H S DX2D   作:メラニン

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序章がようやく折り返しです。


戦闘とかは、まだですね。あと、タイトルに関して、ご指摘いただいたのですが、「×」ではなく、「X」なのは、ワザとです!w   ご指摘ありがとうございます!


エクシリア(Xillia)の頭文字と、「2」を入れてあるだけです。


では、今回のお話ですね。どうぞ!


逃避行と祭り!

 

 

――ルドガー side

 

 

俺は今現在、いつも鍛錬で使っていた森の中のとある小屋で、おもてなしを受けていた。大人2人の前には紅茶が湯気を(くゆ)らせている。で、俺の前にはオレンジジュース。まぁ、子供だしね!

 

 

…いやまぁ、精神年齢的には20歳を超えてるんですけどね。分かってはいるよ?分かってはいるんだけども、体や舌は子供なんですよ……

 

 

「ん?あぁ、もしかしてオレンジ以外が良かったかな?と言っても、あとここにはグレープか、アップルくらいしか無いんだけど……」

 

 

「あ、そ、そうじゃなくって!」

 

 

どうやら、俺が悩んでいたのが、正臣さんには不満っぽく見えていたらしい。俺は誤解を解くために、首を横に振る。

 

 

「えっと……2人とも逃げるアテはあるのかなぁ、って」

 

 

「………そこなのよねぇ。まぁでも、まずはこの街を出ないことには何も始まらないからね」

 

 

「恥ずかしながら、僕もクレーリアも追われているから、頼れる人は中々居なくてね。この街を出たあとの事は考えて無いんだ。まぁ確実に日本には居れなくなるだろうね」

 

 

「ちょっと、正臣!」

 

 

「あ…」

 

 

俺が若干顔色を変えたのをクレーリアさんが気付いたらしい。まぁ、誰かと会えなくなるってのは寂しいしな。顔色の1つや2つ変わるだろう。

 

 

「ゴメンね、ルドガー君。正臣が無神経で」

 

 

「う……」

 

 

「ううん、大丈夫」

 

 

にしても、そっか。2人はこの後逃げなければいけない訳だけど、アテは無いのか……

 

 

んー?そういや、俺もエレンピオスだと何かから追われてた様な…………うん!止めておこう!

 

 

俺は何だか思い出したくないものを思い出しかけて、記憶にフタをした。なんかGHS(こっちで言う携帯電話)とお金に追われる様なイメージが湧いたけど、忘れよう。

 

 

俺は一口オレンジジュースを口に含んで喉に流し込む。ってか、何気にコレって高級なやつじゃないですか?地味に美味しいんですけど。

 

 

それと、出されているお茶請けのクッキーも一口齧ってみる。うん、これも美味い。なんと言うか、味が濃厚と言いますか。甘味は控えめなんだけど、口当たりがしっとりしているお陰で、しっかりとした味わいになっている。

 

 

「ふふ、お口に合ったみたいで良かったわ。ああ、ほらくっ付いてるわよ」

 

 

クレーリアさんは俺の顔に付いたクッキーの欠片をティッシュで拭き取ってくれた。それを正臣さんがニコニコしながら見ている。

 

 

「………何よ、正臣」

 

 

「ん?いや、クレーリアって意外と面倒見が良いよなぁ、ってさ」

 

 

「失礼ね。元からよ、元から。正臣にだって色々気を使ってあげた事あるでしょ?」

 

 

「そうだったね。これは失敬」

 

 

正臣さんも紅茶を一口飲んで一息いれる。俺はふと気になった事を聞いてみる事にした。

 

 

「あの…正臣さんって神父さん?」

 

 

「ん?んーーと………神父見習いってとこかな?」

 

 

「じゃあ、さっきの剣は?」

 

 

正臣さんはポリポリと頬を掻いて苦笑いを浮かべる。クレーリアさんが一回咳払いをして、話が切れる。

 

 

「大丈夫よ、正臣。この子の両親の事を考えれば、ね。遅かれ早かれコッチの世界に足を突っ込む事になるわ」

 

 

「……けど、クレーリア。それを決めるのは僕らじゃない。勝手には……」

 

 

「えーと……コッチの世界って?」

 

 

俺の質問に、2人は黙り込む。

 

 

