OVER LORD Gun Fist & Gun Head   作:丸藤ケモニング

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舌の根乾かぬうちに違う作品を書いてしまった。

けど、筆が進んだからしょうがない。






1,銃頭

 例えば、この世界(ゲーム)で、困ったことがあったらどうするかって、そういう話を俺はしてるんだ。

 おいおい、待て待て新入りさん。俺は怒ってるわけでも説教しているわけでもない。ただお前に得のある話をしようとしてるんだ。悪い話なんかじゃ無いさ。

 俺と組まないか?詐欺なんかじゃねぇさ。いい加減一人も飽きてきた、それだけさ。それに、俺を見て悲鳴を上げたりいきなり攻撃を仕掛けて来なかった奴は、お前で……三十人目か?びびってるってぇだけじゃ、なさそうだ。異形種ってぇ奴に不快感や偏見を持ってない、そんな奴だな、お前は。

 あん?名前を聞かせろだ?ああ、そう言えば言ってなかったか?俺の名前は……。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 YGGDRASIL。十二年と言う年月の中、俺が何よりも夢中になり金を注ぎ込んだゲームだ。まぁ、現実にさほど金を使わない生活を送ってたから、まぁ趣味に金を突っ込んだだけとも言える。

 その十年間ほど金を突っ込んだゲームが、本日終わる。悲しいとかそんな感情は、残念ながら湧いてこなかったな。栄枯盛衰、栄えれば滅びる。それが今の世界の理だな。さて、最終日だ。何をするかな。

 

 そうは言ったものの、異形種の一種、自動人形である俺が入れるところ何てのは決まっている。最初の町より少し離れた所にある、とあるギルドのブラックマーケット。とは言っても、このブラックマーケット、ちょっとした町ほどの大きさがある。ここのギルマスが、初心者用のダンジョンを、異形種人間種問わずに利用できる町を作るってぇんでギルド本部にしちまった所だ。ここは永世中立、ここでしか手に入らないようなものがあるからどこのギルドも狙わないし、狙おうとも思わないだろう。いや、実際手を結んでいるギルドの数が尋常じゃない為、そこからの報復を恐れて手を出せない、そんなわけでここは成り立っていた。最盛期は、人間種、異形種問わずに客が訪れたもんだったが、さすが最終日、この地点で自動POPするモンスターと最終日だからこそ掘り出し物がないか、それとも自分の持ってるユグドラシル金貨を使いきってしまおうかと言う奴以外いやがらねぇ。まぁ、俺もその物好きの一人だが。

 ここに来たのには理由が二つある。一つは、買おう買おうと思ってたものを買うための資金が用意できたんで、そいつを買いに来たってな訳だ。最終日なのに買う必要があるかって?こいつはそれを売っている奴に約束したことだ。俺は、約束を破るつもりは無い。ゲームでもリアルでもだ。んな事言ってるから底辺から抜け出せないんだ。昔、とある奴に言われたことを思い出す。

 二つ目の理由は、簡単だ。この町で待ち合わせをしている相棒と合流する為にここに来た。腕に巻いたバンドを見れば午後八時三十二分。後、三十分近くあるから、とっととこっちの用件を済ませちまおう。

 この町の一番奥、目抜通りと言っても差し支えの無いそれなりに立派な店の並ぶ通りを抜けた先に、ギルド〈ブラックファーマシー〉の本部建物がある。外観としては古びた洋館。小汚ないっつぅ呼び方が一番しっくり来る。ここに、このギルドのマスターがいる。

 古びた木製の大扉を開けると、そこは、良い言い方をするなら絢爛豪華、悪い言い方をするなら成金趣味の悪趣味な大広間が広がっていた。そこかしこに置かれている調度品は全て金、金の額縁に収まっている違法ギリギリの模写した名画が所畝ましと並んでいる。……また、物が増えたらしいな。どうせ、どっかの潰れたギルドの物を買い取ったんだろうがな。懐から煙草を取りだし、マジックアイテムのライターで火を点ける。生産職の友人が、わざわざ俺のために作ってくれた特注品で、俺の持ち物の中では四番目に大事なものだ。

 味も香りもない煙を胸一杯に吸い込み、吐き出す。まぁ、ポーズだが。口に煙草をくわえたまま、俺はもう一つ奥にある、これまた成金趣味全開の金の扉の取っ手に手をかけ、開くのではなく押し上げる。セキュリティにしては単純だが、単純であれば単純であるほど人間は引っ掛かりやすいってなもんだ。実際はそんなことはないがな。

