OVER LORD Gun Fist & Gun Head   作:丸藤ケモニング

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戦闘描写を考えていたら、ずいぶんかかりました。

ちょっとくどいです。

読みづらかったらすいません。





12,銃頭と漆黒の戦士、出陣/中編/アインズ版

 十三と執事服の若者が暗闇の中に消えていったのを見届けてから、モモン=アインズはカジットとその前に立つ四人の男達に向き直って、改めて両手の剣を構え直す。一瞬〈 完璧なる戦士/パーフェクト·ウォリアー 〉を使おうかと思ったが、メリットデメリットを見比べデメリットの方が大きいのと、現状ならば戦力的に問題ないとして、使用は控えた。なにかあれば使う腹積もりではあるが。

 

「さて、こちらも始めるかね?カジット·デイル·バダンテール」

「……なぜワシの名を知っている?いや、そうか。クレマンティーヌを捕らえたのは貴様か!」

「……そうであるとも言えるし、そうでないとも言える」

 

 そこまで答えて、アインズは本来の目的を思いだし、兜の下で軽く舌打ちをする。どうも、あの十三のペースに巻き込まれているような、そんな気がしたからだ。あの男は、同じプレイヤーではある。アインズ·ウール·ゴウンにも、悪感情を抱いていないようではある。だが、しかし根っこの部分で、あの男と自分は分かりあえないのではないか、そんな疑問が渦巻いているのも事実である。少々行動を共にしただけだが、少なくとも嘘を吐いているような雰囲気は無かった。今のところは、信頼しても問題はないだろうが、この後はどうなるか分からない。

 なぜならあの男は、アインズ·ウール·ゴウンのメンバーでは無いのだから。

 そこまで考えて心の中で頭を振り、アインズは剣を握り直しつつ、カジットに言葉を重ねた。

「さて、戦う前に一つ二つ、聞いておきたいことがあるのだが、問題はないかね?」

「ほぉ、聞きたいこととな。いったいそれはなんだ?これから黄泉路に旅立ち我が力になる男の質問だ、特別に答えてやろう」

「……私は依頼を受けた冒険者でね。とある少年を捜しているんだ……名前は言わないでも、分かるだろう?」

 

 微かに身構える集団。その中の一人が、霊廟の方へ一瞬視線を向けたのを見逃さず、兜の下でアインズは笑う。迂闊にも程がある。もはや、その奥にンフィーレアがいるのは確定だ。ならば素早くこいつらを殺し、ンフィーレアを確保するのが最善ではある。だが、少々実験をしたいのも事実だった。

 ここに入る前、十三とクレマンティーヌが話している間に、足止めの為のアンデッドを幾つか準備しているため、時間的余裕はまだあるはず。ならば少々自分が実験をしても構わないだろうと言う思いもあった。

 

「さて、二つ目の聞いておきたいことだが……配下を出さなくてもいいのかね?」

 

 その瞬間、カジットの背中に悪寒が駆け抜けた。目の前の男は“死”を運んでくる!直感の叫びに身を任せ、その枯れ木のような腕を打ち振るうと、それに呼応して周囲の地面が盛り上がり、そこから体の各部を金属製のパーツで覆った動死体が姿を現す。それと同時、同じように地面が盛り上がると、十体の、剣と盾を携えた骨の戦士が這い出てきて、カジット達の前で盾を構える。

 

「ほぉ…ユグドラシルでは見たことの無いアンデッドだな。なら、少々強さを計らせてもらおうか」

 

 感心したような呟きは、踏み込み床石を砕く音に掻き消された。

 カジットの目には血のような赤が高速で流れ、漆黒が右、左、右と規則的に吹き抜けたと同時に、ワンから譲り受けた強化型アンデッド四体骨の戦士十体、そして自らの弟子が三人両断し粉砕されたとしか映っていなかった。

 

「な、な、なんだと!」

「ふむ、多少固かったが、さほど強いと言うわけでもないのだな」

 

 驚愕の叫びをあげたカジットのすぐ側で、両手の剣を振りきった姿勢のままアインズはそう呟いた。

 

「ぐぅぅぅ……!貴様、何者だ!」

「私の名か?私はモモンと言う。まぁ、プレートを見てもらえば分かるだろうが、銅級冒険者だよ」

 

 そんな馬鹿なことがあり得るか!そう叫び出しそうなのを堪え、カジットは即座に次の手を打った。懐から黒い鉄のような輝きを持つ、武骨な珠を取り出すと、それを掲げる。磨かれてもいなければ形を綺麗に整えられてもいない、原石と呼ぶ方が近いそれが、一瞬脈動したようにアインズには見えた。

