社会人共がクトゥルフやった時のリプレイ   作:スパークリング

37 / 42
Part.6

 時刻は12半頃。眠っていた探索者の皆さんは目を覚ましてください。

 

「うーん、あれ?」

 

「……布団?」

 

「なんで俺ら寝てたんだ?」

 

「咲夜はどこかしら?」

 

「お目覚めのようですね皆さん」

 

「ああいたわ。咲夜、どういうことかしら? あとここはどこかしら?」

 

「稲田酒造です。お嬢様達はお酒を呑んだ後に眠ってしまったのですよ」

 

「……ああそうだ思い出した。そういやそうだ。呑んだ後の記憶がねえや」

 

「なんかすっごく幸せだったのだけは覚えているんですけどね」

 

 そんなやり取りをしていますと、串灘咲耶と稲田夫婦もやってきました。

 

「おはようございます」

 

「皆さん起きたようじゃな!」

 

「おはようさんだねえ! ところで気分はどうかのう!?」

 

 咲夜を除いた全員、1D3をお願いします。

 

「(コロコロ)……2」

 

「(コロコロ)……2」

 

「(コロコロ)……1」

 

「(コロコロ)……2」

 

「(コロコロ)……3」

 

 えー、タカトシは《STR》が、白夜とシノ、そしてアリア《CON》が、レミリアは《DEX》が永久的に1上昇します。なお、このステータス変化による他のステータスの変動は起こりませんのであしからず。対抗ロールが少し有利になった程度の強化だと思ってください。

 

「そりゃそうでしょ」

 

「ステータス書き直すの面倒だし、このまんまでもいいや」

 

「ていうかなんで酒呑んだだけで強くなれるんだ?」

 

 そこはほら、クトゥルフ神話TRPGですから。食べただけで強くなったり回復したりするものなんて腐るほどあるでしょう?

 

「それもそっか」

 

 さて、シーンを進めます。

 あなた達が目を覚ますと、上機嫌な手長ババアが八岐大蛇退治の伝説について語ります。大まかな内容は郷土資料館で串灘咲耶が語ったことと同じですが、

 

「八岐大蛇の子孫であるミツクビ様は神樹の森の奥の奥にある洞穴に住んでおってのう、今でも儂らは月に1回、さっき皆さんが呑んだお酒を3樽奉納して祀っておるのじゃ。ああ、そういえばもうそろそろ、奉納する時期じゃのう」

 

 と言って締めくくりました。

 

「へぇ。じゃあ私たちが呑んだお酒はその神様のためのお酒だったのね?」

 

「そうじゃよ。特別なものだから売りに出してはいないが、どうしても自慢したくてのう! じゃから儂とかけっこで勝った人だけに呑んでもらっているんじゃ! 美味かったろう!?」

 

「いや、あれはもう美味しいとかそんな次元じゃないですよ」

 

「あれには負けちまうが、売っているものでよければお土産に買ってってくれると嬉しいのう!」

 

「勿論買うわ」

 

「いいお土産が出来そうです」

 

 さて、このままロールプレイングをさせていてもいいんですけどぶっちゃけこれ以上の情報やイベントはなにもないのでここで一度切りますね。

 目が覚めたあなたたちは稲田夫婦と話した後土産の酒を何本か購入して稲田酒造から出ます。時刻は午後1時。昼食の時間です。

 こうなることは予想できていたのでしょう、串灘咲耶はお土産が邪魔にならないように気を利かせて、民宿『くしなだ』に一度戻って昼食にしようと提案してきます。えっと、一応訊きますけど、昼食を他の所で取りたい人はいますか?

 

「俺はどこでもいいし、せっかく食わせてくれるって言っているんだからお言葉に甘えるとするぜ」

 

「私も異論はないわ。ご厚意に甘えて『くしなだ』で取るとするわ。ねぇ、咲夜」

 

「勿論です」

 

「私たちも別にいいよな?」

 

「オレは問題ないです」

 

「私もー」

 

 わかりました。ではあなたたちは民宿『くしなだ』に向かいます。とりあえずお土産のお酒を部屋に置いてきたということにして、えー、なにか行動を起こしたい人はいますか?

 

「朝見かけなかったBグループの面子が戻って来ているかを確認したいわ。オーナーの武彦に尋ねるわ」

 

 まだ帰ってきていない、大丈夫だろうかと心配そうに返されるでしょう。他にはなにかありますか?