待てよと、俺は思案を巡らせる。どちらにせよ、人外の知識は必要なんだし、これって情報を得るチャンスなんじゃ?俺は意識を内面に向け、マクスウェルに語りかける。

 

 

 

 

 

 

 

なぁ、マクスウェル。

 

 

『………まったく、人というのは酷く勝手だな。儂が止めたにも関わらず首を突っ込み、困ったら意見を求めるとは』

 

 

う………そ、その件は悪かったよ。けど、こうして情報を得られるチャンスじゃないか!マクスウェルの事は隠しつつ、多少能力のことをバラしてもいいか?じゃないと、多分2人とも話してくれそうにないし。

 

 

『………分かった。だが、精霊とコミュニケーションを取れる程度の力だという事にしておけ。心苦しいかもしれんが、儂の力を利用しようとされてはかなわん』

 

 

この2人はその心配は無いと思うけどな……まぁ、分かったよ。

 

 

『それと、あくまで貴様の目に視認させるだけだ。本体は出さんぞ?』

 

 

分かったよ。それでいいって。

 

 

 

 

 

 

 

相談が終了し、俺は意識を引き戻す。クレーリアさんと正臣さんは未だに睨み合いの状態だ。この2人本当に恋人かと、疑いたくなる。

 

 

「もしかして、不思議な力のこと?」

 

 

俺の一言に、2人はバッと俺を見る。う……そんなに見られると、緊張するんですけど……

 

 

「………ルドガー君、不思議な力って?」

 

 

「えっと………父さんにも母さんにも内緒にしてるんだけど、精霊が見えるんだ」

 

 

「どうして、それが精霊って分かったのかしら?」

 

 

「え?向こうが、そう言ってたから」

 

 

 

「そ、そう…………じゃあ、今やってみてくれる事って出来るかしら?実際に見て判断したいから」

 

 

「んと……まだ慣れないから、失敗するかもだけど」

 

 

さぁ頼むぞ、マクスウェル。俺は目に意識を集中させて一旦瞼を下ろす。次に目を開けた瞬間には、例の精霊が飛び交う世界が飛び込んできた。

 

 

「………へぇ、すごいね。初めて見るタイプだ。クレーリアは見たことあるかい?」

 

 

正臣さんは俺の目を覗き込む様にして、観察し始める。

 

 

「……いいえ。こんな紋は見たこと無いわ。私も一応『駒』集めで色々と見たけど、その時に見たどんなものとも違うわね」

 

 

紋?この状態の時って紋章が浮かんでるって事か。いかんせん、自分の目なんて鏡で見る以外確認する方法がないからな。あと今、クレーリアさんの口からなんか不吉そうなワードが聞こえたけど、スルーする事にしておこう。

 

 

「ルドガー君、精霊に何か命令できるかい?」

 

 

「んー、無理」

 

 

「「……え?」」

 

 

2人は揃って疑問の声を上げる。いやいや、だってコイツら自由に動き回って言うことなんて聞きやしないもの!実際に魔力を与えるのは俺だけど、コントロールは完璧にマクスウェル頼りになっている。

 

 

「えぇっと、まだ慣れてないし、それに見るのだけで結構精一杯。あぁでも、この状態だと、精霊が周りに集まって不思議な事は起こりやすいよ?」

 

 

「……例えば?」

 

 

「俺の周りだけ草木が生えたりとか?」

 

 

「………ルドガー君。そっちの柱に触れてみてくれるかい?」

 

 

俺は正臣さんの言う通りに、小屋の中にある一本の柱に触れる。

 

 

「次に、こう………自分の中の力……これだと分かりにくいか。んーー、自分の中の血が柱に触れてる方の手に集まっていく様にイメージしてくれるかい?」

 

 

「分かった………えっと、血が手の方に?んー……こう?」

 

 

言われた通り俺は全身の血が柱に触れている右手に集まっていくイメージをする。むむ……イメージし辛い。俺は目を閉じて集中してみる。多分正臣さんが言っているのは、全身のエネルギーを右手に集中しろって事なんだろう。俺はそのイメージで力を流し込んで見る。すると、俺は急に後ろへと急に引かれた。

 

 

「ストップ!」

 

 

「うわっ!?」

 

 

俺の脇腹を掴むようにして後ろへ下げたのは、クレーリアさんだった。俺は前を見てみると、そこには先ほどまでの柱の姿は無かった。所々から枝葉が伸び、柱自体が成長したようになっていて、屋根を押し上げようとしていた。と言うか、既に屋根がミシミシ言っている……

 

 

え、えぇぇぇぇぇぇ!!?何コレ!?

