OVER LORD Gun Fist & Gun Head   作:丸藤ケモニング

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タイトルに偽りあり!

言われる前に言っておくパターン。

状況整理の回。


9,銃頭と漆黒の戦士、出陣/前半戦

 エ·ランテル西側共同墓地は、現在地獄の様相を呈していた。

 墓地から溢れ返った死者が雲霞のごとく押し寄せ、墓地と人界を区切る門へと殺到し、それを自らの肉体が壊れるのも構わず攻撃する様は悪夢を思わせる。

 その中にあって、それでも守衛の兵士はその職務を全うしようと必死で槍を突きだし、持ち上げ、再び突きだす。

 悪臭が立ち込める中、半ば作業の様相を呈し始めた頃に、変化は唐突に訪れた。

 死者の群れの中から何かが飛び出す。それに気づいた衛兵がどれだけいたか、それは分からないが少なくとも、その襲撃で生き残った衛兵は、その存在に文字通り肝を抜かれた。

 死者の群れの中から飛び出したのは、目見麗しい少女だった。ただし、その顔の下半分が奇妙な金属の加工品で覆われ、それが上下左右に別れ怪物のような顎を形成していなければ、だが。腕も肩口から奇妙なパーツで構成された金属の物であり、その先端は禍々しい鉤爪状、しかも一本一本が鋭く、並みの刃など比較にならないだろう事は容易に想像できた。

 それが、生き残った衛兵に目を向けた。ガラス玉のようでもあり、憂いを帯びたようでもあるその目で睨まれた衛兵隊長は、心臓を素手で鷲掴みにされた気分だった。奇妙にゆっくりとした動きで、その少女のようなものは衛兵のもとへと近寄ってくる。その圧力に押され、壁の上まで後退した衛兵には、更なる悲劇が訪れる。死者の群れの中からもう一匹、今度は壮年の男性のような姿をした、同じパーツを同じように取り付けた異形がそこに降り立ったのだ。その異形は、想定以上に素早い動きで衛兵に近寄り、一人を壁の下へ放り投げ、もう一人を、その鋼鉄の顎で腕から噛み砕き始める。少女型もまた、悲鳴と悲鳴が交錯するなか、回りの人間が思う以上に早く移動し、手近な衛兵の肩口に鉤爪を突き刺し、骨を砕きながら引きむしる。

 悲鳴一つ上げず絶命する部下を見ながら、衛兵隊長は自分の死を覚悟すると、しかし、目前に迫る死そのものを切り捨てるように、腰に吊った身幅の広い直剣を眼前で振るった。自分がこの仕事についた折、まだ存命だった祖母が送ってくれたこの剣は、かつて冒険者で身を立てていた祖父が冒険の折に手に入れた魔法の剣。たいした魔法はかかっていない筈であったが、確かにこの剣が、自分に勇気をくれた。だから立ち向かい、部下を救える、町を救える。少なくともその礎になれる。

 

「うおおおおおおおお!」

 

 雄叫びを上げ、隊長は部下に向かって鉤爪を振り上げる怪物に向かって斬りかかる。体が軽い。まるで自分の体では無いかのような気分で、隊長は自慢の剣を振り下ろす。それは改心の一撃、自らの限界を越える一撃だっただろう。鋭く重い衝撃が、一瞬、自分の腕と骨を痺れさせる感触に顔をしかめるが、効果は大きく、敵の振り下ろそうとした右腕を根本から切断していた。

 

(やった!……!?)

 

 心の中で快哉を上げるが、相手からの反撃は痛烈の一言に尽きた。残った左腕が振るわれる。もし防御に徹していたら、もし剣を振りきった状態でなければ避けるなり防げたかもしれない一撃。しかし、剣を振りきった状態では避けることも防ぐことも叶わず、隊長は右腕から聞こえる枯れ枝を折るような音、脇腹からも同じような音を聞きながら弾き飛ばされた。石壁に叩きつけられ、口からドロリとした血を吐き出す。致命傷にならなかったのは不幸中の幸いであったが、結局運命は変わらないようだ。

 こっちへと歩み寄ってくる少女型の怪物を朦朧とする意識で見ながら、彼はそう思い、笑った。出来うる限りの事はしたのだ、悔いは無かった。だから、今度こそ目の前に迫った死を前に、彼は微笑みながら目を閉じ、それを受け入れようとした。

