OVER LORD Gun Fist & Gun Head 作:丸藤ケモニング
多少のご都合主義が含まれます、ご注意ください。
あ?なんでこんな頭をしてるかって?んなもん決まってるだろうが、かっこいいからだ。
なんで笑った、ぶっとばすぞ。
ああ、そうだな、こいつから弾丸が出れば、それこそかっこよかったんだがなぁ。
おいおい、マジか!?マジでこいつから弾丸が出るようにしてくれるのか!?
ああ?何言ってんだ?ちゃんと協力してやるっつぅの。
なんだその目は。安心しろ、マジで協力してやるからよ。
俺は約束を破るつもりはない。ゲームでもリアルでもだ。だから安心しろ。最後まで協力してやるよ。
……ああ、だから俺は底辺の社畜なんだろ、悪かったな。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……おかしいな、ログアウトしない。いや、サーバーが全て停止するってことは、唐突にこの視界が暗転してリアルに引き戻されるって事なのか。いや、しかし、と目を開いてみると、先ほどまでのゲームの中の楽しい我が家が広がっている。俺の机を囲むようにシャイアとナールがいて、二人とも目をぱちくりさせ……目を?瞬きをしてる?んっ、んー、ちょっと待て、なんかすげぇ違和感があるんだが?それになんだこの口の中に残る芳醇なアルコールと上品な甘味は。
「あ、あれ?ゲームが終わらないね」
「糞運営が気を聞かせて時間延長した、とか?」
二人が疑問を口にする中、俺は一人思案に更ける。例えばだ、シャイアが口にしたように、糞運営が時間延長をしたとしよう。それのどこにメリットがあるかって事だ。結論は、メリットなんざ欠片もないってこった。糞運営は、言ってしまえば会社の末端であり、そこが独断でサーバーの停止を行うことはまずあり得ない。企業側に立ってみよう。サーバーを動かすには金がいる。今時の企業が無駄に金のかかることをするかと聞かれれば、それにはNOと答えるだろう。つまり、これは時間の延長ではないって事になる。さて、次にだが、あいつらは試してないが、先ほどからコンソールを開こうとしても開けないと言う異常事態が発生している。そのうち気づくと思うからとりあえずなにも言わずに検証を続ける。
GMコールも使えないってのは、また酷い異常事態だな。煙草を取りだし火を点ける。
……さっきから何かがおかしいと違和感を感じていたが、そう言うことか。味がある、臭いを感じる。しかし、旨いなこの煙草。所謂煙草特有の煙臭さが少ない。むしろ、どこかフルーツのような香りすらする。なのにこのどこにも引っ掛からないような味、尖ったところがない、むしろ丸い味わいだ。素晴らしい。普段吸っている煙草は煙草ではない、あれは煙の出る草だな。……そうじゃないだろう。煙草で現実逃避してどうする。
もう一口吸い込んで、吐き出す。そうやって気付いた。なるほど、顎が動いている。原作再現をめざした結果、俺の口は人間のそれとはかけ離れた物になってる。一番近いのは……虎挟みか。まぁ、とにかく人間のそれとは大きく異なっているのに違和感無く受け入れていた自分がいる。いや、今ですらこの体に違和感を覚えないでいる。長年ゲームで使ってきた体だから、と言うわけでもなさそうだなぁ。そう思いつつ二人を見ると、今度はコンソールが開かないとかGMコールがきかないとか喚いてやがる。いや、喚きたい気持ちは分かるが、そこはちょっと落ち着けよ。
「お前らもコンソールが使えなかったりGMコールが使えなかったりしたか?」
確認のために一応声をかけると、二人とも、音がしそうな勢いで振り向き、とんでもない形相で目を見開いてこっちを睨み付けた。怖ぇなおい。しかし、これでもう一つ検証が出来た。それは、と思った瞬間、シャイアがこっちを睨みながら胸ぐらを掴み上げた。至近距離で睨み会う俺とシャイア。
「なんだ?いきなり胸ぐらを掴みあげるたぁ、穏やかじゃねぇな」
「うるさい、さっきから静かだと思ったら、何が分かったって言うの?分かってるなら情報を共有しなさい、つぅか共有しろ!あたしら閉じ込められたようなもんだよ?なに冷静に座ってんのさ!」
「涙声で凄まれても怖くねぇし、んな事よりちょいと離れろ」
「ああっ?」
お前、言われた通りに離れながら凄んでくるって、どんな生物だよ。ああ、女狐シャイアだったな。どんな手段を使ってでも、頼まれた品物を確実に揃えるっつぅ、あのゲームの中じゃ、ある意味一番の怪物だ。
俺がインベントリから取り出したのは一個の手鏡だ。取り出して二人に突きつける。
「?……何よ、これ」
「僕もちょっと分からないんだけど、十三」
手鏡に写ってる自分達を見ながら、二人は困惑した顔をしていたが、ナールがすぐそれに気がついたらしく、自分の顔をつねったり捻ったり笑ってみたり睨み付けたりする。シャイアも、それを不思議そうに見ていたが、即座に理解する。
「え?ええ?なんで、表情が……」
「ユグドラシル2のサービスが開始した、とかじゃ無いですよね?十三はどう思います?」
そこで俺に振るか。ふぅむ……。
「……現時点じゃ何とも言えねぇが、少なくともユグドラシル2の線は薄いと俺は思ってる」
「根拠は?」
「勘、と言いたいところだが、この現状どれだけの電脳法に違反してると?」
その問いに二人が暫し逡巡し、ナールが手をあげる。いや、あげなくていいぜ?