 そのまま、今度は人一人がようやく通れる狭い通路を進んで突き当たった扉。今度は地味なものだが、これこそがこのギルドの最奥への扉である。素早く決められた手順でノックをすると、鍵が開く音、遅れてゆっくりと扉が開く。

 

「誰だい、こんな最後の夜に」

 

 扉の奥からは、ドスの効いた低い女性の声が飛んでくる。相変わらず、愛想と言うものを捨てたような声だ。

 

「俺だ、十三だ」

 

 少々俺には手狭な扉を潜りながら、俺はそう声をかけてやる。返事も待たずに奥へ入ると、ごちゃごちゃと物に囲まれて巨大な書斎机があり、その奥には、金髪に細面、スッと通った鼻梁に薄すぎず厚すぎない唇、先端が尖った長い耳に浅黒い肌、そして鋭く鷹のような右の瞳に左にはドクロのマークが入った眼帯をした女が、机に足を投げ出し座っている。

 

「よぉ、銃頭、元気にしてたか?」

「相変わらずの憎まれ口だ、安心したぜ、シャイア」

 

 この女こそ、このブラックマーケットの支配者であり、第一位から八位までのギルドとのコネを持つ女傑、シャイア·ブラックソーン。通称雌狐のシャイアだ。

 

「この会話も最後かと思うと寂しいねぇ。んで、何の用だ?それもわざわざ最終日に」

「約束通り、金は用意できた。例のギルドに売ってもらったものを買いに来たんだよ」

「はぁ?あんた、ゲームの最終日に、金を払って買いに来たのかい?」

「俺は約束を破らねぇ。ゲームだろうがリアルだろうが、だ。お前にちゃんと言ったよな?あれはちゃんと買い取るってな」

 

 俺の言葉にシャイアは深々とため息をついた。ゲームじゃなければその顔に呆れたものを浮かばせているだろう、そんな長いため息だった。

 

「本当に、あんたは馬鹿だね。損をする生き方だよ?」

「あいにく、録な教育も受けてないんでね。で?売るのか売らねぇのか、どっちだ?」

「せっかちな奴だよ。あーと、これだな。ほれ、持っていきな」

 

 そう言いながらシャイアはインベントリからやや大きめの箱を取りだし俺に放り投げる。それを受け取って即座に箱を開ける。中には赤く輝く宝石のような結晶体が収まっていた。とは言え、想定通りの大きさだったため、俺はインベントリから無限の背負い袋を取りだし、シャイアに放ってやった。ちなみに、中身は全部金貨だ。

 

「金額は、大丈夫だろうね?……なんて、あんたに聞くだけ野暮ってもんだった」

「嘘はつくが騙す何て事はしねぇよ。しかし、前から思ってたんだが、よく熱素石なんて手に入ったな。あそこが独占してるだろうに」

 

 熱素石、所謂世界級のアイテムと言う奴だ。そこらのギルドにはおいそれと手に入れることは出来ない上、それの所持数がギルドのランクに直結する為、手放すようなギルドはそう無い。

 

「まぁ、そこはそれ、蛇の道は蛇ってね。とある世界級の入手方法と交換条件で要求したら、わりあいすんなり行ってね。るし★ふぁーには感謝してもしきれないね」

 

 ああ、あのお騒がせ職人か。それは、まぁ、なんと言うか……

 

「アインズ·ウール·ゴウンの奴等にゃ気の毒に、と言っておくか」

 

 そう言いながら、俺はそれを胸に収める。ふん、軒並みステータスが上がったな。とは言え、これで俺も上の中に届くか届かないかって所か。比較的遊びのあるクラスと種族構成だからな。まぁ、終わるんなら意味もないがな。

 俺が自分のパラメーターを確かめていると、シャイアが何かをいじっている。あれは、コンソール。何をしてるんだ?

