OVER LORD Gun Fist & Gun Head   作:丸藤ケモニング

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遅くなり、申し訳ない。
お盆に稲刈りと多忙だったもので。

今回は少々飛び飛びになっております。

読みづらかったらすいません。


13,銃頭と漆黒の戦士、出陣/後編/終

 アインズと別れた十三は、霊廟から出ると人の気配を避けるようにして墓地から遠ざかろうとしていた。愛用品の煙草も吸えないため、出来ることなら早くこの場から離れたい。

 そんなことを考えつつ、正門ではなく北方面へ向けて歩を進める。すると、正門の方から大歓声が聞こえた。恐らくアインズ、いや、モモンが正門にたどり着いたのだろう。ならばこっちに注目している奴など、いるはずがない。勝手にそう断じて、懐から煙草を取りだし、口にくわえ火をつける。煙を吐き出すために空を見上げれば、なるほど、血生臭い夜には不似合いな月の綺麗な夜だ。

 

「あっちじゃ、こんな綺麗な月は見れなかったな。だからよぉ、そんなに殺気、当てないでくれ」

 

 目線を下げると、そこには猫のような顔立ちの女が立っていた。いっそ愛らしいとも言える顔立ちの中で、口だけが三日月を描き、ひびわれから漏れ出るような殺気がその目には宿っていた。

 

「まだこの街にいたのか?」

「んー、まぁねぇ。心残りがあるっちゃぁあるし、ねぇ?」

 

 三メートルほどの距離を取り、二人は言葉を交わしあった。

 

「そいつはいけねぇなぁ。早くそいつを済ませて、早くこの街から離れるんだな」

「あはっ!じゃぁ、そうしようかなぁ?」

 

 言葉の交換は終わったとばかりに、亀裂のような笑みを張り付けたまま、クレマンティーヌが腰からスティレットを引き抜き、まるでクラウチングスタートのように低く構える。それが、この女の戦闘における本気の構えだと見てとった上で、十三はあえて構えず煙を吐き出した。

 

「あれぇ?構えないの?死んじゃうよ?」

「……何でここで戦おうとするんだ?どうにも、そいつが気になって戦う気にゃなれねぇよ」

「……私はねぇ、これでも人類の守護者、なんて大層な呼ばれ方してたんだよ?」

 

 そこまで言った後、クレマンティーヌの顔から、その亀裂のような笑みが消える。

 

「だけど、あんたは一撃で私をはっ倒した。しかも殺さないようにしながらね?こんな、こんな屈辱があるかってんだよ!!」

「つまり、てめぇが強いかどうかの確認に来たって所か?」

 

 叩きつけられる怒気と殺気を浴びながら、それでも平然とした声で十三は軽く確認するように言葉を返す。握りしめられるはずの拳は、コートのポケットに突っ込んだまま。

 

「そうだねぇ、それもあるねぇ……悪いんだけど、私にも分からないや。だからぁ、無理矢理にでも付き合ってもらうからなぁぁぁぁああ!」

 

 叫ぶと同時に〈 疾風走破 〉〈 超回避 〉〈 能力向上 〉〈 能力超向上 〉の四つの武技を同時に展開させ、暴風のごとき荒々しい殺気と共に、クレマンティーヌは突進を開始する。恐らく、あの頭には攻撃が通用しない可能性がある。ならば、その心臓を貫く。相手の攻撃手段が素手で、そうなると数十通りの迎撃手段が思い付くが、クレマンティーヌはその全ての防御手段を潰し、スティレットを叩き込む自信があった。

 しかし、十三は相変わらずコートのポケットに手を突っ込み、クレマンティーヌに体の前面を向けたまま微動だにしない。高速化する視界の中、クレマンティーヌは疑問を覚えた。十三から殺気を感じない。ならば、どうするか。

 決まっている。戦う気が有ろうと無かろうと、この手の中の武器を敵に叩き込む。それが、自分が最も誇れ、それしか出来ないことなのだから。

 クレマンティーヌの殺気を受けながら、十三はコートからゆっくりと手を抜き出し、その拳を握りしめる。戦闘の意思を物語るように、手の甲のシリンダーが回転、撃鉄が上がる。

 吐き出した煙をクレマンティーヌのスティレットが掻き乱し、一瞬遅れた剛風が煙を掻き消し、その切っ先は十三の左胸を貫く。それは呆気ない刺さり方だったが、油断も容赦もせず、スティレットに込められた〈 火球/ファイアーボール 〉を解放する。十三の胸の内部で火球が炸裂し、口から炎の残滓が漏れ出したのを確認し、それでも油断せず、武技〈 流水加速 〉で自身の行動を高速化した上でもう一本のスティレットを引き抜き、全身全霊をかけて右胸にそれを突き立てた。こちらも呆気なく突き刺さり、即座に解放された〈 雷撃/ライトニング 〉が十三の全身を駆け巡り、肉を焼く臭いが辺りに立ち込めた。