 

「特にないな。足りなさそうな情報はこれから行く場所で補完されるだろうし」

 

「だろうね。私も特にはないかなー」

 

「私もない」

 

「「同じく」」

 

 わかりました。では昼食を取り終えて、皆さんは移動を再開します。向かったのは神樹の森の近くにある大きな神社、『花宮神社』です。

 串灘咲耶に連れられて神社の境内に足を踏み入れたあなたたち。そこには巫女服を着た黒髪ショートボブの若い女性が掃き掃除をしています。

 

「ちなみに聞くが、その女性のAPPは?」

 

 えっとですね……14ですね。

 

「美人な巫女さんだな」

 

「別嬪さんですね」

 

「津田君は髪が短い方がタイプなのかな?」

 

「……あれ? 原作の津田ってどんなタイプの人が好きなんだっけ? 返事ができない」

 

「え? ごめんなさい私役員共詳しく知らないのでわかりません」

 

「確か明記されてなかったはずよ。というかどうでもいいわそんなの」

 

 えっと、進めますよ? 巫女服の女性はあなたたちに気が付くと箒を動かしていた手を止めてにっこり笑って会釈してきます。

 

「今回のツアーの皆さんですね。ようこそ、花宮神社に」

 

「皆さん紹介します。こちらはこの花宮神社でアルバイトをしている岩永千世さんです」

 

「岩永です。今日は私がこの神社の案内をさせてもらいます。よろしくお願いします」

 

「「「「「「よろしくお願いします」」」」

 

「この時期は神社の宝物殿が一般公開されております。ですので皆さんにはそこに収められているものをご覧になってもらいます」

 

「岩永さんは物知りですので、興味をお持ちになられた方は何でも訊いちゃってくださいね」

 

「ええ。おしゃべりは大好きですので、どうぞ気安く話しかけてくださいね。それではこちらへどうぞ」

 

 あなたたちは岩永千世と串灘咲耶の案内の元、花宮神社の宝物殿に着きました。宝物殿は境内から少し離れたところにある小さな建物です。

 入って部屋のど真ん中にあるショーケースの中に3つのものが展示され、名前が書かれたプレートの隣に細かい字で書かれた説明欄があります。また、奥の方には南京錠で厳重に施錠された扉がひとつあり、『関係者以外立ち入り禁止』の看板がその前に設置されています。

 あなたたちは最初に少し大きな日本刀のような刀の前に案内されます。

 

「順を追って説明させていただきます。こちらの剣は霊剣『別天羽々斬』のレプリカです」

 

「生命の木の幹に刺さっていたあの剣ね」

 

「ええ、そうです。現在の島根県にあたる出雲の国を根城にしていた恐るべき邪神、八岐大蛇を切り殺したとされる神剣『天羽々斬(アマノハバキリ)』。しかし、その神剣は八岐大蛇を斬ろうとした際、刀身を欠けさせてしまったのです」

 

「ああ、知っています。確か八岐大蛇は『天羽々斬』以上に強い神剣を持っていたんですよね」

 

「その通りです。八岐大蛇の尾には『草薙剣(クサナギノツルギ)』……別名『天叢雲剣(アマノムラクモノツルギ)』と呼ばれる日本で最強とされる神剣が眠っていたのです。『天羽々斬』は八岐大蛇の尾を斬り落とそうとした際、その『天叢雲剣』にぶつかり、刀身を欠けさせてしまいました。そして邪神が倒れた後、その跡地を通りかかったひとりの鍛冶職人がその神剣の欠片を見つけ持ち帰りました。そして、自分が鍛えた刀にその欠片を溶かして練り込むことで完成したのが『別天羽々斬』です。オリジナルの『天羽々斬』には劣りますが、その能力の一部を使役することができ、破邪の霊剣としての力でもって、邪な魔物を祓ったとされています」

 

 続きまして、と岩永千世が少し歩くと、そこには一枚の円形の鏡が展示されていました。

 

「こちらはこの花宮神社に代々伝わる神鏡、『日輪の神鏡』……のレプリカです。残念ながら本物は現存していませんので、文献に基づいて再現したものがこちらになります。太陽の神、天照大御神を祀る祝詞を読み上げることで、太陽の輝きを発するとされています。この輝きを浴びたものは日輪の加護を受けることができ、人間であれば強い精神エネルギーを、物であれば太陽光の性質を秘めた宝具として使用できると伝えられています」

 

「この鏡を使って祭事を執り行っていたんだな」

 

