OVER LORD Gun Fist & Gun Head 作:丸藤ケモニング
……たぶん。
お前が注文してくるものってよ、なんか全般的に難易度高いよな。
いや、こいつを神器級にしたいって言ったのは俺だけどな。
切り札、ねぇ。いや、確かに切り札は必要だが。
いやいや、だからと言って課金しすぎじゃねぇかな、これに。
……ボーナスとか、この何年か見てねぇなぁ。いや、給料そのものも低いが。
年下に養われるほど切ないことなんぞないわ。
あー、エリートはいいねぇ。
……悪かった悪かった。俺が悪かったよ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
エ·ランテルと言う街は、なかなか守備に向いた構造をしているようだ。高く直下立つ壁は三重、堅牢に石を組み上げて作られている。恐らく、第三位階の魔法を直撃させても、外側の外壁が傷つくだけで他の二つには傷も入るまいと言うのは容易に想像できた。城塞都市の名は伊達じゃないって所だな。しかし、ここまで堅牢にする意味があるのか?その問いに答えてくれたのは、ポーションを買うついでについてきてくれたガガーランだった。
「ここは、バハルス帝国、スレイン法国との要所になる境界に位置してんだよ。まず戦争になった場合、ここを第一防衛ラインにする。元々守りに強い作りだからな、防衛にゃ持ってこいっつぅわけさ」
なるほどな。ふむ、そう言えばこの世界は平均して第二位階までの魔法が主流なんだったな。第三位階もまぁまぁいるが、それ以上はほぼいない。なら、こう言う物理的に阻む防御が主流になる、か。文化的な違いってのは、常にあいつがいってたっけか。エリートの考えることは分からんな。自嘲ぎみに鼻で笑いながら、俺は煙草を吸う。いつもの味で安心できるな。これでコーヒーでもありゃぁいいんだが。
しっかし、入領手続きってなぁ、随分とかかるんだな。さっきから周囲の視線が鬱陶しい。しかも、顔を向けると目をそらすしな。しかし、なんでこんなにかかるんだ?
「そりゃぁ、お前あれだよ。お前さんが怪しすぎるのさ」
「俺のどこが怪しいんだよ、ガガーラン」
「頭」
失礼なことを言われたような気もするが、言われてみればそうか。この世界に銃は無い。もしかしたらいるかもしれないが、自動人形もいないだろう。んで、俺のなりを頭のなかで考えりゃ、普通の感性を持つ人間なら、まず近寄ってくることもないだろう。まかり間違えば魔神と呼ばれるのも納得できる。……納得は出来ないが共感はできる、だな、この場合。
「ダークエルフと、あー、ティナ?の二人で大丈夫か?」
「ティアだからな?あいつは。大丈夫だろ、あれでも結構世渡りうまいぜ?」
ニンジャが世渡り下手だったら何すんだよ……暗殺か。
「しかし、なんでガガーランとティア?はついてきてくれたんだ?」
「まぁ、ポーションの補給ってのもあるが、お前たちがこっちの常識が薄いって聞いてな、サポートしてやろうかと思ったんだよ」
「そいつはありがいこった。それで、裏は?」
「まぁ、そうだなぁ。イビルアイが……ああ、あのうちのチビッ子が、お前さんが特に信用ならないから見張れってな。俺はんな事はねぇっつったんだけど、割りとラキュースもその方向で考えてたらしい」
「そうか、まぁ、妥当だな、こんな頭なんだからよ」
魔神かどうかっつぅ疑いをかけられてんだから監視の一人くらいつくよな、そりゃぁ。ついでにあれか、俺が言った魔神ならそれを使役する奴がいる云々でシャイアも疑いの的か、なるほどな、慎重な奴らだ。だが、黄金の姫は何を考えている?魔神ー実際は違うがー友人が疑っている魔神らしき得体の知れない奴を雇い入れ、手駒にする理由がどこにあるのやら。あの姫さんが一番臭いな。裏が見えないもしくは見せない人間ってのは、いまいち信用ならねぇぜ。
