まぁ、ちょいと短めなんですが。序章は結構短めです。と言っても、現在の段階で10話ある・・・どうしよう・・・
ともかく!今回はルドガー5歳からスタートです!
では、どうぞ!
目的と精霊と
――ルドガーside
僕――俺はルドガー・ウィル・クルスニク。
まず初めに、自分の事を指す一人称を言い間違えたのには原因があるという説明からさせてもらおう。と言うのも、今俺が置かれているこの状況……と言うか家庭環境?が原因なんだけども……
「じゃあ、行ってくるねー!あ、そうだ。母さん、俺道場には直接行くから!」
「あ、ちょ!ルーくん、待ちなさい!ハンカチ!あと、言い方を直しなさい!」
「あー……はいはい」
「『はい』は一回」
「……はーい」
「間を伸ばさない」
「……はい」
「ん、よろしい。じゃあ、車に気を付けるのよ」
「分かってるー!行ってきまーす!」
そう。原因というのは、俺の『母親』だ。どうにも、俺のその……『母親』というのは、躾に厳しいのである。こう言うのは、少し気が引けるというか上手く言葉に出来ないんだが………何というか俺に『母親』が居るというのは、少しむず痒い感じがする。
さて、そんな話は置いておくとして、俺がこれから外出する理由は、俺の中に居る存在が原因だ。
その俺の中に居座る存在に促され、俺は朝早くにも関わらず家を出たというわけだ。因みに現在はまだまだ肌寒く感じる3月24日の午前8時。道場が始まるのが11時からだから、移動時間を加味したら、今日は2時間くらいかな?
家の角を曲がってしばらく歩いたところで、周囲を確認して家と家の間の、狭く暗い路地へと入る。そこから両側の家の塀を利用して、スルスルと屋根の上まで登る。そして、屋根伝いに目的地を目指す。生物って頭の上が死角っていうのは本当なんだなぁ、って感心している。
今の俺の年齢くらいの体の小ささなら、陽の光でできる影も小さいから鳥とかに勘違いされるし。実際、前に上を向かれたけど、バレなかったし。
俺の年齢?今年で6歳になります。今は5歳です。
さて、話を戻そう。俺は今、街の外れにある雑木林に到着した。雑木林の中でも、やや開けた場所――いつもの場所を目指す。
「………さて、と。ここまで来れば平気だよな。もういいぞ、マクスウェル」
俺の右腕が弱く発光すると、そこには銅でできたような歯車を幾重にも重ね、機械仕掛けの様になった腕輪が出てきた。中央部分には、小さいが金色の文字盤が填り、二本の針が数字を指している。要は時計が填っているわけだ。
『ふむ、いいだろう。では、早速取り掛かるとしよう』
腕輪から声が響く。分史世界(?)で戦った事があるというマクスウェルの声だ。旧マクスウェルとか本人は言っていた。自分の役割を既に引き継いだから、『旧』なんだと。とにかく、なぜその旧マクスウェルが俺の中に存在しているのかと言うと、どうやら俺たちが前にいた世界で、俺は『オリジンの審判』というものに挑戦し、それをクリアしたらしい。
何で『らしい』なのかと言えば、俺には確かに前世の記憶はある。あるのだが何と言うか……
取り敢えず、覚えている事をまとめておこう。前世の俺には両親が居なくて、兄さんと一緒に育った。名前は今と同じ、ルドガー・ウィル・クルスニク。そして、兄さんの名前はユリウス・ウィル・クルスニク。そして二十歳の時に、『誰か』に会ったんだ。そこから、俺には仲間と言える存在が出来た。だけど、その仲間達の顔も名前も思い出せない。その中には、確か俺が傷付けてしまった上に、助けられなかった人もいた……はず。んーー、多分……この辺は本当に自信がない。
つまり、俺が思い出せるのは、ひどく断片的な記憶だけ。俺がどうして死んだのかも思い出せないし、ところどころ向こうの世界の言葉は忘れている。細かい事情は俺の中のマクスウェルに聞いた。そして、何で『俺』がここに居るのか、俺がこの世界に送り出された目的が一体なんなのかも聞いた。
俺をこの世界に送り出した目的は、俺のいた世界――エレンピオスと言うらしいが、とにかくエレンピオスがこのままだと、遠からず滅びるらしい。原因はとある場所に閉じ込められている
まぁ、だけど遠からずと言っても、数百年後か数千年後という風に曖昧らしい。それでも、自分の居た世界が滅びるなんて寝覚めが悪い。だから、マクスウェルの言ったことを信じることにして、世界を救うという目的を持った。
マクスウェル曰く、この世界ならば瘴気を消す、もしくは浄化する事ができる方法があるかもしれないらしいのだ。だが、おそらくそれを知るには、この世界に居る人外にコンタクトを取らなければならない。人間の俺、ましてや子供がそんな存在と接触すれば、美味しくいただかれ兼ねない。
ってか、最初に聞いた時は、『人外ってどういう事?』って本気で思いました。
とにもかくにもだからこそ、ある程度の力を付けろとの事らしい。で、マクスウェルに修行を付けてもらっているという事だ。なんだけども………
ドゴォン!!!
