さて、30分探索したことにしましてですね、合流したのはいいですがどうしますか?
「とりあえず情報を共有するでヤンスよ」
「そうだね。そうしよっか」
了解です。10分かけて情報共有を終えたことにしましょう。
「ふむ……つまり屋上に行って、その怪物の腕だとかいう像を壊せば脱出できるかもしれない、というわけでヤンスか?」
「うん。壊すためのものはこっちで調達しておいたから大丈夫だと思うよ」
「私が硫酸で像の一部を壊しやすくして、そこに蘭のハンマーを撃ち込む。そうすれば壊せるはずよ」
「でも《STR》16のやつが打ち付けたハンマーで壊せなかったら詰みだよな? もし壊せなかったらどうするんだ?」
「その時は《武道》+《キック》よ」
「まぁ、うん。それも選択肢には入れておくよ。とにかく今はあの像を壊して脱出できるかできないかを検証しないと」
「今更校則違反を気にしてもしょうがないし、屋上に行くか」
「よし。じゃあみんなで屋上に行くでヤンスね」
屋上に行くようですね。では階段の隣にある階段を上ってあなたたちは屋上へと向かいます。……が。
階段を上り始めるとすぐにあなたたちは異様な気配を感じ取ります。先程2階へ続く階段を上った時よりもさらに強い冷気と悪寒。その正体はあなたたちの目に映るような形で現れました。
フワリ、フワリと階段を上るあなたたちの前に現れる提灯大の宙を浮遊する青白い光。それは定番の心霊現象『人魂』でした。《SAN》チェックです。1/1D5です。
滝谷《SAN》64 → 92 失敗
永琳《SAN》64 → 91 失敗
響 《SAN》44 → 52 失敗
蘭 《SAN》49 → 18 成功
「(コロコロ)……3でヤンス」
「(コロコロ)……1」
「(コロコロ)……あ、ヤバいぞ。5だ」
5点以上減少した響、《アイデア》でどうぞ。
響《アイデア》85 → 94 失敗
「危ないぞ……なんとか発狂はしないで済んだ」
「マズいでヤンスね我那覇氏。《SAN》値30台でヤンスよ」
「いつもならセルフ発狂しているんだけどこのシナリオじゃあできないからなあ。にしても、なんなんだこの人魂は」
人魂は見る人によって数が違います。滝谷と永琳、響が6個、蘭が7個です。
少しの間階段を上るあなたたちの周りを浮いていた人魂ですが、屋上に出るためのドアに差し掛かった瞬間霧散し、消えてしまいました。
「多分破った校則の数なんだと思うよ今の。じゃないとその説明がつかないし」
お、正解です。皆さん結構ギリギリでした。細かいところでちょこちょこ校則違反していましたね。あと昇降口でライブとかしていましたし。
「仕方ないだろ。あんなの可愛いくらいだぞ」
いっそあなたがずっとそんな調子でしたらもっと面白いことが起っていたかもしれませんけどね。
さてさて、屋上の階段を上り切ったあなたたちは扉の前まで来ました。鍵は開いています。出られますよ。
「じゃあ男の小生が先頭に出るでヤンスよ」
「じゃあ私は3番目」
「自分は2番目な!」
「はいはい最後尾最後尾。私は背が低いから何も見えないわ」
では扉を開け屋上に出た瞬間、生ぬるい風があなたたちを包みます。夏らしいじめっとした湿気と僅かに温かいその風の中に、この世の物とも思えない寒気が混じっています。
「田中氏らしい人影はないでヤンスか? 屋上を見渡してみるでヤンス」
田中の姿はありません……が。その代わりに屋上の中心にある1体の彫像が鎮座していました。
それは人間の左腕の肘からその先の部分が彫られている不気味な彫像です。
「あれが呪いの彫像でヤンスか」
「近づいて確かめるよ」
「硫酸の入った瓶を取り出しつつ、私も行く」
「自分も見に行くぞ。触っても大丈夫か?」
大丈夫ですよ。
えー、彫像はただの左腕ではなく、掌には獣のような恐ろしい歯がむき出しの口が彫られています。それは携帯電話で圏外を確認したときに蘭が見た、あの不気味な画像によく似ていました。さて、この彫像を見てあの不気味な画像をフラッシュバックしてしまった……あのときあの恐ろしい画像を見てしまった蘭は1/1D3の《SAN》チェックです。
蘭《SAN》48 → 35 成功
「刻んでくるね。それで他に何か特徴とかはある?」
