社会人共がクトゥルフやった時のリプレイ   作:スパークリング

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Part.7

 さて……民宿『くしなだ』に戻ったあなたたち。いろいろありまして今は5時。夏ですのでまだ日は昇っていますが、厚い雲に覆われていて薄暗くなっています。あと一時間もすれば真っ暗になってしまうでしょう。

 謎の光によって息絶えてしまったツアー客は別室に寝かされており、この島の警察と医師が検死をしています。アリアさんは『くしなだ』に着く直前に目を覚ましたということにします。

 そして、熱に浮かさせている串灘咲耶は、彼女の部屋の布団の中に入っています。医師の診断によると原因は不明で安静にさせて様子を見るしかないとのこと。要するにお手上げ状態です。

 

「とりあえず俺たち探索者は全員彼女の部屋にいるとしてだ。他に誰がいる?」

 

 オーナーであり彼女の父親である武彦と、案内人の叉木がいます。

 

「そのふたりがいるなら話は早い。とりあえず俺の職業を明かすとするぜ。みんな聞いてくれ。今まで黙っていて悪かったが、実は俺は警察官なんだ」

 

「え? 白夜さんが?」

 

「あらまぁ。まぁ、なんとなくわかっていたわよ。私も本物の警察官にあったことがあるし、公務員をしているってぼかす人は大体相場は決まっているからねぇ」

 

「それで、あなたが警察の方だったとして、どうして今になってそれを告白したんですか? まさか、何かの調査でこのツアーに?」

 

「ああ。天草さんの言う通り、俺はこの島の謎の不可解な変死事件の調査に来たんだ。裏に何かあるんじゃないかってな。ぶっちゃけ考えすぎだと思っていたし、こっちの警察だって最初はきっちり捜査をしていたことも確認しているから観光半分仕事半分できたことは否定しないよ」

 

「でもそうじゃなかった、と」

 

「ああ。目の前であんな風に人が死んだんだ。本腰を入れざるを得なくなった。そして、この事件には彼女……串灘咲耶さんが関与していると俺は考えている」

 

 おっと? ではそう白夜が切り出すと、武彦が怒りの形相で怒鳴りつけてきます。

 

「何を馬鹿なことを言っているんです!? 咲耶が人殺しをしているとでも!?」

 

「落ち着け親父さん、関与してるっつっても犯人とは言ってねえ。だが仏さんになっちまった彼の死に方は普通じゃない。そして、この島では普通では考えられないことが起こっている。生命の木の御神木然りあなたの娘さん然りだ。そして俺の持っているこの御守りもな」

 

「まぁ確かに? あの死に方はいくらなんでもおかしいわよね。生命の木と彼女、そして彼の御守りがシンクロしているように光り輝いていたことも常識では考えられない。ましてや娘さんに至っては目の前で変化していたのよ? 信じられないなら御友人の叉木さんに聞いてごらんなさいな。彼の言うことなら信用できるでしょう?」

 

 では話を振られた叉木が頷きつつ武彦を訪ねます。

 

「ああ、確かに俺も見た。咲耶ちゃんの変化もあの客の死ぬ姿もだ。武彦、いったい咲耶ちゃんはなんなんだ? 拾ってきて養子にしたことは知っているがそれ以外の詳しいところは知らない。話してくれないか」

 

 あまりプライベートな話をしない友人の叉木に問い詰められた武彦は、瞑目したのち「わかりました」と重い口を開きます。

 

「たしかに咲耶は……普通の人間ではありません」

 

「発熱する前、変化した彼女は確かに言ったわよ。自分は生命の木の意志でその化身、サクヤヒメであると」

 

「レミリアさんのおっしゃる通り、彼女は……咲耶はこの島の伝説の存在である、生命の木の精霊です」

 

「信じられない……が、信じるしかないな」

 

「そうですね。なにせオレたちのこの目でばっちり見ちゃったわけですし」

 

「咲耶さんが木の精霊さん、ねぇ?」

 

「私も最初は信じられませんでした。御伽噺の中の存在と思っていて本当にいるなんて思うわけがないじゃないですか。ですがたしかに、彼女は生命の木の精霊だった。自分が小さい時に初めて彼女に会ってから、森に入るとたびたび彼女は私の前に姿を見せてくれた。こんなおじさんになったつい最近までも」

 

「……その木の精霊とやらは何でったって、この旅館で働いているんだ? しかも記憶がなかったらしいじゃないか」

 

