捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
それでは今回もよろしくお願いします!
ぼんやりと目が覚め、新年初の朝だという事実が頭の中をのろのろとよぎる。
だが、体はまだ眠りたいと、気怠さを訴えていた。
ひとまず時間を確認しようと、無造作な手つきでベッドの上をまさぐる。
そこで、むにゅっと右手が何かを握った。
ん?これは……。
「んっ……」
「っ!」
跳ね上がりそうになり、慌てて全身を押しとどめる。
すっかり忘れてた。
隣では花陽がすやすやと可愛らしい寝息をたてている。
……勿論、しっかり服を着たまま。
はい。昨晩は何も起こってはおりません。
下から聞こえてきた小町の笑い声に、お互い何故か吹き出してしまい、あとはダラダラ話している内に、眠ってしまった。
何となく右手を見つめてみる。うん、柔らかい。
幻想は壊れなかった。
つまり花陽の胸が柔らかいのは事実。当たり前か。
「八幡さん……」
むにゃむにゃと口を動かしながら、笑顔になる花陽。
ニット素材のシャツは、豊かな胸の形を強調しているように見える。
……一年の計は元旦にあり。
つまり、ここで俺がどう動くかによって、今年1年の良し悪しが決まる……んなわけねーか。
しかし、幸先のいいスタートというのは大事だ。高校デビューや大学デビューなんかがいい例だろう。失敗したら取り返すのにかなりの労力を要する。
まあ、それはさておき、ひとまず……とりあえず。
チャレンジする事もたまには大事じゃなかろうか。
失敗して覚える事だって沢山あるはずだ。
むしろ失敗しなければ、人は成長しないと言ってもいい。心に傷がつくという事は、その分だけ刻みつけられるのだから。
よし、前置き完了。
そーっと手を伸ばす。
視線はどっかのストラトスばりに、胸にロックオンされていた。
そこで、彼女の口がむにゃむにゃと動いた。
「八幡さん……」
花陽はふにゃあっとした笑顔を見せる。
いかん。性欲に負け、大事なもの失うところだったぜ。
そっと花陽の頬を撫で、立ち上がる。
そこでずるっと滑った。シーツのせいだろうか。思いきり花陽の上に倒れ込む。
「っ!」
「あうっ……」
起こしてしまった。突然のことに、花陽は何が起こったのか理解できていないようだ。
「は、八幡さん」
「……悪い」
花陽からどこうとすると、左手を通して、柔らかい感触が脳に伝わってくる。
「あ……あ……」
「あーいや、その……」
「ぴゃあああああ~~!!」
1年の計は……元旦にあり……。
「…………」
「明けましておめでとうございます……」
1年の始まりの挨拶を改めてすませる。挨拶って大事だと思う。
しかし、花陽は毛布にくるまって出てこない。
「花陽、白米食べようぜ」
「八幡さん」
「はい」
「私は怒ってます」
毛布から可愛い声が聞こえてくるので、なんかシュールだ。多分、毛布の中の花陽は顔が真っ赤になっているはずだ……俺のせいで。
実際、さっきの出来事で、こっちもまだ落ち着かない。顔は真っ赤だし、両手には感触が残っている。心臓はバクバク鳴っていた。
しかし、思い出す前に、今は誠心誠意謝るのが先決か。
「ごめん」
「そ、その、いやではないんですけど……雰囲気と言いますか……」
「ああ……」
「も、もう……言わせないでください!」
確かにその通りだ。話題を変えよう。
「花陽……初詣行くか」
「……はい」
花陽は返事をすると、困り眉のまま、やわらかな微笑みを向けてきた。
こんなやり取りをしながら、思うことは一つ。
どうやら今年も騒がしくなりそうだ。
読んでくれた方々、ありがとうございます!