 興味深く観察をしていたアインズの常時発動型特殊技術〈 不死の祝福 〉に、先程から引っ掛かっていた存在が動くのを察したアインズが数歩下がる。好機と見たローブを羽織った男が魔法を唱えながら前に出るのとほぼ同時に、一つの風切り音が聞こえ、重いなにかが前に出た男の体をひしゃげさせながらアインズの方へとその体を吹き飛ばしてくる。それを片手の剣で叩き落とし、追撃で振り回される大重量の長く太い骨の集合体を片手の大剣で受け止め弾いた後、冷静に、その場に重々しく降り立ったアンデッドを見た。

 

「……ほぉ、骨の竜か」

 

 おおよそ三メートルはある人骨の集合体の竜を見て、感心したように呟くアインズの前で、珠が再び脈動したように見えたかと思うと、カジットの背後の地面がひび割れ、ゆっくりと地面を割りながらもう一体骨の竜が姿を現した。

 

「ふ、ふははははははは!」

 

 カジットの壊れたような、しかし、自分の優位を確信した笑い声が辺りに響く。

 

「貴様は強い!それは認めよう!!だがしかし、骨の竜二体を相手にしては勝ち目などあるまい!命乞いは聞かんぞ。死の宝珠に溜め込んだエネルギーももはや空だ。しかし、貴様を殺し都市に破壊と死を撒き散らせば、多少の元は取れるだろう!」

 

 ゆっくりと構えを解くアインズに対し、優位を確信したカジットは憤怒の感情を声に混ぜながら怒鳴る。

 しかし……。

 

「ふん。これだけ雑魚を産み出していれば、多少はマシな物も産み出せるのは道理か。それで?それで終わりかね?」

 

 一切の動揺や絶望を感じさせず、アインズは、右手の剣を肩に担ぎ、左手の剣を敵に突きつけた。

 

「!?ふ、ふん!強がりもそこまで行けば立派だな!地獄へ行ってもその強がりが続くかどうか、試してみるがいいわ!!」

 

 カジットの怒鳴り声が終わると同時に、骨の竜の一体が、奇怪な叫び声を上げながら、人骨を纏めた大重量の尻尾を、回りに転がる死体や残骸を砕きつつ横薙ぎする。その大重量の一撃を、アインズは受けるのではなく右腕の一閃で真っ正面から打ち砕いた。骨の残骸と切っ先が打ち砕いた石畳の破片が舞う中、アインズは一歩踏み出しつつ振り下ろした剣の切っ先を跳ね上げ、半ばから叩き潰した尻尾をもう一段階砕き、もう一歩踏み込み、左腕の横薙ぎでこちらに向いている骨の竜の後ろ足を粉微塵に打ち砕く。

 

「な、なんだとぉ!」

 

 カジットが再び驚愕の叫びを上げる前で、アインズは後方へ飛びすさりながら兜の下で舌打ちをする。こんなもの、筋力でただ武器を振り回しているだけだ。戦士の戦い方としては下の下。レベル差がある内はいいが、拮抗するレベル帯では確実に隙をつかれるだろう。

 アインズは、脳内に焼き付けられた男達の戦い方を分析する。二の太刀要らず武人建御雷、二刀流の攻撃特化型忍者二式炎雷、ギルド最強でありユグドラシルでも三本の指に入る文字通り最強の戦士たっち·みー、そして、つい最近見た、前の三人には実力的には劣るが、決して負けぬ輝きを放つ王国最強の男、ガゼフ·ストロノーフ。

 カジットが慌てたように黒色の光線を数回放ち、骨の竜の損傷を回復させるのを見ながら、アインズは剣を構え直す。一つずつ、試してみるか。心の中で呟くと、まずは両手の大剣を翼のように左右に広げ、骨の竜へ躍りかかる。

 振り下ろされる鉤爪の軌道上に剣をそっと置く。接触した瞬間、爪を表面で滑らせ軌道をそらした後、片方の剣を、翼でも羽ばたかせるように内側へと折り畳みながら腕の半ばへ剣身をその腕へ滑り込ませる。結果、滑るように刃は、骨を纏めて作られた竜の腕を、破砕ではなく切断してのける。そのまま、慣性を殺さず回転したアインズは、力ではなく流れで、肋骨の辺りに剣を二連続で滑り込ませる。スルリと、骨を切断する感触すらなく、二本の漆黒の大剣は肋骨の辺りのみを綺麗に切断してのけることが出来た。

 この結果に、アインズは満足していたが、同時に油断したとも言える。相手はアンデッドなのだ。痛みを感じることもなく、長大な尻尾でアインズを打ち据え弾き飛ばそうとする。事前に察知できたため、大剣を盾にすることで持ちこたえるが、内心では舌打ちの連続である。

 

(考えれば、二式炎雷さんは、短剣の二刀流か巨剣の一刀流じゃないか。大剣二刀流での戦いかたじゃないだろう、馬鹿か俺は!!)

