OVER LORD Gun Fist & Gun Head   作:丸藤ケモニング

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帝国編、入りまーす。
捏造多目でお送りいたします。




14,ナールの冒険①帝国、ワーカー加入

 バハルス帝国、帝都アーウィンタールにある闘技場。市民のガス抜きの場であり、また鮮血帝ジルクニフ·ルーン·ファーロード·エル=ニクスが、優秀な人材を確保するためにも使われている場所であったが、現在、闘技場は異様すぎるほどの熱気に包まれていた。

 

 闘技場の中央、白のドレスが舞っていた。

 ここに集う庶民が最初に思ったのは場違い、次に思ったのは異常、最後に思ったのは強い。その少女は強すぎた。

 身長は十人並み、見た目なら18程度の並外れた美しさを持つ、全身を白に染めた美女が、この闘技場でも負け知らずの剣士と互角にやりあっている。いや、互していると言うより、むしろ押しているのでは無いか?そんな言葉まで出る始末であった。

 白魚のようなそのホッソリとした手が握る武器は、彼女の身長を上回る巨大な戦斧。その刃は馬の胴回りを遥かに凌ぐほど広く、厚みも並みの剣などを歯牙にもかけぬほど分厚い。そんな凶悪な代物を、時に手首、時にその細い腰、時に肩口を中心に回転させ振るう様は、舞を思わせた。

 その猛攻を、武技と自身の技量をもって凌ぎながら、エルヤー·ウズルスは歯噛みする。最初は凄まじい使い手が現れた。こいつを倒せば自身が更なる高みへと至れるだろう、そう思っていた。しかし、彼女の揺れる銀の髪からはみ出していた尖った耳を見た瞬間、そのような思いはすべて吹き飛んだ。エルフごときが私に楯突くとは!そんな思いから発動できる武技をすべて発動させ、今現在に至る。

 手首を中心とした回転を伴って振り下ろされた場違いなほど巨大な刃を紙一重で回避した瞬間、今度は横に滑るように移動して、間髪置かず振り上げられる刃を回避し間合いを詰める。自慢の武技〈 縮地改 〉。前後左右、どこにでも移動でき、さらに体勢を崩すことなく間合いを詰められる利便性の高い武技だ。

 一足で間合いを詰め、その手に握る刀を振るった。その速度、鋭さはまさに一流の剣士のものだ。確実にとった、そう思ったのも束の間、刃と少女の体の間に、いつの間に現れたのか奇怪な文字の刻まれた斧の柄が割り込み、カン高い金属音を響かせた。

 

「……」

 

少女は無表情のまま刀を弾きあげると、その柄をはねあげエルヤーの鳩尾を強打する。尋常ならざる怪力による一撃でエルヤーは弾き飛ばされる。しかし、地面を転がりながらも素早く立ち上がり刀を構え直す。冗談じゃないほどの怪力。恐らく魔法の品で強化されているはず。認識を改め純白の少女に剣呑な目線を送ると、少女はそれに答えるように小さくため息をついた。

 怒りで視界が赤に染まる。

 

「貴様!なんだその態度は!?」

「……?」

 

 急に怒鳴られた意味が分からないとでも言いたげに、少女が首をかしげた。完全に馬鹿にされている。そう理解したエルヤーは切り札を切る。〈 能力超向上 〉。本来ならもっと上のランクにならねば使えないその武技を使える彼は、まさに天才と呼んでも差し支えないだろう。

 自身の体にみなぎる力を確認するように、エルヤーが刀を振るう。その速度は、先程とは比べ物にならないだろう。ニヤリと笑ったエルヤーは、刀を正眼に構え直すと口を開く。

 

「大した実力ですね、エルフのお嬢さん?」

「……」

「答えませんか……まぁ、いいでしょう。あなたの手足を切り落とし、凌辱の限りを尽くして良い声を響かせていただきますので」

「……?」

 

 首をかしげる少女に向かって、エルヤーは武技を使用して切りかかろうとした。だが眼前で展開された光景に、思わず目を疑って動きを止めた。

 白い少女の回りには、光球が六つほど浮かんでいた。第一位階魔法〈 魔法の矢/マジックアロー 〉。

 驚愕に彩られたエルヤーに向かって、白魚のような指が突きつけられると、解き放たれた〈 魔法の矢/マジックアロー 〉が猟犬のごとく襲いかかった。その光球を凪ぎ払うエルヤーの前で、ぞくぞくと光球が生み出され射出されて行く。その全てを切り払う事が出来ず、エルヤーの顔が苦悶に歪む。

 

「……ぶじょくされたことはわかりました。ころします」

 

 短い綺麗な声がエルヤーの耳に届く。なぜか思った以上に近い。

 目の前に巨大な斧の刃があった。そう認識すると同時、斧の刃は正確にエルヤーの両目の上を駆け抜け、回転する刃は右腕の肩口に侵入、右腕を切り落とし、回転方向を変えながら両足を膝から切断、翻った石突きが、先程までの倍を有する力で鳩尾を深く抉り、数メートルほどエルヤーを吹き飛ばした。

