OVER LORD Gun Fist & Gun Head 作:丸藤ケモニング
あ、書き忘れてた。今回、捏造やらオリジナルアイテムやら大量投入中。
気分を害する可能性があるのでお気をつけてお読みください。
「ここに首謀者であるガジっちゃんとその協力者がいるよ~」
先導していたクレマンティーヌが、そう軽く言ったのを聞いて、俺とモモンが足を止めた。墓地の最奥にある霊廟は、それこそ昼間にでも見りゃぁ歴史的な美しさや厳粛さみたいなもんがあるんだろうが、このアンデッドがうろうろする夜の中で見りゃぁ、不気味なことこの上ない。新しい煙草を取りだし煙を深く吸い込む。やれやれ、こんな辛気臭いところじゃなけりゃ、もっと美味いんだがな、この煙草。
「中には何人くらいの人間がいるんだ、クレマンティーヌ」
「あ~、どんくらいかなぁ?カジっちゃんの弟子が四人位と、協力者の執事が一人、ほいでもってカジっちゃんの切り札が一匹か二匹くらい?」
「ふむ……どうやるべきかな十三?」
「……俺に振ってくれるな。だが、まぁ、意見を言うなら、正面から乗り込んでもいいんじゃないか?英雄なら英雄らしく、姑息な手を使わない方がいいと思うがね」
俺の率直な意見に、モモンが顎に手を当てて考え込む。それを見ながら、こいつはどんだけ慎重な性格なんだろうと、ふと思った。しかし、もうちょっと深く考えてみれば、たった41人で最高9位、ワールドアイテム保有数ユグドラシル内一位、1500人侵攻迎撃等々、数え上げればきりがないほどの伝説を作り上げてきたギルドの長だ、慎重に物事を進めるのも当たり前かと、考え直す。常に一匹狼でほとんどの年数を過ごしてきた風来坊の俺とは違って、責任ある立場を貫いてきたのなら、自ずと思考は慎重で極力安全を重視したものになるだろうと、一人納得をしているとモモンが顔を上げる。
「確かにその通りかもしれないな。では、正々堂々向かおうか」
「ああ、了解だ。クレマンティーヌ、ここまでの案内、ご苦労さん。報酬はやれないが、命を拾えただけでも儲けものだと思っとけ」
「ああ、うん。そうするよ。そいじゃお二人さん、またね」
そう言ってクレマンティーヌは夜の闇の中に消えていった。またね、って、もう会うこともないだろうに、なに言ってるんだかな。
俺たち二人は、その後声を掛け合うこと無く霊廟の方に歩を進めた。幸いと言うかなんと言うか、特に妨害もなくあっさりと霊廟の中に踏み込むことが出来た俺たちは、周囲をとりあえずと言った感じで警戒しつつ、ついに件の人物たちと遭遇することが出来た。
片方は偉く顔色の悪い、一瞬アンデッドかと思ってしまうような男で、回りには質の悪そうなローブと目出し帽状態の黒三角頭巾を被った男たち。それぞれ体格にばらつきはあっても、男であろうことは想像が出来る体つきをしている。とは言え、戦士職じゃなさそうだ。
そして、そんないかにも異端宗教と言った風体の男たちに混じって異彩を放つ男がいた。年の頃は二十半ば程度に見える、上下ともピシリとした執事服を身に纏った柔和な笑みを浮かべた青年。しかし、その両腕が異常。左腕はバックラーのような籠手を装着し、右腕は完全に機械化されている。特に前腕には、俺の手の甲に埋まっているシリンダーよりも大きめの奴が埋め込まれている。どっかで見たことがあるような気もするが。
明かりの下に出てきた俺たちを見て、執事風の若い男がカジットに耳打ちをする。
「カジット様、来ました」
「おいおい、俺たちの接近なんて、ずいぶん前から分かってたんじゃねぇのか?」
「その通りだな。しかし、こんないい夜に、血生臭い儀式など、いささか無粋ではないかね?」