 

 心の中で自分の迂闊さに悪態をついた後、今度は剣の一本を地面に突き刺し、大剣を両手持ちで構える。正眼に構えた大剣を大きく振りかぶり、地面を強く蹴って骨の竜の懐に瞬間で潜り込むと、振りかぶった剣を、大きく半円状に引き下ろす。今度もまた、剣はスルリと骨の竜の体の半ばまで容易に切断し、切っ先が地面につく瞬間、それを切り返し跳ね上げて胸部をVの字に切り捨てる。大重量の剣の重さを筋力でねじ伏せるのではなく、それを慣性へと上乗せ、後方へ回転しながら横振りに骨の竜の反撃の腕を真っ向から迎撃し、叩き砕く。そして、振り抜く慣性のまま横へ大きく飛び退き、剣を正眼に構え直しながら、今度こその手応えに、心の中で小躍りした。

 

(なるほど、そうかそう言うことか。近接での戦い方は流れが重要なのか!重心の置き方、攻撃の繋ぎ方、足運び、様々な要因を先読みしながら攻撃を繋いでいく!なるほど、そう言うことか……)

 

 近接での戦い方の一端を掴んだアインズだったが、それと同時に、残り時間が少ない事に気がつく。召喚しておいたアンデッドが、一体ずつ葬り去られているのを感じる。一瞬、意識をそちらへ向けると、眼帯をつけた女ダークエルフが、半月のような笑みを浮かべた表情でアンデッドを切り刻んでいる映像が流れ、瞬間で消える。

 今度は実際に舌打ちをして、アインズは今度こそ二本の大剣を構え、カジットへと向き直り、とっとと切り札を切った。魔法が使えなくなるデメリットよりも、誰かがここに参戦して、手柄が分散される方が痛い。そう考えた為だ。

 

「〈 完璧なる戦士/パーフェクト·ウォリアー 〉!」

 

 魔法を発動した瞬間、自分の中の何かが組変わっていく感覚。一瞬で、四肢に力がみなぎる。

 

「遊びは終わりだ、カジット!」

 

 叫びと同時に跳躍。よほどの高速なのか、アインズの視界に入るカジットも、骨の竜すらも、こちらに反応できていない。先ほど切り結んでいた骨の竜の眼前に、ほぼ瞬間移動のような速度で接近したアインズは、先ほどの要領でもって、二本の大剣をもってその頭を、粉砕ではなく両断、切り返して首を切り落とした後、胴体部に剣を突き刺し、一直線に走り抜けた。

 真っ二つの開きになって沈む骨の竜を尻目に、アインズは疾駆する。それは正に漆黒の風。カジットに触れること無く、アインズはもう一体の骨の竜へと接近、即座に両の腕に握る剣を、舐めるように滑るように、しかし風を置き去りにする速度で滑り込ませて行く。腕を切り飛ばし、腹を裂き、竜巻のように回転しながら渾身の力をもってして二本の大剣を叩きつける。あまりの衝撃に、切断された端から骨片になった骨の竜は、もはや吠え声も上げぬまま、宙へと消えていった。

 ちなみに、アインズは大変ご満悦であった。まだまだ超級の戦士には及ばないが、思った以上の動きが出来た。近接職を始めて短いとは言え、これは十分な成果だ。むしろこれは成長とも言える。少なくとも、レベルは上がらなくても技術は上がる。その実験としては十分な成果だ。

 

(しかし、さっきのは十分必殺技と言えるんじゃないか?ふむ、名前をつけるのもいいかもしれないな。例えば、テンペスタ·モモン·ブレイク……いや、斬撃技だからな、真空モモンガ斬か?)