 

「何してるんだ、お前」

「ああ、今日でこのギルドも解散、ここも元の低級冒険者用ダンジョンに戻す手続きを、おっと、これで終了だ。あと一時間ほどでここは元のダンジョンに戻るって寸法さ」

 

相変わらず思いきったことをする奴だ。まぁ、どうせ大事なものは懐に全て仕舞ってあるんだろうし、ここにはNPCなんて作って置いてないだろうし、いつでも逃げれる準備は整えてただろうから、問題あるまい。

 

「そうか、じゃぁこれでログアウトか?」

「馬鹿言ってるんじゃないよ。相棒と待ち合わせしてるんだろうどうせ。付き合うさ。最終日まで義理堅いことをするアホにね」

 

 アホとはなんだ、アホとは。そう思いながら、俺はこの部屋から退出する。ちらりと振り返ると、そこは砂上の楼閣と言って良いようななんとも寂しげな雰囲気だけがあった。

 

 

 現在八時五十六分。小汚ない掘っ立て小屋みたいな、すでに店主のいなくなった露天通りを抜け、この町の一画にあるサロンに座って俺は相棒を待つ。その隣にはシャイアがグラスを傾けながら座っている。

 俺が四本目の煙草に火をつけたところで、向こうから走ってくる人影があった。背は低い。160センチ程度か、栗色の髪に利発そうだが生意気そうな、美少女と見間違いそうな顔立ち、体を覆うのは、様々なギルドやここのギルドメンバーが必死に協力して作り上げた神器級の若草色に金の縁取りの入ったローブ。俺の相棒の到着だ。

 

「遅くなってごめん十三」

「むしろ予定よりも早いくらいだ」

 

 いつも通りのやり取りをした我が相棒、名前はナール·シュバルベリーだ。これでも一応成人しているらしい。リアルでも何度もあっているが、とても信じられないな。

 とは言え、こいつもカンストプレイヤーの一人であり、信仰系と雷属性と氷属性に特化させた魔法の使い手で、もしもガチでやりあったら、俺が確実に敗北するだろう実力者でもある。

 

「あっ、シャイアさん、お久しぶりです」

「久しぶりね、ナル君。相変わらず熟成させてる?」

「何言ってんだてめぇ……」

「何って、ナニに決まってるじゃない。本当ならここで押し倒したい位よ?」

 

 垢BANになって良いなら勝手にしろと言い捨て、俺は五本目の煙草に火を点ける。味も香りもしない煙を胸一杯に吸い込み、大きく吐き出し天井を見上げる。ルームファンがゆっくりと回るのを見つめながら、俺は次に何をするか、じゃれあっている二人の声を聞きながら考えた。

 

 まぁ、結局は最終日なんだ、何をするのも挨拶は大事ってなもんだ。世話になった生産系ギルドや、さんざん世話をした戦闘系ギルド、さんざん殴りあったり殺しあったりした糞ボケども、そんな奴等に挨拶回りと洒落こんだ。まぁ、お涙頂戴的な展開はなかったものの、別れを惜しむ声やまた別のゲームで殺しあおうとか物騒な話をしながら、それでも全員が全員、このゲームが終わるのを悲しんでいるようだった。俺にしてみれば、悲しいよりも面白いゲームが一つ無くなったのが惜しいくらいの気分だったが、よくよく考えれば、それが悲しいと言う奴なのかもなぁ、とふと思ったりもする。感傷なんてらしくもないと思いつつ、三人で巡り巡って、気づけばいつの間にやら二時間以上が経過していた。

 そうして結局戻ってくるのは、俺が課金して購入した、俺達二人のクランの本部だった。とは言っても、そこは少々大きめの一軒家であり、特別妙なトラップなんかは仕掛けてない。せいぜい、決められたルートで進まねぇと落とし穴やテレポートトラップに引っ掛かる程度のもんだ。しかもシーフがいれば簡単に突破できる。とは言え、ここが襲われたことなんて一度もないがな。

 シャイアとナールがいち早く玄関へ特攻、そのままの勢いで家の中へ転がり込むのを眺めながら、俺は腕時計をちらりと見る。現在十一時二十分。祭りの日は時間が過ぎるのが早いが、今日は特に早いような気がするな。

 家に入るなり、大きな姿見がある。ナールが勝手に設置したもんだ。そこに写っているのは分かりやすく異形。身長的には二メートル、全体的にがっしりとした体躯をボロボロのシャツとボロボロのロングコートで覆っている。ちなみに全て伝説級の逸品。自分の体に優先してデータクリスタルを使ってたら防具にまで手が回らなかったせいだが、性能的には上々だ。右腕には埋め込まれるように拳銃、それもリボルバーのシリンダーがある。もちろん、こいつは銃撃のためにあるものじゃない、歴とした打撃補助武装だ。さて、取り分け目を引く部位は頭だろう。俺のアダ名にもなってる銃頭、それが全てを物語ってる。俺の頭は巨大なリボルバー拳銃になっている。

