術師なんだから。ね、薬研クン?」

 

 えっ!? ちょっと待ってくださいよDr.ロマン。確かに私の家は八代続く魔術の家で名門と言えば名門ですけど、何でここで私の名前を出すんですか?

 

 いや、本当に止めてくださいよ。私はマスターではなく医療スタッフで……。

 

「………そうね」

 

 えっ? オルガマリー所長?

 

「薬研征彦。正直予想外だったけど、貴方がサーヴァントを従えるマスターとしてここにいてくれるのは不幸中の幸いだったわ。……貴方をマスターとしてスカウトしようとした私の判断は間違っていなかったようね」

 

 止めてください、オルガマリー所長! そんな弱々しいけど希望を見つけた様な微笑みを私に向けないで!

 

「俺も、出来る限り力になります」

 

「私も未熟なデミ・サーヴァントですけど皆さんを守ってみせます」

 

「フォウ! フォウフォウフォーウ!」

 

 ちょっ!? 主人公にマシュ、それにマスコットキャラクターのフォウまで私に期待の視線を向けるのは止めてくれません!?

 

「ふふっ♩ これは責任重大ですね。頑張りましょうね、マスター♩」

 

 頼光さん、貴女もか……!

 

 本当に止めてくれません? 私はマスターではないんですから……。

 

 私は、医療スタッフだ!


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