「ふん、儀式にふさわしい夜かどうかはワシが決める。そんなことより、貴様ら、外に配したゴーレムをどうやって撃破した?並みの攻撃ではびくともせん代物だぞ、あれは」
その言葉に、俺とモモンが鼻で笑う。カジットのこめかみがピクリと動くのを見て、俺はこれ見よがしに煙草を取りだし、必要以上にゆっくりと煙を吸い込み、吐き出す。
「この程度のことも分からん術者か……ああ、いや、別に責めているわけではないのは、分かってもらえるよな、カジット?」
「……挑発もそこまでにしていただきましょうか?さて、カジット様、私、提案がございまして、そちらのお二人も、よろしいでしょうか?」
声もなく俺たちが頷くと、相手も納得したように頷いて一礼をする。その間も、あの柔和な笑みを崩すことはない。なんだか不気味な奴だ。
「けっこうでございます。では、提案としてはなんですが、私がどちらか片方のお相手をさせていただきたい、そう思いましての提案でございます。カジット様にはお弟子さんとこちらから技術提供させていただいた手駒、私も手駒三体、そういう案配ですが、いかがでございましょう?」
「……その提案に、こちらのメリットが……!」
モモンが言葉を止める。理由は、俺が片手で言葉を制したからだ。疑問符を浮かべながらこちらを見るモモンを手で制し、俺は煙草の煙を吐き出した。紫煙が一瞬、敵と俺たちを分かつ。
「いいだろう。俺としても、てめぇがその技術をどこで手に入れたのか知りてぇ所だ。んな訳で、モモン、ここは一つ、相手の提案に乗っちゃくれねぇか?」
「……確かめねばならない事なんだな?ならばしょうがあるまい。こっちは私に任せておけ。お前は好きにするんだな」
「恩に着る。さぁ、どこでやる若いの。俺はどこでも構わねぇが?」
挑発するように俺がそう言うと、男は柔和な微笑みを浮かべたまま手招きをして歩き出した。その瞬間にカジットに目配せをしたのだが、どうやらモモンもそれに気がついたらしい。こいつらが何を考えているか分からないが、この男がそう簡単にやられるわけがあるまい。そう思い直しながら、俺はモモンに軽く手を振った。気配だけであったが、モモンが軽く頷いたのを、俺は背中で感じながら、男の背中を追うのだった。
少し距離をとると、骨を砕く轟音と断末魔、超重量の何かが地面に降り立つ音が聞こえ、呆れながら煙草を地面に投げ捨て、新たな煙草を取り出して口にくわえ、前を進む青年の背中に声をかける。
「距離をとるのもこの辺でいいんじゃねぇか?」
「ええ、そうですね十三様」
唐突に名前を呼ばれたが、俺には驚愕よりもやっぱりなと言う思いしか湧いてこなかった。いや、ついでに言うなら、面倒くさい奴がこっちに来ているもんだ、とも思いはしたが。正直、あいつが来ているんなら、絶対に会いたくない部類の奴だ。
「あの野郎もこっちへ来てるのか……ああ、いい。別に知りたくもないし会う気も無い。だから、あの野郎のことは一切口に出すな」
「そうは申されまして、あのお方はあなただけを追い求めております。その為に、長い月日をかけてあなたの模造品を作り出そうと躍起になっていたのですから」
「ハッ!迷惑な話だ」
そこで初めて、その男が表情を変える。柔和な笑顔が一転、憤怒の形相へと変化した。そいつは、憤怒を押さえること無く、右腕を持ち上げ、手を開いて俺の方へ向ける。その掌の中央には銃口が空いているが、俺は知っている。それは決して銃弾のような金属弾を発射する生易しいものではないと言うことを。
「我が主を!あなたがいないことで心を痛め続けた優しき主を、貴様ごときが愚弄するなぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺が身構えると同時、奴の右腕のシリンダーに直結する撃鉄が落ちた。大型シリンダー内に装填された大口径魔導弾が強制喚起、内包される魔術的炸薬が瞬時に与えられた属性へと置換され、掌の砲口が紅蓮に染まる。