 その彼の耳に届いた音は果たしてなんだったのか。地面が振動するほどの強烈な爆発音と彼の被っていた兜が吹き飛ぶほどの衝撃が彼を打ちのめした。そこまで感じて、彼はようやく気を失ったのだった。

 

 

 少し時間を遡る。

 

「君に聞きたいが、もしかして、君はプレイヤーか?」

 

 目の前に立つ漆黒の剣士の言葉に、十三は我が耳を疑ったが、しかし次の瞬間納得していた。

 自分達がここにいる以上、あの日ログインしていた人間が一緒に転移している可能性は十分にあるだろうと、シャイアやナールと話していたのだ。しかし、話し予測していたとは言え、やはりその存在が目の前にいるとなれば、多少動揺するのは当然だろう。

 自らを落ち着かせるために煙草を深く吸い込み、吐き出す。紫煙が広がり、自分の顔と相手の顔に一瞬だけカーテンを作る。その間も、相手はこっちを見ているようだ。敵意はない。しかし、何かを探るような気配は感じる。慎重に行かねばならない。十三は強くそう思った。

 

「もし、そうだとして、それがなにか?」

「……気づいていると思うが、私もプレイヤーなのでね。もし同郷の人間なら、そう、協力しあえると思ったのだが」

「まぁ、あんたの言う通り、俺はユグドラシルのプレイヤーだ。名前は乾 十三」

 

 そう十三が答えると、なぜか納得したように頷かれた。

 

「んで?あんたはどこの誰だ?少なくとも、俺の知り合いに漆黒の剣士なんていねぇが?」

「……私の、名前は…」

 

 言い淀む漆黒の剣士を訝しく思いながら、十三は根本まで吸い終わった煙草を指で揉み消し、吸い殻を煙草の箱の中に戻し、もう一回開くと完全な状態の煙草が現れる。マジックアイテム〈 無限の煙草箱 〉。ぶっちゃけカッコつけ用の煙草が無限に出てくるマジックアイテムである。

 そこからもう一本煙草を取りだし、火をつけ煙を吐き出す。相手がまだ悩んでいるようなので、少し考えてみるが、名を名乗れない=あちらでよほど悪名高いプレイヤーである、と言う構図が成り立つのではないか?ユグドラシル時代、名声を手に入れたプレイヤーもいれば悪名を手に入れたプレイヤーもいる。その最たるものは、あの最強·最悪と言われたアインズ·ウール·ゴウン。しかし、あのギルドで漆黒の剣士がいたなんて話は聞いたことがない。一番有名なのが、白銀の聖騎士こと、たっち·みーか。しかし、この漆黒の騎士があの聖騎士とは思えない。ならばアインズ·ウール·ゴウンとは無関係か?無関係とは断定しづらい、ならば、なるべく注意をして相手の行動を見極めねばならない。ぶっちゃけ、こいつがどっかのギルドごと転移してきていたら、勝ち目なんてほぼ無いんだから。

 一方、漆黒の剣士ことモモンガ=アインズは悩んでいた。果たしてアインズ·ウール·ゴウンの名を出しても良いものかと。無論、この名前には誇りがある、プライドがある、自負があるし、最も大切にしたいものだ。しかしながら、自分でも分かっているのだ、そう思うのはこの名前のもとに活動し、その名に恥じぬ事をしてきた自分だけだと。目の前にいるこの銃頭の男、乾 十三の事は知っている。ユグドラシルwikiでお助けプレイヤーで紹介されていた人物である。異形種、人間種、亜人種問わずプレイを助けていると言うことでそれなりに有名だったはず。だからもしかしたらアインズ·ウール·ゴウンに悪感情を持っていないかもしれない。しかし、何かと叩かれていたアインズ·ウール·ゴウンである。想像以上に悪感情を持たれていたら色々面倒なことになるし、守護者や今ついてきているナーベラルなんかに知られると、総出で狩り出しにかかる可能性もある。最悪の事態はギリギリまで避けるべき。そう思うと、今度は名乗りづらいのである。

 

「さて、このまま二人して黙ったまま突っ立ってるっつぅ訳にもいかんからな」

 