 百年かそこいら前に流行ったか流行ってないかは知らないが、NO GUNS LIFEと言う漫画があった。銃頭の始末屋が主人公のハードボイルド臭溢れる、俺的には傑作の漫画だが、知っている人間はあまりいない。俺もアーカイブで知るまでは興味もなかった。しかし、読んだ瞬間に虜になり、それまでプレイしてたアバターを捨て、こっちに作り替える事までした。名前ももちろん主人公、乾 十三にあわせてある。

 以降、自分の格好いいと思えるプレイスタイルを貫いてきた。そして、気づけば相棒も見つかり本日に至ると、そういうわけだ。ちなみに頭であり銃である部分だが、ちゃんと発砲できるし、その威力は製作した奴と試射した結果、かなりえげつなくなっている。原作再現と言えば原作再現だが、自分でトリガーを引けないのが珠に傷だ。

 一通り自分の姿を確認した後、俺は家の中に歩を進める。最初は殺風景な家だったが、相棒であるナールが色々と用意したため、かなり無国籍な雰囲気を醸し出す家となってしまっている。と言うか、何でポリニシアン仮面があるんだ?マジックアイテムかどうかも定かじゃないが、とにかくそれほど大きくないリビングへと足を踏み入れると、正しくこの家の住人、NPCのシルキーが微笑みながら立っていた。

 クランの本拠地には、NPCを作り出すためのデータ容量的余裕がなく、本来はNPCを設置できないのだが、さすが糞運営、金さえ払えば100レベル分のデータが購入できた。購入した理由は、相棒の誕生日に何が欲しいかと聞いたらば、NPCを作るデータ容量が欲しいとヌカシおったので、珍しく出たボーナスで買ってやった。ボーナスの三分の一がこれに消えたと思うと感慨深いものがある。

 儚げな容貌の少女は、全身白のゴスロリ系のフリフリのついた服で固めている。能力的には、実はそこまで強くないらしい。相棒曰く、戦闘能力よりも万能性を求めたそうだ。気になったので設定を開いて覗いてみる。メイドにファーマー、メカニックにアルケミストと言ったかなりの数の戦闘とは無縁のクラスが続き、そこに戦闘系がほんの少しだけ乗っかっていると言う風な案配だ。ついでに種族は俺と同じ自動人形。確かにこの娘は人形的な美しさを目指して造型されたと相棒が言ってたな。どれ、設定は……ざっくりとしか書いてないな。流し読みをしようとして、面倒くさくなってやめた。

 NPCを置いて自分の事務所と言う名の物置にはいると、二人がごそごそと、勝手に人の部屋を漁っている光景が目に入った。とりあえず二人の尻に蹴りを入れてみる。

 

「ぎゃっ!」

「ひゃんっ!」

 

 ちなみに最初の悲鳴がシャイアで、後の悲鳴がナールだ。

 

「ちょっと、なにするのよ?」

「人の部屋漁ってる泥棒にゃ、全力で攻撃を仕掛けても文句は言われないがな?」

 

 手に持っていたデータクリスタルを机に叩きつけて、シャイアが抗議してくるが、人の部屋で物を漁っている方が悪いのだ。そこに慈悲はない。

 それからは思出話が中心だった。俺がこのアバターで始めて異形種狩りに会いまくった話や、シャイアがとあるギルドに情報を売った話、ナールがこのゲームを始めた切っ掛けや俺との出会いなど、思い返そうと思えばいくらでも思い出せる、そんな話をなんのとりとめもなく話続けた。

 そして、どうやったって最後の瞬間はやって来た。残り一分、俺達は、誰が言うでもなくグラスとブランデーを取りだし、それぞれのグラスに注いで顔を向けあった。

 言葉はない。必要ないと言った方がいいか。全員がグラスを掲げ、その時を待つ。なんだか可笑しくなって、俺は少し笑い声を漏らした。

 残り三秒。

 全員がもう一度グラスを掲げ、グラスの縁を接触させる。綺麗な澄んだ音色が響く。

 残り一秒。

 全員がグラスの中身を一息に飲み干す。

 ああ、楽しかったな。

 零。

 

 そしてそれは訪れた。




ナザリック勢は後々絡んできます。

独自にお話は進むよ。


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