 

 

何コレェェェ!?

 

 

 

 

「………確か北欧の方には精霊魔法があった筈よね?」

 

 

「でも、この子は両親の事についてあまり知らないみたいだし」

 

 

何やら色々話し始めたぞ?少なくとも今の会話で、俺の両親が精霊魔法と関係があるのは分かった。向こうでは精霊術だったけど、何が違うんだろ?今度聞いてみるか。

 

 

「……って事は」

 

 

「うん、そうだと思う。教会にもこういった紋が浮かぶのは報告された事は無いけど、本人が精霊魔法を知らなさそうだし。ってなると、考えられる可能性は……」

 

 

神器(セイクリッド・ギア)、ね」

 

 

「うん、そうだと思う」

 

 

「せいく……何?」

 

 

俺は聞きなれない単語に疑問符を浮かべる。聞き慣れないと言うか、初めて聞く単語だったし。

 

 

神器(セイクリッド・ギア)、よ。んー、神様が人間にのみ与えた特別な力?とでも言えばいいかしら?」

 

 

ん?神様?そういや、今我が家に居る二日酔い中の人も……

 

 

「まぁでも、神様と言っても様々でね。例えば北欧神話の主神オーディンや、ギリシャ神話の三大神であるゼウス、ポセイドン、ハーデスと、他にも数多の神が居るんだ。ここ日本にも、主神である天照大御神(あまてらすおおみかみ)が居るしね。けど、神器(セイクリッド・ギア)を創ったのは聖書の神だよ。俺たち神父が主と崇めている、ね」

 

 

か、神様ってそんなに居るのか……

 

 

覚えるの大変そうだな。

 

 

「で、話を戻すけど神器(セイクリッド・ギア)は、ルドガー君のみたいに不思議な力を与えてくれるのよ。その力って言っても神器(セイクリッド・ギア)によって色々な能力があるし、幾つあるのかも分かっていない。発現する人間はランダムで、誰がどの神器(セイクリッド・ギア)を持っているかなんて、見なきゃ分からない。っていう謎だらけの力が神器(セイクリッド・ギア)よ。分かった?」

 

 

そこで俺はふと、疑問点を浮かべる。

 

 

聖書の神とやらに創られたのが神器で、人間にのみ宿る。宿る神器(セイクリッド・ギア)はランダムらしい。さらに総数やら能力やら不明のものが多いっぽい。

 

 

うん、ここまでは理解できた。けど、所謂別世界からやって来たマクスウェルの思念と力が神器になっているのはどういうことだろう?マクスウェルの思念も力も、聖書の神に創られたわけでは無い。んー………何か仕掛けでもあるのか、もしくは神器の知られていない部分があるのか………

 

 

………………うん、一旦保留。この問題は俺には少し難しい。また分かる事があれば、その時にしよう。ってことで、この件は後回しだな。

 

 

「うん、分かった。えっと次に質問していい?」

 

 

「何かしら?」

 

 

神器(セイクリッド・ギア)に関しては分かったんだけど、正臣さんの持ってる剣は?それも神器?」

 

 

俺の目は正臣さんが腰に差す鞘に収まった剣に向いていた。何だか不思議な感じがすると思ったら、あの剣の周りには普通より明るい色を持った精霊が集まっているんだよな。まぁ、全部微精霊サイズだけどさ。

 

 

「あぁ、コレかい?これは違うよ」

 

 

「んーーー………でも、普通(?)とは違うよね?」

 

 

俺の言った言葉にクレーリアさんも正臣さんも目を丸くする。大層驚いた様子だ。

 

 

「…何でそう思うんだい?」

 

 

「え?なんか初めて見た時から変な感じがするなぁ、って思って。で、今の状態で見てたら、小さいけど普通より明るい色をした精霊がたくさん集まってるから。それに、友達の家に飾ってあるのも似た感じがするし」

 

 

俺がそう言えば、二人は再び目を合わせた。相変わらず驚愕しているといった目だ。

 

 

「え?色々と突っ込みたいとこはあるんだけど……なに、聖剣ってそうなってるの?」

 

 

「いやいや、僕も初耳だし、教会内の聖剣研究をしている部署からもそんな話は聞いた事無いよ」

 

 

「え、じゃあ、何?今のって、ある意味世紀の大発見?」

 

 

んーー?なんか、話がまたどっかの方向に飛んでいきそうな予感。ってか、俺は今、世紀の発見をしたのか?