「これは一年前の話です。私が神樹の森の清掃を終えて帰る途中、生命の木の前を通りかかったとき……彼女は倒れていたんです。ずっとずっと元気だったのに力なく倒れていて……。助け起こすと彼女は『私をお願い』と頼んできたんです。するとどういうことか……美しい銀色の髪が茶髪に変わって、体を覆っていた綺麗な緑色の光も消えてしまって……。次に目を覚ました時には、彼女はすべての記憶と精霊としての力を失っていました」

 

「だから彼女を家族として招き入れた、と」

 

「はい。彼女はあの生命の木の精霊。そんな彼女が弱っているとなると、生命の木に何かの異変に起こっているのは間違いない。だが、私にはその異変を解決する力もなければ、どこに異変が起こっているのかもわからなかった。それならば私がやることはただひとつ、記憶を失って行き場のない彼女を守ってあげることだけでした」

 

 武彦は涙を浮かべつつ、悲しそうに語ります。

 

「詳しくはわからない。わからないのですが……嫌な予感がするのです。このままでは咲耶も……サクヤヒメも死んでしまう、そんな予感がするのです。ですが、私にはどうすることもできません。こうやってただ、手元に置いて保護することしかできないんです」

 

「……もういい、よくわかった。あんたを見りゃわかる。今の話に嘘偽りはない。俺は信じるぜ、あんたの話を」

 

「まぁ、私は最初から信じているわよ。なにせ過去に似たような経験をしているからね。ねぇ、咲夜?」

 

「ええ。そうでございますね」

 

 まぁ、咲夜自身が神話生物ですからねぇ。レミリアにとっては茶番もいいとこだったでしょう。

 

「そんなことないわよ? 武彦がラスボスの可能性もあったし、誰が敵か味方かを判断するためにもこのやり取りは必須だったわ」

 

 そうですか。役員共はどうですか?

 

「さっき言ったとおりだ。信じるしかない」

 

「ですね、オレも信じます」

 

「私も信じるよー」

 

「信じられないやつがいたらキャラロストしたも同然の扱いになるだけだからな。そう言うしかない」

 

 脅迫はよくありませんよ。でもまぁ、乗ってきてくれないとGMの私が困るだけなんでうれしい配慮です。

 

「話を進めるぜ。串灘咲耶さんが生命の木の精霊だってことは信じるし、彼女が人に害をもたらす存在じゃないことも信じる。なにせこの御守りは彼女が俺にくれたものだからな」

 

「え? 咲耶がですか?」

 

「ああ。俺がチビだった頃、この島で迷子になっちまってな。その時彼女とあって、この御守りをもらったんだ。俺がこの島を調査しに来たのだって、この御守りがあったからなんだぜ」

 

「そうだったんですか」

 

「で、話は変わってあの変死体に関してだ。昔っからこの島では神樹の森に勝手に入った奴は死体になって発見されるとかそんな噂があるだろ? それは本当のことなのか?」

 

 その白夜の質問に叉木が「俺が話そう」と口を開きます。

 

「それは本当のことだ。人の忠告を聞かず、夜の神樹の森に入った奴らはみなミツクビ様の祟られる」

 

「ミツクビ様……木の精霊がいるんだし、そんな化け物がいてもおかしくねぇ。とりあえず信じるとして、そのミツクビ様の祟りのなれの果てがあの変死体かい?」

 

「いや、あんな死体が発見され始めたのはここ最近だ。数年前まではあんな死体でなく、もっと普通の……大きな口で噛み切られたかのようなものだった。それにミツクビ様は凶暴だがあの森の守護神であることに変わりはない。生命の木を害するなど、ミツクビ様がするはずがない」

 

「なるほど。ってことはだ」

 

「神樹の森に招かれざる客が隠れ潜んでいるってことね。生命の木に影響を与え、本来ならミツクビ様とやらに祟られてもおかしくないはずなのになぜかまだいるバケモノが」

 

「お嬢様のおっしゃる通りです。串灘咲耶さんが生命の木と連動しているなら、急に容体が急変するのはおかしいです。もっと緩やかに症状が進行していくはずなのにいきなり悪化したということは、昨日から今日の間に何か大きな出来事が起こった、または……時が来たと考えていいでしょう」

 

「そうね。ついさっき顕現したサクヤヒメの話によると時間はないようだし、タイムリミットは今晩か、明日の昼くらいまでってところね」

 

 さて、あなたたちがそこまで結論を出したとき、熱に浮かされていた串灘咲耶が「うう……う……」と呻き声をあげています。武彦は心配そうに彼女に付く中、弱々しくですが彼女の口が開きます。

 

