神樹の森の散策が終わったあなた達Aグループが民宿『くしなだ』に戻ってから1時間後。時刻は18時、夕食の時間がやってきました。えっと、食べたくない人とかはいますか? 強制じゃないので島にあるコンビニとか外食店とかで済ますことができますけど。勿論自腹ですが。
「なんでそんな質問をするんだ。普通に出されたものをいただくに決まっているだろう」
「オレも特に抵抗はないです」
「私もだよ」
「俺も食べるぜ」
「勿論いただくわ」
「いただきます」
わかりました。では食事シーンに参ります。
皆さんは食堂に集まって料理を楽しんでいます。民宿『くしなだ』で出されたのは島で採れた野菜や肉、魚介類を使った豪勢な日本料理で、見た目も味も量も、あなた達を充分に満足させることができるくらいに素晴らしいものでした。
そしてお待ちかねのデザートです。
皆さんの前に出されたのは様々な色、形に整えられたフルーツの盛り合わせです。馴染みのある物からマイナーなものまで色々な種類のものが盛られています。
さて、このフルーツなんですけど……食べる方はいらっしゃいますか? ちなみに全員、同じタイミングで配膳されましたので現状誰も手を付けていません。
「なにかあるわねこれ。まぁ食べるわよ。ある意味これを楽しみにしていたんだから。美味しそうね咲夜、と続けて一切れ頂くわ」
「では私も返事をしつつ一口」
「オレも食べます。タイミング的に先輩たちよりも前がいいです」
「あ、じゃあ私は津田が食べた後に口にするとしよう」
「なにかあったら任せてね」
「俺は……いや、食べようか」
ではレミリア、咲夜、タカトシ、白夜はすぐに食べたということにします。えー、フルーツを食べたあなたたちの感想ですがそれは……。
「ぶっふえっ!?」
「なっ、なんだこれっ!?」
「苦えっ!? 不味いっ!?」
と、よほどの味音痴でない限り向かいの机に座るBグループのメンバーたちと全く同じ物になることでしょう。
フルーツはどれも、何を食べても苦く、渋く、とても食べられた物ではありません。
「……あら? 私の舌がおかしくなったのかしら? 咲夜。って暗い顔をしながら訊くわ」
「でしたら私の舌もおかしくなったようでございます。奇遇でございますね。と苦笑いしつつ返します」
「……あん? なんだこれ。眉間にしわを寄せつつ飲み物に手を伸ばすぜ」
「こ、これは……顔を真っ青にさせながら目を見開きます」
「どうした津田」
「津田くん?」
「せ、先輩たちは手を付けないでください。GM、串灘さんたちはどこか近くにいますか?」
串灘咲耶が食べ終わった食器類を片付けて部屋から出て行こうとしていましたが、Bグループの人たちが上げた声に反応して立ち止まっています。
「じゃあ咲耶さんを呼びます。咲耶さん、ちょっとって感じで――」
「はい?」
「あなたじゃないですよ」
「わかっています」
「じゃあ気を取り直して咲耶さん、ちょっとって感じで手招きします」
串灘咲耶がタカトシのところまでやってきます。
「は、はい……あの……」
「これ、ちょっと食べてみてくださいってフルーツの盛られたお皿を咲耶さんに差し出します」
では串灘咲耶は失礼しますと断りを入れ、皿に盛られている果実のうち1つを手に取り口の中に入れます。すると顔を顰め、狼狽した様子でオーナーを呼びに走っていきました。
少しして武彦が到着し、真面目な表情のまま頭を下げます。隣に立つ咲耶も怒られたのでしょうか、しょんぼりした様子で頭を下げます。
「味の確認をしないまま、皆様に提供してしまい大変申し訳ございませんでした。実は1年前から酷く苦い果実が混じりはじめチェックをしていたのですが、今回はそれを怠っていたようです。私の方からきつく言い聞かせておきました。今後このようなことが起らぬよう努めてまいります。ご迷惑をおかけしたお詫びとしまして皆様には、この島の最高級地酒である稲田酒造さんのお酒を1杯提供します。改めまして、大変申し訳ございませんでした」
と言うと、後ろに置いてあったカートを動かしてあなたたち全員の前に御猪口が配られます。中には透き通った液体が入っています。稲田酒造の地酒です。
「香りを嗅いでから一口呑むわ」
香高くこれ以上ないほどに美味な日本酒です。この場に居る全員、美味しいお酒を飲み慣れているであろうレミリアまで、これよりも美味しい日本酒を飲んだことはないでしょう。口にするたびに体が温まり、そこから力が沸き上がるような感覚を覚えます。