「……ああ、そういやガガーラン。俺の相棒、ナールとシルキーは帝国に行ったわけだが、誰か一緒についていってんのか?」
「お?ああ、あっちにはティナがついていってる。あくまで冒険者としてついていって、送り届けたら王都まで戻る予定になってるぜ?」
「そうか。問題ないな、あいつなら」
「ん?そうなのか?なんかやさい顔した童貞君だと思ってたが?」
「……童貞は放っておいてやれよ。まぁ、あいつはやり手さ。肝っ玉が違う。童貞だけどな」
ナールなら大丈夫だろ。あれで要領のいい奴だし、何より人に溶け込むのがうまいからな。うまく情報を入手すりゃ、こっちにも情報が入る予定だしな。
それから小一時間、俺たちは待たされて待たされた挙げ句に、ようやくこの外壁の内側へと入る事が許された。
確か、ガガーランとティアが言うには、外周部には軍事関係の施設や物資の集積所が集中しているらしく、見回せば確かに、武装した人間が、それほど緊張感なく歩いているのが目に止まる。緊張感がそれほどないってのは、ここまで帝国は攻めいってこないってことかね?それとも、ここに詰めている奴等の練度が極端に低いのか、あるいは両方か……。まぁ、なにか問題があれば美味しいところに食いついて報酬を頂くってことも出来るんだから、問題はない、か。
最内周部は都市の中央機能たる行政関係。兵糧を保管しておくための倉庫等が並び、厳重な警備が行われている区画らしい。基本、冒険者にはあまり関係の無いところであり、今回も俺たちが行くことはないだろう。行きたいとも思わないがな。
そして、その二つの区画の間にある区画こそ、市民のためのエリアである。おおむね俺たちが一番お世話になるこの区画、いわゆるファンタジーの町並みと言う奴を一番体現している所だと思った。レンガ造りの、派手さはないが堅固な作りの家々が並び、道はやや複雑と言える。これは、ここまで侵入された際の防御手段としては正しいかもしれないな。複数の、そこまで広くない道があり、大勢が通れる大通りには高い建物が立ち並ぶ、とは言っても二階程度だが。城塞都市らしく防御に優れた町並みと言えるだろう。舗装そのものは行き届いていないが、思った以上に衛生面は充実しているらしい。まぁ、生活魔法みたいな物があるらしいからそのお陰だろうが。
とりあえずと言う形で、俺達はあらゆる道が一回は集まる中央広場へとやって来る。なぜか、ガガーランとティアに先頭を立って歩くように言われながら。面白いように人混みが割れていく。お前ら、俺だっていっちょ前に傷つく心も持ってるんだがな……。
中央広場には何人もの露店商が店を開き、明らかに偽物の宝石のついたアクセサリーや調理済みの野菜や肉と言ったものが売られている。特に何の肉か知らないが、肉の串焼きは非常に旨そうだ。炭火で炙られた肉から出る油がじゅうじゅうと音をたて、焦げた油の香りとやや強めに効いた塩の香りが食欲をそそる。人混みが勝手に分かれるのをいいことに、その店に接近、活動費として王女からもらった資金の一部でそれを六本ほど購入し、全員に行き渡らせる。円満な人間関係は、こう言う小さな積み重ねからだ。
一口かじる。やや固い肉だが、噛めば噛むほどほとばしる肉汁にきつい塩とスパイスが絡まり、実に肉を食ってると言う感じがする。いや、本物の肉なんて食ったのは初めてだが。しかし、旨いな。聞けば羊の肉らしいが、臭みはほとんど無い。むしろ気にならないと言った方が正しいかもな。この少しだけ薫る獣臭さがないと、この串焼きは串焼きとして成立すまい。ビールが欲しい。この世界ならエールか。ワインでもいい。出来ることなら日本酒を。
「変頭、それが気に入ったのか」
珍しいことにティアがそう話しかけてきた。二本目を口に入れながら頷くと、「そう……」と言い残し、人混みに紛れてどっかへ行く、と思えばすぐに戻ってきた。その手には、各種串焼きが握られていた。
「なんだ?くれるのか?」