 

「……」

 

 表情を変えることなく、少女はもはやピクリともしなくなったエルヤーに向かって、ドレスのスカートの裾をつまみ、軽く礼をした。

 静まり返った闘技場内が、爆発するような歓声に包まれる中、少女は始まったときと変わらぬ姿で闘技場を後にするのだった。

 

 ファイトマネーを抱えたナールは、シルキーと共に大通りを歩いていた。少々気になるのは、道行く人何割かが、シルキーを見て道を空けることか。当のシルキーは特になにも感じていないのか、いつも通りの無表情だったが、ナールはちょっと居心地が悪かった。

 

(なんだ、あいつ。みたいな目で見るの、やめてもらえないかなぁ。一応この子のご主人なんだけどな、僕)

 

 実は、一部のそう言う特殊な趣味のお兄さんにも見られているのは気づいていないナールである。

 

 さて、当初、ナールとシルキーは冒険者として活躍して情報を収集する予定だったが、帝国では冒険者の地位が低いとティナから説明を受けて、予定を変更しワーカーとやらになる予定であった。が、しかし一つ問題があった。要は、知名度やそういった関係のものが足りないため、ワーカーを名乗っても依頼なんて来ることはなかった。他のワーカーチームに入れてもらうことも考えたが、実力の分からないものをいれるほどワーカーは寛容ではなかった。

 

(考えてみれば当然なんだよね。僕と十三だって、いきなり現れて仲間にしてくれとか言ってきたら警戒してたし、当然と言えば当然なんだよねぇ)

 

 そんなゲーム時代の事を思い出しながら、ナールは目的の店へと入っていく。〈 歌う林檎亭 〉と看板には書かれていた。なんでもワーカー御用達の宿屋らしく、外見や内装的には高級宿には及ばないが、ナール的にはチョベリグな店であったし、特に多くのワーカーが集っていると言うのは見逃せない話である。実際、何組かのワーカーと接触はできている。一つは〈 ARROW 〉と言う緑色のフードにアイマスクを身に付けた背の高い男が率いるチーム。チーム名の通りに弓使いのその男が率いるチームで、比較的友好的に接してくれた上にワーカーの常識各種を教えてくれた。仲間の剣士も気安く色々教えてくれたが、紅一点の美女からの反応が宜しくなかった。と、言うか口も聞いてくれてない。あの二人がいなかったら、あの美女はやっていけないんじゃない?ついついそんなことを思ってしまった。

 もう一つのチームは〈 フォーサイト 〉と言うチームだった。先程の〈 ARROW 〉と比べると、幾分レベル的に劣る印象だったが、他のワーカーチームに比べると取っつきやすそうな雰囲気のチームだった。三人しかいなかったのだが、どうももう一人いるらしいと言う話は聞いているが、どんなチームメイトなのだろうか。

 とにかく、この2チームのどっちかがいれば、仲間に加えてもらおうと言うのが目的である。この何日かで分かったことだが、この世界の常識が分からなすぎると言うのが、情報収集に際してどれだけネックになるのか想像に難くない。ついでに言えば、冒険者で一々ランクをあげていくのがすごく面倒臭いと言うのも理由の一つではあった。

 店の中に入ると、如何にもと言うような荒くれ者共が一斉にこちらをじろりと見てきた。本来の自分なら震え上がったかもしれないが、今の自分には威圧感もなにも感じない。突き刺さる視線をすべて無視して店の中を見回すと、一番奥のテーブルで手を振っている人物がいた。〈 フォーサイト 〉のヘッケラン·ターマイトと言う人物だった。なぜかとてつもなく機嫌が良さそうだったので、警戒せずに近づいて行く。

 

「お久しぶりです、ヘッケランさん」

「おお~、ナール、久しぶりだなぁ。まぁ、こっちに座れよ」

 

 機嫌良く勧められた椅子に座り、その後ろにシルキーが立つ。 

 

「お久しぶりと言っても、三日前ですけどね、挨拶を交わしたのは」

「まぁなぁ。あ、そうそう、シルキーちゃんの試合、見せてもらったぜ。すげぇなぁ、あの戦い。いったいどこの英雄級だって言う強さじゃねぇか」

「……?」

「そうなんですか?あはは。えーと、それでですねぇ、ヘッケランさん」

「おう、どうした?」

「前に言った、チームに入れて欲しいって言うお願いなんですけど」

「ああ、あれな!分かってる分かってる……って言いたいところだけど、ちょっと待ってくれるか?チームメイトが来てから話をするからよ」

「ああ、なるほど。分かりました。では、一緒に待っててもいいですか?」

 

 ああ、いいよ。軽く答えてもらえたので、取りあえず色々注文することにする。

 運ばれてきた簡単な焼き物系の料理を食べながら、ヘッケランと話をしていると、何人目かの客がフォーサイトのチームメイトだった。

 一人はピッチリとした皮の鎧。どうもエルフの血を引いているらしく、全体的にホッソリとした印象で、特にかわいそうなのが胸と尻。なんと言うか、全体的に肉が足りてない印象をナールは受けた。顔は、ホッソリとしてなかなかの美人なのだが少々目付きが悪すぎるのが珠に傷と言ったところか。