「昔はですけどね。今は存在していないので、少し違う形式で祭事を執り仕切っています」

 

 白夜の台詞に答えた岩永千世は、「最後に」と皆さんを古めかしい壁画の前に案内します。

 壁画の中心には巨大な枯れ木のようなものが描かれていますが、その枝の一本一本が真っ黒な触腕のように蠢いており、逃げ惑う人々を捕らえては木の幹に大きく開いた穴の中に放り込んでいるようです。

 

「ああ……なるほどね」

 

「これ私ですよね。別の分霊とはいえ」

 

 主従コンビは……というかクトゥルフをやりなれているあなたたちにはすぐに想像できてしまうと思いますがまあそういうことです。

 でもPCたちは基本的に知らないと思いますので説明させていただきます。

 

「この壁画はこの島の名物、生命の木に纏わる伝説が描かれています」

 

「生命の木の伝説? ということはこの化け物のような木が生命の木なのですか?」

 

「はい。かつてこの出雲の秘島にあったものは一本の巨大な枯れ木。しかし、その枯れ木は恐ろしい邪神が顕現した姿だったのです。時に千の枝を伸ばし、時に黒い山羊の仔を召喚し、時に美しき女性の姿となって次々と人間たちを襲い、食らっていました。しかしある日のこと、出雲の国から来た英雄が邪神に立ち向かったのです。戦いは三日三晩にわたり、ついに英雄は枯れ木の邪神の木の幹に霊剣を突き付けて邪神の邪気を祓いました。すると邪気を祓われた邪神は豊穣の善神と生まれ変わり、この出雲の秘島に恵みを与えるようになったのです。この豊穣の善神が生命の木であり、邪気を祓ったのがオリジナルの『別天羽々斬』とされています」

 

「なるほど、こういう伝説なのですね。なかなか面白い言い伝えです」

 

「ちなみに岩永さんはこの言い伝えを信じていますか?」

 

「ははは、まぁ、本当は言っちゃいけないと思いますけど信じていませんよ。現代っ子ですから。でもこの伝説自体は好きです。悪い神様が英雄によって良い神様になるって、素敵じゃありませんか?」

 

「それはわかりますねぇ」

 

「私からの解説は以上です。今の説明はさわりのものですので、さらに詳しく知りたい方がいましたらショーケース前の資料冊子をご覧になってください。また、その冊子はお持ち帰って結構ですので、よろしければこのツアーの思い出として受け取っていただけると幸いです」

 

 ちなみに詳しく読んだところで特に意味はありません。この伝説に対して博識になる程度です。いまの岩永さんの説明だけでシナリオ的には目的を達成しています。

 

「ああ、じゃあ詳しい説明はいらないな。ただこれで終わりというのは味気ないし、適当に話して終わりにしようぜ」

 

「そうだな。ところどころ詳しく岩永さんに説明を求める。描写はいらないが、そういうことをしたことにしてほしい」

 

 わかりました。ではあと30分ほど経過しまして、あなたたちは花宮神社の見学を終えます。

 

「岩永さん、ありがとうございました」

 

「「「「「ありがとうございました」」」」」」

 

「いえいえ、私も久しぶりにここを案内できて楽しかったです。引き続き出雲の秘島ツアーをお楽しみください」

 

 そう言ってにっこりと岩永千世はあなたたちを見送ってくれます。

 郷土資料館、稲田酒造、花宮神社と、神樹の森以外の観光スポットがすべて回り終えました。

 

「ということはいよいよか?」

 

 はい。最後に串灘咲耶は皆さんを神樹の森に連れて行ってくれます。時刻は3時ほど。充分な時間です。

 

「では皆さん、最後に神樹の森に行きましょう。この時間ならまだ叉木さんが案内してくれるはずです」

 

「流石串灘さん。完璧な案内だったわ」

 

「ふふ、ありがとうございます」

 

 微笑みつつ串灘咲耶はあなたたちを花宮神社の奥……神樹の森へ導きます。

 さて、神樹の森の手前に案内人の叉木が住む小屋があります。こんこんと串灘咲耶がノックするとすぐに叉木が出てきました。

 

「咲耶ちゃんか。それにツアーの皆さんも」

 

「こんにちは叉木さん。昨日に引き続き、皆さんを神樹の森の生命の木まで案内してくれませんか?」

 

「ふむ……それは構わないが、今日は違う客が来るのではなかったか?」

 

「え? あ……その、Bグループの人達はやっぱり来ていないのですか?」

 