「そっ……か。私はあなたで……あなたは私……。私なら、あの人やお父さんを救えるんだね……? うん……わかった、待ってて……今すぐ、行くから……」

 

 と、夢でも見ているのか、誰かと話をしているような寝言を言っています。

 

「確定ね。タイムリミットは今晩よ」

 

「みたいですね。準備をしないと」

 

「だが私たちだけで助けられるとは思えん。なにか武器になるようなものを用意しないと」

 

「……一応切り札はあるんだけど、使わないほうがいいわよね?」

 

 いや、使っちゃってもいいですよ? TRPGは自由が売りのゲームですし、その場合はこちらがちょっと調整をするだけなので、任せてください。皆さんはあくまでこのゲームの世界のキャラクターになりきってプレイしていただいて結構です。

 

「やだこのGM、かっこいい……けど、それって咲夜さんの真の力を発揮しても殺せる自信があるってことだよね?」

 

「面白いじゃないの。このスーパーアルティメットメイドの力を見せつけるときよ」

 

 た・だ・し! 魔術の使用は全面禁止とさせていただきます。門の創造でワープしたり、回復魔法連打で無敵状態になったり、理不尽な呪文唱えてケリが付いたりとかはつまらないですから。

 なぜ魔術が使えないのかですが、それはこの島がもとはあの神様の支配地でいろいろいじくられているからということにします。この島で魔術が使えるのは支配者である神様だけとします。

 

「充分です。こっちもそれをやるつもりはありませんよ。では秘密公開しましょうか、お嬢様」

 

「そうね。んんっ、みんなちょっと、ものすごく大切な話があるから聞いてちょうだい」

 

「ん、なんだ?」

 

「なんですか?」

 

「どうしました?」

 

「なんです?」

 

「さっき天草さん、武器になるものがないって言ったわよね?」

 

「え? ええ、言いましたが」

 

「それがね……あるのよ、とっておきのものがね。……咲夜」

 

「――はい、お嬢様」

 

 すぅ……。レミリアに名を呼ばれた従者は静かに息を吸う。

 するとどうしたことか、窓も扉も締まりきっているはずのこの部屋に一瞬とはいえ風が吹く。その風は空調によるものではなく、明らかにその従者に向かったものであり、緑色のメッシュの入った銀色の髪が靡く。

 彼女の頭部に風が通過すると、どんどんと彼女の髪の毛が薄い緑色に染まっていく。髪が染まりきると、今度は瞳が、指先の爪が薄緑に染まり、耳の少し上がぽこんと少し盛り上がる。そこにあったのは真っ白な曲がりくねった2本の山羊のような角。さらに背中には2対の翼が生え揃い、きらきらと緑色の光沢を放つ。

 

「……は?」

 

「え、ちょ……ええっ?」

 

「これは……」

 

「?……???」

 

 はい、レミリア・スカーレットの従者、十六夜咲夜の正体……忠誠を誓いし清き豊穣神の姿を直視した皆さん、0/1D3の《SAN》チェックです。この《SAN》チェックで発狂することはありませんのでご安心ください。

 

 白夜  《SAN》49 → 58 失敗

 シノ  《SAN》41 → 36 成功

 タカトシ《SAN》42 → 08 成功

 アリア 《SAN》39 → 29 成功

 

「(コロコロ)……2。とりあえずショックを受けておくぜ。まさか、こんな身近に未知がいたとはな」

 

「あの……もしかしてレミリアさんも?」

 

「私? 私はただの人間よ。由緒正しきスカーレット家の御令嬢よ」

 

 あ、ちょっとロールプレイ挟む前にですね、驚愕の表情を浮かべている武彦が咲夜に問いかけます。

 

「あ、あの……あなたは、サクヤヒメ……なのですか?」

 

「いいえ? 私は十六夜咲夜です。確かに同じサクヤの名ですが、これはレミリアお嬢様からいただいたもの。ただの偶然です」

 

「で、ですが、あなたはまるで……生命の木の……」

 

 この武彦の反応は白夜にはわかるものです。たしかに今の十六夜咲夜は、先ほど見たサクヤヒメに限りなく近い雰囲気を纏っているのですから。

 

「ちょっといいかい十六夜さん」

 

「なんでしょう?」

 

「色々聞きたいことはたくさんあるが、とりあえずひとつだけ答えてくれ。あんた、何者だ?」

 

「そうですね。簡単に説明するなら、そちらの串灘咲耶さんと同じ存在によって生み出された分身体です」

 

「つまり、十六夜さんは串灘さんと全く同じ、という解釈で大丈夫か?」

 