 そんな、なんとも言えない空気を打ち破ったのは十三の方だった。口調も、特になんとも思ってない風を装っているが、これでも実は細心の注意を払っているのである。

 

「?どういう意味だ?」

 

 それに乗っかるアインズ。

 

「さっき言わなかったっけか。ンフィーレアをさらった奴が何らかの儀式を行い、大量のアンデッドを使役してこの町を襲うんだそうだ。ガガーランには町の衛兵なんかを動員してもらう予定だ」

「ふむ?では、君はどうするんだ?」

 

 その問いかけに、十三は鼻で笑って答える。

 

「決まってるだろう。死者の群れをぶち抜いて、首謀者の頭を撃ち抜いてやるのさ」

「……」

 

 何でもないことのように言ってのける十三を前に、アインズも考える。むしろ、これはチャンスでは無いか、と。

 元々、目的としては名声を得ることにこそ意味があるのであって、その一環として森の賢王ことハムスケを従え恥を忍んで騎乗していたのだ。ここで自分が解決すれば、その名声は鰻登りだろう。ならば一緒に行って解決するべきでは無いか?

 

「十三、だったかな?その事件、私も一緒に行って解決しよう」

「……どういう狙いだ?」

 

 その物言いに、少しだがゾッとする。全ての感情が抜け落ちたような冷徹さが、この人物にはあるような気がした。故に、包み隠さずすべてを打ち明けた方が、この人物と少なくとも敵対することはないだろうと言う予感めいたものがアインズにはあった。

 

「……私、いや、俺の名前はモモンガ、ギルド:アインズ·ウール·ゴウンのギルドマスターだ」

 

 しかし、その予感に反して、やはりこの名前を出すのは賭けだ。相手がこの名前に悪感情を持っていた場合、こちらと敵対、最悪この場で戦闘になる可能性がある。純粋戦士系かは分からないが、鎧を脱がない限り30レベル程度の戦闘能力しかなく、脱いでも強化できていない魔法職がこの距離で近接職と戦闘になるのは、圧倒的に不利としか言いようが無かった。最悪〈 転移門 〉でナザリックまで逃げることも念頭に置いてシミュレーションしておいたが、返答に関してはあっさりしたもんだった。

 

「ああ、あんたモモンガさんか。あーあー、確かにあの女にモモンさーーーんって呼ばれてたな。きづけっつぅんだよなぁ」

「えっと、俺のことを知ってるんですか?」

 

 あまりにも快活に笑いながら言われ、アインズは兜の中で顎を落としかけていた。いったい、さっきまでの悩みはなんだと言うのだ。

 

「ああ、有名人だな、アインズ·ウール·ゴウンのギルドマスター。さて、さほど時間もないかもしれん。そういう話は後あとしようや。何であんたが出向いてこの事件を解決しようとするんだ?」

「……俺には目的があるんだ。この世界に転移してきたのは、俺とNPCだけだった。けど、もしかしたら他のギルドメンバーもここに来ているかもしれない。もしいた場合、俺が、ギルドがここにある、それが一発で分かるように、名声を得る必要がある。だから、まずはこの町で、そして次は、その次はと名声を高めなくちゃいけない。だから……!」

「なるほど、ね」

 

 ヒートアップしつつあったアインズを止めるように、十三が煙と一緒に言葉を吐き出す。少々居心地の悪そうにしているアインズを横目にし、十三はもう一度煙草の煙を吸い込み吐き出す。

 

「じゃぁ、行きますか。その前に仕込みと協力者を連れていこう」

「!?協力、してくれるんですか?」

「……仲間に会いたい気持ちは、まぁ、分からんでもないからな。少なくとも、俺は昔の仲間とは会いたいとは思わねぇが、な」

 

 まるで吐き捨てるように十三はそう言うと、踵を返してもといた部屋へと戻っていった。それを見送ったアインズも、なんとも言えない気分になり、無理矢理気持ちを切り替えると、下にいるリイジーへと報告ついでに依頼としての話をするために、頭を捻りながら階段を降りて行くのだった。

 

 

 

 




次回、中盤戦。今度こそ二人の戦闘シーンあり。だといいな。

あと、ちょっと分かりづらかったかな?反省反省。
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