「ああ。今日ここに来たのは咲耶ちゃんたちだけだ……まさか、行方不明なのか?」

 

「はい……」

 

「ふむ……まぁいい。案内だったな。すまない、少し待っていただきたい」

 

 串灘咲耶とあなたたちツアー客に一言断りを入れて小屋の中に戻った叉木ですが、数秒もかからないうちに蛇取り棒を持って外に出てきました。普通に案内してくれるらしいです。「案内する」と言葉少なめに神樹の森へと向かっていきます。

 

「じゃあ着いていきましょう。私は後ろの方に行くわ」

 

「では私はお嬢様の後ろに」

 

「白夜さんは串灘さんの近くにいた方がいいんじゃない?」

 

「ん? ああ、そうだな。GM、彼女は先頭か?」

 

 そうですね、叉木の半歩後ろにいます。

 

「じゃあ俺が一番目だな」

 

「オレたちは真ん中の方にいましょう」

 

 ではそういう並びであなたたちは神樹の森に入っていきました。

 生命の木までの道を叉木の案内の元進んでいくあなたたち。一応言っておきますが、《ナビゲート》で判定せずとも叉木が生命の木に向かっていることはわかります。

 

「別に疑ってないわよ」

 

 まぁ一応の確認ですよ。2回目の案内だからでしょうか、昨日よりも気持ち早くあなたたちは生命の木の御神木に辿り着くことができました。生命の木の前にやってきたあなたたち。御神木の力強さに見とれているのも束の間、すぐに異変が起きます。

 なんと生命の木がうっすらとですが光を発しているように見えるのです。日光を浴びているとか、霊泉の水面の乱反射を受けてとか、そんな光り方ではありません。チカチカと、木そのものから光が発せられているように見えます。

 

「おい津田、アリア、私の目がおかしいのか? 木が光っているように見えるんだが……」

 

「い、いえ俺もですよ先輩。木が光ってます……」

 

「私もそう見えるよ?」

 

 不思議な現象は続きます。次に白夜。あなたは自分の胸ポケットから生命の木と同じような光が灯っていることに気が付きます。

 

「胸ポケットというと……あの御守りか。びっくりして御守りを取り出して確認してみる」

 

 光源はまさにその御守りでした。生命の木以上に強い光をチカチカと発しているその御守りは、まるで生命の木の輝きに反応しているかのようです。

 

「これは……」

 

「白夜さん、その御守り……」

 

「また光ってやがる……なにがどうなってんだ?」

 

 まだまだ続きますよ。役員共は生命の木に、白夜と主従コンビは御守りの方に目を奪われていると、「だ、誰?」という声が近くで聞こえてきました。あなたたちがその声がした方を見ると。

 

「いや、見ません」

 

 見ろ。

 

「はい」

 

 あなたたちが声がした方を見るとそこには困惑した表情を浮かべた串灘咲耶がいました。

 しかしどういうことなのでしょうか。彼女の体もまた、生命の木のようにチカチカと発光しているのです。

 

「生命の木のように? 一応訊いておこうかな。生命の木と彼女の光は連動しているように見える?」

 

 はい。生命の木がチカチカ光ると同時に、彼女の体が光っています。

 

「この現象って……私の咲夜に異変はある? 彼女の体を見てみるわ」

 

 いいえ、十六夜咲夜の方には異変はありません。

 

「どうやら本体だけで別の分霊には影響はないようね。安心……している場合ではないわね」

 

 さてさて、生命の木、白夜の御守り、そして串灘咲耶から発せられている謎の光に混乱するあなたたちですが、あなたたち以上に取り乱しているのは串灘咲耶です。

 彼女はさっきから「誰?」「誰なの!?」とあなたたち以外の何者かに話しかけられている様子です。自分の体が光っていることにも気が付いていないようで、首を動かして彼女に話しかけている何者かを探しています。

 

「とりあえず訊いておきますが、私にもその声は聞こえないのですよね?」

 

 そうですね、別の分霊であるあなたには何にも聞こえません。続けます。

 何が何だかわからず、あなたたちには聞こえない何者かの声に戸惑う串灘咲耶は、

 

「どういうこと? わかんないよ! 代わってってどういうことなの!?」

 

 と叫んだ途端、串灘咲耶の体にさらなる異変が起こります。

 彼女の長い茶色の髪の毛からどんどんと色素が抜けていきます。変色していく彼女の髪は完全な白髪にはならずやや黒みを帯び、そして透き通るような光沢を纏う銀色のものになりました。