「種としては全く同じですが、個としては全然違うとお答えします。私はレミリア・スカーレットお嬢様に拾っていただいた、ただの従者にすぎません。ここの土着神とは違います」

 

「つまり……別個体であってこの串灘さんではない、ということか?」

 

「はい」

 

「……なるほどな、通りであんたに親近感を抱いたわけだ。なにせ、ガキの頃にあった生命の木の精霊と同じ存在だったんだからな」

 

 さてさて、咲夜の正体が判明しました。いやぁ、一気に戦力アップですよ。よかったですね皆さん。

 

「シナリオの難易度もアップしているだろう……。十六夜さんに質問だ。あの、十六夜さんはその……神様なのですか?」

 

「簡単に言うとそうですね。ただそう緊張しなくて結構です。私はレミリアお嬢様の侍女にすぎません」

 

「そうですか……じゃあもうひとつだけ質問を。あなたの力でこちらの咲耶さんの体調を戻すことはできませんか?」

 

「色々試していますが、どうもこの島では私の魔術は使えないみたいです。おそらくここの土着神だったかつての邪神が、ほかの神にこの島を荒らされないように妨害工作を仕掛けていたらしいです。しかし、戦闘能力と武器には問題はないみたいですね」

 

「えっと……具体的にはどれくらい強いんですか?」

 

「さぁ? 私自身生まれたての分霊ですし、この力を使うことなんて基本ありませんのでわかりませんが……神にすらなっていない生半可なバケモノ程度なら普通に勝負できるのでないでしょうか?」

 

「基準がわからないんですが……要するにめちゃくちゃ強いってことで合ってますか?」

 

「油断はできませんが、その認識で大丈夫かと」

 

「……じゃあ、簡単に言うとアタッカーは十六夜さんだけで充分ということですか?」

 

「そうね。咲夜がいれば何とでもなるわ。だから必要なのは私たちが自分の身を守る術だけね」

 

「必要以上に私から離れず固まっていれば大丈夫ですが、対処法があるならそれも用意した方がよろしいかと」

 

「それもそうだ。串灘さん、叉木さん。これから俺たちが戦う敵について何か知っていることはないか? 神樹の森に関わりの深いあんたたちなら何か掴んでいるんじゃないか?」

 

 白夜がふたりに問いかけると、叉木が口を開きます。

 

「多分そいつは強い光に弱い。夜に数回あの光のようなものに遭遇したが、持っていた大型の懐中電灯の光を浴びせ続けたら撃退できた。だから懐中電灯を持っていけば問題はないはずだ」

 

「なるほど、それはいい情報です。森に入るときはみんなで光を放つものを持っていればよさそうですね」

 

「俺の小屋には松明なら沢山あるが、大型ライトは2つしかない。人数分は確保できん」

 

「それならこの民宿にもあります。ひとつだけですが」

 

「問題ない。3つもあれば充分だ」

 

「それに今ならスマートフォンのライトもありますからねぇ。あれ結構明るいんですよ?」

 

「ほかに情報はあるかしら?」

 

「……すまない。思い当たるのはこれくらいしかない」

 

「ふぅん、まあ充分ね。その光に対しての現状対抗手段はこれしかないみたいだし、ほかに何をやっても無駄でしょう。あとほかに危惧することはあるかしら?」

 

「思ったんですけどミツクビ様の対策はどうなんですか?」

 

「ミツクビ様は森にもともと住んでいる神様だし、私たちはミツクビ様にケンカを売るつもりはないんだろう? 何もしなければ襲い掛かってこないんじゃないか?」

 

「まぁそうね。ミツクビ様に関しては大丈夫と信じたいわ。むしろ森にいる侵入者を排除してあげるんですもの。咲夜もいるんだし、力を貸してくれてもおかしくないはずよ」

 

「なるほど、じゃあ大丈夫そうですね。考えすぎちゃっていたみたいです」

 

 話は纏まりましたか? 今までの話から察するに、今晩あなたたちは神樹の森に入って決戦を挑む、ということですね。咲夜の力を解放させて、大型ライトなどの明かりを片手に。

 

「まぁそうだな。行くのはもっと夜遅くでいいだろう。敵が堂々と行動し始めるのは夜中だろうし、叉木さんも協力してくれるんだろ?」

 

 そうですね。ここまで話を聞いていた叉木も積極的に協力してくれます。自分はどうすることもできないと弱さを嘆いていた武彦も、あなたたちならサクヤヒメを助けてくれると信じて決戦に協力してくれます。