「……これは素晴らしいお酒ね」
「ええ……御見逸れ致しました。稲田酒造とはどこに?」
「村のはずれにある酒屋です。老夫婦が経営しておりまして、お土産屋さんとしても有名なんですよ。是非足を運んでみてください」
「明日は確か自由行動だったわね。立ち寄らせていただくわ」
「オレたちも行きましょう。これは良いお土産になりますよ」
「ああ、私はあんまりお酒を嗜まないがこれは良いものだ。いくつか買っておきたいな」
「津田くんはお酒と言ってもわかめ――」
「言わせねえよ?」
「んま、俺も行くからよ。Aグループ全員で行こうぜ? せっかく知り合ったんだしな」
「そうですね。みんなで行った方が楽しいですし」
ということで食事シーンはここまでとさせていただきます。さてここから2時間、皆さんは自由に行動できます。出来ることは他のPC、NPCに話しかける、新聞や雑誌を読む、部屋で寛ぐ、お風呂に入るからお好きにどうぞ。旅館内の探索は特にないです。
そうですね……2回まで行動することを許可します。
「どうしましょうか。オレたち」
「そうだな、お風呂に入りたいが全員一緒がいいな」
「そうだね。他のみんなはお風呂どうする?」
「俺も一緒がいい。ある程度同時にみんなで入るようにしないか?」
「いいわね。そこで親睦を深めつつ情報を共有しましょう」
「では2回目の行動はお風呂ということにして、1回目はどうしましょうか? 個人的には串灘咲耶と接触したいのですが」
「じゃあ私は別行動をとるわ。白夜とお話をしたい」
「俺とか? なんで?」
「神樹の森の時の礼をしたいのよ。あとついでに御守りのことも聞きたいしね」
「なるほどな。じゃあ俺はロビーで新聞でも読んでいるから来てくれよ」
「わかったわ。というわけで咲夜は自由に行動してちょうだいね」
「では宣言通り串灘咲耶に接触します」
「オレは部屋で寛ぎます。勉強しないとなので」
「私も勉強しよう。津田、わからないところがあれば聞くと良い」
「私も勉強するよー。あ、でも部屋行く前に売店行かない? 軽食とか、あとお土産とか見てから行こう」
「うむ、そうだな」
「いいですね」
「こいつら普通に旅行を楽しんでいるな」
ベースは日常系TRPGなので自然な行動ですけどね。とりあえず決まったようですのでシーンに入ります。役員共はまぁ、飛ばしますよ。特に何にもありませんので。
ではまず白夜のシーンからロビーで新聞を読むんでしたっけ?
「ああ。レミリア達が使っていた手段を使って情報収集しているぜ」
さらっと判定飛ばしてきますね。じゃあレミリアと咲夜が集めた情報を共有したということで。
「よし。津田には風呂でこの情報を渡してやる」
「ありがとうございます」
「スタック組んで私が乱入するわ。ああ、いたわ。白夜さん少しよろしいかしら? と言いながら彼の正面の椅子の隣に立つわ」
「なんでMTG用語? まぁいいや。ん? ああ、レミリアさんか。なにかようか? 手に持っている新聞を畳んでレミリアさんと向き合うぜ。ついでに椅子に座るように手で促す」
「じゃあそれを確認してから椅子に座るとするわ。森でのことでのお礼をね。ありがとうね、助かったわ」
「俺はなんもしていないがな。てかなにがあったんだ?」
「それが私もさっぱりなのよ。あの泉を見ていたら、なんか知らないけどずっと見ていたくなっちゃってね。でもあなたの御守りを握ったら目が覚めたような感覚がしてね。自分でもなんであの泉を見ていたいと思ったのか、まったくなのよ」
「本当あのときはびっくりしたぜ。御守りは光り出すしそれをあんたの侍女がひったくるしで」
「咲夜が無礼を働いてごめんなさいね」
「いいさ、彼女も必死だったみたいだしな」
「そういえばあの御守り、一体何なの? 光り出したって言ってもそんなギミックのある御守りじゃないんでしょう?」
「勿論さ。中に入っているのは何かの金属片でな、光るなんてことは今までになかったよ」
「でも光っていたし、何かあるわよね。その御守りはいつどこで手に入れたのかしら?」
「さぁな、物心ついたときには持っていたよ。婆ちゃんか誰かからもらったのかもな」
「そう。それじゃあ失礼したわね。ただ礼を言いたかったから」
「気にすんなよ。残り二日もよろしくな」
「ええ。じゃあまたね。ということで私の行動は終わり」
わかりました。では咲夜のシーンに行きましょう。串灘咲耶と会うんですよね?