彫像の肘部分にあたる土台は柔らかい粘土のようになっていて、そこには今まで刻まれたのであろう大勢の人たちの名前が書かれています。
その名前の中に……ありました。今日あなたたちとこの学校に肝試しにやってきて今なお行方不明になっている友人、田中俊の名前が。傷が比較的新しいことからおそらくその友人が書いたものとみて間違いないでしょう。
いまだに姿が見えない友人と、刻んだ名前の持ち主を呪う彫像……この2つから友人の身に何が起こったのか。《アイデア》チェックをお願いします。
滝谷《アイデア》50 → 53 失敗
永琳《アイデア》65 → 76 失敗
響 《アイデア》85 → 15 成功
蘭 《アイデア》70 → 88 失敗
「そんな! 成功したの自分だけか!?」
「滝谷はともかく、
「これがサイコロ神のお告げなんだね……」
「クソルーニーは死ねって言っているようでヤンスね」
いやー、よりにもよって《SAN》値ピンチのあなたが成功してしまうとは。
ええ、《アイデア》チェックに成功した聖花は鮮明に想像してしまいます。田中がこの彫像に自分の名を書いたその瞬間、この彫像が動き出し、掌にある恐ろしい口の中に彼が呑み込まれていくその光景を。1/1D6の《SAN》チェックです。
響《SAN》39 → 57 失敗
「(コロコロ)……2。悪運は強いのかな。減少値は小さいから助かるぞ」
「そういえばさっきの一時的狂気もブロックしていたでヤンスし、ある意味凄いでヤンスね」
「でもあと1点《SAN》値失えば不定の狂気だよ」
「響。あんたはもう目を瞑ってなさい。どんなことが起きても目を開けてはだめよ? 余計な想像もしなくていいから心を無にしてなさい。いいね?」
「アッハイ。とりあえず扉の近くまで行って彫像から距離を取って何も見ないように蹲る。聞こえないようにイヤホンを耳に当てて結構な音量で音楽を流す」
わかりました。で、残った3人はどうしますか? 壊しますか?
「「「壊す」」」
ではどう壊しますか?
「手筈通りよ。私がまず硫酸をぶっかけるから、蘭はそのあとハンマーでやっちゃって頂戴。一思いに思いっきりね」
「うん、わかったよ」
「待つでヤンス。女性ばかりに危ない橋を渡らせるわけにはいかないでヤンスよ。硫酸は小生がかけるでヤンス」
「……わかった。頼んだわよ」
「頼まれたでヤンス。……さて、いくでヤンスか。と硫酸の瓶から蓋を外して不敵な笑みを毛利氏に向けるでヤンス」
「うん。両手でハンマーを握って構えるよ」
「……よし、いくでヤンス。瓶の中身を彫像にぶっかけるでヤンス!」
瓶の中に入っていた透明な液体……硫酸が彫像にかかります。従来の硫酸よりも強い硫酸だったのでしょうか。かけられた彫像はジューッと音を立て、ボロボロと崩壊が始まります……そのとき。
硫酸をかけた滝谷は《幸運》判定です。
滝谷《幸運》65 → 77 失敗
滝谷が硫酸をかけた瞬間、彫像は突然動き出して滝谷を襲います。
コンクリート色だった彫像は真っ白な毛皮に覆われたものに変化し、それは滝谷の腕をがっしり掴み、土台部分に向かって物凄い力で引き摺っていきます。そしてその土台部分はいつの間にか、吸い込まれるほど暗く深い闇が広がっている人一人程度ならば通れる程度の穴ができあがっていました。《SAN》チェックのお時間です。1D3/1D6でどうぞ。
滝谷《SAN》61 → 43 成功
永琳《SAN》63 → 88 失敗
蘭 《SAN》47 → 82 失敗
「(コロコロ)……3」
「(コロコロ)……2」
「(コロコロ)あ、6だ」
お、おやおやまあまあ。では5点以上減少した蘭ねーちゃん、《アイデア》チェックです。
蘭《アイデア》70 → 49 成功
「ゴメンね滝谷君、一時的発狂だ。《クトゥルフ神話》技能6パーセントもらうね」
響以外にも1パーセントプレゼントします。
「い、いやいやいや、呑気に技能貰ってられないでヤンスよ!?」
ま、まだ希望はありますよ。発狂の種類を決定します。1D10どうぞ。
「(コロコロ)……5」
えーと、一時的発狂の5番は……『探索者をその場に釘つけにしてしまうかもしれないような極度の恐怖症』です。……あ。
「蘭らしい発狂だね。あ……あ……ご、ごめん滝谷君……私その……体が動かない……」