 すると先程まで取り乱していた彼女はどこへやら、落ち着いた様子で白夜の方に目をやった彼女は、

 

「逃げて。今すぐこの島から離れて。でないとみんな、奴らに殺されてしまう」

 

 と、串灘咲耶の声であって彼女の口調ではない、弱々しくもしっかりと伝えてきました。

 串灘咲耶が変化した銀髪の彼女の姿に咲夜は気が付くでしょう。彼女は間違いなく自分と同じ存在の分霊であり、そしてその力が昨日以上に弱まっていて、あと数日と経たないうちに力を失ってしまうことに。

 

「はい? 弱まるスピードが速すぎませんか?」

 

 そうですね。それほどの異常事態がこの御神木に起こっているということです。

 そして白夜は彼女の姿を見て、遠い昔に出会った彼女の姿が思い浮かぶことでしょう。そう、まだあなたが少年だった時、この島に訪れた際に迷い込んだあなたの前に現れた、あの銀髪の少女の姿に。

 銀髪の少女は伝えたかったことを伝え終えたらしくゆっくりと目を閉じると……また髪の毛の色が変わっていきます。今度は赤みがかかり、もとの串灘咲耶の姿に戻っていくようです。

 

「待て、まだ戻るな! これだけ答えてくれ、あんたは何者なんだ!?」

 

「私は……サクヤヒメ。生命の木の意志、そしてその化身」

 

 白夜の問いかけにそれだけ答えると同時に変化は終わり……そこには元に戻った串灘咲耶が立っていました。白夜の御守りも生命の木も串灘咲耶の変化が終わった途端に光が失われ、今は普段の通りに佇んでいます。

 

「あっ、あれ……? わた、私……。う、うそ……いや……っ! いま私誰かに……! 誰かに体を……!」

 

 目を閉じていた彼女ですが先程までの確かに彼女ではない何かに取り憑かれ、体を乗っ取られていた感覚が残っているのでしょう。守るように両手で体を掴み、顔を真っ青にした彼女は、短く悲鳴をあげて震え上がってしまいます。自分の身に起こったことを理解したと同時に戦慄し、取り乱してしまっています。具体的には《SAN》値が6減ってパニック状態に陥っています。

 

「落ち着きなさい! 《精神分析》をかけるわ!」

 

 レミリア《精神分析》62 → 16 成功

 

 それでは5分後、レミリアの精神分析が効き、串灘咲耶は落ち着きを取り戻します。だいぶ体力を使ったらしく疲れた様子で肩で息をしている彼女は、落ち着いたと同時に糸が切れたのか、ぱたりと倒れて気絶してしまいます。

 

「おっと。近くにいるのは私ね。倒れる彼女を支えるわ。ちょっと、あなたどうしたの!? 大丈夫!? って揺らしてみるけど、どう?」

 

 レミリアのその声には明らかに具合の悪そうな串灘咲耶の呻き声が返ってきます。表情も苦しそうに歪んでいて、ただ気絶したわけではないことはわかりました。

 

「彼女の額に触れてみるが、どうだ?」

 

 かなりの高熱を発症していることがわかります。ゆっくり冷やすなどの適切な処置を急いだほうがいいでしょう。

 

「ひでぇ熱だ」

 

「私も額を触るわ。そしてその熱さに驚く。本当、凄い熱……今すぐ戻りましょう!」

 

「ああ、俺が背負う。こんな状態じゃあ目を覚ましてもまともに歩けないだろうからな」

 

「頼むわ」

 

「途中でオレに交代してください。一応力はある方なんで」

 

「私もお手伝いしましょう。私の力が強いのは御存じでしょうし」

 

「ああ、ふたりとも頼んだぜ」

 

「私の持ち物にウエットティッシュがある。これで彼女の汗を拭こう。高熱なら適度に拭いた方がいいからな」

 

「私も持ってきているから使って、と言いながらシノちゃんにウエットティッシュを渡すわ。それから叉木さんに声をかけましょう。叉木さん、『くしなだ』に近い道を案内をしてくれませんか?」

 

「あ、ああ……ここからなら引き返すよりもそのまま進んだ方が『くしなだ』に近い。このまま行こう」

 

 叉木は状況が呑み込めていないものの冷静に判断を下し、小走りに案内を始めます。

 

「一応私が叉木に続くわ。なにか出てきて戦闘になったらいけないしね」

 