「はい。彼女を捜しに民宿内をうろうろしています」
では食堂で後片付けをしている咲夜を見つけることができます。
「近づきつつ声をかけます。お疲れ様です、串灘さん」
咲夜に声をかけられた串灘咲耶は申し訳なさそうな顔をしながら謝罪してきます。
「あ……十六夜さん。あの、先程は……本当に申し訳ございませんでした」
「私は気にしていないので大丈夫ですよ。それよりも片付け中でしたか。お手伝いをしましょう」
「えっ!? そんな……大丈夫ですよ。私の仕事ですから」
「でも私が話しかけては仕事も進まないでしょう。仕事の邪魔をするのは私ですので、手伝いをするのは道理というものです。それに私はこれでも家事は得意ですから。一緒に来ているお嬢様の侍女をしているのですよ」
「侍女……というとメイドさんですか?」
「はい」
「わぁ……本物のメイドさんなんですね。十六夜さんって綺麗でかっこいい人ですし、できるメイドさんって感じがします」
「実際にできるメイドさんですよ。ですからこの程度の手伝いはなんでもないのです。さぁ、時は金なりです。お手伝いさせていただきますので、終わった後に少しお話をさせてください。という感じで《言いくるめ》ます。今までの話の流れからして《説得》というより《言いくるめ》のほうがしっくりきますでしょう?」
むむむ、確かに。《説得》に技能振っていないからそういうロールプレイをしてきましたか。お見事です。
咲夜《言いくるめ》63 → 80 失敗
「いえ、それとこれとは話が違いますので……これは私の仕事ですし、十六夜さんはお客様なのですから手伝いは結構ですよ」
「御尤も」
「串灘咲耶ちゃんは賢いわねぇ」
「手伝うことは出来なさそうですが話しかけることは出来そうですので続行です。そうですか。出過ぎたことを言ってしまって申し訳ございません」
「大丈夫です。それでお話とはなんでしょうか?」
「大したことではないですよ。ただ……あなたとはどうも他人の気がしませんでしたので少々気になりまして。お嬢様も似ていると仰られていましたし、名前も同じ『さくや』ですから。そういうこともあって2人になれるところを見計らって声をかけたのです」
それを聞いた串灘咲耶は目を丸くしてやや興奮気味に返します。
「……実は私も、十六夜さんとはなにか縁みたいなのを感じていたんです。外国の方なのは見たときから察していましたけど……あの、私たち、昔どこかで会ったことはないでしょうか?」
「《心理学》を要求します。最初から思っていたのか、はたまた取り乱して思い込んでいるだけなのかを探りたいです」
許可します。《心理学》の結果は公表しません。
咲夜 《心理学》63 → ??
おおっとこれは……ええー、咲夜は確信します。彼女は本当に自分と縁を感じていたのであろうと。
「おや、クリティカルでも引きましたか? まぁどう転んでもロールプレイは変わりませんが。事務的に返しましょう。さぁ? 私はイギリスのスラム街の出ですからなんとも。お嬢様に拾われてからはずっとお嬢様にお仕えしていましたし、日本に来たのも6年前からですし、この島に来たのも今日が初めてです。あなたがこの島から出たことがないのであれば、私と会うことは絶望的でしょう」
「そう……ですか……」
「とはいえ、私自身もあなたとの間に何かを感じたのは事実。困っていることや、悩みがあるなら相談に乗りたいと思っています。様子からして、何かあるのでしょう?」
落としてから吊り上げますなぁ。
「本当は手伝いしながら仲良くなりつつ話題にもっていこうと思ったんですけど失敗しちゃったので。さて、彼女の反応はいかに?」
串灘咲耶は咲夜の言葉を聞いてどうしようか迷っているように目を動かした後、無理しているような笑顔を作ります。
「いえ……大丈夫です。心配していただいてありがとうございます」
「ふむ……断ってきましたか。単純に私が白夜さんよりも信頼度が低いのか、はたまた白夜さんに頼んでおいて私にも頼むことに気が引けたのか。《言いくるめ》に失敗したツケがここにも回ってきてしまったのか。なんにせよ引き際ですね。そうですか。では用件はそれだけですのでこれで失礼します。お仕事、頑張ってくださいね」
「はい。お気遣いありがとうございました」
「というわけで私の行動終了です」
ではこれで全員の1回目の行動を終わりにします。2回目に入ります。えっと、全員お風呂に行くんですよね?