「まず、ログアウトできないから、拉致監禁?それから味覚嗅覚があるっぽいからやっぱり法に抵触する?」
「数は数えなくていいぜ。とにかく、法に触れてまでそれを実行する必要はねぇってこった。つまり、ゲームが続いたなんて事はほぼありえねぇ」
ともかく。俺はそういって椅子から立ち上がり、コートを羽織り直す。
「今、決定的に足りないのは情報だ。どんなことになってるのか、何が起きてるのかを調べるぞ」
「けど、どうやって調べるのさ?」
「お前、何を馬鹿なことを言ってんだよ」
「どういう意味よ?」
「情報を集めるのは自分の足だ。だが、今外に出るのは危ないかもしれねぇ。つまり、家の中でなにか異変が起きてないか調べる。外に出るのはそれからだな」
さて、ここまで説明して俺達は早速それぞれの場所を探索することにした。俺は俺の部屋、つまりここ。シャイアはこの部屋の隣にある道具置き場とその隣の、あいつに貸す予定の部屋、ナールは一階のリビングダイニングと言った具合に別れて調査を開始する。まぁ、しかし、自分的には他にも色々確かめたいことがある。例えば、俺はさっきから冷静に物事に対処しているが、俺はそこまで冷静じゃないはずだ。しかし冷静に対処できているのには訳がある。法則としてはこうだ。ある程度精神の揺れ幅がでかくなると、俺の精神は何らかの要因により無理矢理安定化させられる。強制精神安定化機構とでも言うか。俺の体にゃ、そんなもんがつまれているのか?
さて、十分ほど異常がないか探しては見たものの、特に目新しいものは見つからなかったな。しかし、探索中に分かった事がある。俺がユグドラシルにて保持していた技能が使用可能であると言うことだ。これはでかい。とは言え、スキルが使えると言うことは、やはりユグドラシル2なのか?要検証事案も一つにあげておこう。しかし、RPの一貫でとっておいた〈 ディレッタント 〉が役に立つ。ちなみに、このクラスはユグドラシルではかなり微妙と言われていた。大体において、このクラスが出来ることは大抵他のクラス、特に盗賊系が似たような事をもっとうまく出来るためであり、雰囲気付けのためのクラスと呼ばれていた。とは言え、役に立つスキルも比較的多かったため、俺は率先してあげていた。恐らくではあるが、さっきから俺がやたら推論を立てて論理立て(屁理屈とも言うな)ができているのは、恐らく〈 灰色の脳細胞 〉や〈 シャーロック·ホームズ 〉と言うスキルのお陰だと思う。ちなみに、双方ともパッシブではほんのちょっと魔法防御を増やし、アクティブでは怪しい場所を探し出すと言うスキルだったんだが、まさか俺の頭脳にまで効果を及ぼすとは。こうなるとあれだな、精神安定化も種族スキルのお陰と見るべきか。しかしまぁ……。
「怪しいところがなけりゃぁ、スキルでも調べられねぇか。そりゃそうだな」
煙草に火をつけ一息吸い込み、味わいを堪能しながら吐き出す。窓の外を見れば、中々どうして、月明かりに照らされた岩山なんかが綺麗じゃない……岩山?……ちょっとまておい。あ、ふぅ。
「やべぇな、これ」
精神安定が働いても落ち着かない嫌な予感。俺の頭が勝手に様々な条件を提出し、即座に却下して行く。ああ、このスキル、便利だ。しかし、色々な条件をクリアーするなら、もしかしたらこれが一番現実的か?いや、現実的じゃない答えが一番現実的だっつぅのは笑えない冗談だ。
「おーい、こっちにはなんにもなかったよ、って、どうした十三」
「ん?ああ、シャイアか。ちょっと嫌な予感がしてな。とにかく、何もなかったんだな?」
「まぁね。しかし、月が綺麗だねぇ。現実じゃ拝めない月だ。ゲームやっててよかったと思う瞬間だね」
「……ああ、そうだな」
ゲームなら、良かったのにな。
一階のリビングに降りると、ナールの笑い声が聞こえた。つっても、話し相手がいるわけがない。俺たち二人は今、二階から降りてきたばかりだ。二人で顔を見合わせ、ゆっくりとした動きでリビングを覗き込む。シャイアは、俺の陰に隠れるようにして中を覗き込む。