 了解です。では体調が悪い串灘咲耶を気遣いつつあなたたちは叉木に早走りでついていきます。ここから出口まではほぼ一本道。道なりに走っていると、前方の草木の間からふらりとひとつの人影が道に出てきました。

 

「誰!? 敵!?」

 

 いいえ、敵ではありません。その人物はあなたたちがよく知る人物です。

 あなたたちと一緒にこの出雲の秘島にやってきたツアー客、行方不明となっていたBグループのメンバーのひとりです。しかし、尋常じゃない状態になっています。

 健康そうだった姿は見る影もないほど痩せこけ、目は血走り、何か大切なものを吸い取られてしまったかのごとく石のような灰色に肌は染まり、萎縮しきっています。

 さらによくよく見ると彼の体は色とりどりに輝いていることがわかります。しかし、先程の生命の木などが発していたどこか神聖さのある温かみのある光とは違い、その光は彼の体に纏わり取り囲むように光っており、目にしただけで触れてもいないのに得体のしれない寒気を感じると同時に、今にもあなたたちに襲い掛かってくるような、生物としての本能が警報をあげるほどの酷く冒涜的なものでした。

 彼はあなたたちに気が付くと力なく腕を伸ばし、

 

「ひ、ひか、ひかりにくわ……れ……」

 

 と言い残して倒れました。瞳孔が開ききっており、ピクリとも体は動いておらず、さらに先程の彼の言葉からあなたたちは察することでしょう。

 彼は今、自分たちの目の前で纏わりついていた光によって死に至ってしまったことを。

 さぁさ皆様。ついに死者が出てしまいました。《SAN》チェックのお時間です。1/1D8でお願いします。

 

 白夜  《SAN》55 → 93 失敗

 シノ  《SAN》44 → 63 失敗

 タカトシ《SAN》44 → 60 失敗

 アリア 《SAN》43 → 63 失敗

 レミリア《SAN》51 → 27 成功

 

「ちょっとぉ!」

 

 おやおやまあまあ、これは大惨事。では失敗した人は1D8をどうぞ。

 

「(コロコロ)……げ、6。串灘咲耶背負っているのに」

 

「(コロコロ)……3だ」

 

「(コロコロ)……2です」

 

「(コロコロ)……あ、私御令嬢だからこういうの弱かったみたい。7よ」

 

 5点以上減少したおふたりさん、《アイデア》どうぞ。

 

 白夜  《アイデア》65 → 98 失敗

 アリア 《アイデア》55 → 20 成功

 

「あっぶな!? というか怖い出目だなおい!」

 

「あらぁー、一時的発狂だわぁ」

 

 初発狂記念として7パーセントの《クトゥルフ神話》技能をプレゼントします。

 続きまして発狂の種類を決定します。種類は1番から3番、5番、10番のうちのどれかです。1D10をどうぞ。

 

「(コロコロ)……1番」

 

 1番は気絶あるいは金切り声です。

 

「気絶しておくわ。起こすか、負ぶって運んでね。……ふぅ」

 

「おっと七条先輩!」

 

「アリア!」

 

「……気絶してしまったようです。オレが背負っていきますよ」

 

「そ、そうか……だが、これは……」

 

「私が脈をとるわ。……あ、ちょっと待って。彼の体ってまだ光っているの?」

 

 彼の体を纏っていた光はもうありません。

 

「ふむ……まぁ、触っても大丈夫でしょう。最悪咲夜に助けてもらうわ。というわけで首で脈をとる。どう?」

 

 亡くなっています。

 

「どうだレミリアさん」

 

「残念だけど……と言いつつ首を横に振るわ」

 

「そうかい……」

 

「このままにしておくわけにもいきませんし、私が彼の亡骸を運びましょう。お嬢様に運ばせるわけにはいきませんので」

 

「感謝するわ。白夜さん、交代要員2人の手が塞がっちゃったから、私も手伝うわ。これでも力はある方なのよ」

 

「恩に着る。急ごう」

 

 それでは咲夜が遺体となった男を、タカトシが気絶したアリアを、白夜とレミリアが串灘咲耶を背負うということですね。

 状況は混沌としていますが、とりあえず民宿『くしなだ』に向かうということで全員の意見が一致したようなので、皆さんは比較的何も考えないようにしつつ引き続き叉木のガイドで神樹の森を抜け、民宿『くしなだ』に戻りました。

 

 

 

 

     ――To be continued…

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。