恐怖のあまり固まってしまっている蘭ですが、そんな彼女などお構いなしと言わんばかりに、腕は滝谷をどんどんどんどん暗闇の方に向かって引き摺っていきます。
滝谷も抵抗しているようですが《STR》対抗なんてしても意味ないくらいに力に差がありますので、あと数秒もしないうちに闇の中に連れ込まれてしまうでしょう。
「あ、あ……どうしよう……ポロリと手に握っていたハンマーを落とす……永琳! 後は頼んだよ!」
「! 了解したわ蘭! 勝負よ! 蘭が落としたハンマーを取って滝谷を掴む手を破壊するわ!」
良いでしょう。《幸運》に成功したら認めます。
永琳《幸運》70 → 60 成功
永琳のとっさの行動は功を奏し、蘭が落としたハンマーを彼女は手に取り、滝谷を掴む彫刻に向かって振り落とされました。
振り落とされたハンマーは彫刻に直撃し、硫酸がかけられていたこともあったせいかあっさりと粉々に破壊されました。滝谷を引っ張っていた物凄い力もなりを潜め、彼は解放されます。滝谷を取り込もうとしていた漆黒の穴も、どんどん小さくなっていき、元の彫刻が置かれていた石造りの台に戻っていきます。
そんな光景を呆然と見つめるあなたたちの耳に、恐ろしい声が響いていきます。
『アクイアルトコ ワレアラワレル イツカマタ カナラズ ……』
怪物の断末魔にも似たその声は、穴が完全に閉じるのと共に止みました。そしてこの学校を包んでいた寒気や悪寒も霧散し、あなたたちはずっと感じていたような雰囲気から解放されます。そして……夜は明け、夏ということもあって少し早い時刻ですが太陽が昇り、眩しい光があなたたちを包みます。
あなたたちはその太陽の光を見て思います。ああ、恐怖の夜は終わったのか、と。
一時的狂気で固まってしまっていた蘭も、あと一歩で不定の狂気にさらされるところだった響、恐怖から解放されて安堵の溜息を吐きます。
1階に降りてみれば普通に開いている出入口。あなたたち4人は靴を履き替え無事この廃校から脱出。家に帰ることが出来ました。
ではエンディングに行きましょう。
――――・――――・――――・――――
えー、まずは探索者全員生還、おめでとうございます。最後の最後で肝が冷やされましたが、無事で何よりです。
日常に戻ったあなたたちは警察に行きました。あの夜、一緒に肝試しに行った田中がいまだに行方不明だからです。
警察官である蘭も時間が出来れば捜索し、捜査状況を何度も聞くほどです。ジャーナリストの滝谷も芸能人の響も大学教授の永琳も、それぞれの人脈を使って田中のことを探しますが一向に見つかる気配はありません。
そして数か月後、あの学校が取り壊されることが決まりました。もうあのような恐ろしい怪談を聞くこともないでしょう。
それからまた少し時間が経ち、何事もないそれぞれ違うありふれた日常に戻るあなたたち。そんなあなたたちはまた再び4人で集まることが出来ました。最初こそ現状報告の話題でしたが、本題は田中のことでした。田中を見かけなかったとか、捜査状況はどうなっているとか、それぞれ話し合いますが、何もわかりませんでした。
それから少し世間話をして、帰るために駅へ向かう4人。夜のネオンライトがあふれる街の人ごみの中、ふとあなたたちは今まで自分たちの話題上に上がっていた人物の顔を見たような気がします。
「どこだって、人の欲、不満や悪意は渦巻く。次はどこへ行こうか」
あの日の夜に消えた友人はそう呟き、口元に笑みを浮かべた気がしました。……そう。顔と両掌の3つの口元に。
しかし気が付くと、その友人らしき人物は人混みの中へと消えて行ってしまいました。
気のせいだったのだろうかと思いつつ、あなたたちはまたありふれた日常の中へと戻っていくことでしょう。……すでにこの世にあってこの世のものではない、友人のことを心配しながら。
以上をもちまして、COCシナリオ【ある学校の階段の怪談】を終了させていただきます。
お疲れ様でした。
「「「「お疲れ様でした」」」」
――Good end!!
これで書き直し終了です。
一応小説化できるセッションはまだまだあるんですがいかんせん時間がとれず……社会人は時間を作るのが難しいですな。
次回はちょっと人数多めのセッションを小説化します。それでは。