 三日月の笑みを強くし、クレマンティーヌが勝利を確信した瞬間、その頭部を強い力が掴みあげる。ぎょっとしたクレマンティーヌが即座に離れようとするが、その頭を掴んだ手は、そこから彼女が動くのを許さなかった。

 

「……終わりだな?なら、今度はこっちの番だ」

「なん、で!死んでない!!」

「そりゃぁ、あれだ。人類の守護者が弱いからだろ」

 

 先程までと変わらない、どこか飄々とした台詞にうすら寒いものをクレマンティーヌが感じた瞬間、爆風が、彼女の意識を血霧に変えたのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 悪い夢を見ていたような気分で、クレマンティーヌは目を開ける。視界に飛び込んでくるのは見知らぬ天井、嗅覚には、少し前まで嗅いでいた煙草の香りが飛び込んできて、意識をはっきりとさせた。

 

「知らない天井だ」

「お前が言うのかよ」

 

 笑いを含んだ声は、先程まで殺しあいをしていた男の物。多少痛む頭を横に向けると、妙な頭をした男が、煙草を指に挟み、椅子に座って足を組んでいるのが目に入った。その傍らの古い丸テーブルの上では、陶器製のカップから湯気が立ち上り、芳醇なコーヒーの香りが、煙草の香りに紛れてクレマンティーヌの鼻孔を擽る。

 

「ようやくお目覚めか。コーヒーが冷めちまう所だったぜ」

 

 そう言いながら、十三は傍らのマグカップに口をつける。その様子を、クレマンティーヌは不思議な気分で見ていた。

 

「こう言うときは、酒じゃないの?」

「酒と女は男を狂わせる。俺にゃこいつとこいつがあれば十分だ。まぁ、酒は祝いの時には飲むがね」

 

 煙草とマグカップを軽く掲げながら、どこか冗談でも言うようにそう言って肩を竦めた。

 

「へ~、じゃぁ、今は祝いの席じゃないって事ぉ?」

「ああ、別に祝うようなことも無いだろ」

「私を殺さず無力化して捕まえたのに、よく言うね」

「殺さず?無力化?そう言う認識か、なるほどな」

 

 音を立てて珈琲を啜りながら十三の言った言葉に、何故か悪寒を感じたクレマンティーヌが何かを言うよりも早く、十三が言葉を紡いで行く。

 

「俺とお前が戦って一晩経っている。まぁ、一度死んだのなら、その程度の時間で起きたのは、やはりレベルが高いからか。漆黒の剣とか言う奴等は、どうも起きてないようなのにな」

「もう起きてるさ十三。適当なことを、言うもんじゃないよ」

 

 頭上からの声に、クレマンティーヌは慌ててそちらへと顔を向ける。その鼻先を、生暖かいものが這い上がっていき、背筋におぞけが走る。

 

「なんだ、お前が蘇生したあいつら、もう起きてるのか」

「まぁねぇ」

「お、お前、何者だ?」

 

 一切気配を感じなかった。人類の守護者、漆黒聖典第九席次がだ。そんな奴がいるのか、そんな気分で一杯だった。だが、相手は気にすることなくクレマンティーヌの顔を覗き込んでくる。

 

「私ぃ?あなたを、蘇生したダークエルフ。シャイア·ブラックソーン、よろしくねぇ」

「で?こいつの扱いをどうするつもりだ、シャイア」

「あー、うん、そうね。そっちを先に話しておこうかねぇ」

 

 意地の悪い笑顔を浮かべて、シャイアがクレマンティーヌを見た。

 心底、嫌な予感しかしなかった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 アインズが泊まっていると言う冒険者の店へ、十三はやって来ていた。あまり馴れ合うつもりはないが、敵対する意思もない事を、一応伝えておいた方がいいかと判断しての行動だ。正直、アインズ·ウール·ゴウンと敵対するなど考えたくもない事態だ。故に、一応顔見せしておいて、なんかあったら協力はすると言った感じに話が持っていければそれでよし、そうでなければ、敵対する意思そのものが無いと言う話だけでも出来ればいいと思った次第だった。

 

「まぁ、俺が協力するような事態なんざ、有り得ねぇだろうがな」

 

 店の前でそう呟き、十三が扉を潜る。薄暗い店内には、十人ほどの冒険者が、酒を飲みながら語り合っていたが、十三の姿を見た瞬間、一斉に静まり返った。広い室内を頭を巡らせて確認した後、そのまま真っ直ぐカウンターへ向かう。屈強な体躯を誇る店の親父が目を丸くしているが、十三は気にせず口を開いた。

 

「モモンて奴はいるか?いるなら取り次いで貰いてぇんだが?」

「……あいつの客か。なら、二階にいるぜ」

「そうか、邪魔したな」

 

 そう言って十三は階段の方へ足を向けたが、ふと、背中に刺さる視線が気になって、そちらへと目を向けると、複数の冒険者らしき酔っぱらいがこちらを見ていた。まぁ、悪意は感じない為、一応無視することにして、十三は階段の上へと姿を消した。それに同調するように、酔っぱらい冒険者が顔を引き締め、頷きあうと店から出ていくのであった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「事務所を開く?ですか?」