果たして、吐き出されたのは第七位階の火炎魔法に匹敵するほどの紅蓮の業火。スキルで無茶苦茶に増強されているであろうそれは、俺にだって十分ダメージを与えうる攻撃だった。
無論、それは当たればの話だが。
先だって、奴の腕が、伝説級武器《 フランメン·デア·アルム 》に変更されているのは分かっていた。これの最大の攻撃方法は火属性範囲攻撃に限定され、発動に2アクション必要なことが分かっている。ならば、第一の動作、掌を敵に向けると言う行為を行った瞬間、扇形に広がる炎を避けるため、そも範囲外へ逃げる算段をとっていれば、最悪ダメージを受けても微々たる物で済むと言う結果になる。そして、予想通り、俺が横っ飛びに飛んだ直後、横合いを紅蓮の炎が駆け抜ける。それを横目に、慣性を筋力で無茶苦茶に相殺しながら直角にダッシュ、相手の左横手を取る。地面が砕けるほど足を踏みしめ、後ろに引いた拳を真っ向から叩きつける。
果たして、撃ち込まれた拳は、胴に突き刺さる寸前で左腕の盾で防がれる。だが、問題はない。
「ヒュンケファウスト!!」
手の甲のシリンダーが火を吹き、電撃が放射され、ついで拳の衝撃がこいつを吹き飛ばす。そのまま壁まで吹き飛ばされた敵に向かって俺は一足に駆けようとしたが、それよりも早く、天井から三体のゴーレムが、着地音も重く降り立った。二脚の人間型だが、その両腕はハンマーのようになっている、攻城用ゴーレム!舌打ちをしつつ体を回転させ、握りしめた拳を地面に叩きつける。それと同時にシリンダーが再度火を吹き、周囲に夥しい放電が巻き起こる。
さすがの攻城用ゴーレムでも、こいつは耐えられなかったようだ。膝から崩れ落ちて二度と動かなくなってしまった。しかし、これで魔導弾を撃ちきったな。リロードしとかねぇと。
手の甲のシリンダーをスイングオープンし、まだ壁際から動かない奴に見せつけるように廃莢し、ポケットから新たな弾丸を取りだし、見せつけるように一発一発装填していく。
「くっ……!さすがに、余裕ですか?」
「ああ、まぁな。挙動は読める、やって来ることも読めるとなりゃぁ、余裕以外の何物でもねぇだろ」
一挙動でシリンダーをはめ直し、そいつへ向き直ると、俺はさっきから気になっている事を聞くことにした。
「そう言えば、お前の名前、なんつぅんだ?」
そう聞くと、男は俯いて笑い始めた。なんだ、急に。
「どうした、急に笑い出して」
「これは失礼……そうですよね、私の事なぞ、知りもしない、それはそうです。あなたがあそこを辞めてから、私は作られたのですから……」
「ああ、そうかい。まぁ、もう戦う気が無いなら、とっとと帰れ。殺意も無い奴と殺し会うつもりはねぇよ、こっちは」
「……いえいえ、戦う気がないなどとんでもない。我が主の御前に、あなた様を連れて行く、それが我々6dollの本来の使命なのですから」
そう言って、こいつは立ち上がった。しかし、6dollねぇ。あの計画、マジでやりやがったのか、あいつは。凝り性め。
「そうか。なら、続けるか……構えろ」
俺が宣言と同時に腰を落として構えると、それに合わせて、奴も両腕を交差させ構える。
「申し遅れました。私、ワンと申します。ワン·オブ·フレイムスローアーですね」
「ご丁寧にどうも。俺は乾 十三だ」
名乗りは戦闘開始の合図だった。俺の名乗りが終わるよりも早く、ワンが右腕の肘に左腕の掌に付いている突起を即座に挿入、右腕の各種パーツが解放され、それ本来の姿を取り戻す。《 フランメン·デア·アルム·フォーム·ゲヘナ 》。内蔵された魔導弾全てを使用する最大火力形態。多段ヒットする第九位階魔法にも等しい、一日一回しか使用できない攻撃を行うための形態である。そいつで来るなら、俺もいっちょやってやろうか。