「そうだな。ようやく私もロールプレイできるぞ。おっと、もうこんな時間か。勉強は切り上げてお風呂に行かないか?」
「そうですね。キリがいいですし、行きましょうか」
「この旅館混浴とかあるのかなぁ? あるのかなぁ津田くん」
「なっ、津田! おまえというやつは!」
「支度終わりましたんで先行っていいですか? 男湯に。という感じでオレたちはお風呂に向かいます」
「じゃあ俺は腕時計を見たあとに新聞紙を閉じて部屋に戻ろう。風呂にでも行くかこんな時間だし、ってな」
「私は部屋で寛いでいるわ。咲夜遅いわねぇ」
「ではここら辺で部屋に戻ります。お嬢様、ただいま戻りました」
「おかえりなさい咲夜。早速だけどお風呂に行くわよ。もう遅いもの。今日はもう寝ましょう」
「はい。詳しい報告はお風呂でゆっくりつかりながらお話ししましょう」
「じゃあ支度していきましょう」
「お供いたします、お嬢様」
では奇しくもAグループの皆さんは同時に大浴場の前に集まりました。
「あらあら、皆さんお揃いのようで。気が合うのねぇ私たち」
「驚きの白々しさですね」
「PC的には違和感がないセリフだからセーフだな。ロールプレイに参加するぜ。Aグループ全員が集合かい。本当に奇遇だな。津田って言ったか?」
「え? ああはい、そうですよ。えっと……夢幻さん?」
「白夜でいい、苗字は呼びづらいからな。それから変に気を遣う必要もないぜ? 年上ってったってこんなんだし、たった2人の野郎同士、仲良く背中でも流そうぜ」
「……そうですね。よろしくお願いします」
「じゃあ女同士、こちらも仲良くいきましょう。昔話でもしながらゆっくりとね」
「僭越ながらお嬢様。お嬢様の昔話はこの前の番組がきっかけで広く伝わったのでは?」
「……ああ、確かに。もう放送されたんだっけ? 覚えていなかったわ。えっと……見てくれた? って苦笑いしながら訊いてみようかしら」
「芸能人からの圧力を感じるぞアリア」
「こういうときは《知識》を振るに限るよ」
シノ 《知識》75 →
アリア《知識》75 →
「改めて見てもおふたりは《知識》が高いですね」
「ていうか嘘吐いてでも『あります』って言えばいいだろ?」
「レミリアの中の人が嵌めてくる可能性があるから嫌だ」
「パラノイアじゃないんだからそんなことしないわよ」
「あと私はダイス振りたい」
あなたはダイスを振るのが好きですもんねぇ。
「まぁな!」
「ということで判定するよー?」
シノ 《知識》75 → 84 失敗
アリア《知識》75 → 80 失敗
「…………」
「…………」
「……あら?」
「一気に気まずい雰囲気に」
「十六夜さん、フォローを頼むぜ? ロールプレイヤーの本気を見せてくれ」
「…………えっと……」
「厳しいでしょうね。だって言い出しっぺですもん、十六夜さん」
「自分の言葉がとことん裏目に出ちゃった形だもんね」
「主におまえらのせいだけどな」
「《言いくるめ》で判定したらどうだ? 御主人への判定は確か補正があったはずだろう?」
そうですね、10パーセントの+修正が掛かります。
「……ではそうしましょう」
咲夜《言いくるめ》63+10 → 84 失敗
「あっ」
「……みんなが私を苛めるわ……。ま、まぁ、うん。そうね、そんなこともあるわよね。ええ、大丈夫よ。さぁ、もうお風呂に行きましょう。……咲夜、あなたはとりあえず掛湯を水で埋めないで一発行きなさい」
「……仰せのままに、お嬢様」
「凄い声が聞こえてきそうですね」
いやぁロールプレイヤーのダイスは腐りますねぇ。まぁ、あの状況だとダイスに頼りたくもなりますが。
さぁさ、いつまでもお湯場の暖簾の前で突っ立ってないで中に行きましょう。
――To be continued…