 

 

「えーーと、ルドガー君?この剣の周囲に精霊が見えるのね?」

 

 

「うん。周囲って言っても、こう……薄い膜を張ってる感じかな?で、膜を作ってる粒子みたいなの一つ一つが精霊みたいだよ」

 

 

「そ、そうだったのか……」

 

 

「教会関係者でも知らなかったってのは、ちょっと驚きね」

 

 

「う……し、仕方ないだろ!今まで聖剣の周囲に見えるオーラは聖剣由来の波動だというのが、通説だったんだ!……はぁ、1+1=2じゃないって言われた気分だよ」

 

 

「ふふ、そうね。でも、今までの常識が覆るのは面白いことだわ」

 

 

クレーリアさんはよほど嬉しかったのか、鼻歌交じりに肩を落とす正臣さんをからかう。って言うか、俺が気になってたのは聖剣って代物だったのか。そういや、エレンピオスでも誰かが武器として使ってたようなそうでないような?んーー……

 

 

「ねぇ、クレーリアさ――むぐ」

 

 

突如として俺はクレーリアさんに口を塞がれ後ろから押さえつけるように腕の中に捕まってしまう。一瞬暴れようとするが、正臣さんが口に人差し指を立て、視線を上へと向ければクレーリアさんも『しゃべっちゃダメ』と口パクで指示してきた。俺はゆっくりコクリと頷いて、クレーリアさんの手を退かす。

 

 

正臣さんの方は先ほど話していた聖剣の柄へと手を掛け、窓から外をそっと見る。だが次の瞬間!

 

 

「ぐっ!?」

 

 

「正臣!!」

 

 

パリィン!

 

 

という音と共に何かが窓を砕き、正臣さんの頬を掠めた。横に一筋赤い血の粒が浮かんだと思ったら、そこから血が筋になって流れ出す。

 

 

「大丈夫!それよりも、逃げるよ!」

 

 

「えぇ!」

 

 

何が何やら分からないまま、俺はクレーリアさんに横脇に抱えられ

そのまま壁を突き破り、すぐそばの崖から一気にダイブした。

 

 

………情けないことに、急な事で俺は一切言葉が出なかった。

 

 

 

 

…………空が青いなぁ。

 

 

と、落下する間現実逃避をしていましたとさ。

 

 

 

――side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ユリウス side

 

 

どうも、とでも言えばいいのか?俺はユリウス・ウィル・クルスニク。今年で14になる。近所の中学に通っていて、家族構成は父、母、弟、の四人家族だ。まぁ、そこに事の真偽は分からないが、祖父を名乗る人物……というか、神様が居るらしいんだが。

 

 

まぁ、ひとまずそれは置いておこう。今日は近所の商店街が主催で毎年行っている『桜祭り』というのがある。大人たちが、日頃の息抜きとして始めたらしい行事だが、意外や意外。きっちり利益も上げられているらしく、さらに新たな住人の呼び込みにも一役買っているらしい。

 

 

で、その『桜祭り』当日。現在の時刻は午後5時を少し過ぎたくらい。先ほども言ったが、俺は今年で14。中学二年生になる。その俺が、両親と一緒に祭りを回るのは、中々にハードルが高いと思わないか?

 

 

「はぁ~……なぁ、母さん。俺もう今年で14だぞ?友達とも約束があるんだけど」

 

 

「いいじゃない。お友達も一緒に回りましょう♪」

 

 

「いやいやいやいや!思春期の男子が親と一緒に祭りを回るってのは、相当ハードルが高い!……なぁ、親父。親父から何とか言ってくれないのか?」

 

 

「ふむ……ユリウス、少し耳を貸せ」

 

 

「……何だよ?」

 

 

俺は親父に引っ張られ、耳だけ貸す事にする。

 

 

(アレが居る間だけ、我慢してくれ)

 

 

(アレ、ねぇ……)

 

 