なんだ?ナールとシルキーしかいないじゃねぇか。ナールはシルキーに向かってなんのかんのと話ながら時おり楽しそうに笑い声をあげてる。やべぇ、NPCに話しかけて楽しむとは、精神的にやられたか?もしくは何者かからの攻撃か?恐らくシャイアも同じ結論に至ったんだろう、悲痛な顔をしている。
「おい、ナール?大丈夫か?」
振り返ったナールは、すげぇいい笑顔だった。なんだ、何がこいつをここまで追い詰めた。
「十三、見てよこの子!」
体を横にずらし、ナールはシルキーを俺に見せた。うん、超美少女。首もとで切り揃えられた真っ白な髪に抜けるように白い肌、純白のゴスロリ系衣装を身に纏い、足元は白いアーミーブーツ。なんでアーミーブーツだ。真っ白いシルキーは、文字通り〈 絹の貴婦人 〉そのものである。早い話が妖精だな。種族は機械系だが、ね。
ふと、気がつく。いや、元々のこいつの造形は、微笑みを浮かべたような顔で造形されていたが、現在も微笑みを浮かべているが、なんと言うか、感情のようなものが感じられる。こちらを見てくる瞳も、何かを窺っているような、そんな気配を感じる。
「なんか用事か?」
わざと細かい部分を省いてシルキーに声をかけると、首を結構な速度でふって、俺の質問の答えとするシルキー。
なるほど、じゃぁ、さっきの仮説は大体正しいんじゃないか?
「なるほど……なるほどな」
「どうしたんですか十三」
「ああ、色々考えてたんだが、まず、俺らは恐らくユグドラシルのスキルを使用可能だ。つまり、これだけを考えるとゲームが続いていると考える」
ここまではいいか?そう二人ああ、いや、今は三人に尋ねれば、シルキー以外が首肯した。
「次に俺たちの表情が動いている。これに関しても、新たなゲームが始まって、それの仕様だと考えれば無理はない。だが、匂い味、触覚が正しく機能し、尚且つシルキーが自らの意思をもって動いていると言うのは、ゲームの仕様としては逸脱しすぎていると、俺は考察した。結論を言おうか。俺達は、現在異世界にいる。なぜかユグドラシルのアバターと能力を持ったままでな」
俺の結論に、二人は絶句して目を丸くした。まぁそりゃそうだろう、俺だってそう思う。だが、ゲームとしてはあり得ない仕様あり得ない法則が渦巻きすぎてんだぞ?この結論以外、そう出てくるわけないだろう。
「いや、いやいや、いくらなんでも話が飛躍しすぎじゃない?こう、なんかの実験とか?」
「その場合、同意無く実験をして監禁したって事になって、運営会社は一気に犯罪者集団になるわけだ。そんなリスクをおかす必要はないだろ」
「じゃぁ、例えばですよ、この世界が異世界だとして、なんでユグドラシルのスキルが使えるんですか?」
「それに答えられるだけの情報が出揃ってないから何とも言えないが、俺なりの考察でよければ聞かせ……ああ、いや、まだ不確定な段階で妙な考察を垂れ流すべきじゃねぇな。聞かなかったことにしてくれ」
「うう、納得いかないけど……んで、どうすんのさ、これから」
当然話はそうなるよな。だから、一応考えていることを話してやろう。
「とにかく情報が欲しいからな。この家からあまり離れず行動しよう。そうだな、まずは十キロ範囲を捜索。その後、とりあえず当たりをつけた方向へこの家をもって移動。そこから更にっつぅ感じで調べていくってのはどうだ?」
「知的生命体がいた場合は?」
「友好的なら話を聞く、敵対的ならとにかく逃げろ。今のところ危険をおかす必要はない」
「……んんー?色々穴がありそうだけど、しょうがないわね。じゃぁ、早速始める?」
シャイアの言葉に、俺は首を振った。無論、横にだ。
「いや、取り敢えず今日は休む。シルキー」
話にいまいち加われずにいたシルキーだったが、急に呼ばれてビクッとしたが、すぐに満面の笑みでこちらを見て、首を縦に振った。