「違う。いや、それもあるけど、依頼代金だと思えばいい。私とシャイアはこれから宿を取ってにゃんにゃんするから、ついでにポーションを買ってきてくれるとありがたい。ついでに、余ったお金でガガーランとお外でご飯をするといい。別に遅く帰ってきてくれても全くいっこうに私は構わん!!だからね?」
あれか、お前は烈 海王か。まぁ、そう言うことなら別に構わないから、一応頷いた後、串焼きを受け取って、ティアと一緒にガガーラン&シャイアに合流すると、ティアとシャイアが先に宿を取って来る事になってると、ガガーランから説明を受けた。知ってる。一応シャイアに声をかけておこう。
「シャイア、何をしても別に構わねぇけどよ、やり過ぎるのだけは勘弁な」
俺の言葉に、シャイアは満面の笑みを浮かべて首を縦に振った。……大丈夫かよ。そう思いながら、鳥の串焼きを口に放り込む俺だった。
シャイア、ティア組に別れて中央広場から中央通りへと足を進める。なんでも、これから行くのはバレアレ薬剤店と言う名前、らしい。店主がこの街でもかなりの有名人らしく、その孫も色々な意味で有名らしい。
「その孫とやらは、なんで有名なんだ?」
「うん?そーだねぇ、若くして天才と言われるほどの薬剤師ってのもあるが、一番はそいつのタレントによるもんだだな」
聞きなれない単語が出たな?タレントとは何かと聞けば、ガガーランが目を丸くしていた。
「タレントを知らねぇのか?」
「お前は俺のなりを見てから言うといい」
「……そうか、そりゃそうだな」
納得された。
「タレントってぇのは生まれ持った資質、と言うか異能みたいなもんだな。それこそ千差万別、多種多様な能力があるんだ」
「お前もなんかあるのか?」
「いいや別に。タレントってのは二百人に一人位の割合でもって生まれてくるんだが、言っただろう、千差万別ってさ。例えば魔法の威力を増幅させる何てタレントを持って生まれてきたとしよう。だけど、だ。魔法を使えない人間がそれを持っててどうすんだって話だよ。事実、この国最強の戦士、戦士長ガゼフ·ストロノーフはタレントなんざ持っちゃいねぇからな」
「ふむ、つまりはあれか。よしんば持って生まれたとしても、それが生業にプラスになるとは限らない、と言うわけか……なるほどな。ちなみに、今初めて聞いたんだが、そのガゼフ某ってのは、お前たちよりも強いのか?」
「うーん、比較するのが難しいが、例えば一対一でやりあったんなら、うちのイビルアイでもなけりゃ勝てねぇな。ただ、俺らは基本的にチームで戦闘する。その上でなら、ガゼフよりも俺たちが上だな」
ふむ、つまるところ、そのガゼフとやらは、単体では最強クラスなのか。レベルはどれくらいなのやら。もし、よっぽどレベルが高いのなら、一度手合わせをお願いしてみたいもんだ。煙を吐き出しながら、俺は何の気なしにそう思った。
ガガーランとのんびり話をしながら歩いてると、件の薬剤店とやらについた。なるほど、薬剤店の名前の通りに結構立派な建物なんだが、凄まじい臭いが漏れ出していた。青臭いと言うより、漢方臭い?って言うのかこれ?種種様々な草の臭いが入り交じって煮詰められたようなえげつない臭いが漏れ出している。なかに入ったら鼻がひん曲がるんじゃねぇか、これ。
「ここがバレアレ薬剤店ねぇ」
「おお、そうだ。ここのポーションは薬効が高いらしいんでな、金級以上の冒険者御用達なんだと」
ふむ、効果の高いポーションか、確かにそれは欲しいな。そう思いながら木製のドアを開けてガガーランがなかに入るのに合わせて、俺もなかに入る。入れば、さっきまでの臭いの倍するほどの臭いが鼻孔に突き刺さり、思わず怯む。中は確かに何かを磨り潰すような道具やフラスコ、秤などが理路整然と並べられ、天井からは乾燥した名前もよく分からんような草が垂れ下がってる。カウンターの向こうの光景なんだが、なんかどっかで見たことあるような光景だな。○○のアトリエだっけか?