 

 シャイアの言葉に、ニニャ及び漆黒の剣一同が目を丸くしながらそう言った。その言葉に大きくシャイアは頷き、一同を顔を見回した。

 

「ああ、そうだよ。とは言っても、最初は小さな商店から始めようかねぇ?」

「ええと、質問いいっすかね?」

 

 軽薄そうな金髪の男、ルクルットが、手をあげる。

 

「ええ、いいわよ、ええと……クルクルット?」

「ルクルットです……いや、そうじゃなくてよ!いきなり呼び出されたと思ったら、何の話してんだよ!てぇか、あんた誰だおばさん……!?」

 

 言葉を言い終えると同時に、ルクルットの喉元には大振りな漆黒のカランビットナイフが突き付けられていた。息を飲む漆黒の剣一同の前で、シャイアが人好きのする笑顔を浮かべていた。

 

「おばさんはやめてね?次、そんなこと言ったら、お姉さん、悲しくてあなたの喉笛、かっ切っちゃうかもしれないわ」

 

 魔法のようにカランビットナイフが掻き消えると、シャイアが今度は腕組みをし、一同をグルリと見た。

 

「しょうがないから、一応説明しておこうかねぇ。ニニャちゃんが私と契約した。契約内容は簡単。殺されたあんたらを私が復活させる代わりに、あんたらは私の仕事を手伝ってもらう。無論、冒険者としての仕事を優先させても構わない。私が必要としているのは様々な情報だ。だから、その情報をあんたちに集めてもらいたい。契約内容はこんなところだねぇ」

「俺たちが、殺された……?いや、確かに、あの女に殺された、のか?」

 

 漆黒の剣リーダー、ペテルが困惑しながらも何かを思い出すようにそう絞り出す。

 

「少し待つのである!よしんば我々が殺されたと仮定するのであれば、いったいお主はどうやって我々を蘇生したのであるか!?」

 

 髭面のがっしりした体格の男、ダインがそう声を張り上げた。

 それに対する返答は、実に面倒くさげであった。

 

「どうやって、ねぇ?ニニャちゃんに聞けばいいんじゃない?」

「ニニャ?」

 

 ペテル、ルクルット、ダインが、先程から一切発言をしていないニニャに向けられる。

 ニニャは、俯いたまま拳を握りしめ、どうしたものかと視線をさ迷わせた。

 

「それは……その、シャイアさんは、独力で皆を蘇生させたんだ。たぶん、超級のマジックアイテムを使って」

「!?」

 

 ニニャの言葉に全員が息を飲んだ。

 

「僕は、殺される前に救われたんだ。シャイアさんが言うには、ジューゾーって言う人が僕を助けてくれたみたい。そして、皆の死体の前で泣いていた僕に、シャイアさんが声をかけてきた」

「そう。優しい優しい私が、泣いている可哀想な子の為に、力を貸してあげたんだよ。代価は、私の仕事に協力すること。簡単でしょ?」

 

 事も無げに言い放つシャイアに、漆黒の剣の一同は、感謝よりもむしろ気持ちの悪さを感じていた。どこか、人間からずれたような言い知れない気持ちの悪さ。どこか隔絶した人間性のような物が、一行を不快にさせていた。

 

「まぁ、そう言うわけで、私の仕事の手伝いをしてもらいたい。報酬は、君達の蘇生費用の全額免除。さぁ、いかがする?」

 

 答えは決まっていた。漆黒の剣の面々は……。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 アインズの泊まっている宿から出てきた十三は、煙と一緒にため息をこぼす。結局、アインズとは面会できなかった。なんでも、緊急の用事が出来てナザリックへ戻ったと、あの、ナーベとか言う女に言われたのだった。いや、本当はもっとひどい罵詈雑言だったが、大人の対応で気にしないことにした。

 そうして視線をあげると、そこにクレマンティーヌが立って、とある人物と睨みあっていた。ガガーランである。

 

「ガガーラン、なにかあったのか?」

「おっ!ジューゾーいい所に来てくれたなぁ」

「ジューゾー、なにこいつ?筋肉ゴリラ?つぅーかさー、ぶっ殺しちゃっていい?」

「良くねぇよ。俺の前で余計な殺しをするんじゃねぇ」

「余計じゃなけりゃいいのかよ」

「命の危険にさらされた場合は、好きに殺しゃいい」

 

 煙草を指で揉み消し、十三はガガーランの方へ向き直った。

 

「で?その様子だと、俺に何か用事じゃないのか?」

「おっと、そうだった」

 

 思い出したようにガガーランはそう言って、耳に顔を寄せてきた。いや、どこが耳かと問われても答えることは出来ないんだが。

 

「ラナー王女が仕事を頼みたいんだと」

 

 どうやら、面倒事が舞い込んできたらしい。

 新しい煙草を取りだし、煙を胸一杯に吸い込んだ後、十三は深くため息をついた。

 

 

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