 具体的に何をするかですが叉木は生命の木までの道案内を、武彦は大型ライトで光のような生物の迎撃をしてくれます。《STR》は叉木が17、武彦も11ありますのでいざとなれば物理的な戦闘にも参加してくれるでしょう。また叉木は猟銃を使うことができます。

 

「よし、なんだかんだで使えるわ。さすがにこれ以上人数を増やしたら脱落者が出そうだし、これ以上の増援は不要ね。というか認めない。咲夜の本当の姿を晒すのはこのメンバーだけにとどめておきたいから」

 

「まぁな。この島の警察を総動員させる手も考えたんだが、どう考えても十六夜さんの力を頼ったほうがいいからヤメだ。もう決めることはないか?」

 

「ないんじゃないですか? とりあえず夕食にしません? 腹が減ってはなんたらって昔の人も言っていましたし」

 

 現在時刻は6時半です。武彦の昔話やら十六夜咲夜の正体やら今後の方針やらの話をしていれば一時間半くらい時間は消費するでしょう。ちょうど夕食時です。

 

「うむ、ではアリアの言う通りご飯にしよう。いい時間だ」

 

「そうね。ちょっと重くなった雰囲気を軽くするために私が言いましょう。ふぅ、なんだか真剣なお話をしていたらお腹が空いちゃったわね。あら、もうこんな時間」

 

 ではそのレミリアの言葉を聞いて武彦が立ち上がります。

 

「そうですな、夕食にしましょう。本当は豪勢なものを用意したかったのですが……消化の良いものを用意させていただきます」

 

「だな。胃がもたれて動きづらいなんて笑えねえし、それで頼む」

 

「あ。私人間の姿に戻っていいですか? 万が一誰かに見られたら嫌ですので」

 

「ああ、そうね。神樹の森に入ったらまたその姿になってちょうだい」

 

「かしこまりました」

 

 それでは皆さんは英気を養うための一環として全員で食堂に向かい、武彦が作ってくれた夕食を腹に詰め込みます。確かに豪勢なものではありませんでしたが、食べやすく活力の付きやすい食材を選んで調理してくれています。

 味付けもずっと民宿を経営し、料理まですべてこなしていることもあって洗練されており、とても満足のいくものでした。レミリアお嬢様もアリアお嬢様も大満足です。

 

「こんな時でもしっかり料理してくれる武彦さんはオーナーの鑑ね」

 

「とってもおいしかったわぁ」

 

 さて、ではちょうど全員が夕食を食べ終わろうかとしていた時、外から誰かが走ってくるような足音が聞こえます。それはこの食堂に近づいてくるようです。

 足音の主は武彦でした。しかし、酷く狼狽し慌てた様子です。武彦は食堂を見渡すとさらに顔色を悪くさせます。

 

「問いかけようか。串灘さんどうした、そんな血相変えて」

 

「なにかあったんですか?」

 

「咲耶が……咲耶が部屋にいないんだ……!」

 

「……は? とりあえず彼の近くに行って詳しい話を聞こう。続けてくれ」

 

「軽いものを作って咲耶の部屋に行ったら布団を抜け出していて……机の上にはこんな手紙が」

 

「手紙? 受け取って内容を確認する。全員に聞こえるように読み上げるぞ」

 

 了解です。では白夜は武彦から手紙を受け取って内容を確認します。そこには、女性特有の若干丸っこい字でこう綴られていました。

 私はすべてを思い出しました。私はこれから“私”を助けに行きます。お父さん、私を育ててくれてありがとうございました。夢幻の白夜さん、そしてツアー客の皆さん、巻き込んでしまってごめんなさい。そして、逃げてください。この島は明日の日没と同時に死ぬでしょう。

 手紙は以上です。まるで遺書みたいだと思うことでしょうね。

 

「まるでじゃなくてまんまですよコレ」

 

「迂闊だったわね、誰かひとりを部屋に残すべきだったわ」

 

「本音は?」

 

「こうなるだろうなと思っていたからPL的には大して驚いていないわ。誰かが部屋に残ってもこうなっていたでしょ?」

 

 はい。何らかの手段を使って部屋から出して抜けさせる手筈でした。

 さて、どうしますか?

 

「彼女を探すのは当たり前だけど……これ間違いなくあそこだよね?」

 

「だな。間違いなく神樹の森だろう。というかそこしか考えられないんだが」

 

「同感だな。急いで神樹の森に向かおう。もしかしたら合流できるかもしれない」

 

 では皆さんは神樹の森に向かうということでいいですね。

 それではあなたたちは民宿から出て……夜の神樹の森に向かいました。

 

 

 

 

     ――To be continued…

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