 もう一人は、がっしりとした体を全身鎧を纏った、柔らかい印象の顔立ちの男だった。サーコートにはどっかの聖印だろうか、そんなものが刺繍されていた。年のころは三十代と言ったところ。物腰も柔らかいものを感じる。

 

「あら?あんたまた来たの?」

「ええ、今度こそ仲間に入れてもらおうと思いまして」

 

 辛辣に言われたが、あくまで微笑んで返す。

 

「いいところのお坊っちゃんがやるような仕事じゃないよ、とっとと家に帰ったら?」

「別にいいところお坊っちゃんじゃないですよ?」

「そんな豪華な服を着ておいて、それはないんじゃないかしらね?」

「イミーナ、あんまり突っかかるんじゃない」

 

 ヘッケランが、イミーナを嗜めるのをナールは手で制した。

 

「まぁ、確かにこの服装は貴族か何かに見えるかもしれませんが、これは仲間が僕に作ってくれたものです。それと、外見であまり相手を評価しない方がよろしいですよ?」

「……まぁ、そうだね。悪かったよ、試すようなことを言って」

「いえいえ、気を使って思い直させようとしているのが分かっていたので、問題ありませんよ?」

 

 にこりと笑ってそう返すと、イミーナは少し鼻白んだ後、愉快そうに笑った。

 

「それで、どうしてワーカーになりたいと思ってるんですか?あ、いえいえ、詮索とかではなく、純粋な好奇心ですので、答えたくなければ答えなくても結構ですよ?そうそう、申し遅れました。私、ロバーデイクと申します」

 

 外見の割りに腰の低い対応に、ナールも頭を下げつつ、

 

「ナールと申します。ワーカーになりたい理由は、故郷で冒険者のような事をやっていたのですが、こちらに流れてくると、なぜかランクを上げなければ難しい仕事を引き受けられないと言われましたから、ならば腕一本で成り上がれるワーカーの方がいいかな?そう思いまして」

「ふむ、なるほどなるほど」

 

 ナールの答えに数度頷いた後、ロバーデイクはヘッケランの方へと顔を向けた。

 

「それで、どうしますかヘッケラン?」

「俺はチームに入れるのは吝かじゃない。実際、その後ろに立ってる“純白の戦姫”の強さは尋常じゃなかったし」

「”純白の戦姫“?何よそのあだ名」

「今日、彼女の試合があったんだがな、あのエルヤー相手に圧勝だったぜ」

 

 その言葉に、イミーナやロバーデイクのみならず、回りのワーカー連中も息を飲んだのがはっきりと分かった。

 

「マジ?」

「おう、マジだぜ。だから、まぁ、二人を入れるのは、俺に異論はない。ナールはいい奴っぽいしな」

「私も問題ありませんね。人格的にはなんの問題もないかと。ああ、ところでナールさん?」

「ナールと呼び捨てにしてもらっても構いませんよ?」

「それでは、ナール君、君はどのような事が出来るのでしょうか?よろしければお聞かせ願えませんか?」

「ええと、第三位階の魔力系魔法と信仰系魔法を使えますね」

 

 今度は三人が、軽く感嘆の吐息を漏らした。

 

「そりゃぁ凄いな。ウチのアルシェを越えたか?」

「いや、どっこいどっこいですが、神聖系も使えるとなると、上かもしれませんね」

「アルシェさん、ですか?」

「ああ、ウチのメンバーの一人だな、と、来たようだな」

 

 そう言ったヘッケランが向いている方を見てみると、十代中盤から後半、艶やかな髪を肩口でざっくりと切った人形のような気品のある顔立ちの少女が目に入った。その雰囲気は、なんと言うか、暗い、の一言だった。

 

(結構な美少女みたいなのに、もったいない)

 

「おー、どうしたアルシェ」

 

ヘッケランが声をかけると、ようやく顔をあげてヘッケランを見た。

 

「ううん、なんでもないヘッケラン。ちょっと欲しいものが手に入らなかっただけだから」

「……本当に大丈夫なのアルシェ?具合が悪いとかじゃなくて?」

「大丈夫イミーナ」

「そう、ならいいわ」

「そうそうアルシェ。今日は新しいメンバーを入れようと思うんだ」

「へぇ、誰?」

 

 そう聞かれて、ヘッケランはニヤリと笑って、その体で隠していた人物をアルシェに見せた。ビクリ、とアルシェの体が揺れたような気がする。

 

「あ、どうも、はじめましてナー……」

「ーーおげええぇぇ!」

 

 挨拶の途中で吐かれた。

 なんだか切ない気持ちで一杯になるナールであった。

 

                                          続く

 





アルシェと言えばゲロ。ゲロと言えばアルシェ。
ナール編のゲロインになっております。
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