しかし、不思議なことに、店の中には誰もいなかった。
「なんだ?誰もいないのか?」
ガガーランがそう呟く。俺も、何の気もなく回りを見回すと、ふと気になることがあった。新しい煙草に火を点けカウンターを越える。ガガーランが止めるが無視して歩を進めると、裏口が空いている。そして、地下へと続く階段が奥にある扉が空いているのを見て、ガガーランに手招きをすると、ガガーランが首を傾げながらこっちに来た。
「どうした、ジューゾー」
「人がいないはずなのに、裏口と地下室への扉が空いている。悪いんだがガガーラン、二階の方を見てきてくれるか?物取りなら、二階でなんかやってるかもしれねぇ。そいつを取り押さえてくれ。俺は地下を調べる」
「大丈夫か?お前一人で?」
その問いに、俺は鼻で笑って答えてやる。
「そうかい。ま、危ないことがあったら呼びな、飛んでって助けてやる」
「助かる」
その言葉を合図に、ガガーランが二階へと慎重に上って行き、俺も地下へと歩を進めた。
地下室と言っても一般にあるような地下室ではなく、どうも貯蔵庫と言った方が正しいかもしれない。この体になってから妙に鋭敏になった鼻に、新鮮な草の臭いが飛び込んでくる。銃頭でどこが鼻かは知らんが。それと、そんな貯蔵庫に似つかわしくない、新鮮な血の臭いもする。ふん、きな臭ぇなぁ。
階段を降りきり、そこにある一枚板でできた扉に手をかけ、押し開く。それと同時、その向こうからなにかが突き出されてきた。それなりに早い。だが、遅い。その刃物を顔を傾けながら回避、それと同時に、それが続く先に意識を割くと、そこには金髪の猫のような印象を持つ女の顔が、驚愕に歪んでいた。構わずそのまま腕、しかも肘の関節の出っ張りに指をかけるように掴み、引き寄せる。と、同時に右腕でボディーブローを軽く叩き込んだ。腕ごと引き込まれているため衝撃を逃がすことも出来ず、体を浮かせながら苦悶の表情を浮かべる。だが、意識は失ってないようだ。仕方がないか。女には悪いが追撃をかけるとしよう。右の手の甲に埋まっているシリンダーが回転、それと同時に撃鉄が上がり、俺の意思にしたがって撃鉄が落ち、弾丸を炸裂させる。爆裂音と共に拳から更なる衝撃が叩き出されて、女の体が宙に浮く。血ヘドを吐き出し白眼を剥いたのを確認し、そのまま女の体を地面に叩きつけた。
「……やり過ぎたか……」
地面に転がってピクピクしている女を見下ろし、そう呟いたが、周囲の惨状を目にして気が変わった。死体が三つ。いずれも頭などを錐のようなもので打ち抜かれ、即死しているのがわかった。そして一番奥、そこには、まだか細く息をしている半死体があった。
近づいて状態を見ると、顔は大きく膨れ上がり、左目は潰れている。指は骨ごと潰れて、皮膚は裂け真っ赤な肉が晒されていた。服を緩めてその下を除くと、よほど激しく殴打されたのか全身に青あざ、酷いところでは肉が弾け飛んでいた。重症どころか、もう少しであの世行きだろう。
「と、すりゃぁ、〈 大治癒薬 〉で治るのかねぇ?」
あまりにも治りすぎるのもあれかとは思うが、助けられそうな命を助けないのも寝覚めが悪い。無限の背負い袋からポーションを三本ほど取りだし……かければいいのか飲ませればいいのか……とりあえず二本ほど体に振り掛け、一本を口の中に押し込んだ。果たして効果はあり、全身の傷はあっという間に完治し、顔色もとりあえず落ち着いたようだ。もはや怪我一つ無いみたいだな。しかし凄いな。とんでもない回復力だ。体に悪くねぇのか、これ?
背後で動く気配。振り返りながら裏拳をその動いている奴に叩き込むと、そいつの頭が粉微塵に吹き飛んだ。なん……だと……!?こんな破壊力があるのかよ!?いくら加減したとはいえ、あの女、よく生きてたな。そう関心しながら、動き出した二体の死体に向かって駆け出し、それぞれ頭に拳を叩き込んで動きを止める。
しかし、何が起きてるんだこれは。ポーションを買いに来たらそこの倉庫でどうも冒険者みたいな奴に襲われて、その後ろで冒険者風の死体が三体あって、死にかけてる女の子がいて、その子を助けたら死体がゾンビになって動いて襲いかかってくる。言っててなんだが意味がわからない。あ、そう言えばあの女は息絶えたか?
どうやら、生きてるらしい。とりあえず左腕から鋼鉄製のワイヤーロープを引っ張り出し、女をグルグル巻きにして拘束した後、引っ張り出した〈 下位治癒薬 〉をぶっかけた。
「何をしている貴様!!」
急に怒鳴り声が響いた。何事かと思って入り口を見ると、そこには絢爛豪華かつ華美な漆黒の鎧を身に纏った戦士風の男と黒髪をポニーテールにした美女、それとよく分からない婆さんが立っていた。
戦士は、これまた絢爛豪華な大剣を二本、背中から引き抜くと、その切っ先をこちらに向けさらに低く恫喝してくる。
「何をしていると聞いている!この惨状はどういう理由か、説明してもらおうか!」
そんなん言われても、俺が知るかよ。俺は困惑するままに、新たな煙草を取り出して火を点けるのだった。
ガガーランが凄く使いやすいのは私だけでしょうか?
次回もお楽しみに。