「………………」
轟音が上がったと思ったら衝撃が走り、俺がさっきまでいた場所にはクレーターができていた。そこから俺は5m以上離れて絶句していた。そして、それをやった存在を見上げる。土塊で出来た、巨大な人を形どった様なゴーレムで、高さは3m超。腕の太さは多分子供の俺2人分以上。胴体も太く、全体的にずんぐりした印象のゴーレムだ。
『ほう、避けたか。またワシが治療する羽目にならずに済んでよかったわい』
ふと、俺の右腕を見れば、そこにあった筈の腕輪が消失していた。どこへ行ったのかと周囲を見回せば、俺の頭上をフヨフヨと浮いていた。歯車の配列が変わり、よりギュッと固まった様になっている。そして、時計の上方部は小さなスペースが空いており、そこに光が集まったと思ったら、ミニバージョンの旧マクスウェルが現れた。つまり腕輪は現在、椅子の状態である。
「いやいや、子供相手に今の威力はおかしいだろ!前よりも威力上がってんじゃん!!」
『当たり前だ。人の生など精霊と比較すれば、無いにも等しい。その間に目的を達さねばならん。それを思えばこそだ』
「そんな気遣い要らないよ!?目的達成前に俺が死ぬよ!?」
『安心せい。貴様のマナ――いや、この世界では魔力だったか。魔力は膨大に消費するが、死ぬ一歩手前なら、ワシが治してくれよう』
もうヤダ、この大精霊。俺たちに力を託したっていう精霊達は何を考えて、このジジイ精霊を俺に寄越したの!?嫌がらせ!?こんな押し売りは、即刻クーリングオフしたいんですけど!!
『ふむ。まずは生き延びさせる為に、ひたすら逃げ足を強化していたが、順調だな。では、もう一体増やすとしよう』
「え、ちょ――」
俺が言うよりも早く、ミニバージョンの椅子に座って偉そうにしている旧マクスウェルは手を翳し、新たにもう一体ゴーレムを作り出した。
ぐ……この力の大元って、俺の魔力だから、一体作られる毎に力が抜ける……
『さぁ、今度は2体を相手に逃げ回ってみろ』
「ま、待った!タイム!待て!ちょ、ホントに――いぎぃやぁぁぁぁ!!」
雑木林には俺の情けない悲鳴が響いた。グスッ……本当に死ぬかと思った………
――side out
――???side
「ふぅ、まったく。ルー君は最近、やんちゃ過ぎるわね。誰に似たのかしら?」
「………そんな目で見るな、コーネリア。ルドガーも男ならあれくらいが健全だろう。むしろ、病弱でない事を感謝すべきだろう」
「はぁー……まったく。相変わらず、あなたは女心を介さないわね」
「生来のものだ。今更だろう?」
「はぁ……この調子だと、心配のし過ぎで老けこんじゃいそうよ」
ピンポーン
「あら?お客さん――っ…………鈍ってるわね、私。こんな近くに来るまで気付かないなんて……後で先生にドヤされちゃいそう」
「………ふむ、出迎えるとしようか」
――side out
――ルドガーside
「い、痛い……」
俺はボロボロになった状態でトボトボと雑木林の山を下っていた。未だに具現化を解かないマクスウェルが椅子に座った状態で横を追随してくる。
『あの程度で情けない。精霊ならば、生まれて5年も経たず、立派に巣立つというものを』
「人間と精霊の成長スピードを一緒にするなよ。俺は未だに5歳だぞ?あの後も増やしやがって……」
『ふむ。だが、4体までが限界の様だな。それ以上は劣化するか、作られない様になるようだ』
「分析どーも。はぁ……俺も直接使えればいいんだけどなぁ」
俺はそうボヤく。コッチの世界に来る前に、向こうの大精霊――オリジンとクロノスというらしいが、そいつらと俺が一緒に旅をしたという新マクスウェルは、件の目的のために、俺たちに力を託したとの事。そして、新マクスウェル――ミラ・マクスウェルというらしいが、彼女が精霊界というところに、旧マクスウェルの思念を留めておいたらしい。それを、力ごと俺に託したというわけだ。つまるところ、俺の中にいる存在はお目付役というわけだ。
『まだ「視る」だけでも、酔ってしまう者には到底無理な話だ』
「うっ……し、仕方ないだろ?ずっと「視る」と目がチカチカする上に、動き回ってるから、コッチが目を回しちゃうんだよ。それに――」