「悪いんだが、飯の用意とかお願いできるか?」
今度こそ本当に嬉しそうに、何度も何度も首を縦にふって、シルキーは台所に消えていったのだった。
さて、それからしばらく時間が過ぎる。おおよそ、この異世界に来たと思われる時間から三日目だ。
正直、十キロ圏内ってのは、狭すぎたっつぅのが感想だな。一日目でほぼ探索を終えた俺達は、川を発見したナールの案内でその川の側へと家ごと移動した。あ?どうやって移動したかって?この家は、実は課金アイテムで、〈 どこでもマイホーム 〉なんて名前がついてる。使わないときは手のひらに収まるサイズまで縮小し、使うときは大きくなる、そんな、拠点持ちじゃない俺たちにしてみればありがたすぎるアイテムだ。
ついでに言うと、実は何人かの人間とも遭遇したが、俺の顔を見るなり逃げ出していった。最初は、なんでだよ!と憤っては見たが、残りの面子から「顔が怖い」(コクコク)「普通は悲鳴をあげる」(コクコク)「てか、なんでそれで怖がられないと思ったの?」(?)と言われ、なんか、もうそう言うもんかと諦めの境地に至った。しかし、人間と遭遇したって事は、この近くに村か町があると見て間違いないはずだ。そう思い、俺は現在に至る。
普段通り、四人で川の近くを歩いて山を下って行く。三日目にしてもはや余裕。ついでにシルキーが外に出ることが出来ると知ったときのナールが大喜びだった。まぁ、確かに家の中に置いていくよりも、こうやって外に出てる方が健康的だ。そういう意味で喜んでるんじゃないと思うがな。
とにかく、太陽が天の上に来たから全員で弁当を食べることにした。これはシルキーが作ってくれたもんで、正直絶品だ。本日のお弁当は、おにぎり、卵焼き、唐揚げ、なんかよく分からない野菜の炒め物、添え物にプチトマトと言った具合。うん、テレビで見た、古き良き日本のお弁当がそこにあった。
とは言え、周囲を警戒する人間がいる、と言うことで、本日は俺の日である。
森側に陣取り、おにぎりをモグモグ食べながら周囲を警戒する。とは言え、今日も今日とてなんかあるとは思わないが。
だからだろう。そんな甘いことを考えていたから、俺は直前まで気がつけなかったんだろうな。
唐突に、しかも思った以上に近いところから、鎧の擦れる音が聞こえてくる、やばい!そう声を出すよりも早く、近場の岩の陰から飛び出した人影が、俺に向かって何かを投げつけてきた。凝視すれば、それが苦無であることが判明、左腕を打ち払って全て叩き落とし、次の苦無が横から飛んでくるのを見ずに察知、体を反らして回避する。俺の鼻先を飛んでいった苦無を見送って、唐突な襲撃者に目線を向ける。女か?年は十代後半程、小柄だがよく鍛えられている。横を見ること無く見ると、同じような年頃で同じような格好をした女がそこには立っていた。両手に苦無を構え、油断無く俺を睨み付けている。
「やれやれ、何が目的だ?金ならねぇぞ?」
油断せず拳を握り、俺は冗談半分でそう言ってやった。そして忘れていた。鎧の擦れる音が近くまで来ていたのを。
背後で木の枝を踏み砕く音。残念ながら俺は背後を見ることができない。軽く飛びながら背後を振り向くと、目に飛び込んできたのは、夜の闇のような漆黒の大剣。降り下ろされるそれをすんでのところで白刃取りをすると、向こうが小さく舌打ちをした。
「なにもんだ、てめぇ……!」
白刃取りの状態から相手をうかがうと、そこには美女がいた。白皙の美貌、そう形容してもいいだろう美女だ。しかし、そこに弱さはない。雪のように白い鎧を纏う美女は、猛々しい息を吐いて、俺から離れる。そして、その大剣の切っ先を向け、こう宣言したのだった。
「私はアダマンタイト級冒険者『蒼の薔薇』ラキュース·アルベイン·デイル·アインドラ!!魔神よ、おとなしく魔界に帰れ!!!」
ついに登場、蒼の薔薇。花言葉は『奇跡』
次回もお楽しみに。