「ふぉっふぉっふぉ。いいのぉ、いいのぉ。日本の祭りは初めてじゃが、趣があるわい。水路脇に咲き誇る桜など、よく画になっておるわい。そして…」

 

 

祖父を名乗る、オーディンが桜から別のものへ視線が映る。

 

 

「ふぉっふぉっふぉ!日本の女子も、中々に美人がおるわい」

 

 

「…………俺さぁ、アレが祖父って思いたくないんだけど」

 

 

「ぬっ!?」

 

 

あぁ、聞こえてたのか。若干距離が離れてるんだけどなぁ……

 

 

あ、近寄ってきた。

 

 

「傷つくぞ、ユリウスよ!儂の何が不満なのじゃ!?」

 

 

「全部」

 

 

ガーーン

 

 

と、効果音が聞こえそうなほど落ち込んでいる。んーー、本当に祖父なのかも怪しいんだよなぁ。今まで人間として生きてきたんだ。で、祖父が神様って事は、俺の四分の一は神様って事になる。だが、そんな実感は湧かない。

 

 

「はぁ……ほら、だから言わんこっちゃない。オーディン様、子供相手なのですよ?もう少し自重したらどうかしら?」

 

 

今回オーディンのお付きだというゲンドゥルさんが、オーディンに突っ込みを入れる。この人が居て良かった、本当に。

 

 

「む、むむ……し、しかし、ユリウスよ!男とは元来、多少なりとも助平なものじゃ。お主とて、女子に興味が無いわけではあるまい?好いとる女子くらいおるじゃろう?」

 

 

「んーー、そういうのは居ないなぁ」

 

 

「なんじゃと!?それはいかん!よし!お主にこの祖父が女子のなんたるかを教えて進ぜよう。さぁ、いざ行かん!ジャパニーズキャ――」

 

 

ゴッ!!

 

 

鈍い音が聞こえた…

 

 

俺の前には頭にタンコブを作った北欧の主神様(笑)。

 

 

そして、その後方にはおそらく屋台の予備と思しき、小型のガスボンベを振り上げる母さんがいた。因みに今構えてるのは二投目。一投目は北欧の主神様(笑)の傍に転がっている。

 

 

「お義父(とう)さま?いい加減にしてくださいね?ブチ殺しますよ?」

 

 

め、目が笑ってない。表情は笑っているのに、目だけは笑ってない……

 

 

「ぬ、ぬぬぅ……コ、コブ…コブが…!コ、コーネリアよ!儂以外なら死んでおるぞ!」

 

 

「大丈夫です。ビズリーも死にませんでしたから」

 

 

「そういう問題か!!」

 

 

当の親父を見れば、所在なさげにそっぽを向いている。あぁ、本当なんだな……親父も昔アレを喰らったことがあるって事か。

 

 

そこで、親父が再び横に立ってくる。

 

 

「……まぁ、アレとの関係は今夜にでも打ち明けよう。それよりも、もういいぞ。友達と待ち合わせでもしているのだろう?」

 

 

「ん?いいのか?さっきは…」

 

 

「あぁ、構わん。どうやら――」

 

 

ガンッ!

 

 

という鈍い音がして発生源を見れば、どうやら母さんの第二投目が直撃していた。で、母さんの手には第三投目のガスボンベが装填されていた。

 

 

「ウチの子の教育に悪すぎます!!とっとと、帰ってください!!」

 

 

「じゃ、じゃから、ボンベはやめい!これ以上は死んでしまうわい!」

 

 

「ビズリーさんとこの嫁さんが、また暴れてるぞー!」

 

「止めろー!また壊されたら敵わん!」

 

「お、奥さん、落ち着い――ぺが!」

 

 

「離してください!積年の数々のセクハラの恨みを、今日ここで清算するんです!!」

 

 

「ダメだ、話通じねえーー!!」

 

「旦那どこだー!」

 

「誰か、ビズリーさん呼んで来い!!」

 

「う、うちの出店ーー!!」

 

 

……俺は顔を手で覆う。商店街の皆さんごめんなさい。

 

 

「はぁ……この状態では、ユリウスに居てもらう意味もないからな」

 

 

「あー、なるほど確かに。じゃあ、俺はこれで」

 

 

