王子(女子)の戦車道   作:謎の作者E

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実験的な作品になるので匿名で投稿します。
普段は艦これ書いてます。
外伝系は読んでないのでそっちとは矛盾が生じるかもしれません。


戦車道開始だ!

赤竜高校の生徒会室は異様な雰囲気に包まれていた。一人の少女が土下座しているのである。

 

「お願いします!」

 

「ですから、何度言っても同じです」

 

会長席に座る長い黒髪の少女、生徒会長である宇佐美(うさみ)は土下座している少女の懇願をバッサリと切り捨てた。そもそも宇佐美はこの一年生の少女が好きではなかった。成績は底辺、指定のブレザーを着ずに、改造された学ランを着用。そのくせ人気があり、妙なファンクラブが組織されているのだ。

 

「我が校に戦車道は不要です」

 

「そこをなんとか!」

 

宇佐美はため息を吐いた。このやり取りは今始まった物ではない。すでに二十分が経過している。普段は冷静な宇佐美も疲れ、イライラを募らせていた。

 

「だいたい何故戦車道に拘るのです。そんなマイナーな武道を今さら始めて何の得があるのです?どうせ大会も毎年同じ高校が優勝しているんでしょう? 」

 

戦車道は金のかかる武道だ。わざわざ停滞した競技に金をつぎ込む必要がないというのが宇佐美の考えだった。

 

「いや、去年の大会では連勝を重ねていた黒森峰女学園がプラウダ高校に敗北しました」

 

「どうせまぐれでしょう?二度も三度も起こりません」

 

「そんなことは有りません」

 

学ランの少女がガバッと体を起こした。男性にも見える端正な顔立ちがあらわになる。

 

「戦車道にまぐれなし!他の高校も力をつけてるんです。これからは盛り上がりますよ」

 

「そこまで言うのなら、次も黒森峰女学園が負けるような事があれば、来年は戦車道を開始する。これでどうかしら?」

 

いい加減疲れていた宇佐美は適当な条件で妥協することにした。一度負けたぐらいで長年優勝してきたチームが潰れるはずがない。寧ろ隙がないくらいに強化されるはずだ。しかし学ランの少女はニヤリと笑い、立ち上がった。

 

「充分です、会長。では誓約書をお願いします」

 

「はあ、面倒ね」

 

宇佐美は先程の条件を紙に書い判子を押し、学ランの少女に渡した。

 

「ありがとうございます。失礼しました」

 

少女は満足げに頷くと直ぐに部屋から出ていった。宇佐美はそれを見送ると大きく息を吐いて机に突っ伏した。

 

「本当に黒森峰が負けたらどうしましょうか」

 

暫くぐったりとしていた宇佐美だったが、別の仕事を思い出し、仕事を始める。その頃には、戦車道のことはすっかりと忘れ去っていた。

 

 

 

 

「残念!今年は無理だ」

 

生徒会室から出てきた学ランの少女、江戸川 羽鳥(えどがわ はどり)は部屋の前で待っていた二人の少女に告げた。この二人の少女は江戸川のファンクラブの上位会員、親衛隊に属している。髪をピンクに染めたギャル風の少女は優木(ゆうき)、眼鏡をかけたダウナー系の少女は溜池(ためいけ)という名だった。

 

「えー、マジ?『王子』のお願いを断るなんてあり得ないんですけど」

 

「言語道断、即刻処刑すべき」

 

「待て待て落ち着け、話はこれからだ」

 

江戸川は報告を聞いて直ぐに生徒会長を攻撃しようとする二人を全力で押さえた。幸い体格に恵まれ、身長も高い江戸川は普通の女子よりも力が強い。優木の手をしっかり握って引き寄せ、小柄な溜池の体を抱え上げることで二人の行動を阻止する。廊下に黄色い悲鳴が響いた。

 

「来年は行けるぞ。今年黒森峰が負けたら来年は始めると約束させた」

 

ようやく落ち着いた二人を放す。二人は一瞬残念そうな顔をするが、直ぐに会話に戻った。

 

「マジか、さすが『王子』だし」

 

「でも、本当にプラウダは勝てるのか?」

 

溜池が疑問を口にする。プラウダ高校が優勝できたのは黒森峰側の車両が川に転落したのが原因であった。単なる実力だけでは勝てなかったのではないかという意見も多いのだ。

 

「うん?今年の優勝はプラウダにはならないよ。きっと大洗だ」

 

そんな中、江戸川が出した名前は二人にとって全く予想外のものであった。

 

 

 

 

江戸川 羽鳥は転生者である。彼は若くして死した後、この世界で再び産まれ、ガールズ&バンツァーの世界だと気がついた時から戦車道を志していた。しかし貧乏な家に産まれたことと学力の不足で今まで戦車道とは縁のない生活を送っていた。

しかし、彼女が赤竜高校に入学して半年が経過した時、全てが変わった。黒森峰女学園は全国大会にて大洗女子学園に敗北。赤竜高校の生徒会長、宇佐美は江戸川との約束に従い赤竜高校でも戦車道を行うことを決定した。

そして時は流れ四月、江戸川はなんとか二年生に進級し、選択科目に戦車道を選んだ。そして意気揚々と新たに作られたガレージに向かった。

 

「来ましたね。江戸川 羽鳥」

 

「宇佐美会長、当たりましたよ」

 

ガレージの前には生徒会長の宇佐美が立っていた。ガレージは扉が閉められているため、中に有るであろう戦車は見えない。

 

「あなたには先見の明が有るようですね。まさかここまで戦車道が流行るとは……。これは私からのお願いです。どうか戦車道チームの隊長になってくれませんか」

 

「はい、お安いご用です」

 

宇佐美は満足げに頷くとガレージへと続く道を開けた。江戸川は宇佐美の横を通り、ガレージの扉に手をかけた。

 

「戦車の購入には元の予算に加え、私の個人資産も継ぎ足しました。戦車の元祖とされるイギリス製です」

 

ゆっくりとガレージの扉が開く。中に光が射し込み、巨大な鉄の塊が姿を現す。

 

「こ、これは……!」




戦車は次回から出ます。
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