『ふむ、そうは言っても慣れない事には始まるまい。森を出る前に一度やっておくとするか』
「え、ちょ、ちょっと待――」
俺が制止の声を掛けるが、それは聞き入れられず視界が一瞬暗転したかと思ったら、次の瞬間には淡く光る球体が幾つも宙を浮いている。そして、光のせいで姿がボヤけているが、人に近い形をした形態の小さな何かと目が合う。
そう。俺が居たという世界では、既に見られなくなったという微精霊だ。万物をそれぞれの精霊が司っているというのは、どうやらコッチの世界でも同じらしい。しかも、精霊を殺すという
しかし、この世界に精霊をしっかりと視認できる人間というのは極々少数らしい。まぁ、記憶を失っているからとはいえ、俺も見た記憶は無いし。
それと併せて、精霊というのは、大なり小なり『好奇心』というものを持っている。だから、精霊を視認どころか、言葉も分かり、触れ合える人間というのが彼らにとっては非常に物珍しいらしく、例えば今みたいに目が合うと………
「な、なぁ、マクスウェル?周囲が微精霊の光で溢れて来たんだけど……」
『それだけ、精霊に人の身でありながら興味を持たれているという事だ。光栄に思うがいい』
「いや、興味を持たれてるっていうか、押し寄――う、うおぉぉおおぉぉ!!?」
今の状態だと、『視認』出来ているから、微精霊の様な力が弱い精霊にも触れることが可能って言うのは、さっき語った通り。けど、俺は現在5歳。そして、高波の如く押し寄せる微精霊の大群。どうなるかと言えば……
「マクスウェル!!解除!『視認』解除ーーー!!」
俺は押し寄せる微精霊の大群から逃れるために、山を転がり落ちる様にして駆け抜けた。
『まったく、本当に情けない』
取り敢えず、俺に掛かっていた『視認』の状態は解けて、普通の視界へと戻る。だが、俺の居る周囲の地面は様々な種類の雑草が芽を出していた。
「はぁ………本当に、これだけは勘弁して欲しいんだよな。しょっちゅう俺の周りだけ草がボーボーって、不自然過ぎるだろ」
『力が弱くとも、今も周囲にいるのは精霊だ。それが大量に居れば、周囲へ影響を与えるのは必然だろう』
「………本当に街中でだけはやんないでくれよ?シャレにならなくなるから」
『分かっておる。こちらとしても、お主が未熟な今の状態で、人外と会わせるつもりは無いからな』
「……本当に頼むからな?」
俺は未だに隣で浮いているマクスウェルに念を押す。さっきも言ったけど、この世界には精霊を殺す
これは俺も驚いたんだけど、意外と居るんだよな。街中にも普通に。だから、この前テレビにも出てたけど、コンクリートの隙間から大根が生えたりしていた。勿論、比率で言えば俺が今いる様な山とかの方が沢山いる。だけど、街中にも相当数が居るんだよなぁ………
そんな訳で、普段『力』を行使するのはマクスウェルという事になっている。
『それよりも、良いのか?道場とやらに行くのだろう?』
「………はぁ、この後行くのは憂鬱でしか無いんだけど?誰かさんの所為で疲れてるから」
『だから、早く力の使い方を覚えろと言っておろう。この世界の精霊は人に対し友好的だ。遺憾だがな。だが、だからこそ、特に気に入られやすいお前には、力を貸すだろう。そうすれば、周囲のエネルギーを取り入れ、疲労も――』
「分かったよ!分かってるよ!とにかく、今よりもっと励めって事だろ!?――はぁ………じゃあ、励む為にも俺の中に戻ってくれ」
『……ふむ、いいだろう』
マクスウェルが俺へと近付いてくるが、そこで一旦マクスウェルは止まり、街の方を一瞥する。訝しむような表情を一瞬浮かべたが、『…まぁ、大丈夫であろう』と呟くと、俺の中に戻った。
ん?何が大丈夫なんだ?
『さっさと行かねばならぬのでは無いか?』
俺がそうしていると、頭の中にマクスウェルの声が響く。確かにと俺は思い直し、最近通い始めた道場へと足を向けた。
久々に一人称で書いた…
まぁ、ちょいちょい説明不足な部分はありますが、そこは読み進めていくうちに、分かるかと思います。
ではまた、次回!