 

「そ、そんな馬鹿な……!あ、ありえん、貴様、何をした!?」

 

 ぶつぶつと技の名前を考えていたアインズに、もはや絶望の声を上げるカジット。相手は、確かに戦士だが、だからと言ってこの様に容易く葬り去る事ができる相手ではない。少なくともそれだけの戦闘能力を持ったアンデッドだったはずだ。

 

「……何をされたか、分からないなら教えてやろう。斬ったんだよ、この剣でな」

 

 風を切って振り下ろされ、目の前で制止する大剣の切っ先。カジットは、背に流れる汗を感じながら、憤怒に心を染める。

 

「なぁ!なぁぜだ!なぜ貴様ごときにこのワシが五年間かけて作り上げた、努力の結晶をぉぉぉ!三十年以上たとうが忘れ得ぬ思いをぉぉぉぉ!なぜ否定できるのだぁぁぁぁぁ!」

 

 血を吐くような弾劾の叫び。そこに込められた怨念と憤怒を浴び、しかしアインズは鼻で笑い飛ばす。

 

「笑わせるな。どんなに吠えたところで、それは負け犬の遠吠えに他ならない。そして、他の人間を巻き込まなければ叶わぬ夢を持つことが許されるのは、強者だけだ」

 

 そこまで言って、アインズはゆっくりと剣を振り上げる。美しい月光は、しかし、闇を固めたような剣に吸い込まれ、反射することはない。その剣を見上げ、カジットは死を幻視する。

 

「い、いやだ」

 

 口から漏れ出るのは果たして。

 

「ワシは、ワシはまだ死ねぬ……!母を、あの時の後悔を払拭するまでは死ねんのだ!聞いているのか貴様!我が思いを、我が願いを、貴様がなぜ踏みにじれるのだぁぁぁぁああ!」

「ああ、それは簡単な答えだよ、カジット」

 

 血を吐く絶叫の答えは、涼やかな、優しげともとれる言葉だった。

 

「私が、お前より強かった。だから私の我が儘が通った、それだけだカジット」

「なっ……!き、きさ……!!」

「俺の踏み台、ご苦労だったカジット」

 

 空気を切り裂いて、大剣が振り下ろされた。

 

 

 首謀者を一刀両断にし、霊廟の奥に辿り着くと、暗闇の中、ンフィーレアが、半透明な薄絹に身を包み立っていた。しかし、アインズが注目しているのはそこではなく、顔だった。

 顔にはやや歪な刃傷が一直線に走っており、恐らく瞼の下の眼球までも傷つけていることが容易に想像できた。また、よほど切れ味が悪いか、よほど腕の悪い奴が切ったのだろう。瞼の所々が千切れ、赤黒い肉が露出していた。

 鎧と武器を解除しながら、アインズは慎重にンフィーレアを精査した。

 結果、この額につけられている〈 叡者の額冠 〉と言う、性能的にユグドラシルではあり得ないアイテムのせいで意識を奪われ、一種の魔法詠唱装置のようなものにされているのだと言うことが判明した。

 正直、アインズはこの、ユグドラシルでは再現不能なアイテムが欲しかった。コレクター魂が騒いだのも理由の一つではあったが、もう一つは、貴重なタレントの持ち手であるンフィーレアも同時に手に入れ、研究が出来る、と言うのもあった。

 しかし、迷いは一瞬だった。

 

「仕事として引き受けた以上、故意的な失敗は、アインズ·ウール·ゴウンの名が泣くなーーー砕け散れ、〈 上級道具破壊 〉」

 

 アインズの魔法と共にアイテムは砕け散り、ンフィーレアが崩れ落ちる。その寸前、アインズよりも早く、闇の中から姿を現した十三が、ンフィーレアを受け止めた。

 

「十三か。ずいぶんボロボロだが、勝てたのか?」

 

 その問いかけに、十三は煙草の煙を吐き出して親指を立てて見せた。

 

「そうか……さて、後はンフィーレアの目の傷だが……ここで治すのはやめておこう」

「そうか」

 

 アインズの言葉に素っ気なく答え、煙草を吐き捨てると、幻術を自らにかけ、鎧と剣を作り出し終えたアインズにンフィーレアを渡した。

 

「じゃぁ、後は頑張ってくれ」

「ん?なんだ、一緒に戻らないのか?凱旋だろう?」

 

 その言葉に、十三は半面だけ振り返り、煙草に火を点けながら、面倒くさげに答えた。

 

「英雄なんぞ、興味はねぇよ。あんたが、あんたの望みのために、やればいい」

 

 そう言って十三は、今度こそ振り返ること無く、霊廟を後にした。

 

 それを見送ったアインズは、しばしその状態でいた後、小さく呟いた。

 

「やはり、相容れないな」

 

 どこか憎々しげな呟きは、霊廟の闇に消えていったのであった。

 

 

 

 





戦闘描写はやはり難しい。

ではまた次回。
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