つまり簡単に言ってしまえば、北欧の主神(笑)の接待みたいなもんだったのか、俺の役割は。まぁでもこれで晴れて自由になったな。

 

 

友達も来ているだろうという事で、キョロキョロ探していると、見知った顔が居た。いつも通りの活発そうな恰好だな。俺よりよっぽど背の低い彼らに近付いて話しかける事にする。約束はもっと遅い時間だしな。暇を潰すにはちょうどいい。

 

 

 

「よう、イッセーにイリナ」

 

 

「あ!ユリウス兄ちゃん!」

 

 

「あ、ユリウスさん!」

 

 

俺の姿を確認すると、テテテと駆け寄ってくる。なんか小っこい子供って子犬みたいだよな。

 

 

「ユリウス兄ちゃん、ルドガー知らない?」

 

 

「ん?一緒じゃないのか?朝出掛けたっきり帰ってこないから、お前らと一緒だと思ってたんだが」

 

 

「え?知らないよ?ユリウスさんもルドガー君の場所知らないの?」

 

 

「……変な事に巻き込まれてなきゃいいんだけどなぁ」

 

 

どうにも嫌な予感がするな。普段からルドガーは何だか隠れてコソコソやってるみたいだし。それに、一応北欧の主神の来訪、あと今日はなんか街の空気がピリピリしてる……

 

 

「なぁ、イリナ。この際ユリウス兄ちゃんでもいいんじゃないか?」

 

 

「んー、そうだね。ルドガー君じゃないけど、ユリウスさんでも良いかな?」

 

 

「ほっほーぅ……ルドガーじゃなくて悪かったなぁ!」

 

 

「「いたたたたた!!!」」

 

 

ちょいと小生意気な二名の頭を鷲掴みにして、少し力を入れる。当然本気なんか出さない。年齢差があるしな。

 

 

「はぁ、で?ルドガーの代わりって?」

 

 

「うぅ…いたた………えっと、俺とイリナだけで祭りは不安だから、ルドガーも一緒に行こうと思ったんだ」

 

 

「そうそう。パパ達からもルドガー君たちと三人でなら子供だけでもいいよって言ってくれたから!」

 

 

あぁ、なるほどな。確かにこいつらの家とは家族ぐるみの付き合いをしている。信頼のおける者同士の子供だからって意味か。まぁそれに、こいつら商店街じゃ有名人だしな。最悪、その辺の大人が助けてくれる。

 

 

「まぁ、俺も約束まではまだまだ時間あるし、少しくらい付き合いますか」

 

 

「「やったーーー!!」」

 

 

二人は諸手を挙げて喜んでいた。これだけ喜ばれると、悪い気はしないな。

 

 

「取り敢えず、何か食うか。腹が減って仕方ないしな」

 

 

「「さんせー!!」」

 

 

「ん、良い返事でよろしい」

 

 

「「へへー」」

 

 

わしゃわしゃと頭を撫でてやると、にんまりと二人が笑う。ルドガーもこれだけ素直ならなぁ……

 

あいつの場合、撫でてやろうとすると、猫みたいに警戒するんだもんなぁ……あいつの頭を撫でられんのは母さんくらいか。兄としては少しショック……

 

 

「あ、でもどこで食べるの?座って食べたい」

 

 

「えぇーー、イリナは我儘だなぁ」

 

 

「むっ、我儘じゃないよ!だって行儀悪いじゃん!!」

 

 

「俺は気にしないけどなー」

 

 

「むぅぅぅ!!」

 

 

ぷっくりと頬を膨らませてイリナは不機嫌になる。ったく、こいつらは。というか、問題はイッセーの方か。

 

 

「まぁ、イリナの言う事が正しいな。歩きながら食べて人にぶつかったらマズイしな。って事で、イッセーそれでいいか?」

 

 

「むぅ……ユリウス兄ちゃんが言うなら……」

 

 

「はは、ありがとよ。じゃあ、石段を上ったとこで食べるか。ほら、裏山んとこの」

 

 

「「はーい!」」

 

 

うん、良い返事だ。俺は子供二人を引き連れて香気漂う屋台群へと足を進めた。

 

 

 

 

 

 






サラッと、母とオーディンの関係性分かりました?w


この辺に関しては、また後日説明します!ちと、話運びが強引ですが、このままお付き合いいただければ幸いです!


では、また次回
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