捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

114 / 129
 感想・評価・お気に入り登録・誤字脱字報告ありがとうございます!

 それでは今回もよろしくお願いします!


空も飛べるはず ♯2

「海外旅行!?」

 聞き慣れない単語につい驚きが出てしまう。

 母ちゃんの言った事が信じられなくて、ドッキリじゃないかと辺りを見回した。小町も親父も何も持っていないようだ。

 ひとまず母ちゃんに向き直る。

「どうしたんだよ。いきなり……」

「あんたまだわからないの?家族で海外旅行に行くっつってんの」

「……いきなりだな」

「そう?小町も高校受験合格したから、ちょうどいいと思うけど」

 僕が高校受験合格した時は何もなかったようですが……気のせいですか、お母さん?

「どこに行くんだよ」

「ニューヨーク」

 へえ、確か花陽達の行き先もニューヨークだったような……。

「いつ行くんだ?」

「ここからここまで」

 ……あっれー?確か花陽達もこの日程だったような。

 小町の方に目を向けると、思いっきりドヤ顔でウインクをしてきた。ドヤ顔でも可愛いとはさすが俺の妹。

「……お前も最近頑張ってたからな」

 ぼそっと呟き、親父はだらだらとした足どりで自分の部屋へ戻っていった。

「……ありがとな」

 俺はこっそりとその背中に向けて礼を言った。

 

「お兄ちゃん、サプライズがいいと思うんだよ!」

「はあ……」

 目をキラキラさせてくる小町に、呆けた表情で返してしまう。さっきの発表もかなりサプライズなんだが……。俺は48グループのメンバーではないので、そんなにサプライズは必要ない。

「日本から遠く離れたアメリカで、偶然の再会!ロマンチックだよね~♪」

「そうか?」

 むしろ今すぐ連絡しようと思ってたんだけど。

 しかし、小町は強い意志を秘めた瞳で俺を見据えてくる。この意志が1パーセントでも勉強に向けば受験も楽だったろうに……まあ、それはさておき。

「どうやって説得したんだ?」

「何の事?」

「旅行の件だよ。お前が頼んだんだろ?」

「小町は特に何もしてないよ。お父さんの膝の上に乗って、『家族でニューヨークとか行きたいなぁ~♪』って言っただけ」

「お、おう……」

 決定打じゃねーか。つーか、今ので妹の将来がかなり心配になりましたよ?ジャグラーばりに男を手玉にとるようなキャラクターにはならないでね。

「それよかサプライズだよ!何か楽しい事したいじゃんか!」

「それが本音かよ……」

「もちろん二人の事も考えてるよ。これを機にもっと二人の愛が深まれば……きゃー♪」

「…………」

 これ以上甘デレされたら、今度こそ最後までいっちゃう気がするんですけど……。

「う~ん、μ,sの皆は忙しいだろうからあまり迷惑はかけられないし……」

「そもそも会えたとしても短時間だろ」

「大丈夫!インパクトが大丈夫なんだよ!よしっ、頑張るよ、お兄ちゃん!花陽ちゃんは待ってるよ!」

「あ、ああ……」

 まだ見ぬ異国の地に思いを馳せながら、比企谷兄妹の極秘プロジェクト(?)がスタートした。

 




 読んでくれた方々、ありがとうございます!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。