俺が、構えたまま動かないのを訝しげな表情で見つつも、奴の腕のシリンダーが次々と火を吹いていく。その度に大型化した掌に発生した火球が巨大になって行くのを見ながら、体の各部に力を込めて行く。
ゆっくりとした動作で、ワンが巨大化した腕をこちらに向ける。最後の一発が火を吹いた瞬間、俺に向かって豪炎が迸るが、俺はその瞬間こそを待つ。
「それでは、さようなら、十三様」
静かにワンが俺に別れを告げた瞬間、最後の弾丸が火を吹いた。途端、視界全てを染める灼熱と赤。石畳を溶かし、輻射熱が木々をやきつくす中、俺は炎に目掛けて走り出す。数瞬の時を置かず、俺の視界が、体が炎と赤に包まれる。この世界に来てから初めて味わうダメージの感覚は、むしろいっそ清々しかった。痛みにひきつる体を無理矢理動かし、俺は炎を抜けるために一気に走り抜ける。多段ヒットしてかなり体力は削られたが、全てを受けきる前に炎から脱出、こちらに向けている腕を無理矢理横へそらし、右の肩口に蹴りを叩き込む。それと同時に脹ら脛に内蔵された姿勢保持用アンカーパイルを肩口に叩き込み、そのまま踏みつけるようにして地面にワンを叩きつけた。
全身から煙を放ちながら、上から見下ろしてくる俺を、こいつはどう見ただろうか。驚愕に歪むワンの顔を見ながら、俺は益体もないことを考え、拳を固く握りしめた。
「チェックメイトってやつだ」
そう言ってやった後、俺は握り固めた拳を突き下ろした。
「なぜ、止めを刺されないので?」
「冷静だな、てめぇは」
顔のすぐ横に突き下ろされた拳を見ながら、ワンは可愛げもなくそう聞いてきた。全く、多少はビビってもいいだろうが。
肩口からパイルを引き抜き、拳を引いた後、俺は煙草を口にする。火を点け煙を吸い込むと、所々が痛むが、まぁ気にすることもないだろう。
「もう一度聞いてもよろしいですか?なぜ、止めを刺さないので?」
「……お前はメッセンジャーだ。あいつに伝えとけ。俺はてめぇに会うつもりなんて一切ねぇってな」
「……さようでございますか……ですが、あなたは我が主の執念を甘く見すぎでは?」
「甘く見たつもりはねぇし、過剰評価もしてねぇ。あいつのことはよく知ってるからな」
俺はそこまで言って紫煙を吐き出す。漂う煙にあいつの顔を見たような気がして、少々気分が悪くなる。
「では、我が主に一応伝えますが、恐らくお聞きいれにはならないかと存じます。今後、我々に関わることがないように、お願い致します」
「当たり前だ」
「それと、最後に、一つよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
一瞬の間。
「なぜ、最後にあのような真似を?あなた様ならば、あんな事をせずとも簡単に勝利できたのではないですか?」
なんだ、そんな事か。俺は鼻で笑って煙草を投げ捨てる。
「お前の意地を正面から受けきってやるのが道理だと思った、それだけだ」
「!?」
背中を見せてそう言うと、背後で息を飲む気配。それを無視し、俺はモモンの方へと歩き出す。
背後から気配が消え、俺は嘆息しながら再び煙草を口にくわえ、空を見上げた。そして、恐らく奴には届かない言葉を煙と一緒に吐き出した。
「てめぇと同じ道は歩まねぇぜ、ヴィクター」
その言葉は、紫煙と共に消えてくれるのを俺はただただ願ったのだった。
ちなみに、呟いた後、やっぱり全身がひきつるように痛いため、ポーションを数本被ったのは言うまでもない。
お気に入り登録が60をこえました、皆さんありがとう!
ちなみに五万字をこえました。だからなんだと言うんだ。
次回はモモンさん編。
次回もお楽しみにー。